サガ エメラルド ビヨンド

【さが えめらるど びよんど】

ジャンル RPG


対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Windows(Steam)
iOS16.0以降
Android 9.0以降
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2024年4月25日
定価 6,800円+税
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 スルメゲー
ポイント パターンは多様だが掴みどころのないストーリー
磨き上げられたバトルシステム
UIや快適性に難あり
サガシリーズ


概要

NintendoDirect 2023.9.14にて初公開された、『サガ』シリーズ最新作。
シリーズ通算20作目となる本作は、基本的なシステムなどは前作『サガ スカーレット グレイス』の物をブラッシュアップしつつ、世界観はGB時代や『サガ フロンティア』のような多様な世界を巡るストーリーになっている。

なお、当記事では単に「前作」と記述した場合は2016年にVita向けソフトとして発売された『サガ スカーレット グレイス』と2018年に複数ハードで発売された完全版である『緋色の野望』の二作双方をひっくるめた記述とし、
「無印版『サガスカ』」はPSV版の『サガ スカーレット グレイス』、『緋色』は完全版の『緋色の野望』のみを指す単語として用いる。


特徴

続投している用語に関しては大きな変更点がない限りは説明を省略するので、前作の記事も参照。

17の世界を巡るストーリー

  • 本作の冒険の舞台となるのは17の異世界が存在する世界。主人公ごとに異なる場所から物語が始まり、各世界を繋ぐ連接世界を経由し複数の異世界を巡るストーリーになっている。
    • 過去作同様自由度の高いシナリオが採用されているが、公式で「シリーズ史上もっとも変化する物語」を掲げており、シナリオの分岐パターンが極めて多いのが特徴。
    • 一方で、前作や過去作ではある程度特定のイベントを途中で切り上げて放置してしまうことも出来たが、本作では各世界に訪れた後にその世界で発生するメインイベントを消化しきるまで別世界に行けなくなっている。
  • 各世界は前作での州1,2個分程度の2Dフィールドマップで表現されており、特定のポイントを調べるとバトルやイベントが発生する。
    • 本作ではメインシナリオが進むイベントの発生地点は翠色、メインシナリオに付属するイベントorサブイベントは青色、バトルイベントは赤色の長方形が表示される。
      • 主人公たちは運命の道標「エメラルドヴィジョン」という翠色の線が見えており、この導きに沿ってシナリオが進行していく。
      • 「エメラルドヴィジョン」は必ずしも1本だけとは限らず、場合によっては複数出現しどれか1つを選んで進むことになる場合もある。
    • RPGなのにショップやお金、ダンジョンなどが存在しない等の特徴は前作同様。宿や回復アイテムが無い代わりに戦闘後はHPも全回復するのも前作に同じ。
      • 新要素として、ごく数か所のフィールドイベントで雪道を滑る、接触しないよう避ける、助走をつけて体当たりする、と言った簡素なアクションがある。

