本記事は3DO版を解説しています。PC版以降(Steam版含む)の内容とは若干の相違があるため御了承ください。


閉ざされた館

【とざされたやかた】

ジャンル FPS
対応機種 3DO interactive multiplayer
発売・開発元 スタジオ3DO
発売日 1995年12月22日
定価 7,480円 (税込)
プレイ人数 1人
レーティング 3DO用審査:16(16歳未満不適)
備考 英語圏のみPC移植あり(Win/Mac)
Steam/gog.comにて原語版・リマスター版配信中(PC版準拠、日本語非対応)
判定 良作
ポイント 3DO社が自社ハード末期に自ら送り出したホラーゲーム
オープンワールドの館を探索するメトロイドヴァニアFPS
少しずつ核心が明かされる演出面が見所
最低難易度でも難所があるシビアな設計
フレームレートと操作性に難あり



YOU SHOULD NOT HAVE COME.
《あなたは、この島に来るべきではなかった……》



概要

3DO末期に版元の3DO社から直々に発売されたFPS。原題は『Killing Time』。同ハード最後の年末商戦タイトルのひとつでもある。
舞台は1930年代、アメリカ東部の孤島に建てられた巨大な豪邸。プレイヤーはこの屋敷に潜入し、エジプトの呪いに蝕まれた血なまぐさい事件の謎を紐解いていく。

当時の海外市場は『DOOM』の成功によってFPSが盛り上がりを見せていたが、今作も数あるフォロワーの一つに当たる。

開発元のスタジオ3DOは名前の通り、3DO社自身が3DO規格向けのゲームを開発するために設けた部門である。
海外ではハード事業撤退後もそれなりのソフト供給も行っていたが、日本での活動はほとんど行われておらず、今作は3DOブランドで日本に発売された数少ないタイトルの一つである。


あらすじ

メイン州*1の岸を後にして、私はマティニカス島*2へと向かっている。
エジプト学者である我が恩人・ハーグローブ博士は、ラムセス王朝*3に伝わる水時計を求めて数回に渡っておこなった、北アフリカへの発掘調査のことをよく話してくれたものだ。
その時計は、永遠の生命を約束してくれる魔力を持つとされ、博士は、一度はそれを発見したと言っていた。
ところが、発掘のスポンサーとなっていたテス・コンウェイの訪問を受けたのち、博士は不思議にも、突然消えてしまったのだ。
私は、博士が消えるまでの足跡をたどり、テス・コンウェイの島までたどり着いた。
コンウェイの館は、その全盛期には贅を尽くした華やかなパーティで賑わった。しかし、1932年の夏至の夜、テスとその取り巻きたちが忽然と姿を消して以来、館は打ち捨てられたままだ。

館の全貌が私の目に入ってきた!天気が悪くなってきたが、もう少しで岸に着く。生命の危険に晒されるかもしれないという不安はあるが、覚悟はできている。

……ん?おかしいな。腕時計が止まってしまった。

(オープニングムービーより)


