ボクシング
【ぼくしんぐ】
ジャンル
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スポーツ(ボクシング)
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対応機種
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ゲームボーイ
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発売元
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トンキンハウス
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開発元
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トーセ
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発売日
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1990年5月18日
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プレイ人数
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1~2人
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定価
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3,000円
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判定
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良作
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ポイント
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無印なタイトルがもったいないほどの秀逸なシステム ゲームボーイの特性を活かしたリアル視点の対戦は白熱必至
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概要
1990年にトンキンハウスが発売したゲームボーイソフトのボクシングのゲーム。
ファミコンではこのような現実の競技名そのまま使った無印なタイトルのスポーツゲームは任天堂が出していたがボクシングは含まれていないためストレートに無印な「ボクシング」は初である。
内容
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6人のボクサーから1人を選んで全6試合(他の5人+隠しボス)を戦う。
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使用する選手を選んだら、必殺パンチの対象を「ストレート」「アッパーカット」「フック」から選択する。
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プレイヤーキャラ、必殺パンチに関しての発動条件は後述。
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プレイヤーキャラ以外の5人を倒すと、一度仮のエンディングを挟んで隠れボス「MISTER TONKIN(ミスター・トンキン)」が登場。
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負けた場合、2度までは再戦できるが同じ相手に3度負けるとゲームオーバーとなる。
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2P時はラウンド数と、1ラウンドあたりの時間を決められる(1P時は3分間12ラウンドで固定)。
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試合前にトータルの能力を「パンチ力」「スピード」「ライフ」に振り分ける。
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パンチ力
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スピード
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移動するスピードの速さで、高いほど速くなる。それだけでなく必殺技の発動しやすさにも影響。
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ライフ
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高いほど打たれ強くなる(パンチを喰らった時のダメージが少なくなる)。
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最大値6で、初期状態はそれぞれ3ずつ(合計で9)振り分けられている。これは試合に勝つと増えていき、試合ごとに振り分け直すこともできる。最後の隠れボス「MISTER TONKIN(ミスター・トンキン)」戦ではフルパワーにできる。
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「体力メーター」と「ダウンメーター」がありそれぞれが「スタミナ」と「ライフ」に相当し個別に存在する。これは両者共に常に画面下部に表示されている。
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「体力」はパンチを繰り出すと消耗。
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「ダウンメーター」がゼロになるとダウンとなる。
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どちらとも時間経過により回復があり「ダウンメーター」自身は、回復との兼ね合いもあり総量が少なめになっている。回復のスピードは「体力」に応じて上下する。
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特に「ダウンメーター」の方は「体力」の残量が多いとそのスピードが早いこともあって、折角連打をガンガン決めても相手に逃げられてしまうと回復されてしまうのでダウンを奪えるチャンスと踏んだら徹底的に追い詰めて逃がさないことがカギ。
試合のシステム
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遠距離視点の2D画面と近距離視点の3D画面に分かれている。
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2D画面はリング全体を映している。A・Bでパンチを打つことも可能だが有効打にはなりにくいので、この画面では主に選手の間合いを操作する。
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選手が接近すると3D画面に移行し、この画面でパンチの応酬が行われる。
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選手同士がぶつかると確率でクリンチが発生する。発生時はA・Bボタンを連打すると体力を回復できる。
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ダウンした場合もこの画面になり、カウントが取られる。この時もA・Bの連打で体力が回復できる。
ダウンを奪った方の選手はニュートラルコーナーへ下がって、相手が立ち上がったらお互いに動くことができる。
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3D画面では自分の体が半透明で画面手前に配置されており、それを通して相手を見るような格好になる。
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Aで右パンチ、Bで左パンチを出し、上を押しながらでアッパー、左右を押しながらで顔面へのフック、下を押しながらでボディブロー、A・Bのみならジャブとなる。
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パンチを出していない間パンチメーター(左右で独立)が自動で0から満タンまで繰り返しループしており、最大になったタイミングでパンチを当てるとクリーンヒットし通常よりダメージが増加する。溜まり具合に関係なくパンチを出すと0に戻る。
