SEVEN SAMURAI 20XX

【せぶんさむらい とぅえんてぃだぶるえっくす】

ジャンル シネマティックアクション
対応機種 プレイステーション2
発売元 サミー
開発元 ディンプス
ポリゴンマジック
発売日 2004年1月8日
定価 6,800円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:15歳以上対象
判定 なし
ポイント 名作邦画をSFアクション化
二刀流でぶった切り
×七人の侍 ○一騎当千の侍



誰かのために、死ねますか…
何のために、戦ったのですか…



概要

世界のクロサワこと、黒澤明監督の不朽の名作『七人の侍』をモチーフとしたアクションゲーム。
オープニング&エンディングテーマには世界のサカモトこと坂本龍一、
キャラクターコンセプトには『エイリアン』や『フィフス・エレメント』などでも知られるメビウス・ジャン・ジローと言ったビッグネームを、
そしてシンボルキャラクターとしてSAYAKA(神田沙也加)を起用した事でも話題になった。
サミーの社長曰く、黒澤プロダクションの黒澤久雄社長(黒澤監督の長男)との長年の友人関係から生まれた企画だという。

『七人の侍』を原案とするが世界観は日本ではなく、荒廃した未来を舞台に繰り広げられるSFアクションとなっている。


システム

  • 無双シリーズと『鬼武者シリーズ』を合わせたとも評される剣戟アクション。
    • 主人公「ナト」を操作して、迫り来る敵の大群を斬り伏せる。ステージ制のアクションゲームだが敵の出現場所は決まっており、戦闘時のみ抜刀し、非戦闘時は町で人に会話するなどの探索要素も含む。
    • 通常は主人公の背後の視点だが、一部を除くボス戦では格闘ゲームのような横視点になり、ボスとタイマンで激闘を繰り広げる。
      • 更には周囲もサイバーなフェンスに囲まれ、ますます格闘ゲーム感のあるフィールドに。
  • 戦闘ではまずナトの愛刀「上総介兼重」の一刀流で戦うが、「連殺タイマー」というゲージが溜まると二刀目「毘沙門天」を抜刀し、二刀流モードに入る。
    • 二刀流モードでは途切れる事の無い素早い連撃で敵を切り刻む事が出来る。但し、二刀流中は連殺タイマーが減少し、無くなるとまた一刀流に戻る。
    • 防御はボタンを押すと僅かな時間「ガードポイント」が減り、その間は自動で敵の攻撃を防いでくれる。ガードポイントは時間と共に回復し、無くなると防御が出来なくなる。当然、防御出来ない攻撃もある。
      • タイミング良く防御すると連殺タイマーを即座に全回復する「ジャストガード」となる。二刀流モード中にジャストガードが決まれば二刀流の延長もできる。
    • ステップで敵の攻撃を回避可能で、こちらも敵の攻撃とタイミングが合うと瞬間移動の如きスピードで背後に回り込む「ジャストステップ」となり、連殺タイマーも一定量回復する。
    • 敵の方向にスティックを倒して攻撃すると「ジャストアタック」が発動することがあり、一気に距離を詰めて且つ防御を破る事ができる。こちらも連殺タイマーが一定量回復。但し、発動条件が曖昧で運も絡むので狙って出すのは難しい。
  • ステージクリア時にはリザルト画面が表示され、評価が下されると共にナトのパラメーターが成長する。
    • 項目はかなり細かく、クリアタイムや被弾量は勿論、ヒット数、命中率、総ダメージなどが攻撃毎に評価される。更には何故か消費カロリーナトとプレイヤーの二人分表示される。
    • パラメーターの成長はプレイヤーの任意で行う事は出来ず、この評価によって弱点(プレイヤーの不得意な要素)をカバーする形で上昇する。
  • ストーリーは「ヒューマノイド」という機械生命体から村を守るべく、七人のハンターが「サムライ」として立ち上がるというもの。序章を含めて全11の章で構成される。
    • 主人公の「ナト」を始め、武士道を重んじる老剣士「勘兵衛」、ナトの師匠の娘で幼馴染の「ジョディ」、軽い性格だが熱い物を秘めた「タツマ」、愛する女を守れなかった哀しき用心棒「ロージ」、気のいい飲んだくれ親父だが只者ではない雰囲気を漂わせる「エイト」、記憶喪失の女戦士「キュー」の個性的な面々が本作における「七人の侍」となる。
    • 退廃的なSF世界観ではあるが、「雇われた7人が村を守るべく戦う」という骨子は原作通りである。そこに謎の美少女「ヒナタ」、世界にエネルギーを供給する光の尖塔「市(シティ)」、一癖も二癖もある敵勢力と言った独自の要素を加えたストーリーを展開する。
  • クリア後には回復アイテムの出ない「サバイバルモード」が解禁。隠しキャラを含め全てのボスを倒すと、全ボスとの連戦となる「コロシアムモード」が解禁される。

