ゴルフ
【ごるふ】
ジャンル
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スポーツ(ゴルフ)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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メディア
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192KbitROMカートリッジ
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 ハル研究所
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発売日
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【FC】1984年5月1日 【AC】1984年 【FCD】1986年2月21日
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価格
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【FC】3,800円→4,500円 【FCD】2,500円
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プレイ人数
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1~2人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象) ※バーチャルコンソール版より付加
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配信
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バーチャルコンソール 【WiiU】2013年11月13日/500円(税5%込)※FC版の移植 アーケードアーカイブス 【Switch】2019年10月25日/838円(税10%込)※AC版の移植
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判定
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なし
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ポイント
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後々まで踏襲された完成形のショットシステム BGMは存在しない ラフがなくスルーザグリーン=フェアウェイ
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概要
ファミコン初期の1984年5月に発売された任天堂の無印タイトル系ゲームの1つで、そのままゴルフのゲームで、現実のゴルフをゲーム化したもの。
1986年2月のディスクシステム発売に伴い『麻雀』『テニス』といった他の無印タイトルや『スーパーマリオブラザーズ』とともにローンチとして移植再発売された。
内容
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ゴルフのゲーム性をそのままゲームに落とし込んだもの。
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ストロークプレー(1P・2P)とマッチプレー(2Pのみ)が可能。
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特にトーナメントモードのようなものはなく、普通に1ラウンドしたら終了で、ベストスコアはハイスコアとして記録される(初期値は100にあたる「+28」)。
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ボタンを3回押してショットする方式を取り入れており、これが後々までゴルフゲームのショットに於ける王道な形となる。
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1回目でバックスイングに入り、2回目トップの位置を決めダウンスイングに入り、3回目でインパクトの位置を決定する。
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インパクトのベストポイントはカーソルの初期位置(白く光っている部分)で、ここで止めると基本的に真っすぐのショット(風向きには左右される)が打てる。これより左にズレて止めると右に曲がるスライスボールになり、右にズレて止めると左に曲がるフックボールになる。
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3回目を押さないと空振りとして1ストローク消費。パターはインパクト(3回目)不要。
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ドライバーの場合、トップ位置を最大にしてド真ん中でインパクトするベストショットを打てば280mのスーパーショットが打てる。
+
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クラブの種類とその飛距離
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クラブ
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フェアウェイ
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バンカー
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1W
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240
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120
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3W
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220
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110
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4W
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210
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105
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1I
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195
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97.5
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3I
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175
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87.5
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4I
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165
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82.5
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5I
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155
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77.5
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6I
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145
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72.5
