五等分の花嫁 ~彼女と交わす五つの約束~

【ごとうぶんのはなよめ かのじょとかわすいつつのやくそく】

ジャンル ドキドキ夏休みデートADV

対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4
発売・開発元 MAGES.
発売日 2023年9月7日
定価 パッケージ版:8,580円(税込)
ダウンロード版:8,580円(税込)
限定版:12,980円(税込)
スペシャルボックス:19,980円(税込)
判定 良作
ポイント 2人だけの夏を楽しむラブストーリー
番外編のエクストラストーリーもあり
少年マガジンシリーズ


概要

『五等分の花嫁』の選んだ相手へのプロポーズに至るまでの過程を描いた、アドベンチャーゲーム。公式の略称は「ごとかの」。
2022年8月に開発中とされ、2023年4月の横浜アリーナでのイベントで正式にタイトルが発表された。
夏の思い出も五等分』(以下ごとなつ)『君と過ごした五つの思い出』(以下ごときす)の系譜を引き継いだシステム・グラフィックとなっており、同年発売の『ごとぱずストーリー』とはシステムやグラフィックが異なる。そのため、コンシューマゲーム第3弾と銘打たれている。

限定版にはクリアファイルと新婚生活のドラマCD5枚組が同梱。風太郎との掛け合いもある。
スペシャルボックスにはアクリルスタンドと缶バッジも付いている。


あらすじ

大学4年生の冬。
上杉風太郎は東京から故郷へ向かっていた。
道中、思い出すのは大学1年生の夏休みのこと――
東京の大学に入学し、勉学にバイトにと忙しい生活を送る中で
告白した彼女との遠距離恋愛は順調に続いていた。
それでも、やはりどこか満ち足りない日々……。
そんな中、夏休みに彼女が東京にやってくることが決まる。
『離れ離れで暮らす距離を埋める、素晴らしい時間を共に過ごしたい』
そんな思いを胸に、久しぶりに会える喜びや緊張と共に風太郎は彼女を出迎える。
果たして、2人のデートはどんな結末を迎えるのだろうか。

公式サイト ストーリーより抜粋)


ゲーム内容

  • 今回も『ごときす』同様に単に読み進めるだけのゲーム。
  • 開始時に「学園祭に告白した相手を選ぶ」という名目で五つ子のうち1人を選んでストーリーが始まる。
  • 4日間の夏休みデートでその告白した相手との関係を深めていく。
    • 一般的なアドベンチャーゲームのように、会話パートで発生する選択肢によって親密度が上がる。
    • 何度か移動選択があり、移動選択の時は3つの場所を選択することができる。
    • 最終的な親密度の数値によってEDが分岐する。EDはそれぞれグッドとノーマルが2種類ずつ存在し、数値が一定以上だとグッド、一定以下だとノーマルになる。
  • クリア後に以下の要素が解禁される。
    • 各ヒロインのグッドEDを見ると、取材協力施設紹介のムービーが見れるようになる。今回はナレーションはなしで字幕のみ。
    • 各ヒロインのグッドEDとノーマルEDを見ると、「ヒロイン視点」のシナリオが解禁される。
    • 全てのノーマルEDを見ると、「なかの開店」のシナリオが解禁される。
    • 全てのグッドEDとノーマルEDを見ると、「温泉旅館」のシナリオが解禁される。
  • 過去作のセーブデータがあると以下の要素が解禁される。
    • 『ごとなつ』のセーブデータがある場合「エクストラミニシナリオ・ごとなつ」が解禁される。
      • 内容的には無人島で過ごした日々をまた別の話で1話振り返るもの。
    • 『ごときす』のセーブデータがある場合「エクストラミニシナリオ・ごときす」が解禁される。
      • こちらは卒業旅行出発前の話が見られる。
    • 『ごとぱずストーリー』のセーブデータがある場合「らいはのドラマ」が解禁される。
      • おはようシチュエーション、朝ご飯シチュエーション、おかえりシチュエーション、夕ご飯シチュエーション、おやすみシチュエーション、スペシャルドラマの6つがある。