バトル

  • サガシリーズのお馴染みの「LP」「ひらめき」「陣形」は本作でも採用されている。
    • ただし、今回は久々に人間以外の種族が復活したため、それらの種族はひらめき以外の特殊な技の習得法が用意されている。
    • また、人間系のキャラはひらめく際に「我流技」という特殊派生技をひらめくことがある。
      • 特定の技を何度か使っていると習得できる技で、元になった技のマイナーチェンジ的な性能となっている。
  • 今作でもシリーズお馴染みのバトルランク制が採用されているが、前作同様世界の各地に何度もバトルできる稼ぎポイントが存在し、そちらで戦い続けている限りはバトルランクをさほど上昇させずに鍛えることができる。
    • バトルランクが上昇している場合、イベントで戦うモンスターも上位種になったり低ランク時とは違う構成になることもある。
    • バトルランクが最大の状態で敵を倒すと報酬が2倍貰える。
  • バトルシステムは前作に続き「BP」と「タイムライン」を活用するが、前作の「連撃」は廃止され、過去作のような「連携」に変更された。
    • タイムラインは敵・味方で間を詰めていた前作とは違い常時12マスで表現され、後述の独壇場の発動条件である「敵味方がいない空いているマス」の概念が生じるようになった。
    • 各技には連携範囲が設定されており、タイムライン下部に表示される緑色の連携範囲が隣り合った場合に「連携」が発生し、攻撃時に合体攻撃を繰り出せる。
    • 連携中には連携率という数値が上昇していき、150%を越えれば確率で、200%になれば確定で再連携攻撃の「オーバードライブ」が発生する。
      • 連携率の上昇値は基本的に武器種毎に決まった加算値に(術は装備している武器種によらず、術毎に決まっている)、ロール・武器アビリティによる加算値が加わる形になるため、基本的に参加人数が増えれば増える程連携率は高くなる。また、連携攻撃中に敵を倒すことなどでボーナスポイントが得られる。
      • 連携率≒ダメージ倍率であり、BPを多く消費する高威力技が連携の後半になるように連携できるとより効果的。
      • オーバードライブ時に使用する技はプレイヤーが選択することはできず、現在セットしてある技からランダムに選出される。
      • 連携率は上がりづらくなるが、オーバードライブも連携扱いで、オーバードライブ中に連携率150%を超えた場合再度オーバードライブが発動する可能性があり、200%を超えれば確実に再度オーバードライブする。
    • そして一番重要な点だが、敵も自軍と同条件で連携とオーバードライブを使える
      • このためもしも敵の連携でオーバードライブが発生してしまった時には大損害を被るため、いかに自軍の連携を通して敵の連携を阻止するか、が本作の攻略の鍵となる。
  • リザーブ技
    • 前作に存在した「プロテクト」「カウンター」「インタラプト」に加え新たに「フォロー」と「チェイス」が追加された。
    • 「フォロー」は味方の行動直後に割り込んで攻撃できる技。
      このため連携範囲が繋げられない位置にいる味方と連携したり、行動順によっては敵の連携範囲を妨害できる位置を保ったまま、行動順が遅い味方の攻撃タイミングに合わせて攻撃するという使い方ができる。
    • 「チェイス」は逆に敵の行動直後に割り込んで攻撃できる技。
      敵の連携中か連携順が末尾の敵の攻撃後に割り込んだ場合連携が失敗するので、確実に連携を封じたい際に便利。
  • 独壇場
    • 新たに導入された要素で、戦闘中にタイムライン上の特定のキャラの前後2マスに敵・味方がおらず、選択した技と繋がる連携範囲が無い状況で発生する。
      • そのターンの残BP+1を全て使用して独壇場を発動させたキャラが連続攻撃を行う。状況にもよるがBPが増えたり軽減効果が発生している状況であれば6~9回程度の連続攻撃が狙えるためバトル後半に発動できれば大ダメージを与えることができる。
      • 連携同様独壇場も敵が同条件で使えるが、独壇場は敵味方含め1ターンに一度しか発生しないという条件があるため、自軍で先に発動させてしまえば敵の独壇場を阻止することもできる。
    • 本作の中でも評価の高い要素のため、詳細に関しては評価点の項目にて記述する。
  • 武器種
    • 前作から弓が削除された代わりに久々に銃が復活した。ただし『サガフロ』にあった弾数の概念は今回はオミットされている。
    • 武器は大枠となるメイングループとその中での細分化であるサブグループが存在し、同じ系統の武器を装備しても異なるサブグループの技を使用・習得することはできない。
      • 例えばメイングループが片手剣の武器は共通の汎用技はどの武器でも使えるが、片手剣の中で更に長剣・細剣・短剣・斧と4種に細分化されており、これらの独自技は他の片手剣系統の武器では使うことができない。
      • 片手剣の下位分類に斧が含まれていたり、両手剣の下位分類の薙刀の中に槍が含まれていたりと、あまり直感的でない分類も多い。
    • 修得用杖とフラックスが廃止され、術の習得法は「特定の属性の術を使っていると戦闘後に同属性の習得することがある」という仕様になった。
      • 装備すると特定の術が使えるようになる武器や防具が存在するため、初期状態では術を1つも覚えていないキャラや習得していない他属性の術を覚えたい場合はこうした装備で術を一時的に使える状態にして習得していくことになる。

