机でボウリング
【つくえでぼうりんぐ】
ジャンル
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パーティ/スポーツ/テーブル/学習
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売・開発元
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SAT-BOX
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発売日
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2019年4月25日
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定価
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850円
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プレイ人数
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1~6人
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レーティング
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CERO:A (全年齢対象)
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セーブデータ
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1箇所・オートセーブ方式
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判定
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クソゲー
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ポイント
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全く活かされていない「机で」要素 ストレートボウルだけでクリア可能 親しみやすいデザインは光る点
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概要
「机で~」「ボクらの~」「みんなで~」といった序詞のパーティゲームを数多く販売するSAT-BOXの一作。
本作は「机で」シリーズ第4弾で、教室机をボウリングレーンに見立てたうえで、スタンダードな10ピンボウリングやスプリット全消しなどお題チャレンジ、および6人までの複数プレイヤー対応ゲームを遊ぶことができる。
つまりタイトルが示す通りそのまま舞台設定であり、レーン上や周囲に消しゴムやセロテープなどの文具やおもちゃといった配置物が現れるのが特徴。
また、ボールは全91種あり、特定のモード攻略や、ゲーム内ポイントを消費するガチャで獲得することが可能。それぞれに「重さ」「ストレート」「右カーブ」「左カーブ」の4種のパラメータを持ち、プレイスタイルに合わせて使い分けることになる。
……というと、少し変わった所がありつつも面白そうに思えるのだが、このボウリング、テクニックはほぼ不要であり「ストレートに強いボールを早期に手に入れて真っすぐ投げ続ける」のが最善手となっている。
なお、ジャンル名が4つものジャンルをスラッシュで挟む奇怪な表記となっているが、公式サイトでのジャンル表記からしてそうである。
と言うのもこのシリーズは公称ジャンルを盛り過ぎる傾向が見受けられる。無論、本作においても学習ゲームとしての要素は全くない。
ゲームモード
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クエスト
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1人用CPU戦モード。全13エリアをひたすらCPUとの1対1勝負で進んでいく。1エリアにつき3ゲームあり、雑魚敵2ゲーム(5フレーム制)、ボス1ゲーム(10フレーム制)で構成される。
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各エリアは「ビーチ」「動物園」「空港」のような舞台設定が設けられており、それに応じた飾りつけがレーンに施されている。
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また各ボスは「消しゴムくん」「分度器ちゃん」「三角定規くん」などシリーズお馴染みの文房具キャラが務めている。
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トーナメント
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CPU15名とのトーナメント形式での対戦。ルールは通常の10ピンボウリング。
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マルチ対戦
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チャレンジ
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スプリットで配置されたピンを1投で全て倒すお題や、レーン上に動く障害物があったり、レーン途中に設置された網めがけてボールを投げたりといった変わり種のお題で構成されたモード。
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6ステージ×4エリアがあり、次のエリアに進むには4ステージをクリアするか、他のモードでポイントを貯めて支払う必要がある。
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パーティ
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複数プレイ対応のチャレンジモード。ステージ内容は上記チャレンジとは別で、対戦・協力の2モードごとに独自ルールのゲームを遊ぶことができる。
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カプスト
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各ゲームモードで得られるポイントを消費し、ランダムで新たなボールを手に入れるガチャモード。ガチャと言ってもリアル課金要素は無し。
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お楽しみ
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100ピンボウリング。ここで倒したピンの数×10のポイントを得ることができるが、一度遊ぶと3時間経過するまで再度遊ぶことができなくなる。
評価点
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カラフルで親しみやすい雰囲気
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3Dではあるが色使いが多彩、かつ輪郭線の太い漫画チックな見た目なため、気取った雰囲気がなくとっつきやすい。
