鉄道王
【てつどうおう】
ジャンル
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ボードゲーム
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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デービーソフト
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発売日
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1987年12月12日
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定価
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4,900円
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プレイ人数
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1~4人
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判定
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良作
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ポイント
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桃鉄に先駆けた元祖鉄道ボードゲーム ただのヨーロッパ版&プロトタイプ桃鉄ではない お手軽バランスながら高い戦略性
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概要
1987年12月にデービーソフトから発売されたファミリーコンピュータの鉄道経営ボードゲームでデービーソフトのファミコン最後の作品でもある。
ルーレットを回して目的地を目指して進み、自分の所有する鉄道を広げ資産価値を競い合う。
後にハドソンの看板シリーズとなる『桃太郎電鉄シリーズ』(以下「桃鉄」と表記)のようなゲーム性だが本作ならではの要素も多い。
またその初作品『桃太郎電鉄』は1988年12月発売なので本作はそれに1年ほど先んじている。
内容
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サイコロにあたるルーレットを回してスゴロク方式に進むボードゲーム。
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西ヨーロッパを舞台に、鉄道資産を拡大し「鉄道王」となるのが目的。
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最初にプレイヤー人数(人間・COMP)を決め、終了条件(2通り)を決める。
下記の条件どちらかを達したら精算に移り、ここで資産価値を算出し順位を決める。
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クリア数(5~30)
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目的地に到着した数で誰かが(1人で)これに達したら終了。
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線路数(10~39)
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線路所有本数がプレイヤー全員合算でこの本数に達したら終了。
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なお線路は全部で39本ある。
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上記のクリア数、線路数に達しなくても終了になるパターンは下記2通りがある。
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1.1人目の順番が回ってきた時、左とセレクトを押すことで強制終了。
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2.誰かが破産した場合。
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精算での評価の出し方。
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1.持っている現金額。
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2.持っている線路の数×1000メリ
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3.持っている都市マークの数×100メリ
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4.目的地に到達した数×1000メリ
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1.~4.の合計によって順位が付けられる。
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破産終了した場合、破産したプレイヤーは1.と2.がゼロなのは当り前だが、それまでいくら都市をマーク(後述)していようが目的地をクリアしていようが3.と4.までゼロとして扱われ完全な0点となる。
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まずは目的地を目指しながら線路を買っていくことが王道な手順だが、本作では進行も基本タダではないため、進行ルートと資金の残り度合いを考えなければならない。
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線路は誰も所有者がいない鉄道は「国有」という扱いになる。最初はすべてがこれ。
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「国有」の路線を走ると1駅毎に20メリの通行料を払うことになる。
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誰かが所有している線路を走ると1駅毎に100メリの通行料を払うことになる(後述のイベントカードによりタダになることもある)。
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その通行料はその所有主に入るので、イベントカードで遠くでも買えるなら他の相手が目指すのに通らざるを得ない区画などを買うことがカギとなる。
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もちろん自分の所有している路線ならダダで通ることができる。
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進行時は事故やスト状態になった路線には入ることができない。また自身が滞在している路線が事故やストになった場合、解除されるまで足止めになる。
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ルーレットで出た目分だけ必ず進む必要はなく「ここでとまる」という選択肢があり、途中で止めることもできる。
