スイカゲーム
【すいかげーむ】
ジャンル
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パズル
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対応機種
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Nintendo Switch iOS Android
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発売元
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popIn |
開発元
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エスカドラ
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発売日
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2021年12月9日(Switch) 2024年1月1日(iOS) 2024年4月11日(Android)
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定価
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240円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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備考
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ダウンロード専売
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判定
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良作
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ポイント
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物理演算落ち物パズル 後悔すらスパイスになる中毒性 ゲーム実況により突如大ブームに
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概要
同じフルーツ同士をぶつけて「進化」させることで大きくしていき、大きなスイカを作るパズルゲーム。大元のシステム自体はスマホゲーム黎明期から数字を大きくするゲームとして存在していたが、かわいらしいフルーツの絵柄に置き換えられているのが特徴。
元々は照明一体型プロジェクター「Aladdin X」シリーズに内蔵されているゲームで、本作はその広報効果を狙ってSwitchで配信開始された。
特徴
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画面には天面が開いた箱が横向きに表示されており、画面最上部を左右に移動する雲のキャラクター「ポッピィー」(名称はスイカゲーム公式SNSアカウントより)をプレイヤーが操作して箱の中に1つずつ果物を落としていく。果物は物理演算で動いており、同じ種類の果物がぶつかると合体して進化し、別の果物になる。
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画面右下の「シンカの輪」に沿って、さくらんぼ→いちご→ぶどう→デコポン→かき→りんご→なし→もも→パイナップル→メロン→スイカの順番で11段階に進化する(名称はAladdin X公式SNSアカウントより)。
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スイカ同士をぶつけるとスイカが対消滅し、さらに高いスコアを狙えるようになる。
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進化するたびに果物のサイズは大きくなってフィールドを埋めるようになる。その上果物達は全て同じ重さであるため小さいものが隙間に入り込みやすく、次第に進化が難しくなっていく。
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箱の幅と果物の直径を比べると、7段階目のなしの時点で4分の1に届くほど、最終段階のスイカになると3分の2はある大きさとなる。
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落とす果物はかき以下のもののみで、ランダムに選出される。次に落とす果物のその次に落とす果物は、画面右上の「ネクスト」に表示される。
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果物を落とす際はカーソルの左右位置をスティックか方向ボタンで調整し、Aボタンで落とす。
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果物が箱から溢れたらゲームオーバーとなる。果物が詰まった場合だけでなく、進化が起きたときの膨張に押し出された果物が箱の外に出ても同様にゲームオーバーになる。ただし、カーソルにくっついている果物に当たった場合はセーフ。
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スコアは果物を進化させたときに加算され、上位の果物に進化させるほど高い得点が得られる。
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スコアは当初は4桁表示で9999点が上限だったが、カンストしたプレイヤーが現れたことを受けてかアップデートにより5桁に拡張された。
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個人とオンラインで「本日」「月間」「総合」のランキングが用意されている。
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ハロウィンやクリスマスなど、時期によってはアップデートによってスキンが選択でき、外見を変えることができる。
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アップデートに伴い有料DLCが用意され、これを導入すればスキンやSE、背景画像などをカスタマイズして気分を変えることもできる。
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また有料DLCでは「2人プレイモード 追加パック」も用意されている。
導入すると、箱が一杯になった時点で相手よりもスコアが高ければ勝利の「オリジナル」、5分間の時間制限とフルーツの保持時間制限がある中でスコア勝負をする「タイムリミット」、相手に妨害のフルーツを送り込みながらゲームオーバーにすれば勝ちの「アタック」の3種類のルールでの2人対戦プレイが楽しめる。
オンライン、オフライン両方のプレイに対応。
評価点
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シンプルかつ癖になるゲームシステム
