DS西村京太郎サスペンス2 新探偵シリーズ 金沢・函館・極寒の峡谷 復讐の影
【でぃーえすにしむらきょうたろうさすぺんすつー あらたたんていしりーず かなざわ はこだて ごっかんのきょうこく ふくしゅうのかげ】
ジャンル
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サスペンス
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対応機種
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ニンテンドーDS
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発売元
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テクモ
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開発元
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トーセ
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発売日
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2008年11月13日
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定価
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3,990円(税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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ゲーム性はほとんどない 読み物としては楽しめる 相変わらずおまけが本編
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西村京太郎シリーズ
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概要
推理作家である西村京太郎氏が原案・監修を務める推理アドベンチャーゲームである『DS西村京太郎サスペンス』シリーズの2作目。
テクモ(現:コーエーテクモゲームス)から発売されたDSサスペンスシリーズとしては『DS山村美紗サスペンス 舞妓小菊・記者キャサリン・葬儀屋石原明子 古都に舞う花三輪 京都殺人事件ファイル』『DS西村京太郎サスペンス 新探偵シリーズ 京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠』に次ぐ3作目である。
特徴
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本作には長編と短編(West Village2)の二つのゲームモードが収録されている。
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全3章からなる長編は主に「調査パート」「推理パート」に分かれており、「調査パート」で場所を移動しつつ関係者に話を聞いたり、現場を調べたりして集めた証拠を頼りに「推理パート」を進めていくという構成になっている。
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短編「West Village2」はショートミステリー形式の推理問題集で、問題を一定数解くごとにランクが上がっていく。詳しくは評価点の項にて。
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本作の原案・監修を務めた西村京太郎氏をデフォルメしたキャラクターである「京太郎くん」がストーリーテラーとして登場する。
主な登場人物
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取扱説明書より引用
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新 一新(あらた いっしん)
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主人公。35歳。父の死をきっかけに、海外へ放浪の旅に出るが、父の仕事である探偵業を継ぐ意志を固めて帰国した。
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京 明日香(きょう あすか)
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一新の父:賢新をサポートしていた優秀な助手。28歳。賢新の死後、事務所を退職し、京都の老舗旅館に勤めていたが、前作で一新の説得により事務所に復帰する。
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柳沢 照彦(やなぎさわ てるひこ)
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アメリカのロサンゼルスに事務所を開く優秀な探偵。35歳。明日香とは何か関係が…?
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県 誠之助(あがた せいのすけ)
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一新の父:賢新の学生時代からの親友であり、幼い頃から一新を見守ってきた。一新にとっては伯父さんのような存在である。
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京太郎くん(きょうたろうくん)
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ストーリーテラー。?歳。ゲームの途中から再開しても、彼があらすじを説明してくれるため、安心してゲームの続きを楽しむことが出来る。
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評価点
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ストーリーの出来
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「復讐」をテーマにした全3章のストーリーは後述の通り粗はあるものの西村京太郎氏が監修しているだけあってどれも一定の質を保っている。
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間違った選択肢を選んだ時の反応の面白さ
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例えば被害者は誰だったかを聞かれた際、明らかに違う人物の選択肢を選ぶと明日香がノリツッコミをしてくれたりする。
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BGMの質
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場面ごとに流れるBGMはサスペンスのシリアスな雰囲気に合っており、概ね良好。
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短編「West Village 2」
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本作にはおまけとして前作から倍増した100問もの推理問題集が収録されている。
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ボリュームは十分すぎるほどであり、問題も矛盾指摘や時刻表トリックなどの謎解きやパズル、『THE 鑑識官』のような科学捜査などバリエーションも豊富。本編より夢中になってしまう人も少なくないだろう。
賛否両論点
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難易度の低さ
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いくら選択肢を間違えようがペナルティはなく、最悪総当たりでクリア出来てしまう。
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時折挿入されるミニゲームも、最後のものがやや考えさせられるくらいでほとんどが易しい。もっともそこを難しくされても本末転倒ではあるが。
