本項ではプレイステーション版、セガサターン版を基準として紹介しています。


七つの秘館

【ななつのひかん】

ジャンル アドベンチャー
(メーカー公称:謎ベンチャー)

対応機種 プレイステーション
セガサターン
Windows
Macintosh
メディア CD-ROM3枚組
発売・開発元 光栄
発売日 【SS】1996年4月5日
【PS】1996年8月9日
定価 【SS】【PS】7,800円(税別)
【Win】【Mac】9,800円(税別)
廉価版 【SS】KOEIBestコレクション
1998年4月9日/2,800円(税別)
【PS】KOEItheBest
1998年12月10日/2,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング 【SS】セガ審査:全年齢推奨
判定 バカゲー
ポイント カオスな志茂田ワールド
七つの秘館シリーズ
七つの秘館 / 戦慄の微笑


概要

表題の通り、七つの館を舞台としたアドベンチャー。
原作・シナリオに直木賞作家でタレントの志茂田景樹を招いている。
ジャンル名「謎ベンチャー」を標榜し、館に仕掛けられた謎を解き明かして進む謎解きゲームの性質を持つ。
パッケージ裏の煽り文句によると「今までのアドベンチャーより7倍楽しめる!」*1とのこと。


ストーリー

スペードの女王が笑うとき キングはリングを捨てる
死せる孔明に目を与え 静かに沼に行くべし
時を刻む蠍が、水に帰る
風車回らば 耳に栓をして闇で照らせ
スフィンクスは口を開け 封印の部屋へ歩くであろう

主人公・一平は、叔父であり飛鳥家*2の5代目当主である周太郎に呼び出された。
飛鳥家は明治初期、初代・喜兵衛が事業を興して栄えてきた由緒ある家系である。
70年ほど前、有り余る金に任せて七つの不思議な館「岬の七館」を建てたのだが、それが半年後に取り壊しが決定したという。
しかし先代である4代目・周平は生前、七館に一族の秘密が莫大な財宝と共に隠されていることを話していた。
飛鳥家は初代が事業を興す以前の記録が全く残っておらず、また初代もどこから来たのか誰も知らない。
七館を建てた3代目・銀次郎はその秘密を知り、何らかの理由で七館に封印したのだと言う。
七館には仕掛けが施されており、一から六の館の謎を順番に全て解き、本館の秘密を明かせば財宝も一族の秘密も手に入るらしい。
そして先代はそれを成し遂げたものの、秘密も財宝の在り処も自分の胸に秘めたままこの世を去った。
取り壊される前に一族の秘密と財宝を探し出す。これが一平への依頼だった。
一平は冒険心と好奇心の赴くまま、恋人の玲奈と一緒に岬の七館へと向かった。


登場人物

+ クリックして展開
  • 飛鳥一平(CV : 緑川光)
    • 主人公。叔父の周太郎の頼みを受け、岬の七館の謎に挑戦する。
    • 名前は変更不可だが、苗字はプレイヤーが設定する。入力せずに決定すると「飛鳥」になる。
  • 白川玲奈(CV : 国府田マリ子)
    • 一平の恋人。一平に劣らず好奇心の塊らしく、岬の七館の話を聞いて興味を持ち、強引に同行する。
    • 一平と知り合うまでは互いの家は縁も所縁も無かったはずだが曽祖父が岬の七館に招かれたことがあるらしい。
  • 鈴子(CV : 天野由梨)
    • 一平を導く謎の美少女。チロロという柴犬を連れている。七館の東の村から来たらしいが…。
  • 硫黄まどか(CV : 深見梨加)
    • 本館1階を根城にする三人組の女ボス。財宝を奪うべく一平に謎を解かせようと画策する。
  • 黒谷剛矢(CV : 難波圭一)
    • まどかの手下。サングラスを掛けた怪しい男。ボスであるまどかに不信感を抱き、財宝の横取りを目論む。
  • 赤島幻兵(CV : 岸野幸正)
    • まどかの手下で黒谷の弟分。スキンヘッドの大男。鉄球を使いこなす。
  • 周平(出演 : 志茂田景樹
    • 一平の家の先代当主。賢く冒険好きな人物だったらしく、岬の七館の謎を解いたという。ヒントとなる詩「北斗の影」を残す。