種族

  • 人間
    • ひらめきで技を習得していくオーソドックスな種族。
    • また、基本的には人間と同仕様だが、設定上の事情で術を覚えない「従士」、我流技をひらめかない「女神(コピー)」といった特殊なサブタイプに該当するキャラも存在する。
    • 我流技を使えて目立ったデメリットもないので、総合的には最も安定している。
  • メカ
    • 武器や防具の装備箇所の制限がなく、装備したアイテムに応じて能力や技を変更できる。
      • 本作に登場する装備品には全て「メカに装備した場合の能力上昇値・使用可能になる技」が個別に設定されており、概ね剣や斧を装備すれば物理攻撃技、銃を装備すれば射撃技、防具やアクセサリーを装備すれば防御・サポート技が使える傾向になっている。
      • 強い武器を持たせるほどパラメーターも高くなるのでお手軽に強化できる反面、他のキャラとの装備の取り合いや器用貧乏にならないような構築も考える必要がある。
    • (メカスタン・メカマヒ以外の)状態異常が効かない・装備さえあれば加入直後から大技が使えるなど優秀な点もあるのだが、やりこむと基本的に各ステータスが高くても80後半程度にしかならない、ステータスと技の兼ね合いに困るなどの難点も目立つようになる。
      • 総じて総周回数が少ない時期や他の種族では代用できない役割での運用では優秀だが、長期的な育成込みでは他種族に劣る部分もある。
  • モンスター
    • 倒した敵を吸収することで、その敵の持つ技をランダムで1つ使えるようになる。
    • モンスター技は吸収したモンスターを「解き放つ」まで何度でも使用可能。戦闘中に解き放った場合、HPを消費するが消費BP1で技を発動できる。
    • 「魔具」と呼ばれる装備を使える一部の人間キャラやメカも同じくモンスター技を使用可能。
    • 武器防具が固定で一部アクセサリーも装備不可なため防御面で課題が残る、技の取得にランダム要素が絡む、術系以外のロールを取得できないなど不遇寄りのバランス。
  • 短命種
    • 植物や細胞がモチーフになっているキャラクターが該当する種族で、バトルをしていくと世代が入れ替わるのが特徴。サブ種族的な扱いで、「ヒト系(我流技は閃かない)」もしくは「モンスター系」のどちらかの特徴を併せ持つ。
    • 「短命種ロール」という固有ロールが設定されており、バトルを繰り返すとこのロールが成長していく。短命種ロールの成長に伴いステータスが向上するが、一方でLPが減っていき、最上級ロールになるとLP1になる。
    • LPが0になった状態で戦闘終了すると世代交代が発生し、再び短命種ロールが初期状態に戻る。この時、「継承技」という専用技を修得できることがある。
    • 継承技は世代が変わった際に引き継ぐことが可能だが、引き継げる枠には制限がある。世代交代を繰り返し、なおかつ最上級ロールまで成長させた状態で交代させればより多くの継承技を引き継げる。
    • LP0になった場合、再挑戦では継承が行われず、その戦闘が終了するまで戦闘に参加できなくなるのが微妙に不便。
  • クグツ
    • 綱紀・アメイヤ編でしか仲間になる者がいない特殊な種族で、自ら新たな技をひらめかず武器も1種類しか装備できないという制約がある。
      • その代わりに戦闘中に同じ武器種の技を使う者がいる場合、条件を満たしていればその者が習得している技を「写し身」によりコピーして会得できる(我流技は写し身できない。)。
      • 味方の技のみならず、人間系の敵からでもコピーができるため、思わぬタイミングで習得できることもある。
    • 綱紀編のみ特定のモンスターを撃破することで「ソウル」というパーツが入手可能で、「ソウル」ごとに異なる特殊な技やパッシブスキルをカスタマイズすることができる。
      • アメイヤ編ではカスタマイズできない代わりに、クリアデータを引き継いでプレイした場合に直近の綱紀編の終了時点で装備していたソウルをそのまま引き継ぐという仕様になっている。
  • 吸血鬼
    • シウグナス専用種族。人間に近いが我流技が使えず、代わりにLPを消費して放つブラッド技が使用可能。
      • シウグナス編以外でシウグナスを仲間にした場合でもブラッド技は使用可能だが、最大LPが7以上に増えないため使い所を考えないとLPが枯渇しやすい。
    • シウグナス編ではさらに専用システムとして「ブラッドギア」が登場したり、人間の仲間を「眷属」や「騎士」にできたりする。詳細は後述。

