FOREVER BLUE LUMINOUS

【ふぉーえばーぶるー るみなす】

ジャンル アドベンチャー

対応機種 Nintendo Switch
発売元 任天堂
開発元 アリカ
発売日 2024年5月2日
定価 【パッケージ版】5,478円
【ダウンロード版】5,400円
プレイ人数 1~30人
レーティング CERO: A(全年齢対象)
判定 クソゲー
シリーズファンから不評
ポイント フォーエバー作業
カオスの海「ベールド海」
マルチ重視で別ゲー化
ストーリー進行に必須な凶悪運ゲー
拭い切れない低予算感
過去作で評価されていた要素をほぼ削除
FOREVER BLUEシリーズ
無印 / 海の呼び声 / ルミナス


概要

2009年にWiiで発売された『FOREVER BLUE 海の呼び声』から、実に15年振りとなるシリーズ最新作。

2024年2月21日に配信された「Nintendo Direct ソフトメーカーラインナップ」のトリとして突如発表され、往年のファンを驚かせた。

前2作は一般的な知名度は高くないが、実際に遊んだプレイヤーからは「海洋をテーマとしたゲーム」として非常に評価の高いタイトルであった。長らく続編が出ていなかったことからメーカーからも最早忘れ去られたシリーズと思われた中での待望の復活だったが……。


特徴

潜る度に姿を変える謎多き海域「ベールド海」

  • 本作の舞台であるベールド海は活発な地殻変動により頻繁に地形が変わるという設定。
    • 潜る度に「サンゴ礁」「岩礁」「外洋」「ケルプ」「淡水」「深海」「渓谷」「氷山」「遺跡」の9種類の地形の中からマップが自動生成され、そこに生息する生物も毎回大きく変化する。
      • 不思議のダンジョンシリーズ』などに代表されるランダム生成で遊ぶ度に全く違った体験をプレイヤーに与えるローグライト要素を、本作では毎回異なる景観を作り視覚的にプレイヤーを飽きさせないようにするという一点のみに活用していて、かなりユニークな着眼点を持って作られたローグライトゲームと言えるかもしれない。
  • 通常は1度探索した海域は一期一会なのだが、特定の条件を満たすと浮上した時にオーシャンIDという番号が発行され、これを入力することでその海域を何度でも探索できる。

シリーズ最大の生物の収録数

  • 生物の数は前作の352種類から200種類以上増え578種類。
    • 過去作はフィッシュ・ウォッチングの定番魚が中心の収録だったが、本作ではマグロ8種といった食用魚や日本の川魚などこれまで収録されていなかったタイプの魚が多数追加されている。
      • 中には絶滅した古代生物のような変わり種やValiantというネームド生物も…。
    • 数だけでなくモデルの質もフルHDになったことで、SD画質だったWii時代に比べ一気にクオリティがアップした。
  • もちろん本作にも全ての生物に解説が用意されている。しかもサポートAIのSerAが音声付きで図鑑を読み上げてくれるので難しい漢字の読めない子供でも安心。
  • また本作に登場する生物は同じ種でも1cm単位で体長が異なり、数値に応じて実際のグラフィックのサイズも変化し一定以上のサイズになると金銀銅の冠が付く。

最大30人によるオンラインマルチプレイ

  • 前作までの通信要素は申し訳程度に最大2人のマルチプレイが用意されていただけだったが、この15年のゲームを取り巻くプレイスタイルの変化に合わせマルチプレイがメインのモードに昇格。
    最大30人という大規模なプレイヤー数で海中探索をすることができる。
    • しかし『ゼノブレイドクロス』のような所謂ゆるい繋がりのマルチなので、交流を強制されることはなく、前作までのような完全なソロモードも用意されている。

システム

  • アンベール
    • 本作のタイトルにもなっている「ルミナス」(光り輝く)を象徴する要素。
    • ベールド海に生息する生物は「世界樹」と呼ばれる巨大サンゴの影響で青白い光を纏っていて、Lボタンを押して生物に注目し光を剥がし元の色を取り戻してあげなければ識別することができず、この状態にして初めてその生物の名前や図鑑説明を読めるようになる。この行為を作中ではアンベールと言う。
      • Lボタンを長押しすることで円形のゲージが1周するまでの間、周囲の生物をまとめてアンベールすることができるので、これを駆使して大量の生物を本来の色を取り戻させていくのが本作の主な目的。
      • 前作までは魚に注目する時は1匹ずつ、ポインターを合わせてAボタンを押さなければならなかったが、まとめて図鑑に登録出来るのでこのシステムにより注目の煩雑さも(一見)解消されている。
    • マップでは生息してる生物の全体数からアンベールした生物の割合を示すアンベール率を見ることができ、これが一定値を超える毎に後述の調査報告でボーナスを得られるので、下記のアンノウンパルス探索ミッションの達成を繰り返しながらこれを目指すのが1つの指針となる。
  • アンノウンパルス探索ミッションとUML
    • アンベールを繰り返しているとアンノウンパルスと呼ばれる信号を発している生物に遭遇することがある。
      • これを見つけるとアンノウンパルス探索ミッションがスタートし、他のパルスを発している生物のいる場所に橙色の円の目印が付く。
      • 円を頼りに全ての生物を発見するとミッションクリアとなり信号の主だった未確認の大型海洋生物UML(Unidentified Marine Life)がムービー付きで出現する。
      • UMLは全8種類存在し、これら全てに出会うことも本作の大きな目的となる。
    • 出現から10分経過すると姿を消してしまうが、更に5分経過すると再びパルスを発する生物が現れ、再度ミッションをクリアすることで何度でも同じUMLに遭遇できる。
    • なお、各種UMLには低確率で出現する名前と色が異なる特殊な個体がいる。
  • ツクモ盤
    • ベールド海に眠る謎を解いていくことで埋まっていくアチーブメント的な要素。
    • 名前の通り99の謎があり、大きく分けて

      ・各種UMLと遭遇
      ・特定のスポットに辿り着く
      ・石板、キューブを発見する
      ・円盤に特定の生物を連れていく
      ・特定のお宝のサルベージ

      の5パターンが存在する。
  • エモートタグ
    • 生物やサルベージアイテムに対し、マップに目印となるアイコンを付けられる機能。
      1人につき10枚まで貼ることができ、上限を超えると古いものから消えていく。
    • 全210種類存在し、持っていないものはマルチプレイで他のプレイヤーがタグを貼った対象物を見つけることで入手することができる。
  • ラッキーエモートタグ抽選
    • 画面左上のゲージを貯めると開始される、基本システムに組み込まれているはずなのにルールがさっぱり分からないエモートタグを使った謎の遊び。詳しくは問題点「存在意義のないラッキーエモートタグ抽選」にて。
  • サルベージ
    • マップを探索していると右上のランプが点滅することがあり、その付近を探すと水底から泡が吹き出る地点を発見できる。
      近づいてAボタンを長押しすることでその海に沈んでいたアイテムを回収可能。
    • 拾ったアイテムはお宝図鑑に記録される。総数は340種類。
  • 連れ泳ぎ
    • 連れ泳ぎコストを消費して最大5匹まで、その海域に生息する様々な生物を連れ泳ぐことができる。
  • そのほか、前作から続投したものとしてカメラ機能がある。

モード紹介

  • みんなでダイビング
    • 本作のメインであるマルチプレイモード。最大30人のプレイヤーと同時にダイビングすることが可能で、マップを開くと表示されるセッションコードを教えることでそのプレイヤーを現在探索中のマップに招待することができる。
    • 最初はそれぞれ1人からのスタートだが、他のプレイヤーに遭遇すると「シェアラー」という情報を共有する仲になり、マップに貼ったエモートタグの情報が表示される他、そのプレイヤーがいる位置にファストトラベルすることが可能となる。
      • シェアラーが増えれば増えるほど効率的に探索できるので、序盤はマップが埋まっているエリアに向かい他のプレイヤーを探すのがセオリー。
    • マルチプレイ中はアンベール率とマップ踏破率が共有されるのでソロプレイ時に比べて大幅に効率よく探索することができ、ミッションもクリアしやすくUMLとも楽に出会えるようになっている。
    • 1時間の活動制限があり、この時間が過ぎると強制的にセッションが解散となる。
      • マップ踏破率が80%を超えると報酬としてオーシャンIDが発行されるので制限時間内に協力してマップを埋めることが1つの目標となる。
    • なお、マルチではリアルタイムで活動制限の時間が経過するまではそのマップ以外探索することができず、別なマップで探索を行いたい時は5000コイン支払う必要がある。
  • ひとりでダイビング
    • みんなでダイビングとは逆に1人でじっくりと探索ができるソロプレイモード。
      • 過去作のタンクのエアーやマルチの活動制限にあたる要素がなく、時間を気にせず永遠に潜り続けることができる。
    • しかし、シェアラーがいないのでファストトラベルできない上、アンベールもマップ踏破もアンノウンパルスミッションも全て1人でこなす必要があるので探索の効率は大幅に悪くなってしまう。
      • だが通常だと他のプレイヤーと取り合う形になるアンベール数を総取りでき、マルチとは異なり踏破率に関係なくIDが発行される他、現在探索しているマップの破棄にも制限がないというメリットがある。
    • オーシャンIDを入力して任意のマップを探索できるのもこのモードのみ。
  • イベントツアー
    • 毎月不定期に1度開催される特別な海域を探索できるイベント。
      • マップが固定で確実に目当ての生物に遭遇できる代わりに、制限時間はみんなでダイビングより更に短い20分。
  • 調査報告
    • 浮上すると全モード共通でその探索で行った活動に応じてポイントがスコアとして集計され経験値とコインに換算される。
      • 経験値が一定数貯まるとダイバーランクがランクアップし、コインはカスタマイズでアイテムを引き換えるリソースとして使う。
    • シーズン毎に全プレイヤーの稼いだスコアがランキング付けされるという競走要素がある。
  • 調査本部
    • ストーリーにあたるモード。chapter1〜6に分かれたミッション制で全15話。
      • なお、このモード以外で探索中にサブイベントが発生するといったことはない。
  • カスタマイズ
    • 調査報告で稼いだコインを消費して他のプレイヤーとのコミュニケーションで使うジェスチャーやダイビング中の見た目を変更出来るアイテムを購入したり、実際に着せ替えたりできる。