特徴

  • ゲームの目的
    • 今作の冒険の舞台は、マティニカス島にそびえ立つコンウェイの館。プレイヤーは考古学者となってこの屋敷を探索し、失踪した同僚の謎を追っていく。
    • 何をしたらゲームクリアとなるかは、説明書でもゲーム内でも詳しくは明かされない。プレイヤーはゲーム内の情報をもとにひたすら探索を続け、ゴールを見つけ出す必要がある。
    • 今作における事件の真相は、ゲームの進行とともに少しずつ明かされていく。
      • 道中、館に残された魂が亡霊となってさまよっており、主人公が歩いていると所構わず"Help me……"と呼びかけてくる。近づくと幻影が映し出され、館にいる人物の関係性や、物語の背景が明かされていく(再生中にその場を離れてスルーすることも可能)。
      • ゲーム中、この幻影によって伝えられる"なぞなぞ"を解く場面も存在する。
      • この幻影は実写ムービー。いかにも3DOらしい。
    • ちなみにこの館は武器密輸の現場に使われていたという背景設定がある。道中に弾薬が落ちているFPSならではの現象に対し、めずらしく理由付けが行われている。
  • ステージ構成
    • 今作は『DOOM』のような面クリア型を採用しておらず、代わりに40近くあるエリアで構成されたオープンワールドを探索する。
    • 屋敷の至る所は封鎖されており、どこかに落ちているカギを入手することで通行できる。
    • ゲーム中は、探索しているエリアのマップをいつでも確認できる。
      • 画面上部には探索率も表示されるため、取りこぼしがあった際にもわかりやすい。
      • 一部のエリアは隠し通路扱いとなっており、マップにも道が表示されない。特にゲーム終盤、謎を解いて分岐点を突破するエリアはマップが一切表示されなくなる。
    • 道中にはワープゾーンや近道も存在し、攻略ルートはある程度自由が効くものになっている。
  • 操作
    • 方向キーで向き変更と前進を行い、LRで並行移動。右スティック普及前のFPSにおける一般的な操作方法を採用している。
      • この他、武器変更やアイテム使用といった予備の操作は複数ボタンの同時押しで発動できる。
    • 攻撃は上下に撃ち分けが可能。
      • ただしヘッドショットは無く、この操作の重要度は高くない。今作では主に高低差のある位置の敵に対して活用される。
    • 別売の3DO用コントローラー・フライトスティックに対応している。
  • 武器は5種類。説明書記載の正式名称がやたら長い。時代考証まで徹底しているが、開発スタッフにガンマニアがいたのだろうか。
    • 45口径ニッケル・プレート・コルト"ピースメーカー"リボルバー
      • 初期装備。連射性は高いが威力は低い。
    • 1931年型レミントン12口径散弾銃モデル870ショットガン
      • ゲーム序盤で手に入る基本的な装備。威力がリボルバーより高いが、連射性に劣る。
    • 2番目の銃
      • リボルバーを二丁拳銃として構える。連射力が2倍となるため、一部の敵を拘束するのに便利。その分消耗も早い。
    • 1917年型クラインシュミット火炎放射器
      • 発射位置に炎を飛ばす強力な装備。撃ち終わるまではタイムラグがあり、その間銃口の向きを変えることで放射状に敵を焼き払うことが可能。弾が一部エリアにしか落ちていないのが弱点。
    • 1928年型トンプソン45口径半自動式小銃
      • マシンガン。リボルバー用の弾を連射し、高威力で敵を葬り去る。消耗の激しさが玉にキズ。
    • PC版以降はこれ以外にも装備が追加されている。
  • 今作特有のシステムとして、特殊な効果を持つアイテム・翼の壺を好きなタイミングで使用できる。いわゆる"ボム"に相当する攻撃手段だが、少し変わった仕様となっている。
    • 壺は全部で10種類あり、館のどこかに落ちている。これを拾得した後は、壺の色に対応した能力を好きなタイミングで発動できるようになる。
    • 一度使用した壺はしばらく使えなくなるが、ステージのどこかに落ちている白い壺を拾うたびに再度発動できるようになる。
      • つまり基本は使い切りのアイテムだが、白い壺を見つけるたびに再発動が可能である。
    • ゲーム内の描写によると、館の主であるテスの魂を小分けにして配置したものらしい。
+ 壺の能力一覧
  • 色はゲーム内で表示されるものに準拠。GENOCIDE BOMBと200% HEALTH以外は一定時間のみ効果を発揮する。
    GENOCIDE BOMB 画面に見えている敵を一掃する。
    MAP LOOT マップ表示の際、アイテムがある位置を可視化する。
    8× DAMAGE 攻撃力を8倍にする。
    UNLIMITED AMMO 弾数が無制限になる。
    AUTO MAP マップ表示の際、現在いるエリアの未開部分を可視化する。
    MAP HAZARDS マップ表示の際、敵の位置を可視化する。
    INVISIBILITY 主人公を透明にする。
    MAP SECRETS マップ表示の際、ワープ地点と隠し通路を可視化する。
    200% HEALTH 体力を200%に回復する。
    これを取得すると体力上限が200%に増える特殊効果がある。
    INVULNERABLE 無敵になる。
  • ポーズ画面より、セーブ・ロードがほぼ常時可能。