6人5組の主人公

  • 主人公は6人存在し、このうちボーニー&フォルミナ編はコンビになっているため、全5組の中から1つ選んでスタートする。
    • 経緯こそ異なるが、主人公たちは共通して「エメラルドヴィジョン」という緑色の波動を見る能力を得ることになる。
    • EDまでの必須世界数は主人公や周回状況ごとに異なる。例えばアメイヤ編初周は基本的に2ワールドをクリアした時点でラスボス戦もなくクリアとなるため1~2時間程度で終わる可能性がある。これに対し、例えばシウグナス編初周は必須攻略ワールド数が6つ、その他に任意で攻略可能なワールドも同程度あり、最大20時間程度はかかったりする。
    • 各主人公のストーリークリア後はアイテムなどを引き継いで他の主人公で始めたり、再び最初から同じ主人公でプレイすることができる。
      • 2周目は1周目とは部分的に異なる展開になるだけでなく、他主人公での周回含めその世界を訪れたのが何度目かや、以前訪れた際に特定の行動をとったか等によってストーリーが変化することがある。
    • それまでの周回でその主人公が訪れることが可能な世界*1を全て巡っていると、連接領域で行き先を選ぶ際に任意の世界にアクセスできるダイレクトジャンプ機能が解禁される。
      • 「全ての主人公で各世界を一回ずつ訪れる」ではなく「各主人公ごと」で解禁されるため、よほど特定の主人公で繰り返し周回プレイを行わないと見ることすらないやりこみプレーヤー向けの要素である。
  • 御堂綱紀 (みどう つなのり)
    • ミヤコ市出身のクグツ使いの一族。世界の変容によって失われた力を取り戻すため、異世界を巡り精霊の力を集める「カテドラル計画」に参加する。
    • 独自要素として初期メンバーがクグツという特殊な種族で、「クグツ使い」の綱紀の能力によってカスタマイズできる。
    • 精霊集めがメインシナリオとしてあるため他主人公とは若干異なる専用展開になることもある。
    • 出身が京都モチーフのミヤコ市であるため、口調も京都弁風になっている。なお、同じくミヤコ市をホームとしているアメイヤとバッティングするためか、互いのシナリオでは仲間にできない。*2
    • PS版の体験版で選べる主人公にもなっており、ほどほどの長さで遊べるため初周にもオススメ。アメイヤと並んで初心者向けの主人公である。
  • アメイヤ・アシュリン
    • プールクーラ出身の魔法使い。卒業試験として世界に漂う 魔精 (マナ)を収集するためにミヤコ市を訪れ、幼い少女「泉ゆめは」の姿で小学校に転校する。だが突如現れた謎の男に正体を見抜かれて魔力を奪われそうになり、魔術の神ヴァッハの介入によって阻止されたものの、抜き出されたアメイヤの魔力は猫に姿を変えて散らばってしまった。自身の魔力を奪還し試験に合格してプールクーラに帰還するため、アメイヤは猫あつめとマナあつめの旅に出る。
    • 使い魔の黒猫ロロ、同じ小学校に通う友人たちとの日常、変身ポーズや魔女衣装など、設定からして魔法少女ヒロインのようなシナリオとなっている。
    • 独自要素は猫あつめ。各地に散らばったアメイヤの魔力がネコの形をとっており、集めることで魔力が上昇して専用装備の「ネコアイテム」を入手できたり、強力な術を習得していく。また、エンディング分岐にも関わってくる。
    • Switch版の体験版で選べる主人公にもなっており、初周は仕様上少々尻切れトンボ気味に終わるものの、チュートリアル的に遊べるので初周にもオススメ。魔力とマナの収集具合によってエンディングが分岐する。
    • ただし、他主人公のシナリオで一定のフラグ条件を満たしていない限りラスボスが出現しない。つまり、アメイヤ編のみを周回しているといつまで経ってもラスボスが現れないという罠がある。
      • 意図的な設定であり、発売当初からアメイヤ編のラスボスのみ出現条件が特殊であることが示唆されていた。
      • もっとも、ラスボス非出現ルートの各エンディングも話としての決着はついており不備がある訳では無い。また、分岐によっては「裏のラスボス」とも言える存在と対峙できる。
  • シウグナス
    • ヨミにて君臨していた闇の王だが、謎の男に殺された後、死者の国ブライトホームで蘇る。力を取り戻して闇の王に返り咲くため、ブライトホームの「戦士団」と共に旅を始める。
    • 固有種族「吸血鬼」に設定されており、仲間にしたヒト種族の血を吸って「眷属」化することができるのが独自要素。
      • 眷属を作ると、そのキャラのLPが1下がるのと引き換えに、キャラ毎に異なる「ブラッド技」という強力な技が入手でき、シウグナス自身のLPが向上するなど、シウグナス独自の成長システムになっている。
      • さらに眷属化したキャラにブラッドギアと呼ばれる協力な武具を与えることで固有種族「騎士」に変異させることができる。騎士になったキャラは元の種族特性を喪失するが、LPが3増加し、ブラッドギアにセットされている「ブラッドロール」が固定ロールとして追加される。
      • 取得した「ブラッド技」は、シウグナスと騎士にセット可能。使用時にLPを消費するというデメリットがあるものの、それを補って余りあるすさまじい性能を誇る。またシウグナス自身は他者の血を吸うことでLPがどんどん上昇していくので、よほどの長期戦にならない限り気兼ねなく使うことが可能。
      • ただし、一度「騎士」にしたキャラからブラッドギアを取り外す*3と種族「廃人」になってしまうリスクがある。廃人はLPが1で固定され、ブラッドロールとブラッド技が使用不可能になる上に新たな技も習得できなくなり、戦力とみなすのは困難となる。またその周回内で廃人化したキャラを元に戻す方法はないため、誰を騎士にするかはある程度慎重に考える必要がある。
      • 仲間の眷属化はシナリオ分岐には一切影響しないため、純粋に戦力面だけを考慮して行うことができる。
    • 独自要素がいずれも強力で、最大限活用することで他主人公より一段高いパーティ戦力を得られるが、ラスボスもそれ相応に難易度が高くなっている。
    • 初期メンバーが7人と多く、シウグナス編でしか仲間にできないキャラも複数人いるのも特徴。
  • ディーヴァ ナンバー5
    • アヴァロンの人気アイドルメカだったが、禁じられた歌を歌ったためにメモリと歌唱機能を封印されてしまい、自失状態となった彼女は美しい歌姫のボディを棄て、破棄されていたスクラップボディに姿を変える。だが、彼女の元マネージャーだったコンスタンティン率いるアルビオン王国異世界探索隊に拾われ、彼らと共に自身の「心」を探す旅に出る。
    • 独自要素は換装。『サガフロ』のT260G編のようにメインストーリーを進めることで新たなメカボディを獲得し、好きなボディに変更できる。
    • Steam版の体験版で選べる主人公にもなっている……のだが、
      初期仲間に少々特殊な性能のキャラがいる、メカ系の仲間が複数名確定加入するのでクリア回数が少ないと武装の取り合いになりやすい 主人公にシナリオ進行に伴う機能制限がある、戦闘回数が多くなる都合上終盤の敵やラスボスのランクも相応に上がる…
      といった癖だらけのため、初周に選ぶのはあまりオススメしない。
  • ボーニー・ブレア & フォルミナ・フランクリン
    • キャピトルシティの女性新人巡査コンビ。大統領暗殺未遂事件の重要参考人を追って不思議な世界に迷い込み、力を合わせて事件の真相に迫っていく。
    • ダブル主人公であり、シナリオの展開に応じてボーニーとフォルミナのどちらがメインになるかが随時切り替わる。
    • サガシリーズでは恒例の、攻略上の制約が薄く自由度が相対的に高めのフリーシナリオ色の強いルートで、条件を満たせば全主人公を仲間にできる可能性もある。
    • 一方、彼女達以外の初期メンバーがいきなりネコ3匹というやや尖った構成だったり、恒例の自由度の高さも相まって、初心者がいきなり選ぶと辛いシナリオでもある。