特徴

  • 概要で述べた通り、「岬の七館」と呼ばれる七つの館に秘められた謎を解いていく。
    • 七館は北斗七星を象るように立ち並ぶ一から六の館と本館で構成され、基本的にそれぞれの館には次の館に入るための鍵が隠されている。まず一の館から入り、鍵を見つけて二の館へ。二の館で三の館の鍵を見つけ…という具合で一つ一つ館を攻略していく。
    • 本館1階は誰でも入れるが、肝心の謎は六の館までを攻略しなければ解けない。各館は鍵を使わず無理に入ろうとすれば秘密の仕掛けが作動して命が無く、一の館の鍵もゲーム冒頭で初めて主人公に手渡される。従って、部外者が一族の秘密や財宝を狙ってもまず到達できないとされる。
  • ゲーム画面は『MYST』に近い、一枚絵で表現された主観視点。
    • しかし本作はそちらとは異なり、ポインタで画面をクリックする要素は無い。移動、方向転換は十字キーで行い、行動もコマンドから選ぶ方式となっている。
    • 画面左上には移動・転換が可能な方向、方位、主人公の体力が表示される。オプションで非表示にも変更可能。
    • コマンドは「アイテムを使う」「調べる」「取る」「動かす」「話す」「アイテムを見る」から選ぶ。対象は項目を選んでから選択する。
    • PC版は画面構成や操作方法がやや異なる。
  • 館にはトラップが仕掛けられており、それに引っかかると体力が減少する。
    • 体力は人のマークで表現され、最大値付近は「両手を上げたポーズ」。ダメージを受けるにつれて疲れたポーズになっていく。
    • 回復は特定のオブジェクトやアイテムで行える。しかしどこで何によって回復できるかは初見では分からないし、アイテムも少ないのでなるべくダメージは抑えていきたい。
      • 回復オブジェクトは無限に使用可能なものも多く、よほど見つけられない限りはジリ貧に陥る心配も無いだろう。
  • 終盤を除き、各館の玄関前からは到達済みの館へと瞬時に移動が可能。

評価点

  • 謎解きゲームとしてほどよい難易度
    • 『MYST』などのように突き放した難しさではなく、かと言って簡単に解けるほど甘くもない。頭を捻りながら試行錯誤することになるが、隅々まで探して色々と試していけば大抵はクリアできる。
    • どの謎もヒントがどこかに存在するので、詰まったら他を当たると活路が開ける場合も。謎の奇抜さに反して理不尽さはほとんど無い。
    • 暗号タイプの謎解きやパズルはあまり無いので総当たりで解ける側面もあるが、アイテムやオブジェクトの多さからそれで行くのはかなり大変。しっかり考えてトライする方が楽しく効率的である。
  • 個性的な各館にはそれぞれ趣向を凝らした謎が多数配置されている。
    • 「西洋風」「中国風」「日本風」「ギリシャ風」とバリエーションも豊かで、どの館にも「トランプ」「動物」などの特徴的なテーマが盛り込まれており、飽きさせない。
      • 「時計の館」「音楽の館」と言った、イメージからテーマを想像しやすい館もある。
    • 七館に限らず、地下の洞窟を探索するパートもある。
  • トンデモな内容ではあるがストーリー自体は分かり易く、探索の合間にいい塩梅で添えられている。主に館間で展開するので探索の妨げにもなりにくい。
    • 歴史関連や偉人、神話などの情報もかなり出てくるが、精通していなくともクリアには支障がない範囲に留められている。
    • 流石、有名作家を招いただけあって根底にある設定はしっかり作られており、史実とも上手く絡ませてある。
  • 豪華声優陣
    • 主人公、ヒロインを始め、人気声優やベテランを起用。演技は申し分ない。
    • 先代・周平は原作者が演じているので流石に本職の声優のような演技は期待できないが、本人が直接登場するので絵面を除けば違和感は少ない。