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7I
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130
|
65
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8I
|
115
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57.5
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9I
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100
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50
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PW
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80
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40
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SW
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60
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30
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PT
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30
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15
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まだショートウッドやユーティリティーが一般的ではなかった時代なのでロングアイアンが多めの設定になっている。
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上記表のとおり、バンカーでは飛距離が半減する。
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また本作ではフェアウェイとラフの区別がないので、実質スルーザグリーンがすべてフェアウェイである。
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画面構成はプレイヤー目線のグラフィックウィンドウと、コース全体像の分割構成。
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グリーンでは芝目が「>」で表現されている
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「>」の向いている方に流され、またそのマークの密集度合いやマーク自身の大小で、曲がり度合いが変わってくる。
評価点
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早くも確立された王道なショット方法。
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ボタンを3回押す方式で、実際のゴルフと同じようにスイングを起し、ダウンスイング(実質パワーの調整)、インパクト(フック、スライスの決定)という流れを直感的な形で取り込めている。
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折しも当時『週刊少年マガジン』で連載され、同年10月にはアニメも放送された人気ゴルフ漫画『あした天気になあれ(作:ちばてつや)』の「チャー・シュー・メーン」そのままの感覚である。
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タイミングが合わなければまっすぐ飛ばせないというのも「まっすぐ打つことが一番難しい」という一般的なゴルファーが感じやすい部分であり、再現の1つになっている。
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グリーン上の細かいアンジュレーションはわかりやすく表現されている。
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実際のゴルフでのパッティングは、こういった小さな芝目にシビアなほど影響を受ける繊細なものなのであり、またそれがゴルフの醍醐味でもあるので、簡略化されたシステムでもちゃんとその重要性を分かっている作り。
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ホールのレイアウトの豊かなバリエーション。
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海の中にあるいくつかの離れ小島を伝ってグリーンを目指すホール、大きな川が中央を流れるホール、ティーショットがグリーンに届かなくてもちょっと越えてしまってもウォーターハザードになってしまうホールなど、コンピュータゲームならではのホールレイアウトがたくさん見られる。
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ボールを打った際には、打ち上げたボールが上昇後に落下していく過程、ショットの勢いなどが特徴的な効果音で表現され、聴覚的な面でもゴルフをしている感覚を的確に演出している。
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まだ他にゴルフゲームが無かったこの時代から早くも風の概念が取り入れられている。
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各ホールは8方向0~15メートルの風がランダムに吹く。芝目も毎回ランダムであるため、同じホールでも毎回異なるショットを考えて打つ必要があり、繰り返しプレーするに堪えるようになっている。
問題点
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初期のゴルフゲームということを加味しても少々不自然、またはゴルフ再現の上で足りていないところがある。
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ラフという概念がなくグリーンとハザード以外全てフェアウェイ。つまりスルーザグリーン=フェアウェイである。
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このため「フェアウェイをキープする」というゴルフのプレー目的の1つを失っている。
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バンカーでの飛距離の減衰が半分程度というのも不自然。
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林はあれども、すべてOBで木はそのOBラインを示すだけの役割でしかなく、事実上のOB杭同然。
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中にはOBの対象になっていながら、木がなかったりと少々まぎらわしく見える部分もある。
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また、これによって林の中からのショットというシチュエーションがなくなっている。
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一部のゴルフ用語がおかしい。
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例えばパー3のホールでホールインワンを決めても、パーより2打少なく入れたことから左上のウィンドウには「EAGLE」と表示される。
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グラフィックウィンドウで、表示がおかしいことがある。
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例えば、5番ホールの大きな池のように見た目こそ池だが、実際にはOBになるものがある。そのため、普通のOBと同じ扱いとなり池が見えない。
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OBのラインが曖昧。
