ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-
【らじかるどりーまーず ぬすめないほうせき】
ジャンル
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サウンドノベル
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(※リマスター版タイトル画面)
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対応機種
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スーパーファミコン(サテラビュー配信)
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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1996年2月3日
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定価
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無料
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象) |
備考
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2022年4月7日発売のPS4/One/Switch/Win 『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』 にて復刻リマスター版が収録 / 3,520円(税込) RDE版開発元:D4エンタープライズ 発売元:スクウェア・エニックス
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判定
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なし
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ポイント
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知る人ぞ知る『クロノ・トリガー』の関連作品 『クロノ・クロス』の原型になったシナリオ
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クロノシリーズ クロノ・トリガー (PS/DS/Win) - ラジカル・ドリーマーズ - クロノ・クロス
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概要
衛星放送によるデータ配信機器であるサテラビューにて提供された数少ないオリジナルゲーム。
オーソドックスなサウンドノベルゲームであり、最初に遊ぶメインシナリオをクリアした後、複数のシナリオへと分岐していく。
うち、メインシナリオは『クロノ・トリガー』の続編としての側面を持ち、後の『クロノ・クロス』の原型となった事で知られている。
長らく幻のソフトとして扱われていたが、『クロノ・クロス』のリマスター移植である『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』(以下RDE版)に復刻収録され、気軽にプレイできるようになった。
RDE版はフォントや画像の高解像度化を除き原作SFC版とほぼ同内容であるため、まとめて解説する。
特徴
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物語は「ヤマネコ大君」の館へ忍び込む3人組の盗賊団「ラジカル・ドリーマーズ」の活躍を描いたもので、ほぼすべてのシナリオが館を舞台としている。
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館の内部構造はシナリオによって変化することもある。寄り道要素もそれなりに見られる。
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館内では敵モンスターとランダムエンカウントし戦闘となる。モンスターごとに正しい選択肢を選べばノーダメージで倒す事も可能となる。
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減った体力は特定の場所で選択肢を選ぶ事でしか回復できない。
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一部の選択肢にはリアルタイムの時間制限が設けられている場合があり、決断が遅かった場合は同じ選択肢でもその後の展開が変わることがあったり、ずっと放置していると「何も行動を起こさなかった」という扱いで勝手に話が進んでしまうことがある。
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特に戦闘中の選択肢が顕著であり、放置していると多くの場合悪い結果となってしまう。
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主要登場人物
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シナリオにより設定が大きくブレることも多いため、以下では基本設定のみを記す。
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セルジュ(名前変更可能)
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主人公。旅の楽師の少年で、本編から3年前にキッドと出会って盗賊団に加わった。
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『クロノ・クロス』の主人公セルジュと同名だが、ノベルゲームの主人公であるため自身の独白が多く、金髪でフードを被っているなど外見・設定共に大きく異なる。
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旅の楽師という設定など一部の役回りは『クロノ・クロス』のスラッシュに受け継がれたと思われる。
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キッド
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ヒロイン。盗賊団「ラジカル・ドリーマーズ」のボスである少女。17歳に満たない年齢だが、かなりの腕前を持つ。
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一人称「オレ」の男勝りな言動や、縛った金髪など、『クロノ・クロス』の同名ヒロインとほぼ同様の設定。
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マスクデータとして主人公のセルジュに対するキッドからの好感度が設定されており、各行動によって上下する。この好感度の高低によってシナリオの展開が左右される箇所も存在する。
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ギル
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盗賊団の一員である闇の魔導士の男性。キッドとは昔からコンビを組んでいたらしい。常にドミノマスクのような仮面で素顔を隠しており、正体も謎に包まれている。