変な点

  • まず導入部からツッコミ所満載
    • 主人公は叔父の頼みを受けて七館に挑戦するのだが、その七館に「怪しい三人組が住み着いていること」「管理人の老人が行方不明になっていること*3」「館には命を奪うほどの仕掛けがあること」が引き受けてから知らされる
      • どう考えても先に警察に通報するべきなのに加え、そんな危険な場所に甥を向かわせようとするのも常軌を逸している。そこまでして一族の秘密と財宝を見つけ出したいのか。
    • それを知らされても尚、全く物怖じせず、しかも恋人を連れて意気揚々と向かう主人公も主人公だし、自分から付いていくと言って聞かないヒロインも大概である。
      • ヒロインはすぐに捕まってしまうのだが、主人公は後述する通り異常なタフさなので、叔父もそれを知っていたから依頼したのかもしれない。
  • 冒頭に初代から四代目までの当主の肖像画が映し出されるのだが、四代目を演じる原作者に加えとんでもないビッグゲストを招いており、インパクトが凄まじい。
    • 四代目・周平=志茂田景樹
    • 三代目・銀次郎=周富徳
    • 二代目・弥太郎=草野仁
    • 初代・喜兵衛=徳光和夫
  • この大御所の方々が次々と映し出されるインパクトは筆舌に尽し難く、恐らく初見では画面ばかり気になって話が入ってこないだろう。
    • この中でも三代目の銀次郎は本作の舞台となる七館を建てた人物とされている。つまり今作の周さんは中華料理ではなく館を作ったということに。
    • ちなみに説明書には「志茂田氏のご友人の皆様には、本作に特別なご好意で出演していただきました」とある。人脈のある原作者を招いたからこそ可能な演出だった訳である。
  • フィジカル、メンタル共に強過ぎる主人公
    • 上述の通り、危険極まりない館に好奇心のまま平然と向かうのは序の口。本編でも肉体・精神両方の異様な強靭さを発揮する。アクションやRPGならいざ知らず、探索型ADVとしては類を見ないほどの超人主人公となっている。
    • 館のトラップに引っ掛かってダメージを受ける事が多々ある訳だが、これが剣で斬られても、飛んできた小刀や矢が刺さってもシャンデリアの下敷きになっても、火炎放射を喰らっても「痛かった」「痛てて」「あ、熱かった…」で済ませる超人ぶり。
      • 一の館の最後には鉄の処女*4がある。これは仕掛けを動かすと脱出装置になるが、そうせずに中に入れば棘に刺さるだけである。しかしこれすらも「痛てて、痛い」で済んでしまう。本当に人間か!?
      • ある館では、「マウンテンゴリラの剥製に抱きしめられて移動するギミック」があるのだが、ナレーションによるとその剥製の力は「普通の人間だったら窒息死する」ほどらしい。やっぱり普通じゃないのか…。
      • 地下洞窟では、周囲が油の池になっている場所で炎を吐かれる罠があり、これを喰らうと当然ながら周囲ごと激しい炎に包まれるのだが、やはりダメージと「し、死ぬかと思った…」という台詞で済む。勇者だって普通なら死にます。
    • 七館には回復オブジェクトが点在するのだが、飲食はもちろんの事、香を炊いたり、音楽を聴いたりなどとちょっとした事でも回復するように、やはり治癒力も高い。
    • ストーリー上でも、明確な殺意のある男達に命を狙われようが、危険な仕掛けをいくら目の当たりにしようが全くめげずに「よーし、この館も解くぞ!」などと意気込むほどの前向きさで、どこぞのせかいいち ふこうな しょうねん並のメンタルの持ち主である。
      • 後述する先代の写真や肖像画についても、全く動じないばかりか、普通に話し掛けて会話を交わす。適応力が高いのか、深く考えていないのか…*5