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ルールが単純で分かりやすく、指標としてもゲームタイトルからひとまず「スイカ」を目指せばいいとすぐわかる。
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タイトルにもなっているスイカを完成させるのは難易度が高く、慣れるまでは完成できずにゲームオーバーとなることが多い。そのぶんスイカを完成させたときの達成感は大きい。
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スイカを2つ合体させるとスイカ同士が消滅して空きスペースができるため、さらなる高得点を狙うことができる。とはいえただでさえ完成させるのが難しいスイカを、すでに場にスイカがある状態でもうひとつ完成させるのは至難の業である。
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プレイしているとこれらを段階を踏んで目指していく形になるため「ひとまずスイカを完成させられるようになる」「そこから点数を稼ぎ、一般的に一人前と言われる基準であるスコア3000点超えを目指す」といった目標を設定しやすい。
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ゲーム本編内で使うボタンも最大3種類のみで、複雑な操作は一切ない。また物理演算のリアルタイム性を除けば時間制限等もなく、ゲームが苦手でも自分のペースでじっくり遊べるようになっている。
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同じ果物がくっ付いて発するポン☆という音も次第に癖になってくる。積んでいった多くの果物が連鎖を狙っていたorいないに関わらず、一斉にポンポンポン☆と音を立てて進化していく様は地味ながら小気味良い。
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物理演算の戦略性
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果物は物理エンジンで動いており、箱内の果物は新しい果物が落ちるたびに押し合い影響し合って運動し位置関係が変化する。また果物が運動している間でもさらに新しく果物を落とせるため、その運動に干渉することが可能である。
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果物は基本的にどれも丸いため、支えがなければ縦に積むことができず転がり落ちてしまい、積めたとしても不安定である。また横方向の荷重で転がったり、進化時の体積変化に挟まれて弾き飛ばされるなどの現象も頻発し簡単には静止しない。
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高得点を狙うには、これらの運動をいかに利用するかのテクニックが重要となる。運動中の移動が終わる前に果物を落としたり、逆に果物が移動するのを待つテクニックもある。
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進化とは関係のない果物を落として箱の中の果物にぶつけ転がして位置を調節する、小さい果物ほど隙間に入り込みやすい性質を利用し大きい果物同士の間にサクランボを楔のように打ち込んで隙間を広げて動かす、ぶつかりそうでぶつからない果物同士の上に新しい果物を落として衝撃で無理矢理押し込み接触させて進化させるなど、物理演算ならではのテクニックも。
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中盤以降は安易に果物をくっつけていると複数の大きい果物が離れた位置にできてしまい、それ以上進化させることが困難でスペースを圧迫するだけの状態になってしまう。先の進化を考えた位置取りや、大きい果物同士を動かしてくっつける移動テクニックの駆使が大事。
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「あそこはもっと上手くやれた」と思わせてくるゲーム性
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本作の中毒性の大部分を占める評価ポイント。例えば、間に小さな果物が挟まって大きい果物が合体できない光景が発生しても、そこに置くよう果物を落としてしまった過去の自分の行動に原因がある場合がほとんどのため、「次はやり方を変えてみよう」「あの一手は反省すべき」といった思考になりやすい。
そして、そういった感情にゲームのリトライがすぐに出来る本作の仕様が相まって、「気付いたら何時間も経っていた」「これが最後だったはずなのにまた始めてしまった」というユーザーが続出する事態になった。
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有料かつダウンロード専売だが、240円という安価な買い切り型ゲームであり、手を出しやすいという点もこれに拍車をかけている。
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一般的な落ち物パズルが「オブジェクトを消す」行為を繰り返しスペースを常に開けながら進めるのに対し、本作は「オブジェクトを大きくする」ことが基本で前述のように消すことは困難なため、どんどんスペースが圧迫され、どんなに上達してもワンゲームを延々続けることはできず比較的短時間で終了する構造になっている。
賛否両論点
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全体的に演出が簡素
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果物が進化する際は「ポン☆」という効果音が発生するが演出といえばそれくらいで、落ち物にありがちな変化時の溜めやその場での点数表示、エフェクトの発生などはなく、全体的に淡々と進行する。
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後述のBGMが少なく単調な点もあわせて物足りないと見るか、前述のように余計な演出がない分テンポがよく小気味良いと見るかは意見の分かれる所である。
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物理演算により予想外の挙動が発生する
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物理エンジンを用いるゲームにはありがちなことだが、箱の中の果物が予想しづらい動きをとることがある。
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外見の印象と実際の重量のギャップや、サイズの大小での挙動の違いは直感に反する部分があり、慣れるまでは戸惑いがちである。
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「果物がくっついたときの衝撃で果物が箱の外に押し出される」というゲームオーバーは、実際にプレイすると「単純に下段の果物が大きくなり、上段に積まれた果物が押し出される」「挟まれて行き場を失った他の果物が弾き飛ばされ宙を舞い、箱から飛び出す」「重心の変化で積んだ果物のバランスが崩れ、山の一部が流動しせり上がってはみ出る」など、実に様々な形で発生する。
