【おうこくのぐらんしぇふ】
ジャンル | クッキングファンタジーRPG | ![]() |
対応機種 | 3DO interactive multiplayer | |
発売・開発元 | サラ・インターナショナル | |
発売日 | 1996年3月1日 | |
定価 | 6,380円 | |
プレイ人数 | 1人 | |
レーティング | 3DO用審査:E(一般向) | |
判定 | なし | |
ポイント |
飯テロ注意! 料理で旅するRPG 心温まるシナリオと新鮮なシステムが魅力 実際に使われるレシピを頭に叩き込んで料理に挑む ひそかにスローライフRPGを開拓していた意欲作? RPGというよりADVに近いゲーム性 練り込み不足で進行に詰まりやすいのが難点 |
3DO末期に発売された、知る人ぞ知るRPG。
一流の料理人を目指す主人公が各地で料理をしながら冒険するという、あまり類例の無いテーマを扱った全年齢向けタイトルである。
発売・開発は、総合商社・日商岩井の子会社にあたるサラ・インターナショナル。企業参入数の多さに重きを置いた3DOらしい、ゲーム畑でない会社による参入作品であった。
当時はテレビ番組『料理の鉄人』ブームのさなかであり、今作もそのヒットに乗じる形で発売された。
監修には同番組の解説役としても知られる料理研究家・服部幸應氏を迎えている。
ちなみに氏はゲーム内で料理の守護神・ハットリとしてカメオ出演を果たしている。
時間と空間をこえたその昔、とあるところに飢えに苦しむ人々がいた。
人々は『デプリバ』という薬で苦しみから逃れようとした。
だが、このデプリバという薬、料理のおいしさを忘れさせ、料理をする気持さえ無くしてしまう、おそろしい薬だった。
そんな中、このグルマン王国を支配しようと企てる者があらわれる。
しかし、この悪巧みに闘いを挑んだのがおいしさを愛する『ロップ』族。
やがて、この長い料理大戦争はロップ族の勝利で幕を閉じ、ロップ族はこのいまわしいデプリバを封印したのだった…。
その後、グルマン国王のもと、『グルマン王国』はおいしい料理にあふれ長く平和な日々が続いたのであった。時はながれある日、王国最高の位『グランシェフ』につきながらも、本当は料理のおいしさを憎んでいたジプシャの領主『エヴァ』。
ついにデプリバの封印を解いてしまった。
エヴァも再びデプリバで王国をわがものにしようとしたのであった。その時、現れたのがこの世でたった一人のロップ族の末裔『ファル』。
チラベルト伯爵から「グルマン王国を救えるのはお前だけだ」と告げられる。
ファルは王国を救うため、そして新たな『グラン・シェフ』を目指してつらい料理の修行へと旅立つのであった…。さあ、旅立て、『グルマン王国』が君を待っている!
(取扱説明書より引用)
雰囲気こそ既存の中世ファンタジーRPGをなぞってはいるものの、ゲーム性は『ドラクエ』『FF』等とは全くの別物。
各地の悩める人々に美味しい料理を振る舞い、新たな物語を切り開いていくストーリーは、他のゲームではなかなか見られない。
RPGと銘打ってはいるが、強制戦闘のボス戦はごく一握りしかなく、戦闘やレベル上げは材料の資金を集める手段でしか無い。
あくまでファルの目標は、皆に「おいしい」という気持ちを思い出してもらう事である。
ぶっ飛んだゲームに見えて、シナリオや世界観の作り込みはなかなか丁寧。
NPCの会話を一つ一つ調べると、街や人物の意外な一面が掘り下げられたりもする。
それこそゲーム好きの子供から、日々料理に携わる大人まで、幅広いユーザーが楽しめるよう工夫されている。
+ | 軽いネタバレ注意 |
+ | 劇中の感想の一例。夜中に見ない方が良いかも |
何度か書いてきたように、今作の方向性はRPGよりもADVに近い。
今作の進行はプレイヤーの単純な暗記力に重きが置かれており、ゲームならではの駆け引きや自由度を求めるには不向きな仕上がりとなっている。
正解となる選択肢の設定が雑で、トライアンドエラー必須の死にゲーとなっている。
+ | 詳細 |
今作で特に問題視されている要素。
まともにデバッグする時間が無かったのか、普通に遊ぶだけで気付くようなバグが平然と放置されている(ここまで挙げてきたレシピ・マップのミスもその一端)。
中には進行困難に陥る物もあり、見過ごせない難点となっている。
+ | ここで次に行うべき行動(攻略のネタバレ注意) |
新ジャンル「クッキングファンタジーRPG」として送り出された今作は、そのオリジナリティに恥じない唯一無二のシステムに仕上がっている。
ハード末期にひっそり出された作品でありながら、印象に残ったゲームとして語るプレイヤーは決して少なくない。
今作は従来のRPGとは違った魅力が売りとなっており、育成や戦闘はそれほど重視されていない。
大きなポイントとなるのは、食を中心に据えた人情味溢れるストーリーと、料理ミニゲームの没入感。
一国の存亡をかけた冒険のさなか、悩める人に美味しい料理を振舞って旅する不思議な物語には、この作品だけの温もりがある。誰もが感じられる食の楽しさがゲームへ落とし込まれており、老若男女を問わず幅広い層がターゲットとなっている。
進行に支障をきたす粗が多く、RPGならではの戦略性が薄いのが難点だが、普通のJRPGでは見られない独特の味わいが詰まっているだけに、避けてしまうのも勿体ない。
料理が好きな人はもちろんのこと、『MOTHER』『ペーパーマリオRPG』のような"黒い任天堂"ライクの全年齢ゲームが好きな人、ラブデリック系やスローライフ系のように戦闘薄めの温かなゲームが好きな人、そして3DOでしか遊べないソフトを徹底的に遊び尽くしたい人ならば、きっと新しい楽しさに出会える一作である。
たとえ料理に触れない人であっても、このゲームを遊んだ後は思わず自炊をしてみたくなるかも……?
+ | 詳細 |
*1 ゲーム内での表記は「チョミラ」。物語序盤でファルと出会う妖精で、料理イベントで調味料を入れるお手伝いをしてくれる。
*2 ゲーム内での解説は特に無いが、この手順を踏むと皮を剥きやすくなる事で知られている。
*3 2022年現在、ネット検索を行うと同様のレシピを数多く確認することができ、この調理法を想定した保存容器も販売されているほど。
*4 強火で衣を固めてしまうと中まで火が通らない事がある。それどころか場合によっては火事の原因になることもあり、実際の揚げ物は中火を使うのが一般的である。このゲームのレシピでは火加減の指定がないため、同じケースの手順同様に強火として設定されていると思われる。
*5 単に先行して登場した可能性もあるが、このシーンの料理はデプリバが混入しており、後のシーンと矛盾をきたしている(ここで料理を食べたキャラはデプリバ反対派で、少しでもデプリバが入っていたら糾弾する旨を主人公に伝えている)。
*6 下記のエンディング動画では「昔見て感動した」という旨のコメントがある。
*7 今作の移動は通常の歩行に比べ、何故かLRボタンによる左右平行移動の方が速く動けるよう設定されている。
*8 よく見ると「ひそかな話題」「兆しを見せている」「声も聞かれる」と保険をかける表現を多用しており、数値的なデータは一切書かれていない。