評価点

  • ホラーアドベンチャーとFPSの融合
    • 今作は「敵を避けつつ相手を仕留める」といったFPSのゲーム性に留まらず、「オープンな館を探索して真相を解き明かす」というアドベンチャーゲームとしての魅力も備わっており、同時期の各種FPSとは異なる魅力を押さえている。
    • 特に象徴的なのは、あちこちに散らばった幽霊からストーリーを紐解いていく展開。
      • 「誰もいない館を探索する」という最低限の情報からゲームが始まり、なぜ館から人が消えたのか、事件を巻き起こした宝は何だったのか等、断片的な情報から少しずつ世界観が明かされていき、ムードを盛り上げていく。
      • 自然と好奇心が高まるため、ゲームを攻略する動機付けとしても上手く仕上がっている。
    • 面クリア型ではなく、オープンワールドを取り入れたのも大きな特徴である。
      • ゲーム性は今で言うメトロイドヴァニアを採用しており、どこに進んでどこから攻めていくもプレイヤーの自由である。至る所にワープ地点が用意されており、思いがけない展開の変化も見逃せない。
      • 進行によっては隔絶されたエリアに閉じ込められる場合もあり、どうすれば戻れるのかわからぬまま焦燥感を煽られることも。こうした魅力も探索型ならでは。
      • 特に3DO版はアイテム収集と関係なくエンディングを見られるため、まさしく『メトロイド』さながらに最短ルートを突っ走る楽しみ方も可能。
    • 特にゲーム終盤にもなると、プレイヤーは思いもよらない側面から焦らされることになる。
+ ネタバレ注意
  • 常時セーブ可能な今作だが、最終エリアは例外的にセーブ不可能となる。
    • しかも入ったら最後、ゲームクリアまで脱出する方法はない。
    • 探索には初見だと1時間は要する広さで、上手く立ち回らないと弾も体力も底をつきそうになる。何分もかけた苦労が一瞬で水泡と化すものの、それまで集めたアイテムを駆使すれば決して突破できないわけではなく、緊張感の強さも相まって達成感も大きい。
  • 攻略技術の把握が前提だが、デフォルト難易度のMEDIUMは調整が丁寧。ゲームシステムの理解度とリソース管理を徹底させられるギリギリの構成であり、高難易度ながらも完成度は高い。
    • 今作は素早い弾避けよりもステルスアクションに重きが置かれている。敵の種類や地理に応じて武器の使い分けが求められるが、それだけに上手く突破すると快感で、試行錯誤に見合った達成感を味わえる。
      • 敵の攻撃力は高いため、うかつに死角を見せると窮地に追い込まれる。未開のエリアへ安易に飛び出すことは許されず、無事に突破するための攻略経路を見極める楽しさがある。
    • 武器のバランス調整も丁寧。基本は『DOOM』同様にショットガンでの攻略となるが、時にはそれでは許されない難所を突き付けられ、武器を使い分ける楽しさを見いだせる。
      • 一見して最弱装備のリボルバーは連射性が高く、一部の敵をノックバックさせて反撃を防ぐことができる。今作の攻略は、これの重要性に気づいてからが本番である。
      • 攻略を進めていくと様々な武器が手に入るが、どの装備も長所と短所がハッキリしており、独自の出番が用意されている。残る弾数も見極めながら、自由度の高い攻略が味わえる。
    • 攻略に必要なリソースもギリギリに仕上がっており、うまく乗り切ると快感。
      • 弾数は底を尽きる寸前に陥りやすく、決して無駄打ちはできない。プレイヤーのテクニックが程よく試される頻度で配置されている。
      • 翼の壺は効果時間が短い代わりに強力な効果のものが多く、タイミングを見極めて使いこなすと爽快感を味わえる。
    • 今作はいつでもセーブ・ロードできる仕様だが、このシビアな調整のおかげで十分バランスが取れている。
      • ひりつく様なスリルは、ホラー映画めいた世界観にもマッチしている。
  • 隠し要素回りの誘導が親切。
    • 壺の能力は収集要素への対応が徹底しており、自由なセーブ機能と組み合わせればあらゆる隠し要素を網羅できる。
      • 昨今のゲームではこうしたUI完備は珍しくないが、当時としてはかなり行き届いているのが特徴。攻略サイトが必須になるような詰み状態には陥りづらく、自力で遊びつくしたいプレイヤーにもありがたい設計である。
  • ロード回りが快適。
    • ディスク媒体のハードとは思えないほどにロード時間がほとんどなく、開発スタッフの技術力を感じさせる。
      • この点はパッケージ裏でも今作のウリとされている。
    • セーブデータを読み込んでから実際に始まるまでにかかる時間は数秒程度。画面切り替えの演出として違和感のない範疇に収まっており、スムーズにゲームを再開できる。
      • 今作は難易度が高いため、何度も死んではやり直しを余儀なくされる。ほとんど待たされる事なくセーブ地点に戻れるため、この点はストレスが少ない。
    • ステージ移動の最中もロード時間は全くない。当時のゲームでこうしたオープンワールドを実現したタイトルは貴重である。
      • エリア間の移動においては長距離を迂回させるようになっており、この間に移動先のエリアを読み込んでいる。おかげでストレスを感じにくい。
      • 移動中にロードさせてストレスを和らげる手法は『バイオハザード』、迂回ルートを設けてオブジェクト読み込みを意識させない手法は『スーパーマリオ64』にも取り入れられているが、今作はこの2作よりも先に作られている。
  • 今作の魅力を語る上では演出面(特にオーディオ部分)も欠かせない。
    • 探索型ホラーというと環境音に近い静かなBGMが流れがちだが、今作はゲームらしい音楽がそれなりの音量で流れてくる。そのクオリティは高く、高揚感を高める方にシフトしているのが特徴である。
      • 静かに恐怖感をそそるのではなく、敢えてハイテンポな曲調で緊迫感を煽ってくるBGMが少なくない。特にタイトル画面はその点が顕著で、ネームエントリー時や放置していた場合に聞けるピアノパートはプレイヤーの緊張感を高める役割を果たしてくれる。
      • 時には暗い雰囲気と真逆の愉快なBGMが流れることもあり、そのギャップがかえって不気味さを演出することも。
    • 音楽以外では、火に焼かれたときのSEも強烈。
      • 風で炎がゆらめく音をバックに、燃えカスがパチパチと音を立ててはじけるのは妙にリアル。一気に体力を削ってくる焦燥感と合わせ、生々しい死を表現している。