評価点

  • 爽快なアクション
    • 二刀流モードでは簡単操作で多数の敵を斬り伏せる爽快感が味わえる。正に『無双』の一騎当千感と『鬼武者』のバッサリ感を足して2で割ったような感覚である。
    • ジャストアタックではスロー演出に加え、時にはカメラアングルも三人称視点に変わる事で格好いい殺陣が演出できる。
    • 防御はボタンを押せば自動的にしてくれるのでとっつきやすい。更にジャストガードやジャストステップを狙い、二刀流に繋げると言ったテクニックもあるので、タイミングを合わせる意味もしっかりある。
  • 原作映画を彷彿させる要素
    • 変装してならず者から赤子を救出する、怯えて家に閉じこもる村人達を外に出す為に鐘を鳴らす、などの原作を彷彿させるシーンも盛り込まれており、原作視聴者をニヤリとさせる。ラストシーンも原作に倣っている。
  • 個性豊かなキャラクター
    • 巨匠メビウス・ジャン・ジローが1年以上掛けて100体も作ったというだけあり、キャラは敵味方問わずユニークで魅力的。様々なタイプが登場するのでごった煮感が出ているが、世界観に合っている。
    • 原作の菊千代に相当すると思われる主人公ナト*1を始め、ハンター達はいずれも原作の侍がモチーフになっており、容姿や設定が似ても似つかなくても作中の役割を見比べれば何となく誰がイメージ元なのか分かる。
      • 唯一名前が原作準拠の勘兵衛、七郎次に相当するロージ、久蔵に相当するキューなど、名前が判りやすい者もいる。
      • タツマは名前では分からないが、旗を作る点やその最期からして林田平八に相当することが分かる。エイトも判りづらいが、モチーフは片山五郎兵衛であろう。五と八が錯綜しているようだ。
      • ディックというキャラはハンター(サムライ)を探す点や許嫁の悲劇は原作の利吉を彷彿させたりと、侍以外も原作モチーフのキャラはいるが、その中に何故かオカマが居たりとキャラ付けは独特。
    • 原作要素のみならず、造形、キャラクター性ともに個性豊かでそれぞれのキャラを立たせている。主人公のナトも陽気な皮肉屋ながら要所で弱者を見捨てられなかったり仲間思いな熱い性格を見せ、「サムライ」として成長していく様も描かれる。
    • 対する敵もライバル格のゼクスを始め、とにかく個性的な面子が揃っている。ストーリーボスのみならず、任意バトルのサブボスもやたらと濃い。
  • 素晴らしいオープニングムービー
    • ゲームを起動して始まるオープニングはクオリティが高い。怪しく物々しい雰囲気で世界観の片鱗を見せつつも徐々に盛り上がり、最後はナトのスタイリッシュな戦いを描くという魅せる構成であり、坂本サウンドも相まって、4分近い長さながら見入ってしまうムービーとなっている。
      • 楽曲については教授自身が「『七人の侍』をやり直すぐらいの意気込み」「(日本の和楽器を使用した事が)自分にとっても画期的で、よくできてると思う」と語っており、特にエンディングテーマは「ここ数年でピカイチの出来」と自負していたほど。
    • 各章の冒頭やエンディングのムービーの出来も良く、ゲーム中のグラフィックも平均以上で作中の世界をしっかり表現できている。
  • おまけ要素
    • 仲間や倒した敵の武器は一覧から閲覧できるのだが、二周目以降はただ見るだけではなくこれらの武器を実際に装備することができる。
    • 真面目な武器ばかりではなくネタ武器や、同社の『GUILTY GEARシリーズ』シリーズからのゲスト武器もある。これらは条件を満たすと入手でき、二刀流で振り回すことができる。右手、左手それぞれに装備できるので、片方は真面目、片方は不真面目と言ったアンバランスな出で立ちも可能。
      • いかにも強そうな武器で無双して気持ちいいのは勿論、メガホンスリッパハエたたきと言ったおおよそ武器と呼べないもので大群を蹴散らす様はシュールで笑えること間違いなし。翌年の戦国アクションの先駆けとも言える。