キャラクター

これまでに語られた大まかな設定等は過去作の記事を参照のこと。

  • 上杉風太郎(うえすぎ ふうたろう)
    • 東京の大学に進学。生活費のために家庭教師と塾講師のバイトにも力を入れている。スマホも手に入れている。(原作は旧式の携帯電話を使っていた)
  • 中野一花(なかの いちか)
    • 女優としてドラマやCM、映画など活躍の場を広げている。そのためか、眼鏡をかけている場面が増加している。『ごときす』で卒業後に東京で過ごす予定とされたが、夏休みデート開始時点ではまだ地元を拠点に活動している。
    • 所属事務所の社長も登場する。
  • 中野二乃(なかの にの)
    • 料理の専門学校に通っている。定期的に風太郎に料理を送っている。
    • バイト先のケーキ屋の店長も登場する。
  • 中野三玖(なかの みく)
    • 料理の専門学校に通っている。劇中では専門学校で学んでいることについて話すこともある。
  • 中野四葉(なかの よつば)
    • 体育系の大学に進学し、陸上部で活躍している。
  • 中野五月(なかの いつき)
    • 教師になる夢を叶えるために大学に通っている。普段は敬語を使うが、大学4年生パートの部分では敬語を使わない。

評価点

  • 選んだ相手と2人きりで紡ぐラブストーリー。
    • ストーリーに記載されている通り、本作は大学1年の夏(メインの部分)と大学4年生の冬(OPとED)と、原作でほとんど語られていない時期の話を扱っている。
    • 『ごとなつ』は皆で過ごす部分が多く、『ごときす』でも他の姉妹と一緒の旅行で2人きりになれる機会は少なかったが、本作では多くの場面で2人きり。
      • 風太郎と選んだ相手との掛け合いを存分に楽しむことができる上に、2人の関係も夏休みデートの4日間できっちり深掘りされている。
      • 『ごときす』では高校卒業したばかりの時期ということもあり初々しさの比重が強めだったが、本作では遠距離恋愛とはいえ付き合ってそれなりに経過しているので関係性にある程度の余裕が見られる。
    • 実在する様々な場所を訪れながらデートを楽しんでいる。選んだ相手によって行き先は違っている。
      • 実在する場所は東京・横浜の東京駅、浅草寺雷門、ダイバーシティ東京、象の鼻パーク、横浜中華街、スカイガーデン、赤レンガ倉庫*1などの他、東海地方にあるJR名古屋駅*2、名古屋マリオットアソシアホテル、なばなの里、ラグーナテンボスなども存在する。生放送「五等分の花嫁 らいはの部屋」や公式Twitter(現X)でも情報開示されたが使われどころは伏せる形となっている。
    • 学園祭以降の高校時代の回想シーンも要所要所に入っている。中にはクラスメイトが絡んでくるものもある。
    • エンディングでは、舞台は大学4年生の冬へとなり、選んだ相手へのプロポーズが描かれる。
      • シチュエーションやセリフ、構成は姉妹ごとに異なるものが用意されており、風太郎の男としての見せ場が描かれている。
      • また、二乃と三玖のEDでは店に関する話もある。立ち上げる理由も語られるがお互いの理由がブッキングしないようになっている。
      • 五月のEDでは風太郎の職業が判明。それ以外のEDでは具体的な職業には言及されないので五月を選んだ場合そういう選択をするということなのだろう。
  • エクストラストーリーは原作の余白を埋めるシナリオになっている。
    • 「なかの開店」は二乃と三玖の店の開店の経緯が語られた。また、店の名前も「なかの」であることがハッキリと口に出された。
    • 「温泉旅館」は五つ子と母方の祖父の話になり*3、内容も秀逸な感動エピソードに仕上がっている。
  • グラフィック(立ち絵、CG、背景)も安定のクオリティ。
    • CG、背景にも各名所をしっかりと表現できている。風太郎が電車に乗っているものはJR東海の監修を受けていることが「らいはの部屋」で明言されている。
    • 立ち絵は時系列的な都合もあり髪型などがちょっと変わったものが新規に用意された。無論、大学4年生パートの部分も新しく書き下ろされている。
      • なお、回想やエクストラストーリーでは『ごとなつ』『ごときす』で使われた立ち絵が使われている部分もある。元からクオリティの高い立ち絵なので質的な意味では問題ないだろう。
    • CGの量は1人当たり17枚(差分除く)、その他のCGが5枚(差分除く)で、総数は90枚(差分除く)と『ごときす』と同等の枚数となっている。
  • サウンドのクオリティも高い。
    • 五つ子のメインテーマBGMの新アレンジや新曲は、感動的なシーンで泣けるようなメロディが増えている。
    • テーマソング「世界中たったひとつ」も、ある程度経過した風太郎と選んだ相手との関係性のイメージに合っている。
    • 『ごとなつ』『ごときす』のBGMも五つ子のメインテーマBGMなど20曲ほど引き続き使われている。
  • セーブやロードは早い。
  • アドベンチャーゲームで必要である機能は一通り備えており、システムに関しても充実している。
    • オートモード、バックログ、クイックセーブや未読/既読スキップ、キャラごとの音量変更の機能も当然のように備えてある。『ごとなつ』『ごときす』にもあったシステムボイスも引き続き搭載。