賛否両論点

  • 3DO版におけるシナリオの構成
    • 重要なネタバレを含むため、プレイ予定がある場合は閲覧非推奨。
      • Steam版を含む後発バージョンでは改善されている。
+ 詳細
  • どうやらラスボス戦を実装する時間が無かったらしく、3DO版には後味の悪いバッドエンドしか用意されていない。
    • その結末は、主人公が袋小路に追い詰められ、館のモンスターの一員になることが示唆されるというもの。直前に黒幕が明かされるのに、トドメを刺すことができない。
    • 物語後半を丸ごと放棄したゲームといい、最後の最後で肝心のエンディングが流れないゲームといい、3DOはなぜ締まりの悪い作品が多いのだろうか……?
    • 今作の序盤ではテスの亡霊から「島に隠した魂を回収してほしい」と言われるのだが、この手掛かりに従って翼の壺を全て集めてもエンディングは変わらない。
  • とはいえ、今作はホラーを題材としているので、後味の悪い結末しか用意されていないのも筋は通っている。悪く言えば尻切れトンボ、良く言えば衝撃のラストといったところだろうか。
    • さりげなくパッケージ裏のキャッチコピー(記事冒頭記載)も回収しており、理にはかなっている。
  • なお後発のバージョンでは改善されている。きちんと黒幕と戦うことが可能で、物語もきちんと完結する。
    • 翼の壺全回収もラスボス戦突入の最低条件となっており、冒頭のヒントと辻褄が合うようになった。
    • 3DO版のエンディングは、ラスボス戦で敗北した際のバッドエンドとして流れる。
+ 参考記述:3DO版では見られない真エンドの内容
  • 物語の黒幕はテス・コンウェイ。自身を拘束していた水時計を主人公に破壊させ、真の力を手にしたところを破られる。
    • 「味方ポジションが黒幕だった」という体裁ではあるが、ゲームの至る所で怪しさ全開な空気を出しているため、プレイヤーも黒幕だと察せられるようになっている。
  • こうしてテスを倒したのち、エンディングムービーが流れる。
    • 以下は本記事用に日本語訳した内容。