問題点

薄っぺらなカオスの海域「ベールド海」

  • 本作の特徴であるランダム生成マップは、前作のように南方のサンゴ礁やアマゾンの大河といった大まかな海域のテーマがあって、その中から地形をランダム生成する…のではなく、9種類ある地形の系統を整合性を考えずくっ付けてしまうという非常に乱暴な方法で生成されている。
    • これが何を意味するかというと氷海の傍に水温の低い環境では存在しないはずの造礁サンゴがあったり、海水域のど真ん中に海と地続きの淡水魚の生息する洞窟がある等、不自然なめちゃくちゃな海が出来上がるのである。
  • 地形の構造自体も毎回自動生成されるのではなく、9×9のマップの中に予めパターンが用意された4×4の大サイズの地形(5種)1つと10個前後の2×2の中サイズの地形を繋ぎ合わせるという仕組みなので、何度か潜るとすぐに向きが変わっただけの同じ地形を頻繁に目にすることになる。
    • 中サイズの地形に至っては同じマップの中でも同じ地形が複数配置されることもままあり、バリエーションは極めて少ない。
      • それらの地形を繋ぐ空白地帯には汎用地形として白い砂底が広がるだけの外洋エリアや、岩肌が広がるだけの岩礁エリアが雑に配置され、そのこともマップの無機質で空虚な印象を強めている。
  • こんな仕様なので本作で表現された海はとにかく作り物っぽさが拭えず、「潜る度に姿を変える謎多き海域」という公称のファンタジーな響きより、「複合的な環境を再現する設備のある実験施設の水槽」とでも表現した方がしっくり来てしまう。
  • 前作まではダイビングスポットという各海域の設定に裏打ちされた見せ場となる印象的なロケーションが多数用意されていたが、本作の海は海域としての設定がこれといって無いので、イベントも背景設定もないランダム生成で選ばれただけの名も無き地形となっている。
    • 海に沈む沈没船や深海の底から吹き出る溶岩など、前作にあったようなロケーションや奇景を見ることはできる。しかし、ただ存在するだけなのでアセットを適当に切り貼りして作られたマップを眺めるのと変わりはなく、見つけても全く感情を揺り動かされない。
      • 思うに前2作の海洋表現が高く評価されていたのは、ロケーションの見せ方、海域の設定、生物の配置、そこで起きるドラマも含めた総合的な絵作りの上手さがあったからこそではないだろうか。
        地形のランダム生成という飛び道具に逃げ、その魅力を自ら投げ捨ててしまったのは愚策としか言いようがない。
      • そして次に挙げる問題点によりこれは確信に変わることになる。

水域も時代もガン無視の滅茶苦茶な生態系

  • 生物も地形毎にざっくりカテゴリ分けされた種がランダムで配置。地形の生成が上記の通りなので当然ながら魚も適水温や深度、海水、淡水の違いを無視して1つの海域を泳いでいて、生態系が完全に崩壊している。
    • 塩分濃度が違えば海水魚は体内の水分が抜け、淡水魚は逆に体外に水分を排出できず死んでしまうし、水温が合わなければ弱ってしまう。
      生物とは本来そのくらいデリケートなものであり、現実にいる生き物が主題のゲームとして最低限の生態の表現ができておらず、あまりにも不適切。
  • 一応、ゲーム中のtipsやストーリーでは「ベールド海は異なる塩分濃度の水域が繋がり合っている」という理由で、1つの海域に海水・淡水・汽水の生物が同時に生息していることが説明されている。
    • しかし、マップが自動生成の本作でそのような理由付けをしても考証的な裏付けのない単なる都合のいい設定にしかならず、説得力は皆無である。
  • 地形毎に出現する生物の選定もいい加減。
    • 例えば淡水エリアではアマゾンの熱帯魚と日本、アジアの川魚が一緒くたにされて出てくるので、イワナやタナゴの後ろでピラルクーやドラドが鮮やかな体色を見せつけながら優雅に泳いでいる、といった生き物好きが頭を抱えそうな光景をしばしば目にする。
    • 深海生物の代表格のダイオウイカは何故か汎用地形の外洋にも出現する設定になっているので、限られた数しか配置されない深海より浅瀬の海の方が明らかに遭遇しやすい。
      • 確かにダイオウイカは浅瀬での目撃例が度々ニュースになる生物ではある。図鑑にもこの旨が触れられているので、こうしたシチュエーションを表現したかったのかもしれないが、特にイベントもなく浅瀬で頻繁に出逢っても設定ミスとしか思えないだろう。
    • 他にも遺跡の台座にひっそり鎮座するアメリカザリガニなど、理解に苦しむ生物の配置は枚挙に暇がない。
  • そこに一段とリアリティとレアリティをぶち壊しているのが遺跡エリアと一部の深海エリア。ここにはエラスモサウルスやアンモナイトといった古代の生物が生息している(!?)のだが、このようなエリアにいる生物も特別でもなんでもなくごく普通に他のエリアと組み合わされ現代の生物と共存し、プレイヤーの手で写真を撮影したり連れ泳ぐことができる。
    • 確かに前作でも首長竜の生き残りの「シーサーペント」や、カンブリア紀に生息した「アノマロカリス」といった生物が、下記のレジェンド生物の一匹として存在していた。
      • しかし、これらはUMAとしてプレイヤーの手が触れられない位置にひっそりと現れる「いるかもしれない」といった存在であり、こんな雑な見せ方では完全にシリーズの趣旨から外れている上にロマンも何もない。
      • 百歩譲ってこのような生物を本格的に出すにしても『アクアノートの休日2』の古代の海のように、古代生物しか出現しない特殊な海域といった扱いで分けることは出来なかったのだろうか。
    • これだけ異質な存在が出てくるからには、ベールド海の謎の鍵を握る重大な秘密のある場所なのでは? と思うかもしれない。
      • しかし、ストーリーで訪れた際のイベントは、「このエリアを公開して古代生物を身近に感じてもらえれば、絶滅危惧種の保護にもっと関心を持ってもらえるな!」といった感じの実に能天気なもので、特に意味はなかったりする。
  • 更に『無印』のメインストーリーの目標となるマナウライ共和国に伝わる伝説の白鯨「ホワイトマザー」や、『海の呼び声』に登場するキケロス海峡を根城とする人食い鮫「タナトス」など、過去の作品のシナリオで印象的な邂逅をしたり、条件を満たすことで出現したレジェンド生物と呼ばれる特殊個体も、住処などの背景設定を全て無視してValiantというアンベール時のスコアが高い魚として、その辺を普通に泳いでいる。
    • しかも、これまたランダム生成により適当に配置されてるだけなので、1つのマップで同じ個体が2匹以上出てきたりする。
      • ポケモンでたとえるなら伝説のポケモンが一般ポケモンに降格して草むらからポンポン飛び出してくるようなもので、ファンサービスというにもぞんざいな扱いにシリーズファンから批判が殺到した。
  • このおかしさを「ゲームだから」の一言で片付けるにしても、本作の魚が泳いでいるのは『どうぶつの森』や『釣り先生』のようなリアリティを求める作風ではないことが一目で分かるデフォルメの効いた世界観の海ではなく、(表面上は)フォトリアルな世界観の海なので尚更違和感が強く、海中の没入感を大きく損なう点になってしまった。
  • 前作までは、あからさまに不自然な配置をされている生物は大抵何らかの理由があったり、図鑑に本来の生息域ではない旨の説明があったのだが、本作にそのような配慮はほとんどないので魚を観察する教養ソフトとしても不誠実。
    • ごく自然に淡水魚や古代生物が海の中を泳いでいるので、子供や生物の生態に無関心な人に間違った知識を植え付けてしまわないかが心配である。
  • 『海の呼び声』には川に逃がされてしまった海水魚のアトランティックターポンを保護するというイベントがあるのだが、そこでは異なる水域の生物が混在してしまうことの問題について「生態系へ悪影響を及ぼし、水質の違う場所に追いやられるとその生物自身も弱ってしまう」というリアルな生物を扱うゲームとして至極真っ当な解説がされている。
    • あくまで外来種を逃がす行為に対しての話で、元から生態系がおかしい本作とは事情が異なるが…本当にどうしてこうなった?

ランダム生成による探索の味気無さ

  • このようなシステムになった結果、ランダム要素との兼ね合いが難しかったのか、ズームポイントのシステムが廃止されそこにいたミクロな生物群、コバンザメのような特定の生物と共生している生物、ストーリーを進めたり特殊な条件を満たさないと出現しない生物など複雑な遭遇の仕方をする生物は存在しない。
    • またクジラやシーラカンスなど、前作までなら初遭遇時にイベントが発生したような生物も一般生物として雑に配置され普通に泳いでいるので、珍しい生物に初めて出会った時の感動も皆無になってしまっている。
      • この探す手間無しの生物のバーゲンセールによりせっかくの過去最大の収録数を誇る図鑑も、大サイズの地形5種のマップをそれぞれアンベール率80%になるまで探索すれば、それだけで半数以上が埋まるほど簡単に集まってしまう。
        あとは取りこぼしを求めて延々と作業的にアンベールし続けるだけで、魚探しの楽しみはほとんどない。
    • 適当に探索するだけで次々図鑑が埋まっていく一方で、特定の生物と確実に遭遇したい時は生息している場所や時間帯を合わせるといったリアルなダイビングに則った手間ではなく、出現するパターンを引くまでマップをリセマラするか攻略サイトなどでオーシャンIDを探して入力するという手間が必要。
      • 果たしてこれはスキューバダイビングで魚を探すゲームでやることなのか?
  • 尚、期間限定開催のイベントツアーで招待される海域だけは前作までのような固定マップである。
    • しかし、このために一から作られた特殊な海域や限定の生物が用意されている訳ではなく、通常1つしか存在しない大サイズの地形が2つあるといった地味な違いの「いつものランダム生成マップ」をベースに、マップと生物の配置とサイズが固定されているだけ。
    • そこに生き物を並べて文字や記号を描く生物を冒涜した開発者のお遊びを眺めたり、確実に出現する大きいサイズや通常群れない生物の群れ、目玉となるレアな生物を見つけることを楽しむという代物で、前作までのマップの魅力には程遠い。
      • そればかりか申し訳程度に存在していたランダム生成によるマップの新鮮さすら失っているので、はっきり言って1度見たら飽きる内容で見事にランダム生成マップと固定マップの悪いとこ取りと相成った。

地形の整合性を無視し、水域、時代問わず様々な生物が混在する混沌とした海は好意的に捉えればゲームならではの表現ではあるし、1回のダイビングで多様な生物を見ることができるので最初のうちは楽しく探索が出来るかもしれない。
しかし、インパクトがあるのは最初だけなので数時間もプレイすればすぐに慣れてしまい、その衝撃はどうでもいい景色としてマップを埋めてアンベール率を稼ぎパルスを探す作業の中に埋没していってしまうことだろう。