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登場するキャラクター4名も、まるで学習漫画や児童誌漫画の善玉で出てきそうな爽やか・快活なお兄さんお姉さんといった風合いであり、親しみやすさ(ある意味「難のなさ」)はかなり高いと言える。
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チャレンジやお楽しみでのリザルトでは成否ごとに顔差分が用意されており、無名キャラながら豊かな表情でゲームを盛り上げてくれる。
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ゲーム中では彼ら含むキャラクターの顔グラフィックを、自身のプレイヤーアイコンとして使用することができる。
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関連作品のアイコンも使用可能
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上記プレイヤーアイコンでは、同社の過去作品のキャラもゲスト出演しており、「机で」シリーズのほかボクらの消しゴム落としの主要メンバー4名のアイコンも用意されている。
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コレクション要素を楽しめる
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本作のボールは、もちろんいかにもボウリング場で見るような単色・マーブル模様のものもあるが、多くは特徴的なデカールを貼り付けたものとなっている。
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例えばゴルフボールのような別スポーツのボールを模したものや、動物・国旗を球状に表したもの、樽・だるまなどとにかく丸っこいものなど、様々な種類があり、それぞれに固定のパラメータが設定されている。
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登場するボールは所持・未所持に関わらずボール選択画面で見ることができるため、眺めるだけでもなかなか楽しく、また「次はこれを手に入れたいな」といった目標にしやすい。
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パーティゲームの発想は良い
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パーティモードには「他モード同様の操作でボールを転がす」というのは変えずに、得点つきの的や穴、動くギミックなどを用いて「持ち玉3個ずつで動く的に当て合計得点を競う」「レーン上に空いた穴をすべて埋める」「ボウリングボールでモグラたたきをする」といった競技が収録されている。
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パーティゲームというより、保育園や学校でも可能なレクリエーションゲームとすら言えるものだが、ボウリングゲームの1モードとしては面白い要素であるといえる。
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なお選べるゲームは「対戦」と「協力」とでそれぞれ6種ずつのみ。1種のボリューム自体は上記の通り大したものではないし、パーティゲームが全12種というのは心もとない数だが、「ボールを転がす」という操作に限定している以上、数を望むのも酷であろう。
賛否両論点
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「机で」が活かされていないステージバリエーション
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机の上がボウリング場になっていて、ボールを転がしてピンを倒す……というのはいかにも小学生の遊び時間のような高揚感を想像させるが、実際のところボールもピンもボウリングで使われるそのものであり、倒したピンは機械仕掛けのプレートで奥のピットに自動排除されていくため「見た目が学校な普通のボウリング場」でしかない
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一方、クエストでは「ゲームモード」項に記載の通り様々なロケーションが用意されているが、机上のボウリングレーンに着色し、周囲にそれっぽい飾りをつけている(恐竜エリアなら周りに恐竜の模型を置いている)だけで教室内なのは同じため、そもそもロケーションが複数あるというコンセプトに必然性がない。
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つまり、「机の上である意義」「教室内でビーチや動物園や空港などを再現する意義」がいずれも存在せず、何ともちぐはぐな世界観となっている。
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とはいえ元々「机で」シリーズは「野球」「ピンポン」「サッカー」など「教室遊び×スポーツ」を第一のコンセプトとしたものであり、様々な競技を机上という小さな範囲にミニチュア化しているという通奏低音があるため、シリーズ全体の流れには沿っている。
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一部楽曲が場には合っているが賑やかすぎる
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本作の楽曲にはフリー音源が使われており、いずれも場面によく合ったものがチョイスされているのだが、一部の曲、特にボス戦とチャレンジモードについてはかなりせわしない曲調でループも短いため聞き飽きるのが早い。
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バラエティ番組のゲーム企画などによく似合いそうなドタバタとした楽曲であり、それ自体の質が悪いわけではないのだが、テレビゲームという媒体で何分も聞き続けるのは人によるが辛いかもしれない。
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声優が棒読み
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これはシリーズに共通する点でもあるのだが、社員か声優専門学校の生徒かというくらいセリフの演技力が低い。
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しかしロープライスのパーティゲームであるため、「却ってその方が味がある(クセになる)」ともいえる。
問題点
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ボールのパラメータの説明がない
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各ボールに設定されているパラメータのうち、「ストレート」「右カーブ」「左カーブ」の値は1~5のゲージで表されているのだが、これが何を意味するのかの説明がゲーム中にない。
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実際に試せばストレート3と4で衝突力に差があるため、それぞれ球種ごとのスピードなのか、カーブのかかりやすさなのか、コントロール性能なのか、総合的な向き・不向きなのか……といった推測はできるのだが、結局はっきりとしたことが解らずマイボールを選ぼうにもすっきりしない。