問題点

  • 説明不足・電波・超展開・投げっぱなしの四重苦ストーリー
    • 中盤で村に辿り着くまでは理解しやすく、熱血あり、ギャグあり、涙ありで盛り上がり所も多いのだが、以降はとにかく説明不足で理解を妨げる上にプレイヤー置いてきぼりの超展開ばかりが続く。
    • せっかくの個性的な敵も戦闘後は即退場したり、急に出てきて掘り下げもないまま死亡したりなど、キャラが活かされていない場合が多い。普通なら印象が強いはずのキャラが、印象を植え付ける前に退場するという何とも勿体無い事に。
      • そもそも勢力図がよく分からず、誰がどの勢力に属してどういう立場で襲ってきているのかも本編だけでは殆ど分からない。
      • 倒した敵はプロフィールを参照でき、一人一人にちゃんと設定が存在するのが分かるのだが、本編にはほぼ生かされていない。
    • 中でも、ヒロインのヒナタに関しては非常に淡白。OPムービーからただならぬ雰囲気を漂わせ、物語の鍵を握るキーパーソンのように思わせておき、実際に重大な秘密を持つキャラなのだが彼女にまつわる問題は後半~終盤に信じられないほどあっさり片付いてしまう。
      • そのため、中盤以降は本筋にろくに関わることもなく終わってしまう。一応、エンディングまで登場するのだが、設定からは考えられないほどの軽い扱いであり、「ヒロイン」と呼んで良いかすらも微妙な所である。原作の志乃にあたるキャラと思われるので、それに則ったのかもしれないが…。
      • 当人もほぼ喋らずキャラが掴み辛い。終盤から少し喋るので失声症という訳ではないのだが何故喋らなかったのかは謎であり、大人しく同行していた理由も最後まで不明*2
      • それに関連して、いかにも世界観の中心として重要そうに語られる「市」すらもまるで本筋に関わって来ず、実際に行く機会も無い。キャラクターと共に、せっかくの設定が活かされず全体的に宝の持ち腐れになっている。
    • そもそも主人公であるナトのバックボーンも説明書の紹介だけで本編ではろくに語られない。
      • 伝説の剣豪「ムサシ」の弟子だったが、修行を終える前に旅立って気ままに世界を回っている。それをムサシの娘であるジョディが連れ戻そうとしている、という背景があるのだが本編ではほぼノータッチ且つ生かされる事も無い。
      • そのジョディも中盤から別行動を取り、しかもある勢力と接触して暗躍するのだが、その行動原理が明かされず何故そこまでしなければならなかったのかが理解に苦しむ。一応、当初はハンターに数えられなかった事への不満や敵との戦力差に絶望する描写はあるが、それにしても以後の行動は突拍子もない。
        + ネタバレ
      • ヒナタはヒューマノイドに狙われているが、実は重要なのは彼女自身ではなく身につけていた勾玉の方である。「市」の機能維持には勾玉だけが不可欠であり、ヒナタの役割に関しても代役はいくらでもいるので勾玉が無ければヒナタ自身は一般人と変わりない。
      • 何故か早くにそれを知ったジョディが勾玉を預かって単独行動を取っていたという事だが、ヒューマノイドの方はそれに気付かず終盤までヒナタを狙って村を襲撃する。原作クライマックスにあたる村の防衛戦の後、やっとそれに気付いたヒューマノイドがジョディを誘拐し、ナトが助けに行くというのが最終章のあらすじである。
      • 行動自体も無茶だが、実際に犠牲者を出す大戦闘が起きているのだからあまり功を奏していたとも言い難い*3。また、(設定のためでもあるが)上述したヒナタがヒロインらしからぬ軽い扱いのまま終わる原因且つ、ジョディ自身エンディングの悲劇の一因にもなってしまっている。
      • エンディングではナトは勾玉をヒナタに返すのだが、そもそもこれが争いの種であり、替えの利かないものだと語られたばかりである。エピローグではヒナタは普通の少女として村で暮らしていることと「市」が再起動したことが描かれるので「市」側に返したのだろうが、いずれにせよ描写不足は否めない。
    • 原作クライマックスの「菊千代と野武士の決戦」「女子供を人質に取る頭目」「久蔵の死」と言った展開は「ヒューマノイドの親玉に攫われたジョディを救うべく、ナトとキューが最終決戦の地へと向かう」という形でかなり大胆にアレンジされている。しかし肝心の盛り上がりには今一つ欠ける上に説明不足の超展開も更に加速する。ラスボスに至るまで電波が続き、謎もろくに明かされないまま終わる。
      • 最終章ではこの世界の謎に迫る(と思われる)様々な情報が出てくるのだが、これらに関しては何一つ回収されず、悲しいほどの投げっ放しになっている。
      • そしてラスボスも演出だけなら派手だが大した説明も無いポッと出の悪役*4であり、クリア後にプロフィールを見るまで何者かすらも分からない。そのプロフィールにも聞いたことのない単語が書き連ねられており、その正体も目的もやはりよく分からない。ヒューマノイドの親玉のようなので設定上はラスボスらしい立場なのだが、いかんせん作中の描写が薄過ぎる。
    • エンディングも決してハッピーエンドではない物悲しいもの。
+ エンディングの重大なネタバレ

