パットパットゴルフ

【ぱっとぱっとごるふ】

ジャンル パターゴルフ
対応機種 ファミリーコンピュータ ディスクシステム
発売・開発元 パック・イン・ビデオ
発売日
()は書換開始日
1989年3月30日(1989年5月19日)
プレイ人数 1~4人
定価 3,500円
判定 クソゲー
バカゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 癒し系な見た目に反して普通のゴルフより超高難度
コースはバラエティ豊かでホール数も豊富
打球のクセが強すぎてコントロール自体が難しいバランス


概要

1989年にパック・イン・ビデオがファミコンディスクシステムで発売したパターゴルフゲーム。
ゴルフゲームというのは珍しくないがクラブが固定なパターゴルフとなれば初である。
ゲームらしくただのパターゴルフではなく、動く障害物やジャンプ台のようなものがあり、実質完全にオリジナルなゴルフである*1
本格的なゴルフかパターゴルフの違いはあれど特殊なギミックが満載なコースは『プロゴルファー猿』の世界に通ずるものがある。

このようなスポーツゲームなのにファンタジーチックな世界観やストーリーまである。


ストーリー

海の真ん中にある小さな島国「パットパット王国」。そこにはお菓子、おもちゃ、スポーツ用品、動物で構成されたゴルフコースがあり、王様の命令で国民はパットゴルフばかりしている。
その国のパット姫には恋人がいて、それがパットゴルフの練習をさぼってばかりで母親に叱られてばかりの少年(主人公)だった。

ある日、パット姫は王様から、国一番のスポーツマンで人気者のシュワルツ君と結婚しろと命令され泣いていた。それを見て事情を知った少年は王様に姫との結婚させてくれと願い出た。
しかし、この王国で王位を継ぐ者はパットゴルフが誰よりも上手くてはならない。王様は少年にまずは4つのコースをパープレーで回ることを条件に出してきた。
少年は人が変わったようにパットゴルフの練習に打ち込むようになった。さあ大好きなパット姫のフィアンセの座を勝ち取ることができるか?

と、ツッコミどころ満載で無理矢理なもの。


内容

  • ショットの方法は、任天堂の『ゴルフ』同様「テークバック」「ダウンスイング」「インパクト」でAボタンを3回押す方式。
    • 3回目のインパクトを「ショットエリア」の外で決定してしまうと、ミスショットになる。
      ショットエリアは左寄りで決定するとスライスに、右寄りだとフックの回転が掛かる。
    • テークバックからダウンスイングに移るポイントをSマークの地点で行うと、スーパーショットが打てる。
    • ホリトラックの場合、インジケータをAボタンで作動させてトラックボールを回すだけでパットができる(カーソルの動きは無視)。回す速さでパワーをコントロールし、スライスやフックを回す方向で決める。
      • これの場合、ミスショットがない利点がある。
  • 基本的なルールはゴルフのそれに準じている。
    • パー9や10等の超ロングホールがあり、規定打数よりも4打少なくホールアウトすると「フェニックス」となる。
      実際のゴルフではパーより4打少ないのは「コンドル*2」というのでこれは独自の呼称である。
  • ペナルティも普通のゴルフに準じている。
    • 水に落とすと「ウォーターハザード」で、水辺の近くから1ペナルティが付加されてプレー再開。
    • 障害物の上で止まった場合は「OB」、トラップなどでボールそのものが消失した場合「ロストボール」となり1ペナルティが付加され、当該ショットを打つ前の地点からやり直し(実質2打の損)。
  • 普通のゴルフと違って、動く障害物やトンネルのようなものやジャンプ台といったものが配置されている。
    • そのためタイミングを計って打たないと、これらにぶつけてしまうので普通のゴルフより難度がかなり高い。
    • また本来のカップだけでなく、ホールの途中にサブカップがあり、これに入れると水が引いてウォーターハザードがバンカーになったり、ボールが次の一打だけ変化したりする(非情に重いボウリングボールや変則的に弾んで転がるラグビーボールなど)。
      • サブカップに入ると入ったことを告知するため、旗竿が消える。
  • コースは全部で5通りで、「CASTLE PUTT GC」を除いてそれぞれ9ホール。
    • CAKES GC(お菓子のコース)
    • TOYS GC(おもちゃのコース)
    • SPORTS GC(スポーツ用品のコース)
    • ANIMALS GC(動物のコース)
    • CASTLE GC(パット城内のコースでラストステージ・8ホール)
  • 上記のコースでパープレー以上を達成するとトロフィーが表示される。
  • ゲームモードはストロークとチャレンジがある。
    • ストロークはプレイヤー同士1~4人フリープレーのモードで、開始前にハンディーキャップを設定できる。
      • 終了時には次回プレー時の適正ハンデが表示される。
    • チャレンジは上記ストーリーのように、王女との結婚を目指して超難関にチャレンジするモード。
      • クリアの条件は4コース全9ホールをイーブンパー以内で回ること(終了時イーブン以内ならばいいので途中でボギーを叩いてもバーディーを取り返せればいいし、もちろんアンダーパーで終わってもいい)。
        それを達成すると、トロフィーが貰えコース選択の画面で表示される。
        4コースすべてでトロフィーを獲得するとラストステージにあたる「CASTLE PUTT GC」に挑戦できるようになり、このコースでトロフィーを獲得するとエンディング。