賛否両論点

  • 『ごとなつ』『ごときす』で豊富に見られた五つ子同士の掛け合いは控えめになっている。
    • あってもSNSでのやりとりや回想、エクストラストーリーで見られる程度。
    • 上述したように2人きりでしかできない見せ場も豊富にあるため、一長一短と言えなくもない。

問題点

  • 例によって風太郎の声が一部のみ。
    • ただし、『ごとなつ』『ごときす』と比べると、声が入っている場面は増加しており、一応の改善は見られる。
    • 本作では基本的に風太郎と選んだ相手との掛け合いを行う都合上、声優の作業量がとんでもないことになるのは想像に難くないが、やはり物足りなさや違和感はある。
  • 11を超えるEDがあった『ごとなつ』『ごときす』に比べると、流石にEDの数は10に減っている。また、多数の実在する場所が登場するが取材協力施設紹介のムービーは5つに減っている。
    • 本作には『ごとなつ』『ごときす』になかったエクストラストーリーがあるため、そちらにリソースを割いた為だと思われる。EDもおまけムービーも単純に多ければいいというわけでもないので塩梅の難しい所ではあろう。
  • 上杉勇也は一切登場しない。
    • それに伴いシステムボイスからもなくなっている(らいはやマルオはある)。二乃と三玖の店は、勇也の亡き妻の店の跡地を借りてできたものであるため、二乃や三玖のEDや「なかの開店」で絡ませられると思われるのだが登場しない。
    • 写真撮影の時などに話題に出てきたりはする*4ので、存在自体が忘れられた訳ではないが…。

総評

原作を元にしたキャラゲーとしての完成度は高く、1つの恋愛物語としての完成度も良好。
ファンは押さえておいて損は無く、正に五等分の花嫁ファンに向けた一品と言える。


余談

  • 愛知県で有名なひよこ型スイーツ「ぴよりん」が隠れぴよりんとしてこっそり出演している。
    • その関係で権利元のジェイアール東海フードサービスがスタッフロールにクレジットされている。
    • ぴよりんは2011年頃から誕生したが、1日30個が売れない日々も続いていたという。2021年に藤井聡太(当時二冠)が王位戦で名古屋マリオットアソシアホテルのシェフが手作りしたぴよりんアイスを食べた事で知名度が一気に全国に広まったという経緯を持つ。以降、ぴよりんが売られている名古屋駅にあるカフェジャンシアーヌに行列ができており、このことは「らいはの部屋」でも取り上げられた。
    • 2023年7月には五等分の花嫁とコラボしており、各キャラクターをモチーフにしたオリジナルの五つ子ぴよりんが販売されていた他、五つ子とぴよりんが戯れる姿を描いたグッズ(アクリルスタンド、フォーク、ぴよりんマスコット等)も販売されていた。
  • 本作に登場した名古屋マリオットアソシアホテル、なばなの里、ラグーナテンボスは2023年のJR東海とのコラボ「中野家の五つ子による上杉風太郎おもてなし大作戦 in 名古屋 愛知・三重」で五つ⼦が厳選した観光地にも含まれていた。
    • コースはそれぞれ一花コース、三玖コース、五月コースとなっていた。
  • 名古屋駅中央コンコースイベントスペースでは2023年8月28日~9月15日に特別展示があり、本作のパッケージ(限定版含む)やPV、上記のぴよりんなども展示されていた。
  • 過去のMAGES.製ゲームと同様に動画サイトでの実況・配信が公式にて禁止されている。参考サイト
    • ゲーム本体のキャプチャ機能もほとんどの場面で使用不可能。ビジュアル集のようなものも今回はついていない。
最終更新:2023年12月09日 21:43

*1 同名の施設は他にもあるがここでは神奈川県横浜市にあるものを指す。

*2 原作時点で一部のエリアが登場している。本作に登場するのは銀時計と呼ばれるエリア。

*3 原作に成長した五つ子と祖父が描かれたコマが存在していたことから、原作の時点で卒業から結婚式までの間に会っていたようである。

*4 原作では仕事道具にカメラを使っているという程度の描写しかなく曖昧にされていたが、『ごときす』のデジタルビジュアル集でカメラマンと書かれている。