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はっきりと線が引かれているわけではないので、あからさまなものはまだしも、微妙なラインでOBだったりそうでなかったりするのは厄介。
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パワーゲージの帰りの速度が行きの速度の2倍なので、タイミングが合わせづらい。
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ゲームボーイ版では同じ速度になるように改善されている。
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ゲーム内でクラブの飛距離やカップまでの残り距離が表示されない。
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向きが16方向しか設定できず、細かい方向調整ができない。
総評
無印なタイトルが示す通りいかにもゲーム草創期のゴルフゲームらしく、実在するゴルフをコンピュータゲームとして落とし込んだベーシックスタイルなもの。
草創期らしくシステムも簡略化されている一面もあり、ラフの概念がなかったり実際のゴルフとの乖離が大きく見られる部分が多く、また距離の把握がしきれないなど不便さもある。
しかし簡略化したシステムに関してはゴルフのリアル再現ができていない難点にもなるが、裏を返せば低年齢層でも多少は馴染みやすい作りになっているとも言えるので取り方次第とも言えるだろう。
ショットのシステムは後々のゲームまで引き継がれている。この点に関してはゴルフゲームの地盤を造り上げたと言え、大いに称賛できる。
その後の展開
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任天堂Vs.シリーズの1作としてアーケード版が「Vs.ゴルフ Stroke & Match 」のタイトルでリリースされた。
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効果音がFC版から刷新されると共にBGMが追加されており、操作キャラが女性に差し替えられたレディース版も別に稼働した。
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任天堂作品のゴルフゲームとしては、これ以降しばらく発売されなかったが1987年2月に『ゴルフJAPANコース』をディスクソフトとして発売。
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本作のマイナーチェンジでシステムなど大部分は受け継がれているが、キャラがマリオに差し替えられており、後に続く『マリオゴルフ』シリーズの始祖的存在となった。
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ディスクファクスイベントによる全国トーナメントを開催し、その話題性も高いものとなった。
余談
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1976年4月1日から1984年12月31日にかけて日本のゴルフ界では当時の通商産業省(現・経済産業省)による単位統一の方針を受けて一時的にメートル表記に切り替えていた。ヤード表記に再切替えされる直前に発売された本作もそれに準じている。
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その後1985年からヤード表記とメートル表記の併記が認められるようになり、1986年9月に公式大会におけるヤード表記が復活、1987年から完全にヤード表記に戻されることになった。以上の経緯からヤード表記に再切替えされた後の『ゴルフJAPANコース』以降ではヤード表記が用いられている。
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説明書に書かれたゴルフルールによると、OBについては「ショットしたボールがOB(アウト オブ バウンズ)となった時には、2打付加されて、ボールはショットした地点に戻ります。」、ウォーターハザードについては「海・川・池等にボールが入った時には、ウォーターハザードと見なし、一打付加されます。その場合にボールは、特定の地点に移動されます。」と書かれている。
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正しくはOBによるペナルティは2打付加ではなく1打付加である。実際ゲーム中でも1打しか付加されない。
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特に当時の大人である昭和30年代生まれ以前の世代の一般人ゴルファーは「OB=2ペナルティ」の誤解をしている者が多い。そんな誤解をしている要因はOBは1打付加した上で前に打った場所から(全く進んでいない状態で)再度打ち直すため実質2打のソンしているため、その「実質2打のソン」を「2ペナルティ」とごっちゃにして考えているため、このような誤解をしているのだ。
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実際のゴルフルールでのペナルティに「2打付加」なるものもあるが、根本的にそのようなケースは「動いているボールに触れる」「プレーの遅延行為」「ハザード内でクラブをソールする」といった悪質な行為を罰する場合に適用されるので、このようなゲームではまず使われることはない。
ゲームで用いられている「1打付加」の主な趣旨としては「技術的な不足によるトラブルからの救済」である。それがOBやウォーターハザードからの打ち直し、ゲームで取り入れられていないものとしては「マークミス」や「アンプレヤブル」等がある。
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本作で操作するゴルファーはマリオにそっくりな見た目だがマリオとは別人との事。
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ただしファミコン時代に発売された書籍の中にはこのゴルファーをマリオだと紹介しているものもある。設定が変更されたのか、書籍が任天堂に確認せずに書いたものなのかは不明。
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このキャラクターはおっさんという名前でWiiソフト『キャプテン★レインボー』にも登場している。
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本作の「ボタンを3回押す方式」は、当時HAL研究所でプログラマを務めていた岩田 聡氏(後の任天堂社長)によるものである。
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その後、ゴルフはもちろんのこと、他ジャンルのいろいろなゲームに用いられる。
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1989年11月28日にゲームボーイでも無印タイトルの『ゴルフ』が任天堂から発売されているが、単にゲームボーイ草創期の基本形ゲームとしての無印タイトルということで特に本作との関連はない。
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Nintendo Switchには本作のデータが内蔵されており、ある条件下で起動できるというイースターエッグが隠されていた。
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その条件とは「7月11日、メニュー画面で、Joy-Conを両手で持って前に突き出すポーズを取る」こと。
7月11日とは本作のプログラマを務めていた岩田 聡氏の命日であり、このポーズは生前に氏が任天堂のインターネット配信番組『Nintendo Direct』で行っていた「直接!」ポーズのことである。
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ただし、これを行うには一度もインターネットに接続したことがない本体で、なおかつファームウェアがV4.0.0未満でないとならない。
当然ながら現在流通している本体はそれ以上のバージョンのファームウェアが初期搭載されているので、「2017年までに出荷された新品のSwitch」を入手しない限りは再現は不可能である。
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2024年7月4日に『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』で本作が配信された。
最終更新:2024年07月05日 21:10