問題点

  • ギミックがいろいろあって華やかだが、扱いが難しく不自然な挙動も多い。
    • ブロックくずしのようにボールがあたると壊れる壁やジャンプ台など、これらを駆使しないとパーを取るどころかそれに準ずるスコアもままならないホールが多い。
    • 一見芝の地面でもまるでツルツルの氷の上でも弾むように勢いが落ちにくいボール。加えて障害物に当たるときれいに大きくはね返されるせいで、打つ前の地点より戻されてしまうことが多々ある。
    • トンネル状の障害物も、横から舐めただけになるような格好で触れただけで、出口側に出てしまう。これは判定をシビアにするとなかなか通り抜けられなくなる可能性もあるので仕方がない面もある。
      • ギミックの特徴は一応説明書に書かれてはいるものの、かなりざっくりした書き方なので説明として不十分。
  • 特殊なギミックが多いので、普通のゴルフの常識が通じない点に関してはある程度仕方ないものの知っていても非常に高難度なホールばかり。
    • 相当慣れないと簡単にウォーターハザードに飲まれたり、予備知識がないと脱出するだけでも5.6打以上かかるようなハマリに近いポイントもあるなど理不尽な点も多々ある。
    • また他のゴルフゲームよりも狭いポイントを狙わなければならない局面も多く、動く障害物などもあってそのタイミングまで計って打たなければならない。
      ロングショットを打つ場合、見える範囲外の動くギミックに影響されることもあるため、コースを見た後は自分の脳内でその動きを補完してそれに合わせたタイミングを取ることを強いられる。
      • 上記のストーリーといい、コースを構成するのがお菓子やおもちゃといった特徴からして低年齢層向きなゲームのはずだが、それでこの高難度は不釣り合い。
        しかもそんな高難度のコースをパープレーでホールアウトするという難関を突破してもトロフィー授与がテキスト告知のみというのは寂しいものがある。
  • OB判定がラインではなくマップチップ単位なので、ゴルフにしてはいい加減に見える。
    • 上記の通り障害物の上で止まるとOBとなる基本ルールに準じているが、ホールの外枠としてビッシリ並んだ障害物の中でも地面の色をしている場所だったり、境界線の上ではOBにならなかったりと紛らわしい。
      • 元々の難易度が非常に高いので一部がOB免除なら緩和になると思えるかもしれないが、グリーン付近などではそのせいで強く打たなければならず、本来の2打分を上回る損につながるケースの方が多い。
  • 文字がすべてひらがなのせいで読みにくい。しかも、それだけ限られた文字数ながらア行の拗音がない。
    • 上記の通り「フェニックス」という独特のスコア呼称を用いているのにゲームでの表記は「ふえにっくす」。
      こんなことなら「コンドル(こんどる)」のままで良かったのでは?
    • 更にメッセージの表示も遅い。
  • 使い勝手の悪いスーパーショット。
    • ショット時のメーターにSマークが表示されており、ここにピッタリ合うとスーパーショットが出せるが、マークから少しでもズレれば無効とシビアな上にカーソル自体が速いので狙いにくい。しかもそのヒットのポイントもSマークの真ん中(矢印の先端)でなくやや左と少々わかりにくい部分で、しかもこれに関しては説明書にも書かれていない。
      • アドレスし直せばマークの位置がランダムで変わるので、想定のポイントに置いて有効利用するのはかなり手間がかかるが、間違って打ちかねないポイントを避けるのはさほど手間がかからないのが救い。
      • 弱く打ちたいときに手前にマークが出て、うっかりビッグドライブを打ってしまうことがあるのが困りものなのは元より、左端の方に出れば強いショットを打ちたい時に偶然合えばもうけものと思えるが、所詮は計算外のビッグドライブなので速いカーソルを常にビタで止められる腕がなければ有効に使えるものではない。

