【あろーん いん ざ だーく】
ジャンル | アドベンチャー | ![]() ![]() |
対応機種 |
PC-9801 FM TOWNS DOS/V 3DO Interactive Multiplayer |
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発売元 |
【PC】アローマイクロテックス 【3DO】ポニーキャニオン ※原語版はいずれもインフォグラム |
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開発元 |
インフォグラム クリサリス(3DO移植) |
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発売日 |
【PC】1993年12月10日 (初出の欧州版は1992年11月) 【3DO】 1994年10月21日 |
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レーティング | 3DO用審査:E 一般向 | |
備考 |
英語圏ではMac OS/iOS向けにも発売 海外PC版はボイスを追加したCD版あり 各機種にリマスター移植あり(日本語未対応) |
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判定 | 良作 | |
ポイント |
『バイオハザード』他あらゆるサバイバルホラーの始祖 ゲームの3D表現に新たな定義をもたらした伝説的作品 クトゥルフの異形に蝕まれた館からの脱出劇 伝統的なADVにリアルタイム戦闘要素も加わった 新ジャンルの草分けながらも演出・カメラワークが秀逸 当時から不親切さを指摘されていたほどシビアな難易度 |
暗闇の中では、誰も助けてくれない。
CS機でまだSFCが現役だった1992年、ゲームを取り巻く技術の進歩に伴って生まれたアドベンチャーゲーム。
化物が潜む洋館「デルセト」を舞台に、プレイヤーは脱出を試みる。
当時発展途上にあった3Dポリゴンを画期的に活かした作品として知られており、現在では『バーチャファイター』『スーパーマリオ64』等と共に、ゲームにおける3D表現の在り方を変えた作品のひとつに数えられている。
同時にゲーム史上初のサバイバルホラーとしてギネス・ワールドレコードにも認定されている(ただし今作は戦闘よりパズル的な謎解きの比重が強い)。
またクトゥルフ神話(*1)を主題に添えたゲーム作品としても知られており、その異形に侵された人々の狂気が克明に描かれるのも特徴である。
本記事で扱うゲーム内用語は、特に断りがない限りPC版の日本語訳を使用する。
3D表現との歴史的な関わりについては、主に『マイコンBASICマガジン』1993年5月号の今作特集記事や、『LOGiN』1993年6月4日号の3D特集記事を参考とした。
ルイジアナ州の郊外にある謎の館“デルセト”。ここで一人の男が首吊り自殺をした。
男の名はジェレミー・ハートウッド。
警察の発表では、自殺の動機について全く触れていなかった。彼は何故、自らの命を絶ったのか。エミリーは、この知らせを弁護士からの手紙で知った。彼女は、突然の叔父の死が、自殺であったことに疑問を抱いた。そして「叔父が遺書か何かをきっと残している」そう信じて“デルセト”に行ってみることに決めた。
一方そのころ、私立探偵のカーンビーは、小さなアンティークショップでグロリア・アレンからの依頼を受けた。それは“デルセト”の屋根裏部屋でピアノを見つけてくれというものだった。
あなたは、「エミリー」か「カーンビー」となって“デルセト”に行き、この呪われた館の謎に立ち向かい、目的を達成しなければならない。
(3DO版取扱説明書より引用)
ゲーム開始時に好きな方を選択し、途中変更は不可能。
冒頭以外のストーリーや難易度に関して、違いらしい違いはほとんどない(*2)ので、好きな方を選んで構わない。
ちなみにカーソルのデフォルト位置はエミリーだが、パッケージやPC版説明書などではカーンビーが前面に出ており、後年の続編やメディアミックスでもカーンビーがシリーズ全体の主人公として扱われている。
+ | 以下、ゲーム序盤のネタバレを含んだ解説 |
+ | ネタバレ注意 |
+ | 詳細な内容 |
+ | 詳細(ネタバレ注意) |
新ジャンルを開拓した反面、今作は遊びにくさも何かと指摘されている。
海外版から約2年後に出た日本向け3DO版説明書でも、既存のゲームに比べて不親切であることが触れられていた。
+ | 難所の例 |
+ | ネタバレ注意 |
+ | 実際に遊ぶ場合の注意点 |
ジャンル初期のタイトル故荒削り感が強くとも、「定点カメラのサバイバルホラー」という一ジャンルを築いた点で偉大な一作。
当時としては美しいグラフィックと不気味な雰囲気は『バイオハザード』などの多くのフォロワーを生み出し、ゲーム史に大きな影響を与えた。
残念ながら日本での展開が充実していないため、「Monkey Island」シリーズ同様日本での知名度は低く、プレイの敷居はやや高め。