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試し投げできない
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上記の欠点を更に補強するものとして、ボール選択画面での試し投げができない。
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このため選択したボールの性能を確かめるには実際にボウリングを1ゲーム始めるしかなく、手間がかかりプレイスタイルの追求がしにくい。
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ストレートに強いボールだけでクリアできる
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最大の問題点。本作の10ピンボウリングはストレート値が「4」であるボールをまっすぐ投げるだけで9割方ストライクを取れてしまう。
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ちなみに具体的な操作としては「Xボタンを押しながら左スティックを手前に倒し、Xボタンを離す」という非常に簡単なもの。少々の手ブレを加味しても誰でもスコア280弱は取れてしまい、ボウリングゲームとしては非常に味気ないものとなっている。
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該当するボールは91個中10個少々ではあるが、ガチャを2200ポイントで引けば未入手ボールが5個ランダムで手に入るのでチャンスは多い。そのポイントもゲーム開始時点で3000ポイント持っているうえ、「お楽しみ」で500ポイント前後、クエストボス撃破で初回1000ポイント(2回目以降300)、トーナメント1戦勝ち抜きごとに300ポイント、と獲得源が多いためそう遠くなく揃えることはできるだろう。
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またボール種は前述の通り91種あるが、うち約25種がクエストのクリアなど他モードで入手できるため、ガチャ対象ボールの分母は65種程度しかない。その中で10個以上がストレート4なのだから、入手難度としては易しい方だろう。
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ちなみにこのストレート戦法は後半のボスも使用しており、「分度器ちゃん」に至っては前口上で「ボウリングに大事なのは角度」などと言っておきながら気持ちよくストレートボールを投げてストライクをかっさらっていくことがある。
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ならばストレート4のボールを使わなければ良いのでは、という意見もあるかもしれないが、それなら尚更、ゲームバランスがプレイヤーの自主的な縛りプレイによって成り立つのは問題である。対人戦も機能するとは言い難いだろう。
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また、エリア5のボスあたりからほぼ9割がたスペアかストライクを取ってくるうえ、終盤の雑魚敵も5フレーム制でスコア120を出してくることがあるため、自然とそうしたパワープレイの誘因となっている。
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障害物の効果が先攻不利でしかない
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一部ステージではそのロケーションに応じた障害物がレーン上に設置されていることがある。例えばビーチエリアでレーン上にビーチボールが転がっている、などでありそれ自体は見た目には楽しいのだが……
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「配置上かわせない」「当たると球速が落ちる」「当てれば障害物はレーン外に吹っ飛び、以降登場しなくなる」という仕様から、先攻1投目だけ不利を被る形となる。
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敵の投擲をスキップできない
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ボウリングは純然たるターン制の競技であるためCPUとの対戦の場面ではどうしても待ち時間が生じるのだが、相手ターンの投擲をスキップすることができない。
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スキップできてしまうと本当は違うスコアを取っているんじゃないか、という疑惑も出てきてしまうので是非の難しいところだが、せめて勝負確定した最終フレームくらいは飛ばせてもよいのではないだろうか。
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テレビゲーム初期であれば例えば将棋などで「CPUのターンを待ち続ける」ということはあったが、2019年発売時点ということを考えると「ゲームプレイの半分がCPUを待っている時間」というのはあまり好ましい仕様ではない。
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チャレンジのリトライボタンが統一されていない
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まず前提として、チャレンジモードがそこそこ難しいという特徴がある。
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チャレンジ内容が「スプリット状態からスペアを狙う」「動く障害物を避けて投げる」「奥まで転がり過ぎないようちょうどいい強さで投げる」に対してたった1投で勝負するため、結構なリトライ回数を要する。
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それを踏まえてか、チャレンジ中は投げる方向・パワーをミスしたと思ったらいつでも「B」ボタンでリトライできる親切設計なのだが、投げたボウルがピットに到達するなどで失敗判定が下されリザルト表示が出てしまうと、リトライが「Y」ボタンに割り振られる。
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リザルトでの「B」ボタンは「モードセレクトに戻る」なので、リトライしようとしたらゲームを抜けてしまいやる気を削がれる、という事象が発生する。
総評
シリーズが持つ「机で(小学生の遊び時間のような雰囲気で)」のコンセプトや、ボウリングの操作感でパーティゲームを収録している点、ボールそのものにパラメータを与えコレクション要素とした点など光るところはある。
しかし肝心のボウリングが「スティックをまっすぐ後方に倒してボタンを押す作業」となりがちであり、残念ながらゲームとして成立しているとは言い難い。
特に1人プレイ用として購入すると、ゲーム性が保たれている部分はチャレンジモード24種目のみとなり、さすがにゲーム寿命としては非常に短命となるだろう。
本作は強い自制心を持って、こだわりのマイボールとプレイスタイルを探求できる人にはおすすめである。
最終更新:2022年03月12日 10:48