まとめると、安直にランダム生成要素を取り入れ毎回変わるマップで珍しい生物を簡単に見られるようにした結果、シリーズの魅力であった作り込まれたロケーションや生態系の表現、生物を探しにいく楽しさといった要素が全てスポイルされ、毎回新鮮な気持ちで海に潜れるどころか、無機質な海で乱雑に置かれた魚をただ見るだけの味気ないダイビング体験に成り下がってしまった。

後述のツクモ盤についてもこのランダム生成が原因で致命的なゲーム性の破綻を引き起こしており、この要素の存在が持続的な面白さに繋がっている部分がとにかく乏しい。


ゲームシステムの問題点

根本的なゲームデザインが抱える退屈さ

  • 本作のゲームサイクルは端的に言えば

    アンベールで魚を包んでいる光を解除しながらマップを埋める。
    アンノウンパルスを発している魚をアンベールし、アンノウンパルス探索ミッションがスタート。
    ミッションをクリアして現れたUMLをアンベールし調査完了。

    このタスクを繰り返すだけである。
    • パルスを発している魚を探す以外のミッションが発生することはなく、UML出現以外のイベントが発生することもない。
    • ここにサブ要素として「未発見の魚を探す」、「サルベージアイテムを探す」、「ツクモ盤を埋められるオブジェクトを探す」という遊びが挟まれるが、いずれも探させ方に工夫がなく、ただ作業的に目標の明示されない「何かを探す」タスクをこなすだけなので、遊ばせ方に拡がりがない。
      • 他にゲームとしてできることと言えば写真を撮るか、マルチでシェアラーになれる相手を「探し」、ジェスチャーやエモートタグを使いコミュニケーションを取ってみるくらいのものである。
    • そして本作は、スキューバダイビングで海を探索し生物の観察や景観を楽しむゲームとしては、先述の問題により魚の数とグラフィックがフルHDになったこと以外の点において純粋にクオリティが低く、『無印』のようなゲーム性を度外視した癒しの環境ソフトとしての割り切りもしづらい。
  • つまりメインとなる遊びの幅がとにかく狭い。
  • この問題点はソロでもマルチでも変わらず下記の様々な要因により、ゲーム全体を通じて作業的で単調な印象を更に強くしてしまっている。

ビジュアルとプレイフィール、共に最悪なアンベール

  • 魚を包んでいる光を剥がすことで元の色を取り戻させることがゲームの主な目的なのだがこのようなシステムにした結果、アンベールしない限り魚は常に青白い光に包まれた状態で泳いでいる。
    • この魚たちによって作り出される景観はとても無機質で、生態系の問題と併せて生物を観察するダイビングゲームとして殊更海中のリアリティや没入感を損なっており、このようなゲームデザインにしたこと自体が欠陥と言わざるを得ない。
  • この光はゲーム内のカメラ機能で撮影した写真にも反映されるので、写真を撮る時は撮りたい対象の生物だけでなく、周囲の魚もアンベールしておかないと心霊写真のように青白い魚が写りこんで台無しになってしまう。
    • 前作に存在したアンベールに近い要素である魚を癒す装備「PULSAR」は、撃ち込むと逆に生物が光を帯びるようになるのだが、この光は写真には反映されず邪魔にならないよう配慮されていた。何故こういう配慮が出来なくなってしまったのだろうか…。(参照)
  • アンベール率を80%まで稼ぐことがゲームの主目的であるにもかかわらず、アンベールと魚への注目が同じ操作に割り当てられてるので、アンベールがしたいだけでもいちいち発見済の魚に注目しなければならず、操作性とテンポも最悪である。
    • この問題を回避するため、数時間もプレイすると自然にLとBを交互に押してアンベールしながら注目に切り替わるのをキャンセルし、アンベール率だけを稼いで泳ぐようになっていく。
    • 前作までは1度図鑑に登録したら以降、魚に注目するかは任意だったので、恐らく意図としてはアンベールという操作を通じてプレイヤーの視線を能動的に魚へと向けさせたかったのだろう。
      • しかし、アンベール率を効率よく稼ぐことをゲームの目的に盛り込んでしまった結果、これが完全に裏目に出ていて、間違って発見済のどうでもいい魚に注目しないよう注意して泳ぐ、ダイビングゲームとして何かがおかしい体験と化してしまった。
  • またアンベールから魚に注目すると画面が一気にズームになり、注目した魚の一覧をスクロールするとそれぞれ生物に対してカメラがヌルッと切り替わるので画面が激しく動くことになり、3D酔いの原因になりやすい。

面倒なアンノウンパルス探索ミッション

  • UMLの遭遇に必要なアンノウンパルスミッションで表示されるパルスの目印の円は踏破されたマスにしか表示されないのだが、1つ見つける度に表示範囲が狭くなり、探しにくくなる嫌がらせのような仕様。
    最後の1つになると9×9のマップの中の1マスの更に¼のサイズまで小さくなってしまう。
    • こんな仕様なので人手の多いマルチならまだしも、ソロの場合だとまずは1人で踏破率を80%まで稼ぎマップを全開放しないと、目印の位置を把握すること自体が難しい。
  • しかし、本作のマップは毎回新たに探索させるゲーム設計にしては非常にだだっ広く、1人で80%を目指すとなるとローラー作戦で1マスずつ上下に往復する埋め方でも2時間近くかかってしまう。
    • ミッションをクリアしたあと、どのUMLが出現するかも運なのでこの作業を何度も繰り返すのは非常に苦行じみていて、正に賽の河原。ソロプレイでまともにこの要素を楽しむことは不可能と言っていいだろう。
  • UMLの存在がオンラインのやり込み要素ならばそれでもまだ問題では無かったのだが、後述のツクモ盤のためにUML全8種類+レアUML3体との遭遇は避けては通れないので、ソロでも楽しめると言いつつ事実上、Switch Online未加入のプレイヤーはお断りのゲーム設計になってしまった。
  • アンノウンパルスを発している魚に接近すると近さに応じてコントローラーがHD振動で震えるので、目印のエリアに辿り着いたらこれを頼りに探すのが効率よくミッションをクリアするコツなのだが、当然ながらHD振動非対応のコントローラーを使用しているとこの攻略法が使えない。
    • そのため、ホリコンなどサードパーティ製のコントローラーは元より、Nintendo Switch Liteでプレイしていると難易度が跳ね上がってしまう。
  • Ver.1.0.1パッチで改善されたものの、発売当初はUMLの目印の橙色の円は誰かが発見すると消えるという仕様だったので、最初に発見した人がエモートタグを付けないとどこにいるのか初見では見当も付かない状態になり、他のプレイヤーがそのまま見つけられずに制限時間を迎えるということが多発していた。
    • また橙色の円がぼんやりとした色になっていて、円の視認性そのものも非常に悪かった。

鬱陶しい通知UI

  • 探索ミッションが進行する度にサポートAIのSerAの音声アナウンスで、「今映像にノイズが……これは分析結果でました。間違いありません。アンノウンパルスを観測しました。」といったメッセージが、探索中も図鑑を読んでいる最中も写真の撮影中も、気にせず挟まれ強制的に作業が中断される。
    • 特にミッションをクリアしてUMLの出現ムービーが流れるまでのメッセージとインターバルはその間1分近く、移動以外の操作を受け付けなくなるので非常に鬱陶しい。
    • アナウンス自体もワンパターンな定型文が繰り返されるだけなので全く面白味がなく、すぐに聞き飽きてしまう。
  • アンベール率や踏破率が一定値になったり、シェアラーが増えたりすると画面右中央に通知が表示されるのだが、この通知は他の何よりも最優先で表示されるので、図鑑を読んでいる最中もテキストの上からお構い無しに表示され文字と被って邪魔。
    • あってもなくても困らないような通知なのに、この通知単体を非表示にするオプションがなく-ボタンで全てのUIを一括で非表示にすることでしか消すことができない。

味気ないサルベージ

  • 『海の呼び声』では前身の『EVER BLUE』シリーズを彷彿とさせる、この要素だけでゲーム1本作れそうなほど凝った内容になっていたサルベージも『無印』に毛が生えたようなシステムに退化。
    • レーダーの反応を頼りに位置を突き詰めていく工程や、所持数制限によるサルベージアイテムの取捨選択の駆け引き、正体不明のアイテムを鑑定するワクワク感などが全てオミットされてしまった。
      • レーダーに関しては簡略化されつつも存在しているが、システムを理解出来なくても遊べるよう配慮したのか目視で十分発見可能なので空気。
  • 『無印』のようにサルベージアイテムからサブイベントが派生するといったこともなく、拾ったアイテムは図鑑に登録されるだけなので、調査報告のスコアに加算されるだけのポイントアイテムと化している。
    • サルベージする過程がただの作業でアイテム自体にも意味がないのでは、ただのゴミ拾いと変わらないだろう。
  • マルチプレイでは、サルベージ品を取得しても他のプレイヤーの世界では無くならず位置が共有される仕様なので、協力してサルベージアイテムにエモートタグを付けることで、より効率的なサルベージを行うことができるが、タグの位置に向かうだけのゲームになるので余計に作業感が増すという弊害を生み出してしまっている。

不便過ぎるオーシャンID

  • 発行されたIDはゲーム中で履歴が残されたりせず、調査報告時に表示されたものを任意でキャプチャーボタンを押し、スクリーンショットを撮影してアルバムに保存して見返すというまさかの仕様。うっかり撮るのを忘れるとその時点で永久消滅である。
    • しかも、そのマップに何があったかを記録することもできないので、プレイヤーが各自でメモをとって覚えておかなければならない。
      • そのため、本来この機能で開発者がやらせたい遊びの1つだったと思われるSNSなどを通じた「このマップの座標に〇〇があった」といった情報の共有が非常に面倒。
    • IDの入力履歴を残すことも出来ず、別なマップの探索を挟んでしまうとそのマップの探索率は破棄され、1からの探索になってしまう。