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そしてこれらは果物を積んだ山が崩れたときなどの意図しない果物の進化で発生することがあり、そのせいで操作をしていないタイミングでなす術なくゲームオーバーになると少々理不尽に感じる。
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無論、上記はあくまでゲームの仕様であり、こういった点を含めてこのゲームの個性と見做すべき部分だろう。
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ゲームオーバーの判定が良くも悪くも厳格
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新しく落とした果物が箱内の果物に触れた時点で箱からはみ出す位置にあると、たとえその果物がそこからすぐに転がり落ちて箱内に収まる余地があったとしても、果物が静止するのを待たず即座にゲームオーバーとなる。
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ただし進化が発生する場合はそちらが先に行われ、進化後の位置関係で改めて判定される。
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つまり、箱の中に溢れるぎりぎりまで果物が詰まった終盤の状態で新しい果物を落として箱内に収めようとすると、落下中の果物がまだ箱に収まり切らないうちに僅かに他の果物にかすっただけでゲームオーバー判定となる場合がある。
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恐らく「新しく箱の中に落とす果物は、箱内の他の果物に触れた時点からはみ出しの判定が発生する」「判定のある果物が箱内の一定の高さを越えればその瞬間に箱から溢れた扱いになり、果物の運動の状態に関係なくゲームオーバーとなる」という個別に見れば当然のルールが厳格に適用されるためと思われる。
果物が常に物理演算で運動する可能性があり、前述の弾かれた果物の飛び出しなどにも対応するためにこの仕様は必要なものだが、まだ果物を落とした結果の作用が見えていない状態でゲームオーバーとなるのは融通がきかないようにも思える。
問題点
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果物を落とす際にカーソルが箱の一番端まで行かない
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ある意味本作最大の問題点。特に小さな果物を箱の端に落とさなければならない時にしばしば障壁となる。
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箱は手前から奥にパースが付いた形状で表示されており、手前側の面の長方形がゲーム上の果物を収める枠になっているが、果物を上から落とす際のカーソルは奥側の横辺に沿って動き、奥側の縦辺の見かけ上の位置までしか移動しない。
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このため、奥の縦辺と手前の縦辺の見かけ上の位置の差よりも半径が小さな果物は、端に密着させて落とすことができない。
アップデートにより解消した問題点
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カーソルがループ仕様で固定
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左右ボタンを押しっぱなしだとカーソルは一番端で一旦停止するが、当初はボタンを一度離して入れ直すとカーソルが反対側の端にループする仕様で固定されていた。
端付近でカーソル位置の微調整をしていると不意に反対側に移動してしまい煩わしかった。
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アップデートによりカーソルのループ移動のオンオフ設定が可能になり、現在はループしないオフ状態がデフォルトとなっている。
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BGMが全編通して1曲しかない
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曲自体は穏やかな曲調なのでゲームの邪魔にはなりにくいものの、メニュー画面から本編に至るまでずっと同じ曲しか流れないため流石に飽きやすい。
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ちなみにこのBGM、自然にループせず、最後まで流れてから8秒程度無音になった後にまた頭から流れ始める、という仕様になっている。
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このような仕様になっているのは、この曲が本作専用に作曲された物ではなく、有料素材を使っているためである。
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後に有料DLCが配信され、BGMや効果音を新規のものに変更可能となりある程度解消された。
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BGMやSEの音量調節ができない(Switch版のみ)
総評
シンプルながらも絶妙なゲームバランスによるゲームの質は240円という価格を考えれば十分過ぎるほどであり、パッと見た時の第一印象からは想像できない程の中毒性の虜になるユーザーが続出した一品。
もしも暇潰しに適した時間があり、まだこの作品に触れたことがないのであれば、是非一度このゲームで遊んでみては如何だろうか。
余談
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元になったのは中国産のアプリゲーム『合成大西瓜』である。
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元と比べると絵柄がよりフレンドリーになっているほか、物理演算がより自然なものになっている。フルーツの種類は日本版と異なり「ぶどう→さくらんぼ→みかん→レモン→キウイ→トマト→もも→パイナップル→ココナッツ→スイカ」となっている。
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『スイカゲーム』ではスイカを2つくっつけると消すことができるが、『合成大西瓜』では大スイカとなり消すことはできない。自身の腕次第でスコアを伸ばし続けることが可能となったため、その点は元のアプリからの改善点といえる。
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第三者が本作のクローンゲームのソースコードを公開したことで、韓国を中心にクローン版がブームとなり、日本でも一部の韓流ファンに本作が知られるようになった。
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5段階目の果物であるかきは、丸っこくデフォルメされているせいでよくみかんやオレンジなどに間違えられる。
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あまりに頻繁に間違えられるせいか、公式の果物リストでもわざわざ強調表示されている。