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彼の正体はシナリオごとに異なっており、メインシナリオである『Kid 盗めない宝石編』では強いて言うなら『クロノ・クロス』でのアルフが容姿・立ち位置ともに近い。
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ヤマネコ大君
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辺境レジオーナを治める貴族。キッドが狙う宝石「凍てついた炎」を所持する。
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『クロノ・クロス』の同名キャラと異なり獣人の姿ではなく長いヒゲを蓄えた人間で、キッド以外のキャラとの因縁は薄いなど、設定面は大きく異なっている。
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リデル
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ヤマネコの養女。
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蛇骨大佐の娘という点は『クロノ・クロス』の同名キャラと同じだが、本作では父は直接登場しない。また、髪色も異なり金髪となっている。
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『Kid 盗めない宝石編』での立ち位置は『クロノ・クロス』のセルジュへと受け継がれた。
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主なシナリオ
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基本的にどのシナリオも1時間ほどで読了できる短編集となっている。カッコ内は担当したシナリオライター。
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『Kid 盗めない宝石編』(加藤正人)
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最初に遊ぶことになる本作のメインシナリオ。キッドとヤマネコ大君の因縁の対決が主となる。
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『クロノ・トリガー』の続編かつ『クロノ・クロス』の原型となったシナリオであり、主要人物や基本的な設定など大部分はこの時点で既に完成している。
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ちなみにバッドエンドが存在しているが、それでもクリアした扱いにはなる。
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『ギル 愛と勇気の駈け落ち編』(生田美和)
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ギルとリデルがメインとなる恋愛シナリオ。
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このシナリオではギルの正体はリデルの幼馴染「ギルバート」である。
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『ひまわりとキッド編』(島本誠)
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館に入る前に遭遇した謎のひまわりから始まるシリアスコメディ。唯一、館の内部に潜入しないシナリオとなる。
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選択肢がかなり多く、結末も複数に変化するようになる。
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『激闘撲滅流星刑事編』(種子島貴)
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ギルの正体が宇宙刑事であるなど、ナンセンスギャグに振り切ったシナリオ。
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『帰郷・灯のシェア編』(種子島貴)
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キッドの恩人シェアに纏わるホラーテイストのシナリオ。
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『謎の巨神兵器・パラダイスX編』(福川大輔)
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途中までは『Kid 盗めない宝石編』とほぼ同じ展開だが、決着が大きく異なりロボットバトルが展開される。
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『影の王国・死の女神編』(生田美和)
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幽霊たちが集う「影の王国」を巡るシナリオ。
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キッドとの好感度でラストが分岐する。
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評価点
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美しい音楽や、館を探索する没入感。
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メインテーマや戦闘、館の内部など多くのBGMが『クロノ・クロス』へとアレンジを施した上で引き継がれている。
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夜の館に潜入して探索するというテーマからホラーゲームのような要素もあり、館の中には不気味な部屋やトラップ部屋、館内の人物との会話など、良質なBGMともマッチしてゲーム全体の雰囲気を盛り上げている。
賛否両論点
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メインシナリオ『Kid 盗めない宝石編』における『クロノ・トリガー』関連の悲劇的な設定。
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一部のキャラクターの境遇など、『クロノ・クロス』での賛否点がそのまま通じている。
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裏を返せば、上述の通り基本的な設定は既に本作の時点で完成されており、いじる必要がほぼ無かったという事なのだろうが…。
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なお、『クロノ・トリガー』のストーリープランを務めた加藤正人氏が担当したのは『Kid 盗めない宝石編』のみであり、その他のシナリオは『トリガー』と一切関わりがない設定となっている。