面白味の乏しい連れ泳ぎ

  • 過去作ではパートナーになったイルカと一緒に泳いだり、一部の小型の魚に餌をあげたりスキンシップを取ることで、その生物に懐かれて一時的にプレイヤーのあとを着いてきてくれるという要素があったのだが、本作では生物と仲良くなるなどという面倒な手間は一切必要なく、+ボタンを押してその生物に応じた連れ泳ぎコストを消費するだけでお手軽に着いてくるようになった。
    • 制限もコストの上限以外はなく最終的にUML以外どんな生物でも連れ泳げる。
  • しかし、そこを簡略化して生物と触れ合っている感を無くし機械的に連れ泳げるようになったところで、それの一体どこが面白いというのだろうか?
  • 一部のツクモ盤に特定の生物を円盤まで連れて行くというタイプの謎解きがあるだけで、過去作のアニマルバディのイルカのように掴まって高速で泳いだりサルベージアイテムの捜索を手伝ってくれるということもなく、本当に機械的に連れ泳げるだけなので、はっきり言ってやることが無い。
    • それらのツクモ盤を埋めたらあとはせいぜい好きな場所で写真を撮るか、マルチでサメやクジラを連れ泳いで他のプレイヤーを驚かせてみる(誰でも出来るけど…)のが関の山だろう。
  • 地形に引っかかったり、ドルフィンキックの高速泳法で距離が離れると連れ泳ぎが勝手に解除されてしまうのも煩わしいポイント。
    • この仕様のため、連れ泳ぎ中はこまめに後ろを振り返って着いてきているかをチェックしなければならない。
  • ちなみにダイオウグソクムシなど泳ぐことが不可能な一部の生物は、アクセサリーのようにプレイヤーのタンクの上に乗っかって着いてくる。
    • この点だけはバカゲー的に評価する声もあるものの、配信やSNSの話のタネになるくらいでゲームとしての面白さや生物との触れ合いの表現には特に繋がっておらず、やはりランダム生成と同じく「インパクトがあるのは最初だけ」の安直な要素と言えよう。

必要性の薄いレベル要素

  • 『海の呼び声』では一定時間海に潜るとダイビングレベルが上昇し、呼吸法の効率が良くなってより長時間のダイビングが出来るようになるという分かりやすい成長要素があったのだが本作にエアーの概念はない。
    • では、本作のレベルにあたるダイバーランクになんの意味があるのかというと、一定レベル毎にカスタマイズで貼れるシールの枚数が最大5枚まで増えて連れ泳ぎコストの最大値が上がる、それだけ。
      • カスタマイズの問題点についてはあからさまな手抜きの項で記すが、貼れる枚数が増えたところで地味な見た目の変化なのは変わらず、連れ泳ぎの制限は一部のツクモ盤のクリアの足枷として作用しているのみで、経験値を稼いでランクを上げる喜びがない。
    • 成長があるのは99までだがそれを超えると百の桁が星になり、表示上299まで上げる事が可能。
      • マルチで自分のやり込みぶりをアピールすることができるが、本作のゲームシステムだと単にプレイ時間が長い以上の意味がなく、だから何? 感が拭えない。
  • アンベール率やマップ踏破率、遭遇したシェアラーの人数、サルベージ、ラッキーエモートなど本作の諸々の要素は全てセッション終了後の調査報告でこのランクを上げるための経験値に繋がる訳だが、リターンが釣り合っていないのでより作業の虚無感を強めている。

マルチプレイの問題点

そもそも論として前作までのシリーズは1人でじっくりと海の世界に浸れることが評価されていた部分の1つであり、マルチプレイの存在はおまけも同然でプレイヤーから重視されていた要素ではなかった。

上記のランダム生成マップやアンベール、探索ミッションに、毎回破棄されるマップの踏破率といった本作の不評な新要素の数々は、つまるところマルチプレイをメインコンテンツ化する上で、1プレイ辺りのゲームの目的と新鮮味を作り出して繰り返しプレイできるよう無理矢理でっちあげられたもので、これをマルチ、ソロ問わず全てのモードに押し付けてしまったことがシリーズの良さを悉く潰した根本的な原因になっている。

マルチ要素が機能していないマルチプレイ

  • 最大30人で同時に1つの海域にダイビングできるというコンセプトだけでゲームデザインが完結してしまっていて、大人数のマルチプレイならではの遊びやプレイヤー同士が能動的に交流を図りたくなる要素が、ゲーム中にほとんど盛り込まれていない。
    • ジェスチャーや他のプレイヤーとの写真撮影などマルチのコミュニケーションに使えそうな要素はあるにはある。
      • だが、チャットや定型メッセージなど具体的な意思疎通が図れる機能が存在しない本作において、野良のマルチで上手く活用することは何も言わずともタイミングを合わせてくれる相当察しが良くノリの良い人に巡り会えない限り困難で、大抵は気付かれずに無視される死に要素と化している。
    • これらの要素を上手く活用するには、セッションコードで集まった相手とSNSやDiscord、動画配信サイトのチャット欄など外部のツールを使い、予め示し合わせするのが半ば必須で、コミュニケーションツール的な遊びしかないのに、コミュニケーションツールとして非常にハードルの高い作品になってしまった。
      • ちなみに任天堂公式アプリの『Nintendo Switch Online』のボイスチャット機能に本作は非対応である。
  • ジェスチャーはカスタマイズでコインを消費してアンロックするというシステムなので、当然ながら買わないと使えないのも不便なところ。
    • 写真撮影用の変なポーズはまだしも、挨拶や拍手など基本的なエモートすら有料で最初は使えなかったりする。
  • 他のプレイヤーと交流することなく、淡々と手分けしてマップを埋めてアンベール率を稼ぎ探索ミッションをクリアするだけのマルチははっきり言って、人手の数とファストトラベルが使える分効率がいいソロでしかなく、これでは従来のゲーム性をねじ曲げてまでマルチ要素を前面に押し出した意味が無い。
  • 交流を強制されないゆるい繋がりと言えば聞こえは良いのだが、ゆるさ故に協力して探索をしているという連帯感もプレイヤーに全く抱かせない。
    • その結果、特殊UMLが出現するまで他のプレイヤーにミッションを任せて放置したり、目当てのマップやUMLではなかったらすぐに離脱するプレイが横行し、1時間の制限時間の間、実質定員以下のプレイを余儀なくされることが常態化している。
      • 特徴の例にあげた『ゼノブレイドクロス』は、探索や戦闘、クエストといった1人用のメインとなる遊びがあった上で、サブの遊びとしてゆるく繋がるオンライン要素のスコードミッションなどがあるという形式だったので、やりたい人が任意で進めるという形でも問題はなかった。
        しかし、マルチ、ソロ問わず主な遊びが探索ミッションしかない本作ではこれを放置されるというのは致命的で、ゆるさが仇となりマルチの利点の筈の効率の良さすら疑問符が付くことになった。

楽しめる人が限られすぎる30人同時プレイ

  • PVなどで売りとして押し出されていた最大30人によるオンラインマルチプレイなのだが、11人以降の加入はセッションコードを入力して参加した人限定で、通常のランダムマルチプレイは実質最大10人までしかプレイ出来ないようになっている。
    • 当然ながら相手もソフトを持っていて制限時間の1時間の間に都合を合わせて参加する必要があるため、有名配信者などの主催するマルチでもなければ30人のキャパを活かせる機会はほぼない。
  • ではそういうユーザー向けのパーティーゲームとして優秀なのかと問われれば、それも疑問が残る。
    • セッションコードで入れるのは実は20人までで、残りの10人が絶対にランダムマルチで入ってきた無関係の人になってしまうのである。
      • 20人でもリアルタイムで集められる人は限られると思うので実際はそれほど問題ないかもしれないが、今度は通常マルチの仕様が足を引っ張っていて実に中途半端。
  • つまりどちらにしても、30人同時プレイで連想されるような30人みんなで集まって海の中を観光したり記念撮影を撮るといった楽しみ方は成立しない。
  • またフレンドだけが入れる鍵部屋を建てるといったことも出来ず、従来のようにフレンドと2人だけでのんびり潜るという楽しみ方も不可能になってしまった。

使い勝手の悪いエモートタグ

  • どういう意図でエモートタグを付けてるのかを周りに知らせることができないので、意思伝達に齟齬が発生しやすい。
  • 現在オンラインでよく見られるエモートの活用方法は大きく分けて
  • 対象の内容にあったエモートを使って発見物を報告
  • UMLやサルベージ品、ツクモ盤を埋められるスポットの目印
  • 対象は気にせずとにかく1箇所にエモートを付けまくり、交換を催促してエモートタグの収集

    の3つに分けられるのだが、報告として使っている人には収集目的で色々なエモートを使っている人がタグの意味付けを崩し、目印として使っている人には報告や収集目的の人の無関係なエモートが探索の邪魔になり、収集目的の人は報告や目印代わりに使う人とマッチングしても同じようなタグしか使って貰えない、とお互いの目的と噛み合わず非常にチグハグな仕様となっている。
  • エモートタグの収集に関しては、ジェスチャーやステッカーのようにポイントで引き換えさせれば、このような不自然な使い方で集めさせる必要はなく、将来的にオンラインが過疎化して交換出来る相手を探すのが難しくなっていくことも考えると、根本的な設計に問題があると言える。
  • そして上記の使い方はゲーム中で説明がある訳ではなく、オンラインで積極的に交流しようとするユーザー間でなんとなく広まっていったものである。
    • 貼り方がストーリーでサラッと触れられるくらいで具体的な活用法のチュートリアルの類がほとんどないので、まず使い道がよく分からないという人が非常に多く、その上で交流を面倒に感じる人はやはり使わず、同じ人ばかりが貼っているということになりがち。
  • 前提としてシェアラーにならないとエモートタグの共有自体が出来ないので、意思疎通以前に相手にタグが見えていないことも多々ある。
    • セッション開始直後ならマップを見ることで断片的に埋まっているマスからある程度他のプレイヤーの位置の目星が付けられるのだが、途中参加のプレイヤーの位置を把握して会いに行くのは至難の業。
    • しかも途中で離脱したプレイヤーがいるとその人が貼ったタグは消えてしまう。
      • アップデートにより現在は改善されているが、先述の通り発売当時のUMLのパルスは1人が発見すると消える仕様だったので、第1発見者がタグを貼っていても用が済んだからとすぐに離脱してしまうと実質タグがない状態になり、意図せず地雷プレイヤー扱いされてしまうトラブルが頻発していた。