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間違えられる柑橘類とはヘタの大きさや形が異なるのだが、ゲーム中に登場する柑橘類はヘタが露出していないデコポンしかないため比較はできない。またスイカゲームのかきは、ヘタもデフォルメされており柑橘類に近い星型になっている。
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ゲーム中のカーソルに用いられるキャラクターのポッピィーは、元はpopIn時代からのプロジェクターソフトウェアのナビゲートキャラクターである。
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公式でも「雲」と紹介されているが、御伽話の「アラジンと魔法のランプ」風のランプを模したAladdinシリーズのロゴマークから出てくる公式イラストがあり、どうやら「ランプの精」または「ランプの煙」がモチーフのようである。果物に関係のないキャラクターなのはそのためである。
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突然のスイカブーム
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上記のとおり本作は2021年末に「Aladdin X」シリーズに内蔵されたゲームであるため、発売当初は知名度が低かった。
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本作がブームを起こしたのはSwitch版だが、ニンテンドーeショップではアセットフリップを活用した粗悪な作品が多数配信されていることが問題視されている(2020年に執筆されたAutomatonの参考記事)。本作のようにシンプルなグラフィックかつ低価格帯のゲームはそれらと同じように見えてしまい、配信当初はほとんどのユーザーから見向きもされなかった。
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これを裏付けるように、本作発売からブーム発生までの638日間に売れた本数は2,351本であったという発表がされている(外部リンク)。
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その後2023年9月上旬に行われた日本の大物配信者のゲーム実況で一気に注目され、Switch版のダウンロード数が急増。ついにはニンテンドーeショップでのダウンロードソフト人気ランキング(任天堂公式サイト)1位を獲得するまでに至った。それに伴い多くのYouTuberや実況者、ストリーマーがこのゲームをプレイし、それに乗じて発売元のAladdin X社が公式HP(外部リンク)を開設。ブームのきっかけとなった多くの人気実況者のプレイ動画も掲載される運びとなった。
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こういった要因が重なり、売上は流行前の5万倍以上になったと明かしており(日テレNEWSのWebArchive)、2023年10月5日には100万DLを突破(2023年10月10日付けのファミ通.comの記事)、2023年10月6日から2023年10月18日までの12日間でさらに100万本を売り上げて累計200万DLに到達し(2023年10月23日付けの4gamerの記事)、2023年10月29日時点で300万DLを突破する(2023年10月30日付けの家電WatchによるAladdin新型プロジェクターの紹介記事)という驚異的な売り上げを達成している。
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しかしこういった大ブームの影で、前述のクローン版のようなスマホやPCで遊べる類似作品も数多く登場している。
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本作は『2048』に代表される「同じ数字をくっつけて数を大きくしていくゲーム」のアレンジ作品である。しかし本作のブーム後「落下させたオブジェクトをくっつけて巨大化させていく」というシステムのPC向け・スマートフォン向けのアプリが爆発的に増えており、中には
『スイカゲーム』という呼称や画像などの素材を無断で使用しているアプリも存在する。
2023年時点ではプロジェクター内蔵版およびNintendo Switchで配信されている『スイカゲーム』以外は全て偽物であるため、本作に似たアプリケーションをダウンロードする場合は十分注意するよう、公式に注意喚起がなされている。
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こうした状況と要望の多さを受け、Aladdin X公式によって2024年1月1日にiOS版、同年4月11日にAndroid版のスイカゲームが240円の買い切りアプリとして配信された(公式SNSアカウントのiOS版配信告知)(Android版配信告知)。現在でも各アプリストアでは偽物のアプリが未だに氾濫しているが、配信元のAladdin Xを騙る偽物はおそらく存在していない(仮にあってもごく少数である)ため、ダウンロードする際には配信元を確認した上で実行するべきである。
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また、ゲームセンター向けのプライズ等でスイカゲームのキャラクターグッズも見受けられるようになったが、2024年2月以前に発売されたものは全て公式が関与していないとアナウンスされている。
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2024年3月下旬以降、Aladdin Xからのライセンスを受けた公式のスイカゲームグッズが販売されるようになった。(参考)
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手強い内容で話題となった本作だが、発売元によれば「プロジェクター内蔵版の方が点が取りやすい」とのこと。
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プロジェクター版はSwitch版より箱が若干大きい上に、果物を合体させた時に得られる得点もプロジェクター版の方が多いため。
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ただしプロジェクター版はスイカ同士をくっつけることができない。よって点数に物理的な上限があるため、理論上は無限に点数を稼げるSwitch版の方が高得点を取ることができる。
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YouTubeのNintendo公式チャンネルに投稿された『よゐこのインディーでお宝探し生活4 第3回(外部リンク)』にて、本作が取り上げられた。
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私生活でもゲーマーであるよゐこ有野氏だが、インディーゲームは(少なくとも動画内の発言からは)知らないゲームばかりという中では珍しく本作については事前に知っており、本人曰く「家族全員やっている」とのことであった。
最終更新:2024年12月28日 00:33