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節々で登場する"京太郎くん"
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長編ではストーリーテラーである「京太郎くん」の語りパートが話の区切りごとに挿入される。
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京太郎くんはそれなりに出来の良い3Dモデルでコミカルな動きや語りをしてくれるのだが、鬱陶しいと感じてしまう可能性もある。
問題点
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ゲーム性の乏しさ
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基本的に出来ることが限られており、重要な証拠となる物を調べるまでその場所から移動できなかったりする。
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しなければならない行動は大体主人公が示唆するので、どうしても決められたことをやらされているように感じられてしまう。
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一応初心者ガイドが存在していてヒントのON/OFFを設定出来るが、OFFにしてもやらされている感は多少マシになる程度。
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トリックは単純で簡単なものばかりの上、肝心の推理パートも突き付ける証拠の選択肢が5つほどに絞られるため、考える余地はあまりない。
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主人公が推理を披露するまでのプロセスの雑さ
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問題なのは第2章で、推理パートのほぼ全ての導入が「アリバイがあるなど、その場では犯人ではあり得ない誰かを刑事が非常に弱い根拠で犯人だと決めつけて連行(しようと)し、主人公が反論する」というもの。ゲームを成り立たせるため仕方ない部分もあるが、アリバイの有無くらい調べたらどうかと思わざるを得ない。
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その刑事は作中でポンコツ扱いされてはいるものの、それ以前の問題である。
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演出のくどさ
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推理(ミニゲーム含む)パートでは正しい推理をするごとに主人公の目元のカットインが入り、終盤の真犯人を追い詰める場面では画面全体に主人公の姿のカットインが入る。
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そのためテンポが悪く、少し考えれば分かるようなことであろうが挿入されるので有効活用されているとも言い難い。
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また、その推理を聞いた登場人物の反応も大袈裟気味。
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第3章のシナリオについて
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他2章と比べるとリアリティのなさ・展開の強引さが非常に目立つ。加えて全体的に説明不足であり、消化不良であるのも否めない。
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またご都合主義的な展開の弊害として主人公(一新)が迂闊すぎるミスを連発。それに対するフォローは一切なく、モヤモヤさせられること必至。
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そもそも考えにくい上に姑息な手段を取る侵入者や、思わせぶりにしておきながら明かされず終わる謎の存在など、一貫してゲームとして都合の良い流れに物語を合わせているかのような不自然さが漂う。
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詳しい内容(ネタバレ注意)
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本シナリオでは舞台となる主人公らが立ち往生している屋敷で2年前に殺された(と思われる)曳枝龍二の妻・曳枝ひろみが復讐のために屋敷に侵入し、仇をとるために真犯人が誰か様子を窺いながらナイフを片手に徘徊し始める。
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そのひろみの姿を見かけては一新が追いかけるのだが、複数回にわたり取り逃がす。立ち絵からして中年女性であろうひろみがそんなに足が速いとは思えないのだが…。余程屋敷が入り組んでいるのだろうか?
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一度数人がかりで取り押さえ部屋に閉じ込めるものの、また逃げられてしまい野放しに。
ちゃんと見張りつけとけよ
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物語の終盤では潜んでいるひろみに気付かず廊下で照彦と犯人の推理を始め、案の定盗み聞きされて犯人だと推理した人物(真犯人ではない)をひろみの襲撃のターゲットにされる。
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すぐにその人物の元へ駆けつけて安全だという地下室へ身を隠させる……と思いきや、一緒に地下室の鍵を探しているうちにひろみにあっさり殺されてしまう。
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あくまで探偵とはいえ、自らが発端かつ時間の猶予もありながらこの有様では危機感が無さすぎるとしか言いようがない。因みに襲われた際に守るような素振りも、絶命したと分かった後に罪悪感を感じている描写も一切ない。
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ひろみの出番はそれっきりで真実を知ることも反省することもなく、最低限スッキリさせてもくれない。
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そもそも真犯人が分かっていない状態で屋敷を徘徊し、その場で得た真偽不明の情報で短絡的に人を襲う、というのはあまりにも計画性が無さすぎる。彼女がかなりの長時間野放しにされているというリアリティの無さも相俟って、彼女の存在自体がこのシナリオの粗さ・不自然さを際立たせている。
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また、2章後半から匂わせていた明日香の過去・文子のことになると激昂する飯田橋の過去といった謎の全容について語られることはなく、前述したようにひろみに関しても一通り動かした後は放置であり、思わせぶりな描写をするわりには舞台装置としてしか機能していない。
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真犯人に関してもずっと強気な態度だったのにもかかわらず自らの犯行がバレると自殺を図り、それを止められてからはあっさり丸くなるなど最後の最後で小物感が漂う。所謂ラスボスにしては貫禄が無く、達成感はあまり得られない。
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しかし形だけは綺麗に終わるので、終わりよければすべてよしというスタンスの人は満足出来る……かもしれない。反対に言えば話を無理矢理畳んで終わらせているので、不満に思う人はとことん不満に思うだろうが。
総評
所々粗はあるものの、安めの価格帯の推理アドベンチャーとしては手堅い出来であり、気軽に遊べる一作。
本編のゲーム性はほとんどなく難易度が低いため、能動的に本格的な推理をして楽しむというよりも受動的にシナリオを楽しむべき作品と言える。
短編の推理問題集である「West Village 2」のボリューム・問題の完成度はなかなかのものなので、こちら目当てで手に取って見るのも良いだろう。
最終更新:2025年04月12日 00:18