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意味がないように思えるが上記の通り進行にも金が必要なため、もう1マス先に進むと線路を手放さなければならない時などには敢えて進める範囲内だけ進んで止まる選択もある。
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線路表示の無印は「国有」、所有者がいる場合はそのプレイヤーのマーク、故障は「×」(付加された数字は復帰までのターン数)、ストは「すと」、特例でタダで使える状態は「☕」。
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目的地に到着すると、それまでの通過した駅数×50メリが得られる。
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上記の通り「国有」の路線を通れば期待値プラスだが、他の誰かが所有している路線を通ることはマイナスになる。
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目的地に到着すると、次の目的地をルーレットで決める。これも後述のイベントカードに似て「A~F-1~5」で、それぞれに地名が紐づいている。
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そのため、今着いたばかりの場所が選ばれることもあるが、その場合即回しなおし。
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進行のルーレットを回して進み、地名のないに止まったらイベントカードをルーレットで引くことになる。
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イベントカードは「A~F-0~9」の60通りの組み合わせで、Aボタンを2回押して決定する。
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事故やスト状態で足止めされている場合でも、これは回すことができる。
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因みにCとFは0~9どれでも効果は同じ。Cは「コーヒーブレイク」で自分の路線を次のターンまで他プレイヤーがタダで使える。「F」は競馬イベントの発生(拒否も可能)。
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競馬イベントは4頭の馬(オッズは2倍・3倍・4倍・5倍)に50メリ単位で最大500メリまでベットする。1着のみを当てる単勝方式で1点買い限定。
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他は線路の破損・事故・ストの発生や、金の増減、他プレイヤーとの金や線路のやり取り、などがある。金や線路、果てはその両方をまるごと交換するといったトンデモなものまである。
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進行のルーレットを回す前に、線路を買うことができる(一律300メリ)。
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ただし、この場合はどこでも買えるわけではなく赤い駅(都市名のある駅)を通過すると、そこに自分のマーク(都市マーク)が付くので、その自分のマークに挟まれた区間しか買うことができない。
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また、このマーク自身もラストでの精算時に安いながら価値になる。
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反対に売却して国有に戻すこともできる(一律150メリ)。この場合は自分が所有しているならどこでも売ることができる。
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上記の通行料で資金が足りないときは、同じ方法で強制的に売ることになる。
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事故状態の路線も売却でき、その時は正常に復旧する。
評価点
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シンプルながらもいろいろと波乱万丈な展開で対人戦が白熱しやすい。
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特に大事なのがどこでも線路を買えるイベントで、今自分が走っている路線をタダにしたり、相手を追い落とすため相手の必要路線を有料化したりなどといった戦略性を求められ言うほど単調ではない。
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他人の線路を1本まんまいただいたり、所持金が入れ替わったりとイチかバチかの大逆転が多いなど運要素が強すぎるように思える一面もある。
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トップのプレイヤーなどはせっかく有利に進めていたのに理不尽に感じられるところがある。
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反対に、これによって下位のプレイヤーは競争力がなくなっての脱落が起こりにくい。同時に独走確定状態になって後が消化試合じみたものになることがない。
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ただ黙々と資産を増やすだけでなく、相対的な関係も重要で戦略性もある。
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特に大きいのが本作ならではの特徴である「通行料が発生し走る路線を選ぶ重要性」にある。
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少々面倒臭く思えるかもしれないが通行料そのものはシンプルで理解しやすく、それを織り交ぜてのルート構築が重要になってくるなど戦略性を深めている。
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バックアップ不要な短時間で濃密な内容の対戦ゲーム。
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最初に条件を決めることになるが、途中で任意に終了することもできる。
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条件を路線39(全部)と目的地クリア数30にしても、それほど時間がかからない。
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走ることそのものを尊重するようなゲーム性。
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『桃鉄』のヘリのように本作にもワープイベントなどはあるが、安定して線路を得るためには走らなければならないというのは「鉄道王」のタイトルに恥じない悪くはない要素である。
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また同時に走ることで都市にマークすること自身も最後の評価にもつながっている(永遠ではないが)。
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派手さがない反面、全体的にバランスブレイカーになるようなものも少ない。