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加えてパンチメーターが最大でグローブが光っている状態の時に利き腕且つ必殺対象のパンチを出すと、必殺パンチを打つことができる。
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必殺パンチはガードを貫通し相手を確実に一撃でダウンさせられる。
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防御は上で顔面をガード、下でボディーをガード、斜め上で左右のスウェー、斜め下で左右のダッキングができる。
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左右のみでフットワークの移動ができ、相手との間合いを図ったり逃げたりもできる。
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自分の体力が少なくなったら逃げるのも手。しばらく打ち合っていないと「体力メーター」がある限り「ダウンメーター」がジワジワ回復する。
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左右のフットワークで相手との距離が離れ、相手の姿が画面外に出ると2D画面に移行する。
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ラウンドごとに採点が行われ、既定のラウンドで決着がつかなかった場合はこれで勝敗が決まるのは現実と同じ。
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1ラウンド中に3度のダウンを奪えば「T.K.O.」で勝ちとなる。
選手詳細
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MAI TAISON(マイ タイソン)
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31戦31勝無敗31KO 183cm 98kg 右利き 世界ヘビー級統一チャンピオン
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CPU使用時の特徴
ヒットアンドアウェーで的確にパンチを当ててくる。タフさを活かして連打を喰らってもひるまずパンチを繰り出してくる。
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APORO FOOD(アポロ フード)
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25戦22勝3敗15KO 180cm 90kg 左利き 世界ヘビー級1位
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CPU使用時の特徴
防御が上手く、プレイヤーのパンチを巧みに左右にかわしながら、的確なパンチを繰り出す。
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JOHN WILD(ジョン ワイルド)
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21戦18勝3敗15KO 190cm 90kg 左利き 欧州ヘビー級チャンピオン
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CPU使用時の特徴
ヒットアンドアウェーを主体にチャンスと見れば連打を浴びせに来るが、こちらの連打を受けると逃げる。
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ROCKY STAR(ロッキー スター)
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5戦3勝2敗3KO 183cm 76kg 右利き 北米ライトヘビー級チャンピオン
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CPU使用時の特徴
手数は多いが防御は下手で、こちらの連打が決まると逃げにでる。
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JOE IBUKI(井吹 ジョー)
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38戦37勝1敗33KO 172cm 65kg 右利き 東洋ウエルター級チャンピオン
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CPU使用時の特徴
ヒットアンドアウェーを主体の防御型だが、こちらのパンチを浴びると逃げに回りやすい。
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EIWA AKAI(赤井 A和)
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38戦35勝3敗30KO 170cm 64kg 左利き 日本ウエルター級チャンピオン
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CPU使用時の特徴
手数は少なく防御も下手だが逃げずに常に向かってくる。裏を返せばこちらとしても、そのまま連打でたたみ込みやすい。
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強さはタイソン>フード>ワイルド>スター>井吹>赤井の順番。
評価点
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遠距離視点と近距離視点を上手くミックスしたゲーム性で、お互いのリング内でのポジショニングがわかりやすく、また打ち合いは近距離の3D視点でパンチ(グローブ)が飛んでくるのでかなりの迫力がある
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さらに、これを活かした対戦までできる。これはファミコンのように1つの画面で行わず、それぞれが独自の画面を見ているからこそできるゲームボーイならではの強みを活かしている。
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近距離視点では、相手との間合いを非常にリアルに感じられる。逃げようとする相手との間合いを詰めたり、相手から一旦逃れたりのフットワークをうまく表現できている。
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『パンチアウト!!』の接近しての打ち合い、『ファミリーボクシング』の間合いを取るゲーム性と、どちらも良質なボクシングゲームの強みがしっかり融合できている。
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ステータスの配分機能。
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上記に伴って、ただやみくもにパンチが強ければいいというわけにはいかず、いかにその相手との間合いを詰めるかのスピードも大事になるなど、試合前にそのバランスを考えることも面白い部分である。
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これも過去にあった『ファミリーボクシング』の良い部分をしっかり踏襲できている。
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上記作品同様序盤から9ポイントもあって、早くから広いカスタマイズができるのも魅力。
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ゲームボーイが苦手とするスピードあるアクションが実現できている。
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2D画面でのキャラの動きは勿論のこと、迫力ある大きなのキャラが動く3D画面でもその動きが滑らかでスピーディーに動く。
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パンチのスピードも抜群で、これもしっかりと見切らなければそうそうにかわせないのはボクシングらしい。
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根本的にはパンチを重ねてダウンを奪うゲーム性だが必殺パンチによる一発逆転もあり。
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特に下位選手でプレーする場合、これが重要となる。
