【ふぉーえばーぶるー るみなす】
ジャンル | アドベンチャー | |
対応機種 | Nintendo Switch | |
発売元 | 任天堂 | |
開発元 | アリカ | |
発売日 | 2024年5月2日 | |
定価 |
【パッケージ版】5,478円 【ダウンロード版】5,400円 |
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プレイ人数 | 1~30人 | |
レーティング | CERO: A(全年齢対象) | |
判定 | クソゲー | |
シリーズファンから不評 | ||
ポイント |
フォーエバー作業 カオスの海「ベールド海」 マルチ重視で別ゲー化 ストーリー進行に必須な凶悪運ゲー 拭い切れない低予算感 過去作で評価されていた要素をほぼ削除 |
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FOREVER BLUEシリーズ 無印 / 海の呼び声 / ルミナス |
2009年にWiiで発売された『FOREVER BLUE 海の呼び声』から、実に15年振りとなるシリーズ最新作。
2024年2月21日に配信された「Nintendo Direct ソフトメーカーラインナップ」のトリとして突如発表され、往年のファンを驚かせた。
前2作は一般的な知名度は高くないが、実際に遊んだプレイヤーからは「海洋をテーマとしたゲーム」として非常に評価の高いタイトルであった。長らく続編が出ていなかったことからメーカーからも最早忘れ去られたシリーズと思われた中での待望の復活だったが……。
潜る度に姿を変える謎多き海域「ベールド海」
シリーズ最大の生物の収録数
最大30人によるオンラインマルチプレイ
モード紹介
水域も時代もガン無視の滅茶苦茶な生態系
ランダム生成による探索の味気無さ
地形の整合性を無視し、水域、時代問わず様々な生物が混在する混沌とした海は好意的に捉えればゲームならではの表現ではあるし、1回のダイビングで多様な生物を見ることができるので最初のうちは楽しく探索が出来るかもしれない。
しかし、インパクトがあるのは最初だけなので数時間もプレイすればすぐに慣れてしまい、その衝撃はどうでもいい景色としてマップを埋めてアンベール率を稼ぎパルスを探す作業の中に埋没していってしまうことだろう。
まとめると、安直にランダム生成要素を取り入れ毎回変わるマップで珍しい生物を簡単に見られるようにした結果、シリーズの魅力であった作り込まれたロケーションや生態系の表現、生物を探しにいく楽しさといった要素が全てスポイルされ、毎回新鮮な気持ちで海に潜れるどころか、無機質な海で乱雑に置かれた魚をただ見るだけの味気ないダイビング体験に成り下がってしまった。
後述のツクモ盤についてもこのランダム生成が原因で致命的なゲーム性の破綻を引き起こしており、この要素の存在が持続的な面白さに繋がっている部分がとにかく乏しい。
根本的なゲームデザインが抱える退屈さ
ビジュアルとプレイフィール、共に最悪なアンベール
面倒なアンノウンパルス探索ミッション
鬱陶しい通知UI
味気ないサルベージ
不便過ぎるオーシャンID
面白味の乏しい連れ泳ぎ
必要性の薄いレベル要素
そもそも論として前作までのシリーズは1人でじっくりと海の世界に浸れることが評価されていた部分の1つであり、マルチプレイの存在はおまけも同然でプレイヤーから重視されていた要素ではなかった。
上記のランダム生成マップやアンベール、探索ミッションに、毎回破棄されるマップの踏破率といった本作の不評な新要素の数々は、つまるところマルチプレイをメインコンテンツ化する上で、1プレイ辺りのゲームの目的と新鮮味を作り出して繰り返しプレイできるよう無理矢理でっちあげられたもので、これをマルチ、ソロ問わず全てのモードに押し付けてしまったことがシリーズの良さを悉く潰した根本的な原因になっている。
マルチ要素が機能していないマルチプレイ
楽しめる人が限られすぎる30人同時プレイ
使い勝手の悪いエモートタグ
存在意義のないラッキーエモートタグ抽選
取って付けたような調査報告のランキング要素
イベントツアーの問題点
収録されている生物の偏りと素材流用疑惑
+ | 調査報告 |
生物感のない挙動
SerAのボイス
大幅に劣化してしまった着せ替え要素
本作は低価格のダウンロード専用ソフトではなく、定価5478円のフルプライスと言っていい価格帯のソフトである。
各項で触れたランダム生成マップや、ゲームシステム、ストーリー、オンライン要素の問題点も、結局のところ練り込み不足という名の手抜きといって差し支えないものであり、どこに値段相応の力が入っているのか本当に分からない。
上記以外の過去作から劣化した点
15年振りのシリーズ最新作として出されたものは、従来の海に生きるダイバー達の視点を通じて海中に眠る神秘とロマンを描くダイビングアドベンチャーゲームではなく、大人数で様々な海域の生物が入り交じるカオスな海を能天気に観光する、ダイビングパーティーゲームとでも形容すべきシリーズの名を騙る何かだった。
マルチプレイを前面に押し出した作りになった結果、過去作が持っていた魅力が悉く消え失せ、続編を待ち望んでいたシリーズファンほど受け入れ難い作品となっている。
それでもパーティーゲームとしてしっかりとした作り込みがなされていれば、賛否はあっても新規向けに心機一転した別作品として評価されたかもしれない。
だが本作は数時間もプレイすれば、誰でもすぐ既視感のある景色の中で単調な同じ作業の繰り返しになることに気付くほど内容が薄く、色々な要素がチグハグなマルチプレイ、運ゲーでクリアを困難にすることで極限まで水増ししたボリューム、一見すると高品質に見える魚のモデルすら実は手抜き、とやればやるほど作り込みの浅さが露呈し、根本的にゲームとしての完成度が著しく低いと言わざるを得ない。
SNSや動画配信サイトが隆盛する今の時代、誰でもすぐオンラインに参加出来る気軽なマルチや、1度潜るだけで撮れ高がたくさん手に入るベールド海のようなインスタントな「映え」は、確かに従来のファンだけではない幅広い層への訴求に繋がる要素ではある。
しかし、その手軽さばかりに注力してゲームとしてのクオリティや、ダイビングゲームとして重要な海の作り込みを疎かにしたのでは、目先の話題作りにしかならず、本末転倒ではないだろうか。
*1 2D系が主流だった当時のスマホゲーで、3Dで表現されたリアルな魚のグラフィックを前面に押し出した作りが一部で話題になった作品。
*2 フィンランドの自然史博物館にある復元模型。なんとも言えない表情が話題になり、2022年頃からネットミームとして流行した。
*3 正確には繁体字も含めて10言語だが簡体字と発音は同じはずなので除外
*4 隣接する色との関係で色が変わって見える現象。例えば背景が青色だと明るい色はより明るくなり暗い色はより暗くなる。
*5 大きさはともかくモルカーみたいなウミウシ自体はホホベニモウミウシという種で実在する。
*6 『海の呼び声』ではそれに加えてクラコンのみ対応していた。
*7 ドンコの名称で親しまれている魚。生息している深度が全く異なることから、見た目がチゴダラと酷似していても別種と考えられていたのだが、遺伝的差異がほぼない同一種だったことが判明した。