センチメンタルデスループ
【せんちめんたるでするーぷ】
| ジャンル | 絶望タイムリープADV |  | 
| 対応機種 | Nintendo Switch Windows(Steam/DMM GAMES/DLsite)
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| 発売元 | qureate | 
| 開発元 | qureate IXILL LLC.
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| 発売日 | 【Switch】2023年7月6日 【Steam】2023年7月28日
 【DLsite】2023年10月03日
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| 定価 | 【Switch/Steam/DMM】2,480円 【DLsite】2,640円
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| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | CERO:D(17歳以上対象) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 2Dドット絵で描かれる探索ADV ストーリーは好評だが進行フラグがわかりにくい
 恒例のお色気要素はゴア表現投入で半減
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| qureate作品 | 
 
概要
qureateとしては『廃深』以来、2作目となるホラーアドベンチャーゲーム。立ち絵はイラスト、イベントスチルはアニメーション、フィールドは2Dドット絵で表現されているのが特徴。
廃深は心霊ホラーだったが、本作は明確な殺意を抱いた人間に襲われるサイコホラーといった具合。
タイムループが物語の主軸で、登場人物たちの死を克明に描いており、ゴア表現が存在する。
本作以前に発売された『俺の有給恋物語』から僅か2ヶ月という短期間で発売された。
R-18バージョンやパッチは存在しないが、Win版には血の色を紫から赤に変更するオプションが存在する。
ストーリー
親友による繰り返される死!
死のループから抜け出すことはできるのか!?
誕生日を祝ってくれるという大学の友人の音夢の家に行く乃愛。
音夢の部屋に通され誕生日プレゼントにと黒い手帳をプレゼントされ喜ぶ乃愛。しかし通された部屋で見つけた写真を見ていると音夢が豹変!
支離滅裂で会話にならない音夢は包丁を取り出し、乃愛の体に深く突き刺す。 何度も包丁が振り下ろされ徐々に意識を失っていく……。
しかし気が付くと、再び音夢の部屋にいた。 なにが起きたのか理解できない。 白昼夢でも見ていたのかと気を取り直すが、 手には音夢にプレゼントされた黒い手帳があることに気づく。
これは夢なんかじゃない……
幾度となく襲い来る死のループから抜け出すことはできるのか―
(公式サイトより引用)
特徴
黒い手帳
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特定の時間軸に移動することができる本作のキーアイテム。乃愛が死亡すると、一番最初の時間軸に強制的に戻される。アイテムは引き継げないため、必要に応じて都度拾い直す必要がある。
探索パート
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謎解きやアイテム回収しながら進めていく。調べられるものは『!』で表示される。本作はオートセーブ方式だが、特定のポイントを調べれば手動セーブも可能。一度解いた謎解きは、2回目以降省略される。
追跡パート
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探索している最中に、音夢の叫び声と共に焦燥感を煽るBGMに切り替わり、そこから数回行動すると不穏なBGMと共に音夢がこちらを追いかけてくる。音夢に接触すると即死し、最初の時間軸に戻される。音夢の追跡能力は高めで、時間経過で振り切ることはできないため、回避するには罠を設置する必要がある。
罠
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1.一定時間行動不能にするタイプ
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ロープ等で音夢を行動不能にし、別のエリアに移動すれば逃走可能。ただし、しばらくすると罠から抜け出してくるので注意。
 
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2.設置して音夢の気を逸らすタイプ
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ぬいぐるみ等のアイテムをあらかじめ設置し、隠れることで逃走可能。本作にはいくつか隠れるポイントがあるが、このタイプの罠を設置しないと確実に見つかるため、ゲーム進行時は何かしら所持しておくのが鉄則となる。
 
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3.音を鳴らして陽動するタイプ
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洗濯機やTVレコーダーのタイマーをセットすることで、音夢の追跡を中断させることができる。発生確率はランダムのため、過信は禁物。
 
アップデート内容
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黒い手帳にサブイベントの項目が追加された。
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行動不能にするタイプの罠の効果時間が延長された。
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音夢が時間経過でも登場するようになった。
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一部謎解きのヒント内容が修正された。
評価点
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作中の雰囲気
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突然豹変する友人、和解したと見せかけて不意打ちで殺害される展開等、サイコホラーとしてのツボは押さえられている。
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何度も死を繰り返す恐怖に怯える主人公や、友人の信頼を得るために未来の出来事を予言するといった、タイムループものならではの展開も用意されている。
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絶望的な状況に置かれながらも、豹変した友人を救うために必死に抗い、結末を変えようとする流れは惹き込まれやすく、先へ先へと進めたくなる。
 