存在意義のないラッキーエモートタグ抽選

  • まず、ゲーム中に説明が一切ないのでどういう意味があるのかがプレイヤーにほとんど周知されていない。
    • なんとなく探索をしていると、「光が集まりました ラッキーエモートタグを抽選します」というメッセージが突然表示され、左上に小さく1から最大5種のエモートタグが並ぶだけという意味不明さは、多くのプレイヤーを困惑させた。
  • 仕様を説明するとアンベールをすることで左上の光のゲージが貯まり、ゲージが最大になるとその隣にあるスロットで全210種類の中から当たりとなるエモートタグの抽選が開始。
    選ばれたエモートがマップに貼られていると、小さく通知が来て1つ辺り2000ポイントが調査結果のリザルトで貰えるというもの。
    • 抽選をする度に選ばれるエモートが最大5種まで増え、当選したエモートが複数使用されていればその数だけポイントが加算されるが、1時間オンラインでガッツリ探索すれば10万ポイントは普通に稼げるバランスの本作において、最大5/210の確率で当たる2000ポイントに価値は全くと言っていい程無く、狙って引き当てる意味は無い。
      • またリザルトではこのボーナスについて通知されないので、内訳を見ないと当たっていることに気付かないくらい扱いが地味。
  • 自由な探索の邪魔にならないようにしつつプレイヤー全員が参加出来る、宝くじ的なパーティーゲーム要素を意図しているのだろうが説明がない上に演出も報酬も簡素では盛り上がりようがなく、この抽選確率を上げるためにみんなで色々なエモートタグを貼ろう!とは全く思わせない空気なだけの存在になってしまった。
    • まともに使われていないので杞憂ではあるが、この機能を活用しようと思ったらマップのあちこちに様々なエモートを貼りまくるプレイを余儀なくされることになり、いよいよ開発者がプレイヤーにエモートタグを使ってどう遊んで欲しかったのかが謎。
  • マルチでしか機能しないのでオンライン要素としてこちらに記載しているが、ソロでもアンベールを進めていくとマルチと同じようにしっかり抽選される。
    • だが、ソロのエモートは目印くらいにしか作用しないのでまず使うことがなく、最大10枚しか貼れないので当選確率も低く完全に死に要素。代替の遊びは思いつかなかったのだろうか。

取って付けたような調査報告のランキング要素

  • 期限内の累計ポイントを競うのだが、プレイヤーのテクニックや創意工夫、カスタマイズでスコアを伸ばせるような技術の介入する余地がほぼないゲーム性なので、純粋に回数を稼いでプレイに費やした時間が順位に直結してしまうのがまず面白くないところ。
    本作のゲームシステムでスコアランキングをやらせようというのが根本的に無理がある。
  • そもそも大人数で協力しながらまったり探索がコンセプトのゲームで、このような競走要素を盛り込む必要はあったのか?
    • この時点で開発の認知のズレを感じてしまうが、競走要素があるなら上位を目指してみたくなるのが人の性というもの。
      発売初期は単にプレイ時間を費やすだけでなく、より効率的な探索をしてスコアを追求するランキングガチ勢がいた。
      • だが彼らの努力は僅か数週間で水泡に帰することになる。

        このランキング、上位になっても何も報酬がないのである。

        確かに報酬がなければ躍起になって順位を競う理由はないのでゲームのコンセプトには反していないが、これでは本作のゲーム性でわざわざランキング要素を導入して競わせた意味がない。
      • しかも1週間というハイペースでシーズンが切り替わっていくので、労力と拘束時間に対して自己顕示欲を満たす要素としても微妙。
  • 結果、発売から早々にほとんどの人は気にも留めなくなり全く盛り上がらない、ソーシャル要素をとりあえず入れてみただけの存在になってしまった。

イベントツアーの問題点

  • 期間限定マップのつまらなさについては上記の通りだが、システム面も練り込み不足。
    • 第一に制限時間を20分にした意図がよく分からない。
      内容自体はいつもの探索の流れと変わらず、通常マルチと比べて報酬のコインが多いといった回転率を上げて繰り返しプレイしたくなるようなメリットがあるものではないので、単に探索ミッションのクリアがシビアになりプレイヤーを急かすだけの制限になっている。
      • 内容の是非は置いておくとして、このイベントのために作られた特別なマップを探索出来るのがツアーの目玉なのだから、通常マルチと同じく1時間のんびり探索できるようにするべきではないだろうか。
  • 次に開催期間の短さと周知の不足。
    • 大した内容ではない割に、初期は開催頻度が月1の上に期間がたったの5日しかなかった。
    • 短いだけならまだしもイベントツアーの告知は、数日前から表示されるゲーム内のバナーとSwitchのゲームニュース以外SNSなども含めてほとんど行われず、毎日欠かさず本作を起動するようなプレイヤーでないと目に入りづらいものとなっている。
      • その一方で終了したイベントのバナーがゲーム内で表示され続ける期間は異常に長く、酷い時では2週間以上放置されていたこともあった。更新するスタッフの人員が足りていないのだろうか…。
    • 一応、第3回以降は同じイベントが下旬にも復刻開催されるようになり、合計で期間が2倍の10日になるよう調整された。
      • しかし、端から勿体ぶるような内容のイベントでは無いので、これなら月毎の更新で丸々1ヶ月開催した方が分かりやすくて良かったのでは?
  • 通常マルチとは別にイベントツアーでも同様の形式のランキングが用意されている。が、こちらのランキングも上位になっても特に意味は無く存在意義が希薄。

運と作業で攻略する謎解き要素(?)ツクモ盤

  • 99の謎はゲーム中に全くヒントがなく、プレイヤーが能動的に謎を解くというよりは「気付いたら謎が解けたことになっていた」という感じの非常にフワッとしたもので、前作の財宝探しや特別な依頼のような謎解きの楽しさは 皆無。
  • 大半の謎はアイテムや石板など特定のオブジェクトを見つけることで達成出来るのだが、これらの謎が本作の特徴であるランダム生成マップと兎に角相性が悪い。
    • まず配置されているかが「」であり、それを都合よく見つけられるかも「」。
      現在探索しているマップに未発見の謎があるかが分かるヒントといった甘えたものはないので、毎回1時間近く掛けて常に自分の足で探さなければならない。
      • オンライン要素との兼ね合いで発見済のオブジェクトを再出現しないようにする配慮もないので、後半に差し掛かるとハズレのマップを引く確率の方が遥かに高くなる。
        それでも自分で隅々まで探索しなければ、そのマップがハズレという事実すら知ることが出来ない。
        この無駄な作業で生じる肉体と精神の疲労感はかなりのものがある。
    • 円盤に生物を連れていく系の謎は、円盤が配置されているのに該当の生物がマップに存在せず、実はクリア不可能だったというパターンも…。
    • 更に98、99番の謎は通常とは異なる特殊なUMLに合計3種類遭遇するというものなのだが、この出現率は約5%。しかも遭遇してから再出現に最低15分のインターバルがあり、確率以上に無駄に時間がかかる。
      • 1〜97番の謎が解けたあとも一度も遭遇していないこともザラで、運が悪いとこのためだけに探索ミッションを延々と繰り返すハメに…。
      • オンラインの問題点の項で書いた途中離脱の多さだが、こうしたゲームデザインにも原因がある。
      • 一応、第2回以降のイベントツアーは特定の特殊UMLの出現率が大幅に上がったり確定出現になる救済措置があるが、上記の通りツアーの開催頻度と期間が短すぎる上に、この仕様が周知されておらず普通のプレイヤーは気が付かないだろう。
  • 総じてツクモ盤の謎解きは、運ゲーとその試行回数を稼ぐための作業に占められていて自力で攻略するのは苦行の一言。
    • そして恐ろしいことにこれはやり込み要素の1つではなく、後述の理由により本作を最後まで進めたいなら絶対にクリアしなければならない。
  • 謎を解いても、ごく短い断片的な文が読めるだけで、それ以外のサブイベントが発生する、カスタマイズで使えるアイテムが貰える、といった具体的な報酬が全くないのもモチベーションを保ちづらいところ。
    • 実は断片的な文には意味があり、組み合わせて読むことでメインストーリーで明かされなかったオアンネス文明の謎や、ベールド海が何故あのような海域になったのかが補完されるという仕掛けがある。
      • しかし、そのことは全く説明されないので気付かない人には伝わらず、気付いてもゲーム中では答え合わせされないので各々の解釈に委ねられ、謎は投げっぱなしになっている。
      • そもそもメインストーリーの完成度が後述の通りなので、この考察のためにツクモ盤を熱心に埋めようと思える人は極めて少ないだろう。読むだけなら攻略サイト見れば自力でやらなくてもいいし…
  • オーシャンIDでマップを共有するとツクモ盤を埋められるポイントも全く同じ場所に出現するので、SNSなどで情報を共有させユーザー間の交流を活性化させるための仕組みとも言えるが、IDの発行方法が前述の仕様なので、共有するにも非常に手間が掛かり協力して謎を解こうという意欲をとことん削いでくる。
    • 何よりオーシャンIDに入場制限は存在しないので、各番号のIDの情報が1つあればわざわざ交流して探す必要もなく、その面でもあまり機能していない。
    • 発売から3ヶ月以上経過した現在では各番号を埋められる座標付きのオーシャンIDの情報が攻略サイトに出揃っているので、それを入力していけば98、99番以外はとりあえずクリア出来るが、不毛な作業運ゲーがIDをポチポチ入力して座標の位置に向かう作業ゲーに変わっただけで、やはり面白いとは言えないのが実情である。
  • なお、発売当初は55番をクリアする前に特定のアイテムをサルベージで先に入手してしまうと、55番の謎が進行不能になり詰んでしまう重大なバグがあり、発覚してからこの修正に2週間を要した。