(船に乗り、夜中のマティニカス島を後にする主人公)

ハーグローブ博士の言う通りだった。
水時計の力は本物だった。テスの強欲や裏切りに匹敵する相応の力がそこにあった。

時計の存在を証明できれば、考古学協会も興味を持ってくれるだろう。
明日はまともな装備を整えて島に戻り、時計の作用をまとめて、見つけられる限りの残骸を正確に記録しようと思う。
証拠さえあれば、協会はコンウェイ邸を徹底的に調査するための資金を出してくれるに違いない。
きっと連中は、未だ見たことのない時計に飛びついてくれるだろうな。

(館の空にテスの遺影が映し出され、テスの不穏な笑い声と共に終了)

  • 警戒するそぶりもなく欲に溺れ、いわゆる「死亡フラグ」を露骨に建てていく主人公。その笑い声が持つ意味を考えると、なんとも不穏な結末である。
    • もしくは、続編を匂わす展開と言えなくもない(残念ながら実現しなかったが)。

問題点

  • デフォルト難易度でも難しすぎる
    • 日本国内のレビューにおいて、今作は「難しい」と評されることが多い。難易度は4段階あるが、実は最低難易度のVERY EASYで十分遊べる手応えとなっており、デフォルト設定のMEDIUMを初見で進めるのはかなり厳しい。
    • どの難易度でも、敵は凄まじい頻度で連続攻撃を仕掛けてくる。MEDIUMでは削られる体力もとりわけ大きく、少し逃げ遅れただけで瀕死に追い込まれる。
      • 先述の通り今作は立ち回りが重要で、MEDIUMでは背後を敵に見せないことが必要とされる。どうしても背中を見せる場所は敵を誘き寄せる必要があり、LRによる並行移動は欠かせない。無策に戦うだけでは攻略できないため、基本操作を覚えたてのFPS初心者はMEDIUMで始めない方が良い。
    • またMEDIUMは使い切りの「翼の壺」を活用する前提の調整だが、初見時は使いどころを見極めづらく、結局使わないまま終わりがち。いわゆる「ラストエリクサー症候群」に悩まされる。
      • 一度使ってから再利用するには「白い壺」を取得する必要があるのだが、その配置場所や登場頻度は初見だと掴みようがない。うかつには使いづらく、使用機会を逃しがちである。
    • 以上の点から初心者はもちろん、軽く触ってみて難しいと感じたプレイヤーも、難易度を下げて遊ぶ方が推奨される。
      • VERY EASYだと敵の威力が大幅に下がり、回復アイテムが大量配置されるため、MEDIUMと比べて大分死にづらくはなる。だが、この難易度でも広間で敵に囲まれたら十分死ぬ可能性がある。それだけ今作の敵の猛攻は激しい。
      • VERY EASYでも難所はいくつかある。終盤には「落下すると炎に焼かれて数秒で死亡する」「その上で綱渡りのような足場を通らなければいかず、一撃でも受けたらノックバックで落下」という殺意満々のステージが用意されており、ラストダンジョンも初見で何も知らずに全部回ろうとするとリソースが限界に近づく。
      • 決してヌルゲーになりすぎるわけではなく、探索の楽しさは変わらない(むしろ探索の方に集中できる)ので、FPS慣れしている熟練者でない限りはVERY EASYも十分楽しめる範疇である。
      • 翼の壺も無理に使わずに突破できる難易度なので、こちらで登場タイミングを覚えてから高難易度で遊ぶのも悪くはない。低難易度で先に手掛かりをつかむテクニックは、説明書でも推奨されている。
  • 3DO版のフレームレート
    • 当時のPC向けFPSに比べて処理が重く、海外プレイヤーからは高い頻度で批判の的にされている。
      • 敵を狙う際にコマ落ちしやすく、狙いを定める際に支障がでることも。
    • ただし今作は3DOソフト(それもポリゴンを扱った作品)としては処理速度が極めて速い部類に入る。どちらかといえば、当時のCSゲーム機の限界と言えるかもしれない。
  • 速すぎて制御しづらい移動