    • 肉弾戦に強いという説明や描写は無いのだが、敵側は主人公を直接殺して鍵を奪うと提案する手下に対し、ボスが「お前達に出来やしないわ」と言い切り、迂遠な罠で殺そうとする。もしかしたら本当に強いのかもしれない。
      • そのボスと対峙した際には、銃を撃とうとするボスの手にすかさず羽ペンを投げつけて命中させる。退散するボスに対して「恐ろしい女だ」と発言するのだが、一番恐ろしいのは主人公自身である事は言うまでもないだろう。
    • ストーリーを進めると、武田信玄の末裔であることが明らかになり、それに上記の大御所の血を全て引いているとはなればその超人ぶりにも納得でき……る訳ないか。
      • 七館の仕掛けやトラップが「子孫への挑戦状」として造られていると考えると、本当に超人の家系なのかもしれない。
  • 行く先々に現れる志茂田景樹
    • 先代は七館の謎を解いた人物であり、各所にヒントを残した。という設定なのだが、どれも先代本人…即ち原作者自身が水先案内人を務めるという無駄に豪勢(?)な形で残されている。
    • 声だけではなく実写での本人の出演であり、冒頭の詩からしていきなり登場して読み上げてくれる。
    • 各館には先代の写真や肖像画が残されているのだが、もちろん全て実写。元より奇抜なファッションでも有名だった人物ということもあり、服装もポーズもいちいち奇抜なので肖像画一つ取っても存在感と違和感が凄い。
    • そして一番のポイントは、これら先代の写真や肖像画は話しかけるとインターホンのような音と共に動き、喋り出すということ。
      • 一言二言ヒントを話すのみならず、時には主人公をしっかり認識して会話すらしているシーンがある。先代の霊でも乗り移っているのか。
      • 他に話ができる相手が基本的にいないので、「話す」のコマンドは最早この為だけにあると言っていい。しかし「話す」コマンド自体は様々なオブジェクトに可能なので、主人公は人形だの本棚だの油絵だのにも平然と話しかける変人のようになっている*6
    • 時には全く別の形で登場する事もある。「甲冑の中に志茂田景樹*7」「時計の文字盤に志茂田景樹」「ライオン像がモーフィングして志茂田景樹」など、『ガキ使』の「笑ってはいけないシリーズ」ばりに笑わせに来ているとしか思えない神出鬼没ぶりであり、初見ではまず吹かざるを得ない。
  • 館の仕掛けもぶっ飛んだものがいくつも
    • 一の館の奥にある女王の人形のギミックを動かすと、女王の高笑いが館を抜けるまで延々と響き続ける。最初の館からいきなりプレイヤーを困惑させてくれる。ちなみにムービー中もお構いなしに笑い続ける*8
    • 三国志がモチーフのギミックでは、張飛人形の口にワインを注ぐ、関羽人形の髭を引っ張る、諸葛亮の指揮車が火を吹くので止める、などと無駄に意表を突く仕掛けが満載*9
    • ある仕掛けを間違うと、天井が開いてワニに噛まれる。この主人公ならその程度では致命傷にならないのは言うまでもないが。
      • かと思いきや、その館の別の仕掛けを間違うと床下に落とされて即死。2Dアクション同様、直接攻撃よりも奈落の方が確実に主人公を殺せるという事か。
    • 終盤に行く海底洞窟ではボスラッシュが待ち受けている。適切なアイテムを使えば即倒せるが、探索型ADVとしては異例と言っていいだろう。
      • その襲い来る敵も、獰猛な牛、猪、ネズミの群れなどは良いとしても、十二支に肖ってこれらに加えまで現れる。更には敵ではないが骸骨や亡霊もいる。
      • 先に進むと十二支も関係無くなり、怪鳥、白蛇、大ムカデ、サタンドラキュラまでも立ち塞がる異次元無法地帯ぶり。そもそも十二支の前に襲ってくるのはサメである。尤も、どんな化け物が現れようと、適切なアイテムを使えば一発KOなのもまたシュールというか拍子抜けというか…。