薄味過ぎるストーリー

  • 過去のシリーズ作で好評を博していたストーリーは非常に簡略化され、調査本部でミッションを選び、申し訳程度のマップ探索がたまに挟まれるのみであとは所要時間数分程度の短いテキストを読むだけの、出来の悪いソーシャルゲームのような薄くて没入感に欠ける形式になってしまった。
  • 登場キャラクターはたまの選択肢以外無言のプレイヤーとサポートAIのSerA(声だけ)、プレイヤーの色違いの先輩ダイバーのダニエルの3人のみという華のないメンツ。『無印』のメールのみで登場するようなサブキャラ的な存在もいない。
    • ミッションのテンプレ指令や図鑑の棒読みボイスで良くも悪くも印象に残るSerAはともかく、ダニエルは過去作のキャラクターであるキャサリンやRARダイバーズサービスのメンバーと異なり、ゲーム上でパートナーとして一緒に潜ることも無ければストーリー以外では一切登場することもないので掘り下げもほとんど行われず、華がなければ愛着も湧かない。
      • にもかかわらず、シナリオが進むと何もしていないのに主人公と調査を重ねてツクモ盤の謎を解く大冒険をした熟練のバディのようなポジションに収まっていて、プレイヤーの印象との齟齬が凄まじいキャラとなっている。
      • キャラ付け自体も『海の呼び声』に登場したG・Gの表面だけなぞったような性格であり、過去作をプレイしていると既視感が強い。終盤、取って付けたように語られる悲しき過去もG・Gと被っている。
  • ゲームを初めて起動するとタイトル画面もOPも何も無くいきなりchapter1-1がスタート。
    プレイヤーがベールド海に派遣されてきた「Aegis」所属の調査隊員であることが短いテキストでSerAから説明され、移動方法とアンベールのチュートリアルをしたあとは、「もう少し演習に付き合っていただけるのなら、chapter1-2でお会いしましょう!」というやる気のないメタ台詞で締められ、何も感慨が湧かないままぬるっとOPが終了してしまう。
    • 以降はメニュー画面に投げ出されて自由にダイビングをしてください、というストーリーや雰囲気作りの巧みさが評価されていたゲームの続編とは思えない投げやりな始まり方になっている。
      • シリーズ経験者や前作のストーリーの評判を聞いて購入した層はこの時点でシナリオの完成度のヤバさを感じるだろうが、その判断は正しい。
  • 序章となるchapter1-1から5ではベールド海の生態系の鍵を握るとされる巨大サンゴ「世界樹」の危機、謎の古代民族「オアンネス」、その文明が残した不思議な石板「ツクモ盤」の謎、突然現れた巨大シーラカンス「ラジャ・ウマス」、そしてベールド海の謎に挑み世界樹の枯死を防ごうと奔走する主人公達「Aegis」と何やら壮大な設定が提示されていくのだが、僅か3人の登場人物によるブツ切りの短いテキストのシナリオでは話が広がるはずもなく、設定を完全に持て余している。
    • その短いシナリオも、過去作にあった要所要所で挟まれる生物の生態をダイナミックに描いたムービーや、ケルティック・ウーマンらのボーカル曲による演出で魅せてくれる訳ではなく、常時淡々と進行していくので印象的なシーンや盛り上がる場面が全くと言っていい程ない。
      • おまけに1話終わる毎に1-1から最終話まで「CLEARED」のメッセージとSEが毎回空気を読まずにデカデカと表示され、僅かに残った余韻すらもぶち壊していく。
  • chapter2以降の進行には一定量のアンベール数を稼ぐというロックが掛かっており、この数がかなり意識しないと達成出来ない数値に設定されているため、1話進める毎に数時間掛けてソロやマルチでアンベール数を稼がなくてはならず、非常にテンポが悪い。
    • ストーリーを読むだけではラストまで1時間にも満たないようなボリュームなので、あまりにも露骨なプレイ時間の水増しである。
    • しかも、これで解放されるストーリーはSerAが各バイオームを紹介してダニエルが驚嘆したりして終わり、もしくはチュートリアルのような内容ばかりなので全く労力に見合っていない。
      • 例えば累計アンベール数6000、8000で解放される4-1と4-2の内容は連れ泳ぎと写真撮影のチュートリアルである。
        ここまで来るのに10時間以上は優に超えるので、よほど勘の悪いプレイヤー以外は一通りのシステムに触れていると思うのだが、スタッフはどういう進め方を想定しているのだろうか?
  • 極めつけはchapter5。この章を開始するには上述のツクモ盤の謎を全て解放するという、ほぼエンドコンテンツとでも言うべきロックが課せられている。
    • どのくらい苦行かは上記の通りだが攻略サイトのIDを入力せずに自力で攻略する場合、この章に辿り着くまでのプレイ時間を15時間くらいと想定すると誇張抜きでその2倍以上の時間を虚無な運ゲーに吸い取られるので、最早水増しでも何でもない理不尽の領域。
      ほとんどのプレイヤーはここでストーリーを最後まで進めることを断念するだろう。
  • そして、やっとのことで解放されたchapter5は僅か2話。
    • これまでのチュートリアル同然な内容とは異なり、オアンネス文明の謎と世界樹の復活が描かれる核心に迫った展開になるのだが、登場人物3人で送る所要時間10分程度のストーリーの密度ではほとんど描写出来ておらず、表面的な情報からだと子供だましの薄っぺらい話にしか見えないので、クリアした達成感より徒労感が半端無い。
    • 尚、5-2には今更累計10000のアンベール数のロックが掛かっている。ツクモ盤を完成させる頃にはその3〜4倍は稼げるほど時間が経過していると思うので、全く意味のないロックであり必要性が疑問。
      本当にスタッフはどういう進め方を想定しているのだろうか?
  • ツクモ盤の内容を解読していくと明らかになる本作の背景にあるシナリオは、古代バビロニア神話を下敷きにした超文明による壮大なスケールのSFファンタジーで、一見するとランダムで適当に配置されてる風にしか見えないツクモ盤のオブジェクトやベールド海に沈む遺跡にも、ここで得られた情報を当て嵌めると何か意味が込められている…らしい。
    • ゲーム中では答え合わせがされないので実際のところ正解なのかは定かではないのだが、これらの設定を踏まえてメインストーリーを読み直すと、薄っぺらいだけに思われた内容にも伏線が張り巡らされていると解釈することもでき、ここまで読み込めば物語の裏に隠された神話を読み解く、謎解きに特化したシナリオとして面白いという意見もなくはない。
      • しかし、この解釈はツクモ盤の内容を深く考察して初めて辿り着けることで、ごく一部の考察好きにしか伝わっていない。
        根本的に軸となるメインストーリーのエピソードが弱い本作では、そこまで読み取らせる域にシナリオの質が達しておらず、プレイヤーに全く理解させる気がない独りよがりな裏設定だと言わざるを得ないだろう。

あからさまな手抜き

収録されている生物の偏りと素材流用疑惑

  • 収録数こそシリーズ最大なのだが、前作までに存在していたクラゲやウミウシなどの無脊椎動物の数々やペンギンやカツオドリなど鳥類、アザラシやラッコといった海獣など、海中の生態系を表現する上で居て欲しい魚以外の多数の生物がリストラされ、数は多いのに生物の多様性が失われている。
    • 登場する種に関しても、例えばタコはメンダコやコウモリダコ(厳密にはタコではないが…)など、深海タコしか登場せず前作にはいたマダコといった一般的にイメージされる種がいない。
  • この生物多様性に欠ける収録内容により、アンベールですぐに図鑑が埋まってしまうのもあいまって、収録数が増えているはずなのに増えた印象をプレイヤーに感じさせないものとなってしまった。
    • その一方で本来の趣旨から外れている古代生物は無駄に種類が多く、Valiant抜きで合計96種も存在し全体の2割近くを占めていて偏りが激しい。
  • 実は本作の生物の3Dモデルは、DeNAが2015年から2017年にかけて運営していたアリカ開発のスマートフォン向け釣りゲーム『サカナコネクション』*1のものを多数流用していることが判明している。
    • 15年ぶりの新作のグラフィックに9年前の無関係なソシャゲのモデルが流用されているという時点で閉口するところだが、この作品の売りの1つが絶滅した古代生物を釣れること。
      • 本作で何故これだけ古代生物が充実しているのかといえば何を隠そう、流用できる素材が豊富だったからに他ならない。
    • 古代生物以外にも収録数を増やすためだけに考え無しに釣りゲームの魚を流用した結果、特徴にも書いた通りマグロなどの食用魚の種類が変に充実していてオオクチバスやニジマス、ギンブナなどフィッシュ・ウォッチングに不釣り合いな釣り堀にいるような魚のチョイスが目立つ、ダイビングゲームとして歪な生物のラインナップになってしまった。
    • 上記のレジェンド生物のタナトスは何故か『海の呼び声』とは全く異なるデザインになっているのだが、実はこれもヌシとして釣れるシリーズをセルフオマージュした同名のサメのモデルを本家に逆輸入する形で流用したから、というあんまりな理由だったりする。(参照)
  • 如何せん7年前にサービス終了したマイナーなソシャゲなのでほとんど情報が残っておらず、Google画像検索で裏が取れている52種以外は今となっては正確な実態を確かめる術は無いのだが、当時の攻略サイト(参照)の魚図鑑と本作の図鑑を照らし合わせると(タナトスを除く架空生物を除外した)全352種中の350種が本作の収録生物と重複していることが確認できた。
    • タナトス以外は実在の生物なので、重複しているからといって流用とは断定できないものの、残りの298種もエゾダイオウイカやカマツカなどマイナー古代種や地味な生物、ダイビングゲームらしからぬ生物も含め、2匹以外全部被ってるというのは流用以外の理由は考えづらく、状況証拠的に否定する根拠の方が乏しい。
+ 調査報告


サカナコネクションでの画像が現存していて流用が確定的な魚

  • アーケロン
  • アオギス
  • アオリイカ
  • アノマロカリス
  • アランダスピス
  • アンモナイト
  • イシガキダイ
  • イシガレイ
  • イシダイ
  • イロブダイ
  • エクセリア
  • エラスモサウルス
  • オニイトマキエイ
  • カクレクマノミ
  • カジキ
  • カスミアジ
  • キハダマグロ
  • キンギョハナダイ(オス)
  • クサフグ
  • クラドセラケ
  • クロマグロ
  • コガネシマアジ
  • ゴマチョウチョウウオ
  • シノノメサカタザメ
  • シルバーアロワナ
  • シロギス
  • スズキ
  • ステタカントゥス
  • スミツキソメワケベラ
  • ダイオウイカ
  • タチウオ
  • タテジマキンチャクダイ
  • タナトス
  • ダベディウム
  • ダンクルオステウス
  • チョッカクガイ
  • トビウオ
  • ドラド
  • トラフザメ
  • ハリセンボン
  • ヒルデグリム
  • フエヤッコダイ
  • ブリ
  • フレームエンジェル
  • ベタ
  • ヘリコブリオン
  • ホホジロザメ
  • マアジ
  • マコガレイ
  • マサバ
  • リュウグウノツカイ
  • レベラトリクス

この他、2匹存在するが画像からの判断に種類の確証が持てなかったので保留。


種名を変更して流用されたと思われる魚

  • エゾイソアイナメ→チゴダラ
  • ステタカントゥス→アクモニスティオン
  • ソイ→キツネメバル
  • ソウダガツオ→マルソウダ
  • タイガーフィッシュ→ゴライアスタイガーフィッシュ
  • ノコギリエイ→ドワーフソーフィッシュ
  • ヒゲキホウボウ→オニキホウボウ
  • ブラックフィンバラクーダ→タツカマス
  • マウソニア・ラボカティ→アクセルロディクティス・ラボカティ
  • マッコスカーズフラッシャーラス→フィラメントラス
  • マブナ→ギンブナ
  • マルタウグイ→マルタ
  • マンタ→オニイトマキエイ