    • 向きの変更にしても並行移動にしても、今作はボタンを押した時間に対して過敏に反応し、思いもよらない距離まで動きやすい。
      • 操作性が良いとは言えず、上記に挙げた難易度の高さを悪化させる要因となっている。
    • 並行移動の際は、壁にぶつかるとその角度に合わせて強引に動いてしまい、微細な操作のジャマになる。
  • ゲーム終盤、少女が出題する"なぞなぞ"を解き、答えに対応するイラストが描かれた扉を進む場面があるのだが、その性質上ローカライズに難儀したらしく、少し無理が出ている。
    • 正解ルートは変更せずボイスのみを変更する形で対応したため、かなり単純な言葉遊びとなっており、難易度が低い。一部の設問は「おやじギャグ」と言うべき内容で、ゲーム自体のシリアスな雰囲気にそぐわないものもある。
+ 例(ネタバレ注意)
  • 「9才になる木は?」に対し、「ヤシの木」を選ぶと正解。おそらく「ここのつ」→「ココナッツ」という事なのだろうが、無理があるのでは……
  • 「気合いを入れるときの声」として「牡牛」(おうし!)「入れ歯」(歯→は→はーっ!!)を選ぶと正解。
  • 「このアマ!は英語で?」と聞かれ、「鎧(アーマー)」を選ぶと正解。「英語」ではなく「日本語」の間違いと思われる。
  • 筆頭は「山梨県の昔の名前はなに?」という、世界観ぶち壊しな問題だろうか。ここは甲斐→かい→貝を選ぶと正解。
  • また明らかな出題ミスと思しき箇所も。
    • 「ホに点々を取ると?」という問題があるのだが、カタカナのホから点を取って「十」と解釈し、「銃(じゅう)」の絵が描かれた扉を選ぶと不正解になる。
  • ゲームバランス崩壊ものの裏技が存在する。
    • 気付いてしまうと難易度が大きく下がるため、やりごたえを味わいたい人は封印推奨。
    • 良く言えば救済策でもある。
+ 詳細
  • 今作では、セーブデータのロード直後は敵が登場せず、出現するまで少し時間を要する仕様となっている。そして今作はいつでもセーブとロードができる。このためロード直後に敵のスポーン地点を突っ切り、すぐにセーブしてその場でロード……という手順を繰り返せば、ほぼ無傷で大半の難所を突破できてしまう。
    • これに気付いたが最後、せっかくのゲームバランスがガラッと変わるため、使用は程々に控えるべし。
    • しかしラストダンジョンでは仕様上この裏技を使えないため、安易に頼ってばかりいると痛い目を見る。
  • その他UI等の不備
    • カギの種類が10の色のみで区別されており、似た色を誤認しやすい。
      • 黄緑と緑、青と水色、赤とピンクと紫、オレンジと黄色とレモン色*4といった風に類似の色が混在しており、攻略手順を間違える要因になる。色弱でなくても判別が困難なレベルで、軽い色弱でも攻略に支障が出ると見られる。
      • 使われている色は翼の壺のそれと同じ。特徴欄で記した表を見ると、似た色が多いことを確認できる。
      • 開かない扉を開けた際に必要な鍵の位置が点灯するため、このとき点滅した位置を記録することで対策ができる。
    • カメラと視線の位置が近く、狭い面で3D酔いを起こしやすい。
      • 特に最終エリアは細い道を長時間進むため、顕著な問題となる。
    • 白い壺取得時、効果時間が残っている壺は回復が発生しない。効果が切れるまで待たないと勿体無いのだが、中には5分近く持続する効果もあるせいで待つのが面倒になる。
      • 今作はセーブ時に壺の効果が引き継がれない仕様があるため、その場でセーブ・ロードを行えば回避は可能。
    • 評価点の折りたたみ部分に関して
+ ...
  • 最終エリアは先述の通りセーブ不可だが、クリアまでに30分〜1時間もかかる。
    • ゲームを遊ぶ上でまとまった時間が取れない場合、何気に無視できない問題である。
    • そのうえ、死亡したらやり直しを余儀なくされるため、クリア目前で死ぬと悲惨である。