ジョディを救出して村に戻ったナトをヒナタが出迎える。しかし唯一倒していなかったヒューマノイドが奇襲し、ヒナタを庇ったジョディは切り裂かれて崖から落ちてしまう。ナトはジョディの腕を掴むも、無防備になった背後からヒューマイノドに爪を突き立てられて致命傷を負う。ナトの咄嗟の反撃でヒューマノイドは倒したものの、ナトも既に限界だった。ジョディは手を離すように訴えるが、しかしナトは最期まで離す事はなく、全てが終わった後はただ崖の下を泣きながら見つめるヒナタと、毘沙門天に貫かれたヒューマノイドの骸だけが残されていた。時は流れ、勘兵衛とロージは農作業に勤しむ村人達を眺めながら「我らの負け戦ですか」「村の連中こそが真の勝者だ」と語り、丘の上に突き立てられたボロボロの毘沙門天を見上げた。

  • 原作の結末は、菊千代が鉄砲に撃たれながら最後の力を振り絞って野武士の頭目を倒すというものであり、ラストシーンの勘兵衛達のやり取りもおおよそこの流れと同じ。
    • 一応、原作を踏襲しての結末ではあるが本作の場合はラスボスを倒して一旦大団円のように見せかけて落とす形になる上、最後に中ボスが唐突に襲撃して主人公達の命を奪ってしまうという強引な展開なので、ただ後味が悪くなっているだけ。プレイヤーの方がキャッチコピー通り「何のために、戦ったのですか…」と呟きたくなるような結末になっている。
    • 久蔵にあたるキューがラスボス前に死亡する点も考慮すると、ナトが命と引き換えにラスボスを倒す展開にした方がまだ原作に適っているとも思えるが…*5
    • 原作では勘兵衛、七郎次、勝四郎の三人が生き残るのだが、本作はナトもジョディも死んだことで勘兵衛とロージしか生き残らない。つまり最終的なサムライの生存者数は原作より少ない
  • まとめると、『七人の侍』に壮大な世界観を付加したものの、原作に沿ったストーリーの流れとは食い合わせが悪く、設定倒れになってただ足を引っ張り合ってしまった印象が強い。
    • 尚、本作の世界観は当初は黒澤社長に酷評されていたが、開発が進むうちに「七人の侍の中には普遍的なテーマがあって、それはどんな時代設定でも同じなんだな」と再評価されるようになったという。それが最終的にこのような形になったのは残念でならない。
  • 一部の章が苦難
    • 探索要素があるとは上述したが、多くのステージは一本道で迷う事は無い。しかし第三章は例外である。
      • 広大な街を探索するのだが、これが冗談抜きで広大。尋常では無いほどの広さに加え、多彩なエリアが複雑に入り乱れ、尚且つどこに向かえと指示もされないのでまず迷う。クリアまで2時間以上も掛かったというプレイヤーも少なくない。
      • マップの作り込みは細かくバリエーションにも富んでおり、隠しボスも複数存在するので探索のし甲斐はあるのだが、それにしても詰め込み過ぎである。しかも以降のステージでは前述の通り一本道が大半で、このような探索要素が激減するので非常にバランスが悪い。特に、続く第四章と第五章はあっと言う間に終わってしまうのもアンバランス。
      • 隠しボスも7人中6人が第三章に集中しているというバランスの悪さ。尚更、第三章で探索要素はほとんど消化してしまう事に*6
    • 第九章は原作のクライマックスに相当する章で、村を襲撃する敵の大群と戦う訳だが、その数が理不尽なまでに多く、本作の鬼門となっている。ここまで快調に進めてきたプレイヤーでもゲームオーバーを経験するほど難易度が跳ね上がる。むしろここを突破できれば残る最終章はさほど苦労しない。
      • 特に転がってくる敵はものすごい勢いで一気に迫り、ゴリゴリと容赦が無くライフを削っていく。第九章の連戦ではこれがゾロゾロと出てくるので油断するとすぐにやられてしまう。
      • 更にはコンティニューポイントも少なく、苦労したのにかなり戻されることも。
    • セーブは章クリア時しか出来ないので、第三章と第九章は特にきつい。一応、ゲームオーバー時に中断すれば中断データが残るものの、その為にわざわざ負けなければならない。
  • 単調なステージ
    • 基本やる事は敵の大軍を切り伏せて進むだけなので、敵の物量が増えていく点も相俟って、前半は爽快なアクションが楽しめても後半にもなると飽きやすい。
    • そして敵の物量増加に伴って処理落ちも発生し、時にはジャストアタックが発動していないのにスローになる事も。
    • 探索要素も上述の通り第三章にばかり詰め込まれているので、全体の面白さには貢献できていない。
  • アクション面の問題