賛否両論点

  • ホリトラックは回すスピードでショットのパワー、回転方向をリアルに決めることができるので実際のパターと感覚的イメージが近く、対応していること自体は着眼点が良いがいいことずくめではない。
    • ミスショットがなくなる点は良い。
    • まっすぐの強いショットを打つには役に立つ。
    • 反面、いちいちAボタンでインジケーターを作動させなければならない使い方は少々煩わしく感じるところではある。
    • 独特な操作なので慣れるのにもかなり時間がかかる上に、小さいショットがしにくいという難点もある。また方向自体はカーソルで決めるので直感的でない一面もある。
    • カーソル位置がフックやスライスのインジケータ外に止まってもミスショットにならないがそれだけの強い回転がかかるわけではないので、そこまで曲げられない上に有効範囲が把握しづらい。

評価点

  • コースの構成はトータル44ホールと豊富で中身もバラエティに富んでいる。
    • 一応これは当時のゴルフゲームではトップクラスに間違いない。
    • またそれぞれのコースが色とりどりで、それぞれ個性がある。
  • プレイヤー同士の対戦モードや練習モードにあたるストロークゲームではハンデキャップを最大99まで設定できる。
  • 各コースのキャディの顔グラがそれぞれ違ったもの(どういう訳かANIMALSとCASTLEは同じになっている)になっていてそれぞれ可愛げがある。
  • 一応、ゴルフゲームとして独自性はある。
    • 特性の理解が難しいものの普通のゴルフゲームでは考えられないギミックが多彩という独自性で、マニア向きな変わった面白さはある。
    • そのギミックからボールの動きも突飛なものが多いのでピタゴラスイッチのようなネタ的な面白さは見いだせる。

総評

パットゴルフという普通のゴルフとは違うテーマにしている点は斬新で、多彩なギミックや華やかなコースの数々はバラエティに富んでいる。
しかし、ギミックの特性が掴みにくい上に、低年齢を対象としたモチーフでありながら、大人にしても過剰な高難度は明らかにそれに見合っておらず、また、その高難度をクリアしても演出面の乏しさもあって物足りなさも感じられる。
ファンタジーな世界観を活かした「なんでもアリなゴルフ」は、オリジナリティという観点では他に例を見ない独自性はあっても、ゲームバランスを含めた完成度という点では低いと言わざるを得ない。


余談

  • CASTLE GCがコース選択画面などではCASTELと誤表記されている。
  • パターゴルフゲームとしては1991年2月15日にA-WAVEから『ミニパット』というゲームが発売されている。
最終更新:2022年09月17日 20:33

*1 具体的な例として1987年にケナーパーカーから発売された「ぼくらの手作り9ホール。男、勝負だナーフゴルフ」で自作したようなイメージ。

*2 ただし普通のゴルフコースではパー5が最大でコンドルとなると1打なので「ホールインワン」呼称が優先されるので、基本的に使われない呼称。