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複数のシナリオライターが手掛けたことによる分岐シナリオテキストの文体の不統一感。
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このためか各シナリオに分岐する選択肢でのテキストなどが共通テキストや他のシナリオテキストとの浮き沈みが激しい。
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特に『ひまわりとキッド編』『激闘撲滅流星刑事編』といったコメディシナリオはこの部分が顕著であり初見時は面食らうだろう。
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一方で、複数のライターによってシナリオの幅が広がっているのも事実であり、選択肢制のサウンドノベルならではの設定の自由さを活かした意外な展開もある。
問題点
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ネタバレ
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全体的に7割ほどがコメディチックなものであり、テキスト面も超展開を迎えるなど脱力する描写が多く、全体的に悪ノリ感が漂っている。
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『Kid 盗めない宝石編』ではヤマネコや凍てついた炎が最終的にどうなったのかは触れられないまま終了し、若干尻切れ感がある。
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また、『クロス』では生死不明のようにもボカされていた『トリガー』キャラの扱いも、本作では「死んだ」と明言されており、人によってはこちらの方が辛く感じるかもしれない。
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一応、本作もまた『トリガー』とは異なる世界の話である事も語られてはいるのだが。
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本作のプロローグは「少年が数年前に亡くなった祖父の日記帳を見つけ、そこに書かれた話を読んでいく」という導入なのだが、エンディングでセルジュが死亡もしくは生死不明になった場合でもエピローグは共通で「かつて冒険したセルジュの孫の『セルジュ』が日記帳を読み終わった後、幼馴染の少女から呼びかけられるシーンで締めくくられる」という終わり方になっている。
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サテラビュー配信という事もあるのか、総プレイ時間は10時間にも満たない小ボリュームである。
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残り体力やキッドとの好感度はマスクパラメータ扱いであり、戦闘後のテキスト及びテラスでの会話で判別する方式。
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いつでも見る事が出来ないため、不便。一部シナリオではさらにテラスが無くなってしまう。
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ランダム性の強い戦闘。
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エンカウントやイベント戦闘において攻撃を回避する選択肢を選んでも、本当に回避できるかは運に作用されるらしく、ダメージを受けてしまう事がしばしばある。
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全体的なUIが悪い。
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フローチャートやバックログ、テキストスピード変更などが無い。
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RDE版ではオートモードが実装されているが、読み進めのスピードは遅め。
総評
メインシナリオ自体は良質だが、一つの作品としては少々パワー不足。
現在は『クロノ・クロス』へ繋がる作品としてファンアイテムとしての価値が十分にあるといったところだろうか。
『クロス』のリマスター移植版に同時収録されているため、『クロス』と比較してみるのも良いかもしれない。
余談
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『クロノ・クロス』の設定は本作のメインシナリオ『Kid 盗めない宝石編』を下敷きにしているものの、例えるなら読み切り漫画と連載漫画のような関係であり、設定の細部では異なる点が多いパラレルワールドとなっている。
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『クロス』に本作の楽曲がアレンジされて再利用されている他、序盤のイベント「蛇骨館潜入イベント」は本作をモチーフにしており、館に3人で忍び込むというシチュエーションや館の構造などに類似点が多いが、そちらはエルニド諸島の蛇骨大佐の館が舞台であり地理的にも異なっている。
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『クロス』の作中ではイースターエッグとして本作『ラジカル』の冒頭シナリオを垣間見れるシーンがあるが、同作の舞台となる2つのパラレルワールドとはまた異なる「別の時間軸の記録」という扱いになっている。
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『クロノ・トリガー』のPS移植の際に本作を収録するアイデアもあったようだが、加藤氏の意向により収録は見送られたとのこと。
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2000年発売の『クロノ・クロス アルティマニア』によれば、PS版『トリガー』の開発スタッフは『ラジカル』収録を打診したが、加藤氏が昔の文章を読まれるのは恥ずかしいと断っており、長らく移植作品に収録されることはなかった。そのため、サテラビューの普及率の低さと配信ソフトなども相まって「幻のソフト」として扱われていた。
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一方、年月を経て2009年に発売されたDS版の『クロノ・トリガー アルティマニア』では、加藤氏が『ラジカル』について、いずれまた何かしら別のカタチでオマケとして収録できればと話し合っているが、個人的にそのまま出すのは躊躇はあるものの今更あれにどう手を入れるんだという事でどうなるのかは分からない旨を語っていた。
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その後、2022年に『クロノ・クロス』のリマスターに併せて蘇ることとなった。収録の経緯について、リマスター版の公式Twitterの質疑応答にて「既に20年以上の年月が経ってしまったし、プレ値で取引されたりとおかしなことになってるようなので」と、今回の話が来たときにはもういいやと許容する姿勢だったことを語っている。
最終更新:2024年05月13日 03:52