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メーターの溜まるタイミングとグローブが光るタイミングを待たなければならず狙って出せないのは不便に感じる一面もあるが、これにより上手く一長一短なバランスが保てて単調な殴り合いな展開を防止し、様々な戦法を生み出すことにつながっている。
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サウンドも非常に秀逸。
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BGMはハイテンポでパンチを連打するテンションを高めてくれやすいので、このようなゲームとは非常に好相性。
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パンチのヒットなどのSEもチープなゲームボーイ音源ながら、そのなかでキレのいい音から鈍い音まで絶妙に表現できている。
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回復要素による「体力」と「ダメージ」の秀逸なバランス。
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特に「ダウンメーター」の回復の速さは「体力」がある時は他のボクシングゲームとは比べものにならないほど速いので、打ち込んだダメージがパーになると考えると否定的になる。
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だが、その結果連打の速攻による集中攻撃が有効になり、かといって焦って連打すると自身の体力を消耗してしまうなどよりリアルに近づいたバランスを実現している。
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また、これによって、必ず一撃でダウンを奪える必殺パンチの価値を高めている。
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システム的にも、回復が速い分メーターの総量そのものは少ないので、ダメージが蓄積したら回復を待つ戦法が有効性を増していることで、ステータスの「スピード」の重要度も増している。
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美人なラウンドガール。
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ラウンド開始時にプレートを持って現れるのだが、まさに芸術レベルなドット絵。
賛否両論点
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本作ではラウンド毎に採点の結果がラウンド毎にわかるが現実では最終結果以外は全く公示されなかった。
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現実の再現と考えると不整合ではあるがゲームとしてはラウンドの優劣がラウンド毎に見えるのは悪くないとも取れる。
問題点
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ダウン中のカウント中にも試合時間が経過し、その間に残り時間がゼロになった場合打ち切られてしまい次のラウンドに移行する。
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そのため3度目のダウン以外ならば残り9秒を切ってダウンする分には絶対にKOは取られない。
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試合時間が経過するのは現実準拠なのでともかく、このゲームができた頃の実際の試合では時間が切れていてもダウンカウントは持続するので、これはありえない仕様である。
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キャラ人数が若干少なめ。
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全部でたった7人(その内プレイヤーキャラは6人)しかいないため、この頃のゲームにしてはそのバリエーションが物足りない感もある。
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BGMの数が少ない。
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せっかくの名曲揃いな本作だが全部で5曲(タイトル画面、メニュー、試合中、勝利、敗北)しかない。最後の隠しボス戦であっても通常の試合と同じ曲なのでやや物足りない。
総評
対戦相手やプレイヤーキャラのバリエーションこそ不足気味ではあるものの遠方視点でポジショニング重視の2D、プレイヤー視点で迫力ある打ち合いが堪能できる3Dとそれぞれの良さをしっかり活かした試合のシステムが構築できている。
体力関連の仕様でも単純に連打連打のゲーム性ではなく、しっかり狙いを定めた打ち方や防御、更には回復を待つための逃げの有効性など細かい所までリアルの追求がなされておりプレイヤーでも直感的に飲み込みやすい形でゲームに落とし込まれている。
また、このようなシステムで対戦を行うには、ファミコンのように画面1つで行うには無理があるので「対戦はお互いに個別の画面を持って行う」ゲームボーイならではの強みまで活かせたものになっている。
選手のシステムを見ても、必殺パンチやそれを打つために溜めを必要としたり、さまざまなファイトスタイルが生み出せるなど、上記の試合システムを含めどれを取っても秀逸でストレートに「ボクシング」という無印なタイトルを付けておくには勿体なく感じられるほど。
その後の展開
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トンキンハウスは1991年6月に同じくスポーツ名をそのままタイトルに使った無印タイトルの『サッカー』を発売している。
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この頃にしては時代遅れに感じられる7人制の簡略化したサッカーではあるがステータスやロジックなどをはじめ、ルール面でもオフサイドまで含めてシステム面では細部まで作り込まれている。またチープなグラフィックがプラスに作用してゲームボーイの苦手なスピードあるゲーム性を実現している。
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その反面、7人制の簡略化したサッカーなので良くも悪くも名前負けするようなタイトルではない。
余談
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ファミコンの『パンチアウト!!』は3倍ほどの体重差があっても同じリングで対戦するというあからさまな「無差別級ボクシング」として有名だが、本作もウエルター級、ライトヘビー級、ヘビー級の選手が入り混じって戦っているので先述の作品ほど極端ではないが事実上の「無差別級ボクシング」に違いない。
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本作のような途中途中で採点状況は後の2006年に現実でWBCが2006年11月から世界タイトルマッチで採用することとなる。
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だが全12Rのうち4R・8R終了時の2回のみなので、本作のシステムとはちょっと違う。
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本作のような視点で打ち合うボクシングゲームとして後にセガがアーケードの筐体ゲームとして導入するボクシングゲーム『タイトルファイト』(1993年3月導入)がアーケードで人気を博した。
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本作はそれに対して2年以上も先んじており、まだまだゲームボーイの勢いがあった時期なのでそれなりに売れていながら、さほど評価されなかったのは、この時期はスーパーファミコン発売こそまだ先の話だが話題性と期待は早くも高く、それ以外にファミコンが1年近く注目を集め続けた一大RPG『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』に始まり後を追って『魍魎戦記MADARA』『ファイナルファンタジーIII』4メガRPGがガンガン発売され主役を完全に奪っていた状況で、まだまだRPGに乏しくハード自身も1年を経過して新ハードとしての勢いも衰えを見せたゲームボーイは少々苦戦気味で更にこのようなスポーツゲームは地味な部類として注目されなかったという時代のあおりを受けてしまった不運な一面がある。またタイトルの地味さが災いした一面もあるだろう。
最終更新:2023年12月24日 16:57