    • システムで前述したが、ジャストアタックは発動条件が曖昧なので狙って出せるものではない。乱戦になりがちな点もあり、タイミングを見計らうテクニックはほぼ通用せず、「敵を斬りまくっていたら何か発動した」というようなシステムであり、プレイヤーの腕前が活かし辛いのは残念な所。
    • 無双のようにレーダーは表示されないので、押し寄せる敵がどの方向から来るのか認識し辛い。特に第九章は視界も悪く、上述した理不尽さの一因にもなっている。
    • 操作キャラが一人しかいない、武器は刀のみ、飛び道具無し、ジャンプ不可などアクションの幅は狭め。タメ攻撃やスティックを使ったコマンド入力で技を繰り出したりはできるが、基本的に刀を振るい続けることになるので前述の単調さに繋がってしまう。
  • イベントシーンはフルボイスだが何故か音声は英語
    • 未来世界が舞台とはいえ、原作がかの『七人の侍』。世界観にも日本的要素は少なくなく、そもそもジャパニメーション的な雰囲気も強い作風にも拘らず、国内外問わず音声は英語オンリーである。当然、日本のプレイヤーからは「合っていない」と不評。まさか、メビウス・ジャン・ジローの起用に合わせた訳でもあるまいが…。
    • PS時代の国産ゲームはローカライズの手間とコストを省くためなのか、或いは雰囲気が出ると思ったのか、(海外が舞台などの)理由が無くても英語音声になっている作品が散見されたが、『七人の侍』をモチーフとした本作ではそれに倣わずにいて欲しかった所である。そもそも本作発売の2004年頃にはその風潮もだいぶ廃れていたのだが……。
  • 七人の侍である必要性の薄さ
    • 個性的なサムライ達が登場するのにプレイアブルキャラは主人公であるナトのみ。しかも他のメンバーは使用どころか、戦う描写すら殆ど無く、「七人の侍」なのにナトが一人で戦っているようにしか見えない。
      • 大抵はナト一人で行動し、仲間と同行するシーンがあっても結局は引き離されて単独行動になる。共闘シーンすらもバトル、イベント共に一切無し。
    • そもそも誰が「七人」なのかが本編だけではいまいち分からない。タイトル画面で放置すると始まるOPデモは七人にそれぞれフォーカスしたものなのでこれを見れば分かるが、ストーリー上で判りにくいのは問題だろう。説明書の登場人物紹介にも一部のキャラしか描かれていない*7
      • そして原作と違い、七人目の仲間は村に着いた後に登場する上、一人は中盤から別行動を取り、原作通り戦死者も出るので七人が揃う事は無く、タイトルの「七人の侍」感が根本的に薄い。
    • 基本的に七人は原作の侍達をモチーフにしているが、その中でジョディは該当する侍がおらず、無理矢理感が否めない。
      • 原作の侍で本作のキャラに当てはまっていないのは岡本勝四郎ぐらいだが、そちらとジョディが通じる要素は皆無。寧ろ、冒頭から登場する村の少年の方が当てはまっている*8。もしかして本作の本当の勝四郎は彼なのではなかろうか。
    • そしてラストステージにはナトとキューの二人だけが向かい、その時点の生存メンバーは見送るのみ。原作最終盤の展開をモチーフにしたのだろうが、結果として「七人の侍」感を更に薄めることに。
      • そのキューすらも、敵が現れる度にナトと別空間に転移させられるので明確な活躍シーンは皆無に等しい。本当に戦っていたのだろうか?
      • 一応、仲間になってからはナトと最も同行するキャラで、出番の減ったヒナタや別行動中のジョディに代わるヒロイン的役割となる。しかし原作の久蔵が最後の力を振り絞って味方の勝利に貢献したのに対し、キューは呆気なくラスボスに負け、その進化の媒介にされるという最期なので結局活躍の場は乏しい。
    • 中盤、タツマが原作の平八同様に「戦で高く翻げるもの」として「た」の字と六つの○と一つの△を書いた旗を作るシーンがある。これ自体は原作再現で評価点なのだが、原作と違って旗に書かれたものの意味が語られないので、何故そんなデザインにしたのかが謎になってしまっている。
      • 原作では「た」は百姓を意味し、△は本当は侍ではない菊千代、○は他の六人の侍を表していた。しかし本作ではそもそもこの時点でハンター(サムライ)が七人揃っていない上に、一人は別行動中。そして△に置かれるべき菊千代にあたるナトは歴としたハンターでしかも最も活躍している。
    • ラストシーンは原作では命を落とした侍達の墓標として四本の刀と石が積まれているのだが、本作で突き立てられるのはナトの毘沙門天ただ一本。ますます他のサムライの立場が無い。
    • OPムービーも出来は良いのだが、焦点が当たるのはナト、ヒナタ、ゼクス、エージェント・Wの4人で、やはり他の6人のサムライは登場せず。
  • ロードもやや多め且つ長め