      • ちなみに撃退アイテムを持たず敵と遭遇した場合、先制攻撃を喰らって敵はいなくなる。そしてサメに噛まれようが、猪にぶちかまされようが、ドラキュラに噛まれようがサタンに殴られようが案の定「痛てて」で済む超人主人公*10
  • 演出もシュール
    • CG技術があまり発達していなかった頃の作品と考慮しても、上述した内容と相まってシュールな演出が全編を通して展開される。背景自体はシリアスだし、主人公達も別にふざけている訳では無いのだが、どうしても笑いがこみ上げてくるバカゲーとなっているのは否定できない。
    • ゲームオーバーは汎用ムービーが流れるのだが、これが「疾走する救急車」というまたユニークなもの。主人公の葬式などは過去にもあったが、救急車はなかなか無いだろう。
      • その後はゲームオーバーなどの表示が無く、三悪人、叔父、殺された庭師と言ったキャラが勢揃いし、画面上では二大ヒロインがプレイヤーに向かって手を振るというシュールさ。そして案の定、ここにも居る志茂田景樹…。
    • 鏡張りの部屋が二箇所ほどあるのだが、鏡を見ると常にヒロインが前に立っていて主人公はほとんど見えない。主人公の姿を明確に映さないためだろうが、ヒロインの後ろに隠れているようでこれもどこかシュール。従って、ヒロイン同行時にしか鏡張りの部屋には入れない。
    • 終盤に手に入る、武田二十四将の肖像画集に記されているのが、何故か同社の『信長の野望 天翔記』の顔グラフィックの使い回し。しかも高坂昌信や山本勘助に混じって不意打ちのように志茂田…いや、周平の写真も載っている。何故…?
    • クライマックスでは七館が崩壊するのだが、ドリフのセットの如き勢いで崩れていく欠陥住宅ぶり。よく70年も持ったものである。
    • 最終盤には今まで手に入れたキーアイテムを武人像にセットしていくのだが、そのキーアイテムに統一性が無いので悪戯で飾り付けしているようにしか見えない。能面や羊の角の付いた武人像は見た目だけでも最早ネタ。
    • そのシュールさは最後まで貫かれており、スタッフロールまでもがカオスな仕上がりとなっている。
      • まずいきなり、EDテーマ『Love Groove』のイントロに乗せてリズミカルな画像表示が次々と迫り来る。「デン!デン!」という音に合わせてキャラのアップが表示されていく様はそれだけで笑いどころに。
      • スタッフロールでは作中のムービーが歌に合わせて流れていくのだが、主題歌自体がゲーム内容に不釣り合いなほどにアップテンポで明るい曲調になっており、シーンのチョイスも半ばネタに走ったようにミスマッチなものが多いので、ひたすらシュールな画面が続く。無論、上記の原作者出没シーンも忘れていない。
      • そしてサビではでかでかと書かれた歌詞と、「カメラの方を向きながら歌うヒロイン」が映るという1フレーズ分の謎演出が入る。しかもこれが2種類2回ずつ繰り返されるのでシュールさが増している。
      • 肝心のスタッフロールだが、声優と特別出演以外は、作曲担当と主題歌関連、製作総指揮の名前が出るだけで、グラフィッカーやプログラマーなどの居て然るべき他のスタッフは全然映らないという謎仕様。名前の反対側のスペースに映るのは主題歌の歌詞である。
      • スタッフロールが終わると、最後はKOEIロゴが表示される。通常ならこの後はタイトル画面に戻るか操作を受け付けなくなるかだが、本作の場合はスタッフロールがリピートされる。最後の最後まで斜め上を貫き続けるのであった。呆気に取られるであろうプレイヤーの心理を読んだのか。