この13種以外の336種は完全一致。


流用されなかったと思われる魚

  • キビレ(ちなみに色違いのクロダイは流用されている)
  • ボトリオレピス
  • 流用問題以外にもアカエイとホシエイ、マンボウとウシマンボウなど同種のモデルの骨格を流用して別種としている生物が多い。
    • この使い回しによりイカはなんと11種類も登場する。 タコとの扱いのよ…
    • おかげで似たような系統の生物が更に増えることになり、収録生物の偏りを助長する結果となっているが、この辺りは現実に存在する生物なので水増しに感じてもまだ許せる範疇。
  • しかし、Valiant生物にはレジェンド生物以外にも水玉模様のギンガメアジ、錦鯉柄のキンギョハナダイなど突然変異という名目の現実には存在しない悪趣味な本作オリジナルのカラーリングの生物が存在し、これらも別種としてカウントされている。
    • 3種を除くレジェンド生物と特殊UMLも結局のところ色違いなので、こうした生物が45種を占める事になってしまった。
  • このように一見すると評価点に思える前作から大幅に数が増えた生物も、578種のうち395種がカラバリや流用を疑われ、残りの183種も骨格を流用した同系統の生物が散見し、確実に水増しではない新規モデルと言える生物は150種を切るような状態で、手放しに褒められるクオリティとは言いづらい。
  • なお、流用が目立つ古代生物でも近年SNSで話題になったサカバンバスピスはちゃんと新造したモデルで登場し、Valiant個体として例の模型*2にそっくりな灰色の個体も用意されている。
    • 上記で触れたアメリカザリガニはどう考えてもサカナコネクションの雑魚枠が流用されたとしか思えない選出なのだが、実は完全新規モデル。プレイヤーにツッコませるための仕込みか?
      • このようなネタになる生物ばかりに力を入れていることが、このゲームの生物に対する扱いの軽薄さを象徴している気がしないでならない…。

生物感のない挙動

  • 基本的な生態の表現が論外過ぎて最早突っ込むのも野暮な気はするが、過去作で出来ていたプレイヤーが生物に近付くと逃げて散るといった生物らしい挙動の表現も無くなり、魚は常にプレイヤーの存在を無視して泳いでいる。
    • モーション自体も死んだ魚の目で一定間隔でヒレを動かすだけの貧相なものばかりで、2024年発売の海洋生物を題材にしたゲームと思えない残念なクオリティ…、というかこちらも2009年発売の『海の呼び声』からのモーションの使い回しが多数発覚。
  • 無味乾燥な連れ泳ぎの仕様もあり、本作の生物はガワだけは綺麗かもしれないがその海に生きているという感じが全くなく、ホログラムを見ているかのようでこうした部分もベールド海の無機質な作り物っぽさを強めている。

SerAのボイス

  • 本作唯一のボイスのあるキャラクター(?)だが、今どきインディーズゲームでも本職の声優を起用することが珍しくない中で大手メーカーの準フルプライスソフトにもかかわらず、YouTubeなどの動画ナレーションや音声案内でおなじみの文字読み上げソフト「VOICEPEAK」の女性3の声がそのまま使用されている。
    • ナレーション系の動画や非エンタメ分野で使うならともかく、企業製のゲームの音声としてメインを張るにはやはり抑揚のおかしさや棒読み感は気になるところで精度はイマイチ。
    • サポートAIという設定なので無機質な声で話すこと自体に違和感はそれほどないが、それならそれで日高のり子氏といった機械音声に定評のある声優が読み上げてくれた方がセールスポイントになったのではないだろうか。
  • このボイスはゲーム内で生成されたものではなく、事前収録された音声が図鑑やストーリーなどSerAが喋るシーンで再生されるだけなので、リアルタイムでなんでも読み上げてくれた『カブトクワガタ』のような合成音声ならではの味や、ゲームアクセシビリティの面で評価出来る部分も存在せず、単に声優にかかる予算を安く抑えたかったようにしか思えないものとなっている。
  • 強いて挙げれば、9ヶ国語*3の音声の収録を実現していることが合成音声ならではの強みと言えるだろうか。
    • しかし、8カ国語の音声に対応した『バイオハザード ヴィレッジ』など合成音声に頼らずともそれに近い数の吹き替えを収録している作品はあるので、結局は「複数の言語の音声を低コストで用意できた」というメーカーにとっての評価点にしかならず、手抜きという事実は覆らないだろう。
      • ちなみに言語はゲーム中で変更出来ずSwitch本体の言語設定に依存しているため、変えたい場合は本体を再起動する必要があり気軽に試しづらい仕様。大多数のプレイヤーは恐らく9ヶ国語収録されていることに気付くことすらない。

大幅に劣化してしまった着せ替え要素

  • 過去作で充実していた衣装のカスタマイズ要素も、マルチプレイが売りのゲームなのにまさかの劣化。
    • まず主人公が性別設定のないジェンダーレスモデル固定となり顔が一切見えないので顔や肌色のタイプはおろか、髪型の変更もできない。
    • 水着や忍装束、サメなど様々な種類が用意されていたダイビングウェアも、フルフェイスのダサいダイビングスーツに固定され、カスタマイズ出来る要素は各部位のカラー変更とダイバーランクの上昇に応じてステッカーを最大5枚貼れるのみになってしまった。
  • カラーとステッカーの入手方法はメニューでポイントを消費して買うのみで、(そんな要素がないので当然だが)前作のようにサブストーリーや依頼の報酬で貰えるものは無くなり、あとはレベルや実績に応じてアンロックされるだけ。そのため、色々な要素を通じて衣装を集める楽しみも薄れている。
    • しかも全体的に高めの値段設定なので、1つ買うのも一苦労。20000コイン以上する商品がゴロゴロしているのだがこの金額はみんなでダイビングをフルタイム(1時間)で3回くらいこなして届く額である。
  • そして苦労してカラーやステッカーを集めても、常に青みがかった海の中での活動がメインとなる本作では対比効果*4でカラーは本来の色に見えづらい上に、ステッカーのような平面的な変化はかなり近付いて見ないと周囲のプレイヤーにほとんど違いが伝わらず、着飾って個性を表現するための要素としてもあまり意味の無いものとなっている。

本作は低価格のダウンロード専用ソフトではなく、定価5478円のフルプライスと言っていい価格帯のソフトである。

各項で触れたランダム生成マップや、ゲームシステム、ストーリー、オンライン要素の問題点も、結局のところ練り込み不足という名の手抜きといって差し支えないものであり、どこに値段相応の力が入っているのか本当に分からない。


その他の問題点

  • リアリティラインを大きく逸脱したUMLの設定
    • ベールド海の設定の時点でリアルさなどというものは深海の底に沈められているが、本作の新規レジェンド生物にあたるUMLはそれに輪をかけてファンタジック。
      • 七色に発光して透明化するゲーミングシーラカンス、電気石を身に纏い水中で帯電するジンベイザメ並の大きさのシノノメサカタザメ、人間以上のサイズを誇るモルカーみたいな見た目の超巨大ウミウシ*5など、登場する作品を間違えているとしか思えない怪獣じみた生物が目白押しで完全に世界観から浮いてしまっている。
      • 本作でも雑に登場している過去作のレジェンド生物は、見ると幸運を呼ぶとか地元漁師から恐れられているといった現実にも居そうな範囲の伝説が主だったのだが…。
    • アンノウンパルス探索ミッションをクリアした報酬として遭遇できる生物なのでこのくらいインパクトがないと割に合わないという声も無くはないが、イベントがワンパターン過ぎて通常種のUMLとの遭遇はマルチだと遊園地で毎日開催されるパレードレベルの価値しかなく、数回見ればどうでも良くなってくる。
    • 結局これもインパクトがあるのは最初だけの存在で、世界観を壊してまで出す必要があったのか甚だ疑問。
  • ストーリークリア後のコンテンツ不足
    • ストーリーをクリアするのが苦行過ぎてそこまで遊ぶ気力が続かない人の方が多そうではあるが、ツクモ盤の全開放という前作ならサブストーリーを全てクリアするようなエンドコンテンツじみた要素を進行に必須にしてしまったせいで、ストーリーモードを終えると本格的に目的が無くなり、やることが図鑑や称号のコンプリートなど本当に不毛なだけの作業になってしまう。
  • 図鑑
    • テキスト自体はしっかりしているのでそこは評価点ではあるのだが、実在の生物と絶滅した古代生物と架空の生物が一目で分かる区分けがされていないので、教養ソフトとして不親切。
      • 特にレジェンド生物は過去作をプレイしていないと実在種の色違いでしかないのにそれっぽい解説文が長々と書かれているので、本当にそういう生物がいるのか? と誤解を招きかねない。
    • また生息地形毎に並び替えられるだけで検索機能の類が全くないので、図鑑としての利便性も低い。

上記以外の過去作から劣化した点

  • 一人称視点モードが廃止され、視点が常にプレイヤーの姿を後ろから見る没入感に欠ける三人称視点固定になってしまった。
    • 過去作もデフォルトは三人称視点なので、アンベールや滅茶苦茶な生態系など本当に没入感を妨げている要素と比べれば些末なことではあるかもしれないが、開発者は端からプレイヤーを海の世界に浸らせようという意識が無いのだろうか?
  • 陸に上がることはおろか、『無印』にもあった海から顔を出して海上の景色を眺めることすら出来なくなり、メニューに戻ってもストーリー中も終始、絶対に海の中から出られないので、エアーの概念が無くなったはずなのに遊んでいて息苦しい。
    • 衣装が顔の見えないダイビングスーツ固定なのもあいまって、主人公は実は海中探索用のサイボーグかロボットなのでは? と感じさせる不気味さがある。
  • 時間の経過や季節、天候の概念が廃止され海の中で環境の変化が起きることがない。
    • UMLが出現するとシャッターチャンス!、と言わんばかりに虹色の泡など変なエフェクトが周囲に発生し、海がピンク色に染まったりするのが環境の変化と言えなくはないが、ダイビングゲームに求められてるのはそんなプリクラのデコレーションみたいな変化ではないだろう…。
    • 深さによって明度が変わるだけでどこへ行っても海は透明な青で、過去作でできていたアマゾン川で水が濁ったり深海でマリンスノーが舞うといった海域による水質の違いの表現も出来ていない。やっぱりこの海は実験施設で環境を再現しているだけなのでは?
  • クオリティそのものは悪くないのだが、海中で流れるBGMが全て似たようなヒーリングミュージック(全8曲)で統一されているので選曲にメリハリがない。
    • 過去作のように深海では不気味な曲、遺跡ではミステリアスな曲といったスポットに合わせたBGMというものがないので、全く盛り上がらない。
    • そのBGMも1ループ分しか流れず曲が終わると10分間、環境音しか流れない状態になってしまう。ただでさえ平坦なゲームプレイなのに聴覚からも一切刺激がなく、とにかく遊んでいて眠い。
    • ストーリーでも触れた通り、ボーカル曲を使った演出がないのも寂しいところ。
  • 好きな生物を配置して水槽の中を泳いだり観察出来た水族館、バディになったイルカのトレーニング、NPCから寄せられるガイドや写真撮影などの依頼、ビーチベッドで寝そべって海を眺めるといった雰囲気作りのアクティビティなど、過去作に存在したダイビング以外の様々な要素が全て無くなっていて、本当にただダイビングするしかやることが無い。