また、現在のサバイバルホラーの基準で見れば理不尽な罠など荒削りな点が非常に多いものの、ゲームの歴史に興味があるレトロゲーマーであればぜひとも一度は遊んでおきたい一作。
それ以前の作品に無かった「3D空間の探索」というゲーム性は、様々なクリエイターに影響を与えた。
*1 アメリカの怪奇小説家であるH・P・ラヴクラフトが複数の作品に用いた架空の神話。簡単に言えば「人類の誕生以前に高度な文明を築いた存在があり、その正体は地球外生命である」というもの。既存の信仰を無残に否定する「宇宙的恐怖」を示したもので、ラブクラフト作品の多くはその絶対性に侵された者の恐怖・狂気を巧みに表現している。1920年に生まれてからサブカルチャーに大きな影響を与え、商業・同人問わず『クトゥルフの呼び声』、『エターナルダークネス ─招かれた13人─』、『Amnesia: The Dark Descent』等、多くの二次創作が今なお生み出されている。
*2 主だったものでは、肉弾攻撃のモーションが多少変わる程度。シナリオ面では、屋敷内に置いてあるエミリーの写真を見た時の反応が異なる点のみ。
*3 一見してプリレンダリングCGに見えるが、実際は手書きで丁寧に描いた物らしい。開発段階では写真を使う想定だったとか。
*4 参考までに、1993年に発売された『DOOM』はIntel i486 CPU(16MHzから66MHz程度)を快適なプレイに要求する。
*5 2001年に『Alone in the Dark: The New Nightmare』として発売。日本未発売だが、Nintendo Switch Online特典として配信されているため、海外アカウントとSwitchさえあれば日本でも気軽にプレイ可能。
*6 3DO版説明書の前書きにおいて、PC版に無かった新機能であるかのように説明されているが、実際は元から存在する。この機能を使わないと終盤で詰むのだが、この筆者はPC版を試作品として手に取ったようなので、気づかなかったものと見られる。
*7 二度と回収できない穴に捨てることも一応可能。よほどふざけた遊び方をするのでなければ行うプレイヤーはいないだろうが。
*8 これは『バーチャファイター』開発の足掛かりになったことでも名高い。
*9 有名作品でまともにテクスチャが採用されたのは、1993年末のアーケード『リッジレーサー』あたりから。
*10 実際、今作でこうしたテキスト要素を盛り込んだのは、当時の技術で充分な恐怖感を盛り込めないことを不安視したためだという。
*11 PC版では『神秘の虫』というマイナー寄りの訳が採用されている。
*12 元々海外ではCD-ROM版が後から発売されており、そちらに準拠したものとなる。
*13 今作のRTA走者達は謎解きを無視して強引に回避・突破している。技術の進歩は恐ろしい。
*14 ブラウン管モニターで映らない部分も考慮した値。参考に、『[[スーパーマリオブラザーズ]]』の ちびマリオ(2.5等身)の背丈は画面の約1/13。
*15 実際はランプを手に持たず、部屋の中に置いておくだけで良いのだが、これに自力で気付くのは困難(検索して上位に出てくる攻略サイトすら、この仕様を認知していない)。
*16 3DO版は「タリスマン」と訳されている。
*17 あろうことか3DO版は移植時点ではまだ出ておらず、説明書では発売を待つよう促していた。発売当日に買った人は何を思ったのだろうか……
*18 エミュレータ自体は合法だが、BIOSを本体から吸い出す必要があるため、結局実機は買う必要がある。もちろん無断コピーされたROMのダウンロードは違法なので、ROMは自身での吸い出しが望ましい。
*19 今作の少し後には、同じく様々な作品の草分けとなった『DOOM』『トゥームレイダース』といった3D作品が生まれており、『バイオハザード』のようにカメラワークまで被っているレベルで無ければ元ネタと断言するのは難しい。
*20 「LOGiN」1994年6月4日号より。
*21 「マイコンBASICマガジン」1994年1月号より。
*22 空中浮遊によって特定の壁が抜けられるようになり、迷路脱出に必要なアイテムが不要となるため、その過程で必要な剣士との戦闘が不要となる。
*23 例えば『2』のパートナーであるグレースが登場し、体験版では彼女を操作する。そもそも『2』のデモ版もグレースを操作するものであり、この点もオマージュとも言える。
*24 彼がすべてのFrictional作品を担当したわけでなく、『Penumbra』シリーズは『The Talos Principle』『Subnautica』のTom Jubert氏が、『Amnesia: The Bunker』はPhilip Gelatt氏が担当している。
*25 一応、GNU/Linux環境下で互換レイヤーのProtonを使い、PCGamingWikiのパッチを使うなど、対処方法がProtonDBの有志によって記されている。
*26 機種間によってスコアにばらつきがある。
*27 現在はFully Ramblomaticに改名。
*28 「Worst Game of 2015」は『The Order: 1886』が獲得している。