問題点

  • アイテム管理が煩雑
    • どの館もかなりの数のアイテムが手に入る。しかも使い所はその館の中とは限らず、ずっと先で使うアイテムも多いので自然と大量のアイテムを持ち歩く羽目になり、管理が大変である。
    • 一度手に入れたアイテムは任意では捨てられない。館を突破すると自動的に不要になったアイテムを処分してくれるが、必要になるようで結局使わないダミーアイテムや、使用後も残り続けるアイテムもあるので所持欄は思うように減らない。
    • 特に二の館のラストでは20個近いアイテムを取らされる。ダミーもかなりある上、回復アイテムを除けば使い所はいずれも終盤なのでここで一気に所持数が増えてしまう。
      • かと言って全部取らずに進むと途中で止められる。必須アイテムが足りない場合ばかりか、必要最低限だけ取っても止められるので結局ダミーも持ち歩く羽目に。また、止められるのが結構進んだ三の館脱出時なので、取りに戻るのも面倒である。せめて二の館で止めて欲しかった。
    • 回復アイテムは決まった種類があるのではなく、使ってみて初めて回復アイテムだと分かる。「乾パン」「缶詰」など分かりやすいものだが、複数は手に入らずアイテム自体これらを含めて3種類程度なので使い所を見極めるのは難しい。
  • システム面の問題
    • ムービーはスキップ不可。ストーリー部分はもちろん、ギミックとして再生されるムービーも飛ばせないので、うっかり作動させて何度も見る羽目になる事もしばしば。特に一の館の鏡から怨霊が現れるムービーはちょっと行動するだけで再生されるので「またかよ!」と言いたくなること必至。
    • ナレーターが朗読してくれる文章も多いが、これもムービー同様にスキップ不可。どの文章も長いので初見はともかく2回目は面倒。中にはアイテムやオブジェクトを調べる度に朗読されるパターンも。
    • 逆に任意でのメッセージ送りやキャンセルができない部分も少なくない。特に前述の朗読は終われば勝手に引っ込んでしまうので、自分のペースで読みたい時にも不便である。
      • 朗読の無いテキストも勝手に送られる事が多く、オプションで「遅い」にしてもあまり変わらない。時にはメモを取る必要もあるのに、勝手に送られるのでは不便極まりない。それぐらいならテキストぐらい最初から手動にして欲しいものだが。
    • それでいて、バグなのか表示が一瞬で引っ込んでしまう事がしばしばある。特に朗読の文章がこの状態になりやすく、重要な文章や謎解きのヒントがこの状態になったらたまったものではない。
    • 探索画面は一枚絵で表示されるのだが、アイテムを取る、仕掛けを動かすなどしても変化が無いケースが多い。取ったはずのアイテムが画面上は残っていたりなど日常茶飯事。
    • ゲームオーバーになると操作を受け付けなくなり、タイトルにも戻らないのでリセットするしかなくなる。FC時代のゲームでもそうそう無かった仕様である。
      • 当然、コンティニューも不可。数は多くはないが即死トラップも存在するのでセーブを怠るといざという時に泣きを見る。
    • ディスク交換時もリセットを強要される。ディスク変更の指示が出た際は一旦セーブしてからディスクを入れ替え、リセットして電源を入れ直さなければならない。
  • ストーリー面の問題
    • 一族の秘密や財宝については解き明かされるが、ストーリーそのものはかなり呆気なく終わってしまう。
    • 敵のボスは主人公の一族との因縁があることが終盤に明かされるが、それは一言二言の台詞で語られるだけで特に掘り下げられることもない。挙句、最後は仲間割れであっさり自滅する。
      • 敵側の一人が主人公を「呪われた一族」呼ばわりしたり意味深に「先祖の恨み」などと言うシーンがあるのだが、この敵もやはり掘り下げられず最後は例に漏れずあっさり退場し、結局三悪人の存在は物語自体に大した影響は与えない。
      • 敵の内輪揉めのシーンでは、ボスは銃があるとは言え武器を持った手下二人に対して(しかも至近距離で)余裕で勝利する。プレイヤーには乱闘のような音が聞こえるのだが…。
        しかもその後、倒れていた手下二人は何事も無かったように起き上がって逃げていき、ボスも「あいつらは後で始末する」と気にも留めないという、CG技術の問題なのか色々とヘンなシーンになっている。
      • 最後はボスは手下のタックルを受け、その手下共々崖から転落するのが、どう見ても手下が自分の身を犠牲に主人公達を助けたようにしか見えない。見せ場のようになっていてある意味では美味しい最期とも言えるが。
      • 敵が全て退場した後は簡素な仕掛けを解くだけで、これまたあっさりとゲームも終わってしまう。