総評

FPSという新ジャンルが模索される中、探索要素やシナリオ演出を盛り込んで独自の魅力を切り拓いた一作。
実写ムービーによるADV要素はゲームを進める動機付けとして上手く機能しており、3DOらしいコンセプトとゲーム性を両立した数少ない作品の一つと言えるかもしれない。
ゲームバランスも厳しめながら丁寧に調整されており、そのスリルはホラーシナリオとの相性も抜群である。

海外プレイヤーからは3DOの思い出深い良作のひとつにしばしば挙げられており、数少ない日本のプレイヤーからも「難しいけれど面白いシューティング」として時たま3DO関連のコミュニティに名前が挙がる。
荒削りな部分もいくつか指摘されているものの、総合的には比較的良好な評価を得ており、3DO限定のFPSをオススメするうえで外せない一本である。


その後の展開

  • 原語版は発売直後に不具合が発覚したため、メーカーが交換に応じていた。
    • 特定の場面でピエロが出現すると、解像度が大きく下がるとのこと。
    • 交換後のディスクは赤色から黒色へと変更されたらしい。
      • 実際に交換したユーザーは少なかったらしく、修正版は入手困難とされている。
    • なおバグを回避する方法は他にもあり、3DOが直々に出した『3DO Game Guru』と呼ばれる公式チートツールを使うことで可能である。
      • これは日本のゲームで言うと『チョコボの不思議なダンジョン』特典の「不思議なデータディスク」に近い機能を持っている。セーブデータを改竄することにより、上記のバグを回避できる模様。
  • 翌年にはWindows版、さらにその翌年にはMacintosh版が発売された。
    • これらPC版はマップやグラフィックをはじめ細部の仕様が異なっており、3DO版プレイヤーからは何かと賛否が分かれている。
    • 移植にあたっては、3DOのキラータイトルになるはずだった『DOOM』を僅か10週間で移植させた*5敏腕プログラマー、レベッカ・ハインマン氏も参加している。
  • 当初はアクレイムによってPS版の移植が進められていたが、発売には至らなかった。
  • 現在では上記のPC版がSteamで配信されている。
    • 日本語未対応のため、英語のリスニング能力が必須。
      • ゲーム序盤の封鎖ポイントや、最終ダンジョン突入に必要な隠し通路を突破するには、ゲーム中の音声を聞き取る必要がある。英語がわからなければこれを把握できないため、攻略に大きく支障をきたす。
      • こうした致命的な場面を抜きにしても、今作の魅力である「少しずつストーリーが明かされていく」という要素は味わうことができず、会話を聞き取って"なぞなぞ"を解くシーンの攻略は困難を極める(当てずっぽうやアイテム利用によるゴリ押しでの突破は可能)。
      • よって原作プレイ済みでPC版を遊びたいという人でなければ、リスニング能力なしでの購入は避けた方が良い。
      • 日本語で遊ぶなら3DO版の入手が必須だが、出荷本数は少なかったようで、たまに出回ってもプレミア価格で取引されている。3DO本体を所持していても気軽に遊べない状況であり、今作のためだけに3DOを買うのはおすすめできない。
    • レビューによると、 環境によっては起動がままならず、移植の不備やフリーズバグを指摘されているため要注意。
      • 有志により、改善用パッチが配布されている。
    • 2024年7月現在、3DO版プレイヤーによる攻略解説ガイドとレビューが日本語で唯一Steamに提供されている。
      • 前者は軽妙な切り口による解説が見どころで、ゲームを遊ぶだけでは把握できない時代考証も網羅されている。日本で今作を解説しているサイトはほとんど無いため、資料として貴重である(物語の結末を含むためネタバレに注意)。
      • ちなみにこのガイドの執筆者は、日本語でのプレイ手段が少ない『アローン・イン・ザ・ダーク』に詳細な解説記事を提供したユーザー(作品記事参照)と同じ方である。
  • 2024年6月7日、本作のリマスター版が各機種で配信されることが発表され、同年11月18日より配信中。
    • 発売元はNightDiveStudio。同社は以前にも3DOのFPS『Po'ed』*6のリマスター版を配信した実績がある。
    • ゲーム内容はPC版準拠だが、敵の画像を3DO版に変更する機能が搭載されている。
      • 例えば3DO版ではヘタウマな作画の生首が妙なインパクトを誇っており、PC版ではまともなデザインのドクロに差し替えられていたのだが、リマスター版は前者でプレイすることが可能となった。