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
終盤では、1人だけ生き残ってしまった乃愛が死亡してしまった友人たちを救うために、自ら包丁を突き刺して過去に戻るというベタながら熱い展開もある。
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追跡者『音夢』の存在
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普段は内向的で引っ込み思案だが、過去のトラウマからメンタルが不安定かつ思い込みの激しいヤンデレで、一度スイッチが入ると包丁を片手に怒号や恨み言を口にしながら乃愛をつけ狙う殺人鬼と化す。乃愛を殺害した後、狂気に満ちた表情でけたたましい笑い声を上げる姿はかなり怖い。
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音夢を演じる高田憂希氏の演技力も素晴らしく、通常時の愛らしい声と狂気に満ちた叫び声のギャップが凄まじい。
 
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魅力的な登場人物
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登場人物は4人と少ないながら、魅力溢れるキャラ付けがされている。
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主人公の乃愛は友達想いのお人好しな性格で、死のループによる恐怖に打ちのめされそうになりながらも必死で音夢の誤解を解こうとする姿は好感を抱きやすい。
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明音は典型的な能天気キャラで底抜けに明るい性格。少々空気を読めないが乃愛に信頼を寄せており、シリアスなシナリオにおいて程よい清涼剤としての役割を果たしてくれる。
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涼楓は落ち着いた性格で、半信半疑ながらも乃愛の置かれてる状況をいち早く理解し、的確な助言をしてくれる頼もしいキャラ。しかし、脱出を目前にして…。
 
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キャラクターデザイン
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4人の登場人物たち(及びパンツ)のデザインは良好。本作にてデザイン担当したみず氏は、qureate作品初参加でありながら20種類ものイベントスチルを手掛けている。
 
賛否両論点
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強烈なゴア表現
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血の色は『ダンガンロンパ』シリーズ同様の紫色で表現されているが、包丁で腹部を刺す、頸動脈を切るといった残虐な描写があり、グロ耐性のない人にはキツい。本作がドット絵を採用したのもこれが原因なのは想像に難くない。
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同社の『廃深』もゴア表現こそあるものの、ホラーに沿っているので直接的な描写は基本避けられている。
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直接的な描写はないが、音夢に自傷癖があることを仄めかすシーンもある。
 
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お馴染みのお色気要素
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qureate作品お約束の要素は健在だが、上記のゴア表現もあって蛇足感は否めない。
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イベントスチルもあからさまに狙っているアングルや、わざとらしいスカートのめくれ具合が目につきやすく、はしたない印象を抱きやすい。そもそも登場人物が死に至るシーンに挟まれても素直に喜びにくい。
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『プリズンプリンセス』や『廃深』では、謎解きも兼ねたシーンもあったが、本作には存在しない。
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また、パンツを見せる事を意識するあまり、よくわからないシュールな絵面になったシーンもある。
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下着のデザインは無駄に凝っており、力の入れ具合は感じ取れるが、イベントスチルの約半数はパンモロとパターンに乏しい。
 
問題点
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ストーリー進行フラグのわかりにくさ
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特定のアイテムを調べる、特定のタイミングである場所に訪れる等、フラグ自体は決して特殊ではないが、それに関する誘導やヒントは一切ないため、虱潰しに動き回る必要がある。
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黒い手帳で自由に時間移動できることもあり、本来の流れを無視して攻略を続行できてしまう可能性もある。
 
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ボリュームの少なさ
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謎解きに手こずることを考慮しても、想定クリアタイムは5時間程度。サクサク進めていけば2〜3時間でクリアすることもできる。
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アップデートによってサブイベントの回収も容易になったため、イベントコンプにかかる時間もそう長くかからないだろう。
 
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サブイベントについて
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包丁を所持した殺人鬼が彷徨っているにもかかわらず、呑気な世間話を始める。キャラの掘り下げに一躍買っているが、緊張感の無さを感じてしまう。
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ランダム発生のため、初見で全て網羅するのは厳しい。真エンドの条件はサブイベント全制覇なので、アップデート前は根気強く回収する必要があった。現在のバージョンではサブイベントの消化度合いが確認できるようになったため、回収は容易になった。
 
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ゲーム的な都合を感じさせられる点
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本作の舞台はごく普通の一軒家で、部屋数も然程多くないが、音夢とうっかり鉢合わせすることはない。むしろ登場前に予告があるため、追跡者としての恐怖は序盤以降薄れがち。
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追跡を回避する手段として、音夢の気を逸らす罠を設置して隠れるやり方が確実かつ安定するため、次第に見つかるかもしれないというドキドキ感はなくなり、作業感が強まってくる。
 
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死に要素化してる『合成』
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物語中盤以降に使用可能となるが、作成できるものは罠のみで一切使わなくてもクリア可能。
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合成とは言うものの、その実「リモコンに電池を入れる」「薬品を混ぜる」といった簡単な作業ばかり。ある会話イベントで「自分には思い付かなかった」と語る乃愛には失笑せずにはいられない。
 