    • 敵に襲われた際は「柴犬が敵に噛み付いて撃退する」が2回も連続で続き、最後でもそれで解決というパターン化した芸の無い展開になっている。その柴犬も最後は敵共々海に沈んだ…と思わせてエンディングで生存が判明するというご都合主義的な超犬ぶり。
      • 柴犬の登場しない敵襲シーンもあるが、敵は橋を破壊して主人公を湖に落とした後に野犬に追われて勝手に退散する。どちらにせよ犬に弱いのか…*11
    • 最後は七館が崩壊するとは上述したが、何故崩壊したのかがいまいち分からない。本館の仕掛けを作動させたからとも考えられるが、崩壊が始まる直前に動かした仕掛けは単にヒロインを監禁している部屋への入り口を開くものであり、崩壊とは結びつきにくい。そもそも崩壊させる意図が不明であり、仮に「謎を解けば七館が崩壊する」のだとしたら、先代が謎を解いた時はどうなったというのだろうか。財宝をいくらか使って建て直したと考察するプレイヤーもいたとか。
      • また、敵の三人組は他の館の謎が解けないから、自由に出入り可能な本館一階に住み着いていたとされるが、主人公が来る前に二階のPCでホームページの運営をしていたり隠し部屋にヒロインを閉じ込めていたりとかなり自由に動き回っている。
    • 序盤から主人公を導いていた「鈴子」は本館の前で地雷を踏み、爆風に消えていく。演出のチープさは別としても、この際はボイスも無く「あんなところに地雷が仕掛けてあったなんて。鈴子さんは僕の身代わりになってくれたんだ」「一平、鈴子の死にショックを覚える」というやる気のないテキストが表示されるだけであり、全然悲壮感が無いばかりか失笑もののシーンになってしまっている。
      • 通常、本作のナレーションはノベルゲーム調の文章で状況や雰囲気を解説してくれるのだが、このシーンは本当に淡白過ぎて呆気にとられてしまうほど。
      • これらとは別に、キャラが喋っている傍で地の文が入ることがあるが、どれも希薄で必要性が怪しかったりと、ストーリーの表現に貢献できているとは言い難く、寧ろ話している最中に急に表示されるので気が散る。
    • エンディングもやや投げやり。
      + ネタバレ
    • 最終目的である財宝に到達するのだが、発見直後に潮が満ちてきたので感慨に浸る間すらほとんど無く即座に脱出し、「あのままにしておこう。全てを知れば過去のことだし、忘れればいい。僕たちには新しい道を築く目標がある」というよく分からない結論に達してそのまま帰還する。宝探しの末に財宝を諦める結末はよくあるが、苦労して辿り着いた割には特に意外性も無く描写もあっさり過ぎて拍子抜けと言わざるを得ない。
      • 最終エリアに入る頃には、上述の通り敵は全員退場済み。一族の秘密や「鈴子」の正体の解明と言った重大なエピソードは財宝発見前に全部終わってしまう。結果、財宝の発見は消化試合のようなイベントに。
      • 財宝自体、作中では何度もイメージ映像として大金塊が表示されていたが、実際は「黄金の鳳凰」という特殊な形での登場となる。しかしその造形の意味は特に語られず、登場後すぐに海に沈むのでポッと出の印象が否めない。
      • 作中では先代が「私は財↑宝↓*12には興味がない」と語るが、そのスタンスがそのまま現れたような展開とも言える。主人公自身も財宝より冒険そのものを求めるタイプなのでほぼ気に留めない。しかしそれを目指してゲームを進めてきたプレイヤーからしたら、もう少し描写があったりストーリーに絡めて欲しいところである。
  • 中盤以降の息切れ感
    • 上述の通り、最後までユニーク、シュール、カオスな作品なのだが、館そのものの仕掛けで言うと後半は前半ほどのぶっ飛びは見られなくなる。
    • 三の館までは本気で殺しに掛かってくるトラップ、思わず吹き出すギミックであっと言わせてくれる一方、四の館以降はかなり大人しく、ヘンな仕掛けはあっても謎解き自体は普通のものが多い。三の館までの勢いを以降も期待すると拍子抜けする。丁度、三の館をクリアするとDISC2に移行するので、ぶっ飛んだ館はDISC1に集中しているという形に。
      • ダメージトラップも三の館までは複数用意されていたのが、四、五の館は一つずつしかない。六の館、本館に至っては館内のダメージトラップ自体はゼロ。
      • 特に最後の本館は突入前と脱出時こそ色々ぶっ飛んでいるが、肝心の内部についてはここまで辿り着いたプレイヤーの意表を突くようなものは無く、いつにない平凡な謎解きとなる。館自体も、本館という設定故か他館のような特徴的なテーマの無い*13、至って普通の洋館である。
      • ぶっ飛んだ要素自体はあっても、ボスラッシュのある海底洞窟など館の謎解きとは別に配置されたものとなる。ゲーム全体で見れば混沌ぶりが最後まで保たれているのが救いではあるが。