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『桃鉄シリーズ』などはシステムが完成した『II』以降はバランスブレイカーを知る者が知らない者を圧倒する展開になりやすいが、本作は何かツボさえ押さえれば圧倒できるようなものがない。
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例えば本作最大の収入は競馬で500メリのベットで5倍をモノにした2000メリ、ノーリスクで安定したものでもイベントカード「A-0」の「宝くじに当たって1000メリ」程度。
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いろいろとローカルルールで楽しむこともできる。
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例えば4人プレイをそれぞれ2人ずつコンビを組んでタッグマッチをしたりなど。
賛否両論点
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ルーレットのスピードは速いとはいえある程度目押しが出来るので、それが勝敗に大きく関係してくる。
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もちろんこれもテクニックなので、それを極めた者同士で白熱することにもなる。
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上級者と初心者でハンデなくやりたいのであれば、スタートとストップを分けたりでランダム性を維持すると言う手法もある。
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道中に数多くの駅がある長い路線でも、わずか3駅しかない短い路線でも均一なのは違う意味でバランスが悪いように見える。
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また、通行頻度でも差がある(例えば南西端のナント周辺などはほとんど通ることはない)ので、全て価格が均一では割が合わないという見方もできる。
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しかし、購入時300メリに対して精算時には均一で1000メリになるため買うことそのものが最終結果でプラスであり、通行頻度の低い路線は副収入は見込めずとも取り合いになりにくいことから資産所持として安定して持っておきやすい利点もある。そういう観点で見るとバランスは取れているように感じられる。
問題点
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進行ルーレットを選んでしまうと本当に後戻りができない。
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そのため、線路を買いたくても次に持ち越しになってしまう。その間に誰かに買われてしまうと本当にパー。
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せめて回す前ぐらいは戻りを許容してもらいたいところ。
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ヨーロッパが舞台なのに地名までオール平仮名というのは読みづらさがある。
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当時はまだ、平仮名と片仮名をフルに使えなかったソフトが珍しくなかったとはいえ、舞台が舞台なだけに容量問題で一方しか使えなかったなら片仮名に統一した方がまだ似合っていただろう。
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キャラ要素という点ではかなり地味で後の『桃鉄』のような花になるようなものがない。
総評
「鉄道ボードゲームと言えば桃鉄」というイメージがすっかり定着しているが、それに先んじているだけでなく本作ならではの要素も多く決して単なるプロトタイプだけにとどまったゲームではない。
特に短時間で手軽に楽しめると言うのも大きなポイントで、長期プレイ特有のダレがなく常に拮抗して白熱した対戦が楽しめることから、膨大な時間使用が前提にある後の桃鉄の王道シリーズとはまた違った魅力がある。
キャラクター要素の地味さもあって残念ながら注目されなかったことが惜しまれるが、桃鉄とは似て非なるモノであり本作独自の魅力も多い。
その後の展開
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本作はデービーソフト最後の作品なので本作以降正式な続編はないがアトラスから1995年12月15日にプレイステーションソフトとして『鉄道王'96 いくぜ億万長者!!』が発売。
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後にデービーソフトの後身であるネットファーム・コミュニケーションズから携帯アプリとして『鉄道王neo』としてリリースされており、これは本作のリメイクにあたる。
余談
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実は1990年頃に続編『鉄道王II』がゲームボーイソフトとして開発が進んでいた。
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新作発売情報では「発売日未定」のまま1991年~1994年までその名前は載せられていたものの結局発売されることはなかった。
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本作がデービーソフト最後の作品となったが、どうやらデービーソフトそのものは本作を最後に撤退したわけではなくゲームボーイにも参入はしていたようだ。
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前述の通り同じような鉄道経営ボードゲームとして1年後の1988年12月にハドソンから『桃太郎電鉄』が発売された。
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本作の正式な続編が出るまでの間に、こちらはシリーズ作品が何作も発売され、こちらの方が一躍有名になる。
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また、こちらは馴染みある日本を舞台としていることやキャラクター要素の強みがあることも、本作より支持された一因と言えるだろう。
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なお桃鉄も後にシリーズが進んでその舞台は海外進出している。
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本作は日本人にはあまり馴染みのないヨーロッパを舞台にしているためか説明書だけでなく路線図も付属している。
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カセットのパッケージのみならず徳間書店の攻略本(昭和63年1月15日初版)にも路線図が付いている。
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この攻略本の冒頭は漫画で始まっており徳間書店の『わんぱっくコミック』では巨匠として名高いみなづき由宇氏によって描かれている。
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本作のカセットは経年で異様に故障しやすいことがファミコンコレクターの間では有名である。
最終更新:2024年07月21日 10:14