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一部粗のある謎解き
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
洗面所の南京錠
4つの番号の内3つは容易に判明するため、総当たりで簡単に解けてしまう。
これの何が問題かと言うと、中盤に停電が発生しブレーカーの鍵を探すことになるのだが、ここにその鍵があるため容易にシーケンスブレイクが可能となっている。
停電中にのみ発生するイベントも存在するが、この影響で見逃しやすい。
4つ目の数字のヒントは別の部屋で確認することができ、アップデートでヒント内容も追記されたが、シーケンスブレイクできることに変わりない。
寝室の金庫
数字が刻まれたダイヤル錠を、謎解きで解明した数字に「右左右左」の順番で回すのだが、これはダイヤルをまわす回数ではない。
まず右回しで規定の数字まで回した後、一旦0まで戻して左回しで次の数字まで回す、というのが正しいやり方である。わかりにくい手順のため、ここで詰まってしまうプレイヤーが続出した。
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投げっぱなしで練り込み不足の結末
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
謎が一切解明されない黒い手帳
黒い手帳は当初、音夢が所持しているのだが、乃愛に手渡して時間が戻った後、何故か音夢は手帳の存在を覚えていない。この謎については最後まで一切フォローされない。
この手帳は「持ち主の願いを叶える手帳」で、音夢に殺害されても時間が巻き戻るのは、音夢と和解したいという自分の願いが叶ってないからだと乃愛は推察している。願いを叶える割に回りくどいやり方で、理由付けとしては弱い。
また、手帳は当初破くことができないのだが、終盤では急に破けるようになっている。乃愛曰く「自分がこうしたいと願っているから」とザックリした発言があるのみ。命綱と言えるアイテムを破棄して立ち向かう展開は創作において定番ではあるが、音夢は手帳のことを一切覚えていないため、わざわざ破く必要はないはずである。
真エンドでは、手帳の破片に音夢の涙がかかり、今回の事件の発端となる出来事まで唐突に時間が遡る。手帳の力を発揮するためには使用者の体液が必要なことが作中で明かされるが、唐突すぎる上にギャラリーの一文でも「奇跡が起きた」としか語られない。qureate作品においてご都合展開は今に始まったことではないが、達成感より戸惑いの感情を抱きやすい。
明らかに曰く付きの代物として描写されてきたのに、終盤は急に過去の過ちを正す為の物というようなポジティブな表現をされるので違和感がある。
結局、最後まで黒の手帳については何一つ明かされないまま物語は終了する。
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探索する上で不便な点
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ゲームプレイ中にセーブデータをロードすることができず、一度タイトル画面に戻る必要があり煩わしい。ロード時間が短めなのが救い。
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調べられるポイントが密集している箇所が多く、誤爆しやすい。しかも攻略やキャラの掘り下げに無関係なものが多い。
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ダッシュが音夢に追跡されている時しか使えない。『廃深』もそうだが、qureateはホラーゲームで自由にダッシュさせないことにこだわりがあるのだろうか。
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既読スキップはあるが、未読スキップがない。はじめからスタートするとメッセージの既読状態がリセットされるため、最初から再び遊ぶ際はボタン連打で早送りするしかない。
 
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細かな問題点
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立ち絵のアニメーションはまばたきと口パクのみで、これまでの作品と比べると少々寂しい。その分、イベントスチルではしっかり動いてくれるが…。
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音夢の家には浴室があるのにトイレが無いというツッコミどころがある。バイオハザード2の警察署並の欠陥住宅である
 
総評
2Dドット絵ながら豹変した音夢の恐ろしさ、血飛沫の舞う残虐な描写といった演出はサイコホラー及びタイムループもののツボは一通り押さえており、各キャラクターの魅力もしっかり描かれている。
ストーリーは総じて惹き込まれやすいが結末の練り込み不足は否めず、qureateおなじみのお色気もゴア表現の投入で良さが軽減した要素は評価が分かれるところ。
謎解きやフラグに粗があり詰まりかねない箇所はあるが、短時間でサクッと遊べるボリュームなのでリョナ好き、ゴア表現に耐性があるなら手にとってみてはいかがだろうか。
余談
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本作に出演している4人の声優陣は、全員アイドルマスターシリーズに出演しているという共通点がある。
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また、明音と涼楓の中の人はそれぞれ、『廃深』の美桜と梓と同じ。特に明音を担当した山崎はるか氏は、美桜と正反対のキャラを違和感なく演じており、言われなければ気付かないレベル。
 
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過去作品からのゲスト出演として、『ビートリフレ』に登場する喋る猫こと師匠である「もみじ」のぬいぐるみが登場する。
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2023年12月に、qureateから本作と『デュエルプリンセス』が新作TCG『DIVINE CROSS』に参戦することが発表され(公式ポスト)、その後2024年4月26日に発売された。
最終更新:2024年11月26日 18:07