総評

怪しい館を探索して謎を解く、というありふれたゲーム性に奇才・志茂田景樹のセンスによって唯一無二の味付けが為された珍作。
天然、悪質な遊び心、意外な生真面目が同居したともされる作風は、世界観やストーリーのみならずゲーム全体に行き渡っている。
故に「謎解き好きなら誰にでも勧められる」などとはとても言えないが、ぶっ飛んだノリを楽しめる人、
一風も二風も変わった謎解きゲームに興味がある人は手を出してみてもいいかもしれない。


余談

  • 二の館の劉備、関羽、張飛の人形の前に置かれた蓄音機を動かすと音楽が流れるが、実はこれは『三國志』(一作目)のタイトル曲のアレンジである。
    • 主人公曰く、「いつ聴いてもいい曲だなあ」との事で、しかも体力も回復する
  • 本作は元々は光栄が過去に発売した『EMIT』と同様の英語学習ソフトとして企画されていた。
    • そこで原作担当として志茂田景樹を招いた*14のだが、彼の要望であっさり企画は変更され、この通り全くの別作品となったのだと言う。
  • 2000年にはドリームキャストで続編の『七つの秘館 戦慄の微笑』が発売された。
    • しかし原作者は関わっておらず内容も全くの無関係。ゲーム内容も『バイオハザード』風のアクションアドベンチャーとなった。詳しくは当該記事を参照されたし。
    • 主人公とヒロインの声優は続投しており、ヒロインは名前の読みこそ「レナ」から「レイナ」へと微妙に変わっているが表記は同姓同名、主人公は名前は違うが本作のデフォルト名字「飛鳥」が採用されている。しかし特に関連性は無い。
  • YouTubeのゲームカテゴリの中に、続編の『戦慄の微笑』はあるのだが何故か本作は存在しない
    • そのため、本作の動画を上げる場合は当該ゲームが選択できず、実際に上がっている動画ではやむなく『戦慄の微笑』が選ばれているのが実情である。
    • Wikipediaの方でも、記事が存在する英語版の方では記事名が「Nanatsu no Hikan」なのに内容は完全に『戦慄の微笑』の記述だったりと、続編とは何故か色々と混乱を招く事態となっている。
最終更新:2024年02月20日 09:48

*1 セガサターン版のみ「7倍おもしろい!」

*2 プレイヤーが設定した主人公の苗字に応じて変わる。

*3 後に判明するが既に三人組に殺されており、遺体は湖に遺棄されている。

*4 「アイアンメイデン」とも。聖母マリアなどを象った鉄の人形の内側に無数の針が仕込まれており、中に入った人間を刺す拷問・処刑道具。作中では「鉄娘」と表記される。

*5 作中では霊体の人物が登場するのだが、明らかに生者とは思えない振る舞いが満載なのに全く疑いを持たず、最後に正体を明かして初めて幽霊だったと気付く有様。やはり深く考えていないようだ。

*6 例外を挙げると、ベートーヴェン像に話しかけて一族の話を聞くシーンがあるが、どちらにせよまともな相手ではない。

*7 これだけダメージトラップ。邪魔してどうするのか…。

*8 よりによってここでヒロインが敵に連れ去られるが、そんな重大なイベントとて例外ではない。

*9 ちなみに劉備、関羽、張飛の人形は何故かCGではなく同社の『三國志』シリーズ調のイラストで描かれている。

*10 撃退アイテムの大半はストーリー上の通り道にあるので、目についたアイテムを片っ端から回収していればこの先制攻撃を見る機会はあまり無い。

*11 しかも主人公の方も泳いで館に到達するので結局は大した妨害も出来ていなかった。

*12 一人だけこのイントネーション。

*13 信長像とヴィーナス像のオブジェを入れ替えたり、ナポレオンの絵に武田軍の軍旗で有名な「風林火山」のプレートを填めたりなど、謎解きのテーマとしても不統一。最後だから敢えてごちゃ混ぜにしたのだろうか。

*14 当初は前作となるはずだった『EMIT』では同じく著名な作家の赤川次郎を招いていた。