賛否両論点

  • ソロモードにおけるエアーの廃止
    • ダイビングゲームとしてのリアリティや、ゲームとしてのメリハリは失われてしまったが過去作、特に『海の呼び声』の危険生物への対処や成長要素によるエアーの管理に苦手意識を持っていたプレイヤーからは歓迎されている。
    • もっとも主なモードであるみんなでダイビングの制限時間である1時間は、『無印』やある程度成長した段階の『海の呼び声』のダイビング時間と実質的には大して変わらず、酸素ゲージという形で曖昧に表現されていた残り時間が数字として可視化されただけだったりするのだが…。
  • 操作性
    • 過去作はWiiリモコンのポインターによる操作がメイン*6で非常に癖が強かったが、遂にスティックでの操作がデフォルトになった。
      • 浮上と潜水もR、ZRのワンボタンで行えるよう分かりやすく改善されBをリズム良く押すことでドルフィンキックで高速で泳ぐことも出来る。
    • しかし何故かオートスイムが廃止されているので、プレイ時間の大部分を占めるマップ埋めの作業でも常にコントローラーを手動で入力し続ける必要があり、遊んでいて疲れる操作性なのはあまり変わっていなかったりする。
  • また前作までにあった水中の抵抗を表現した挙動の重さがなくなっていて、海の中を泳いでいる筈なのに無重力空間を遊泳してるかの如く、動作が軽い。
    • 良く言えば、よりゲームらしく遊びやすい操作感になってはいるが、これはダイビングシミュとして正しい改善点なのか?
  • 膨大過ぎる収集要素
    • ストーリーをクリアするとやることがないとは書いたものの生物図鑑(578種)、お宝図鑑(340種)、各種カスタマイズ(合計331種)、エモートタグ(210種)、実績(89種)とコレクション要素の数自体は前作以上に膨大で、刺激がなくリターンの乏しい作業に嫌気がささなければプレイ時間は天井知らず。
      • 実績には金の冠が付く最小サイズと最大サイズの生物、全578種類をそれぞれコンプリートするという自力攻略は正気の沙汰とは思えないものが存在し、これを達成するためにネット上のコミュニティで金冠の付いた各生物の種類と座標を示したオーシャンIDの情報をまとめ、集合知でのクリアを目指しているコアなプレイヤー達も中にはいる。
  • 世界観から浮いている生物
    • ランダム生成による希少性皆無の雑な配置や、ワンパターンなイベントにより台無しになっているので問題点の方に記載しているが、古代生物やファンタジーに振り切ったUMLの存在自体は評価する声もある。
      • 古代生物は半数以上が流用や骨格の使い回しではあるが、それはそれとして3Dで精巧に再現されたピカイアやオパビニアなどを観察して写真を撮ったり一緒に泳げるゲームは貴重。

評価点

  • 昨今のこの手のゲームなら出来て当たり前な水準ではあるが、一部のおかしな仕様に目を瞑ればカメラ機能は過去作に比べ、間違いなく進化している。
    • 遂に生き物に注目した状態でカメラを起動したまま自由に好きなアングルへ動かせるようになった他、自撮り機能や撮影中にフィルターをかける機能も追加され、雰囲気のあるダイナミックな写真を手軽に撮影出来るようになった。
      • 生物図鑑には各生物に自分の撮影した写真を載せるモードがあり、こだわりの写真で図鑑を埋め尽くすというやり込み要素もある。
    • カメラ初心者が直感的に扱えない機能は不要という判断なのか、何故か絞りが削除されてしまったのが気になるところではあるが…。
  • 前作にも言えることだが大量の魚を表示しても処理落ちがほとんど起こらず、この辺りの技術力は流石。マルチプレイ中も複数のダイバーを表示してもfpsが安定している。ハードが2世代進んでるので当然ではある
  • ストーリーをクリアしたり図鑑をコンプリートしようと思わなければ運要素や不毛な作業に振り回されることも無く、ヒーリングミュージックと環境音が繰り返される中で淡々と無心でマップを埋めてアンベールをする作業に没頭することができるので、プチプチつぶし的なベクトルで(ある意味)癒し効果が高い。
  • マルチプレイの敷居。
    • 首を傾げる仕様が多々あるが、ゲーム中で一切前準備をすることなく、最大20人という比較的大人数で他のプレイヤーと勝敗やプレイの上手さを気にすることなく気軽に遊べる。
    • 配信者主催のマルチプレイなど、現代にはマッチした仕様になっているとも言える。
  • 架空の生物、絶滅した生物の区別がひと目で付かないことや、検索などUIの貧弱さ、そしてサカナコネクションの流用が多分に含まれているという事実に目を瞑れば、魚のモデルや図鑑のテキスト自体はしっかりしているので、ダイビングで魚を探して図鑑に登録する「遊べる魚図鑑」と割り切れば評価出来なくもない…か?
    • 例えば、サカナコネクションではエゾイソアイナメという名前だった魚が2019年に発表された論文に合わせて標準和名がチゴダラに変更されている*7など、2024年の最新データに基づいた記述がされている。
      • とはいえ過去作も当時なりに図鑑の内容は充実しているので本作単体の評価点というより、本作が削ぎ落とした中で残っていたシリーズ通しての評価点でしかなかったりするが…。

総評

15年振りのシリーズ最新作として出されたものは、従来の海に生きるダイバー達の視点を通じて海中に眠る神秘とロマンを描くダイビングアドベンチャーゲームではなく、大人数で様々な海域の生物が入り交じるカオスな海を能天気に観光する、ダイビングパーティーゲームとでも形容すべきシリーズの名を騙る何かだった。
マルチプレイを前面に押し出した作りになった結果、過去作が持っていた魅力が悉く消え失せ、続編を待ち望んでいたシリーズファンほど受け入れ難い作品となっている。

それでもパーティーゲームとしてしっかりとした作り込みがなされていれば、賛否はあっても新規向けに心機一転した別作品として評価されたかもしれない。
だが本作は数時間もプレイすれば、誰でもすぐ既視感のある景色の中で単調な同じ作業の繰り返しになることに気付くほど内容が薄く、色々な要素がチグハグなマルチプレイ、運ゲーでクリアを困難にすることで極限まで水増ししたボリューム、一見すると高品質に見える魚のモデルすら実は手抜き、とやればやるほど作り込みの浅さが露呈し、根本的にゲームとしての完成度が著しく低いと言わざるを得ない。

SNSや動画配信サイトが隆盛する今の時代、誰でもすぐオンラインに参加出来る気軽なマルチや、1度潜るだけで撮れ高がたくさん手に入るベールド海のようなインスタントな「映え」は、確かに従来のファンだけではない幅広い層への訴求に繋がる要素ではある。
しかし、その手軽さばかりに注力してゲームとしてのクオリティや、ダイビングゲームとして重要な海の作り込みを疎かにしたのでは、目先の話題作りにしかならず、本末転倒ではないだろうか。


余談

  • 前作までのプロデューサーでアリカ副社長の三原一郎氏は、発売翌日に参加したゲーム系テキストサイト「ゴジライン」のライターのXスペースにて、「シリーズのタイトルを使うのは違うと意見したこともあった」「シリーズファンの落胆を認識し胸が痛い」「いちプレイヤーとしてと経営者としてとの見解は違ったものになる」といった主旨の発言を残しており、アリカ社内でもあまり本意の作品ではなかったことがうかがえる。
  • あまりにも低コストかつシリーズからかけ離れたオンライン重視の内容から、元はSwitch Online加入者限定の無料ソフトとして開発されていたのではないかとファンの間では邪推されている。
    • アリカは加入者限定ソフトの『TETRIS 99』『SUPER MARIO BROS. 35』『PAC-MAN 99』のデベロッパーであり、最大30人という多すぎるプレイヤー数やツクモ盤の’’99’’の謎というキーワードを鑑みると、あながち根も葉もない噂とも言いきれない。
      • ちなみに第1回のイベントツアーでは、同時開催されたTETRIS 99のテト1カップのコラボイベントに併せる形で、ジュウモンジダコが「TETRIS」の文字に並んでいるというコラボネタがあった。
  • イベントツアーの問題点でも少し触れたが、令和に発売されたマルチ要素を重視したゲームにもかかわらず本作は公式サイトとSwitch本体のゲームニュース以外、公式XなどのSNSにおける広報が存在せず、期間の周知が重要なイベントツアーの告知は第1回以降、ゲームニュース以外では行われていないという不自然な扱いを受けている。
    • SNSなどでの交流を重視したと思しきゲーム性なのだが、当のXは発売1ヶ月後の2024年6月11日いっぱいでSwitchからの投稿機能が打ち切られ、現在では公式ハッシュタグだった「#フォーエバーブルールミナス」で検索しても、1日数件程度のポストしかない状態になってしまった。
  • 本作最大の問題点の1つである海水魚と淡水魚が入り混じるめちゃくちゃな生態系であるが、岡山理科大学の山本俊政准教授が開発した「好適環境水」という飼育水を使えば技術的には可能だったりする。やっぱりベールド海って実験施設の水槽なんじゃ…。
最終更新:2024年08月27日 20:06

*1 2D系が主流だった当時のスマホゲーで、3Dで表現されたリアルな魚のグラフィックを前面に押し出した作りが一部で話題になった作品。

*2 フィンランドの自然史博物館にある復元模型。なんとも言えない表情が話題になり、2022年頃からネットミームとして流行した。

*3 正確には繁体字も含めて10言語だが簡体字と発音は同じはずなので除外

*4 隣接する色との関係で色が変わって見える現象。例えば背景が青色だと明るい色はより明るくなり暗い色はより暗くなる。

*5 大きさはともかくモルカーみたいなウミウシ自体はホホベニモウミウシという種で実在する。

*6 『海の呼び声』ではそれに加えてクラコンのみ対応していた。

*7 ドンコの名称で親しまれている魚。生息している深度が全く異なることから、見た目がチゴダラと酷似していても別種と考えられていたのだが、遺伝的差異がほぼない同一種だったことが判明した。