総評

名作を爽快なSFアクションへとリ・イマジネーションし、ビッグネームも起用した事で開発陣の気合は伝わってくるのだが、
偉大な原作、壮大な世界観、個性的なキャラクターと言った素材が上手く調理できず電波と超展開になってしまったストーリーに、
最初は楽しくとも徐々に粗が見えてくる作りや、ゲームとしての癖の強さと言った無視できないマイナス要素が多く、
アクションの面白さは相応に評価される一方、クソゲー呼ばわりするプレイヤーも少なくない。
光る部分は相応にあるし極端に出来が悪い訳でもないのだが、
惜しみない起用と宣伝とは裏腹に、発売から数ヶ月後にはワンコインで投げ売りされていた悲運の作品である。


余談

  • 同年には同じく『七人の侍』を原作とするアニメ『SAMURAI 7』が放送されているが、関連性は無い。
    • しかし、SF世界観に再構成した点や一部要素など、似通った点は無くもない。
+ オープニングムービー

+ タグ編集
  • タグ:
  • ACT
  • PS2
  • 2004年
  • サミー
  • ディンプス

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最終更新:2024年01月10日 20:04

*1 菊千代の「千代」が「ナト」に見えなくもない?

*2 終盤の喋るシーンの台詞からして、自身の立場についてはしっかり理解している事が判る。しかし使命を果たそうとする訳でもなく黙って同行し、特にナトに対しては慕っている様子が描かれる。かと言って使命に嫌気が差していたというような描写も無い。

*3 作中でも「市」のエージェントから「まさに無謀、愚の骨頂」と言われている。

*4 最終章以前では、キューが仲間になるシーンで唐突に登場し、よく分からないまま去っていくという出番のみだった。

*5 ラスボスは「神をも凌駕する」などとご大層な設定があるのだが、このシーンの前にナト一人で普通に倒している。ここで奇襲するのは前章で逃走したボスであり、ラスボスの配下に過ぎない。

*6 残る1体は第七章のダンジョンで特殊な行動を取らないと出現しないボスであり、探索パートでいくら探しても見つかる事は無い。

*7 ちなみに海外版のパッケージ裏には七人が描かれている。

*8 実戦経験は無い、仲間に(勘兵衛ではなくナトにだが)憧れる、最後まで生き残る、原作の志乃に相当するヒナタといい雰囲気になる、など。