余談

  • 日本語版説明書は一部の説明がより詳細化され、攻略しやすくなっている。
    • 翼の壺の効果を説明書から確認できるようになり、用途を確かめるために無駄打ちする必要が無くなった。
      • 巻末にはすぐ発動して効果を調べるよう推奨されているが、これは説明が無かった英語版の名残であり、むしろ無暗に使わない方が良い。
    • 巻末のTipsにはCボタンで発動できるギミックに関する説明が独自に追記されている。
      • 実際初見プレイ時は見落としがちな要素であり、後半エリア突入に必須なカギを取るためのヒントが与えられているのは大変ありがたい。
  • 日本の3DO市場には『バーチャル・ホラー 呪われた館』という名前のソフトが別途存在し、なんともややこしい。
    • 開発元も同じで、洋館を舞台にしたホラーFPS、邦題と原題が別物という部分まで一致している(こちらの原題は『Escape from Monster Manor』)。ただし『閉ざされた館』との関連性は特にない。
    • 『呪われた館』は3DOが比較的盛り上がっていた時期のソフトであり、知名度としてもこちらの方が高いため、購入の際は間違えないよう注意。
    • 原題『Killing Time』は時間が止まった世界観を的確に表したワードなのだが、名前を変更してしまった理由は不明である。
      • 日本に同名のバンドがいるため、これが引っかかったのかもしれない(しかも所属は競合相手であるソニーの傘下)。

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FPS ホラー 3DO 1995年
最終更新:2025年01月19日 10:50

*1 アメリカ最北東部に位置する州。

*2 実在の島としてメイン州南部に「マティニカス・ロック島」が存在するが、そちらと同じものかは不明。

*3 B.C.1185-B.C.1070に実在したエジプトの王朝。

*4 日本語版説明書での表記。人によっては幼稚園や保育園で使う画材でしか見ることのない色では……

*5 この移植計画はあまりにも無軌道だったため、肝心の内容は「最低の移植版」と称される惨状に陥っており、レベッカ氏が残した功績は「破綻寸前の計画を奇跡的にまとめてくれた」という部分にある。後年氏が語ったことによると、手がけた仕事の中で一番思い出したくないほど酷いプロジェクトだったのだとか……

*6 遭難した宇宙船の中でシェフがひたすら戦うFPS。奇ゲーとしてもっぱらカルトな評価を受けており、日本ではPS版のみ発売された。