評価点

  • 元々前作の他に類を見ないバトルシステムはコアなファンから評価が高かったが、それがよりブラッシュアップされ更に面白みが増した。
    • 前作では各キャラ装備できる武器は1つだけだったが、本作では武器を2種類装備できるようになり、柔軟な運用が可能になった。
      • ただし、技は1人8枠までという制約もできたため、習得した技を常時全て使えるわけではない。
      • また、前作では熟練度が上がればどの技も消費BPが下がったのでゲームが進むにつれ低BP技の重要性が低くなっていたが、本作では補助技以外は消費BPが下がらなくなった。
        これに加え連携を繋げるために大技よりも低BPで放てる技が役に立つ場面も少なくないために、どの技をセットするかというカスタマイズが悩ましくも面白い。
    • 前作の連撃はできる場面が限られておりリターンもほどほどだったが、本作は序盤の雑魚戦から真のラスボス戦まで毎戦意識的に使うことになるため、連携がゲームデザインの中心として成立している。
      • オーバードライブでの再連携中に連携率が規定値を超えれば再びオーバードライブが発生する可能性があり、1回のチャンスで何度も連携を叩き込むことも可能で爽快感も高くなった。
      • 一方で、連携に頼らない戦い方でも十分進められるため戦略の幅が広い。耐久力の高いメカ種族にプロテクト技をセットして攻撃役を守るタンク役にするなど種族ごとの特性に合わせて戦闘プランを練るのも楽しい。
      • また、前作では戦闘がキモのゲームなのに最序盤は出来ることが少ないのもネックだったが、本作は各キャラ加入時から初期技を4,5程度習得済みの状況で始まるため、ゲームスタート時からある程度バトルに戦略性の幅が確保されているのも前回の反省を活かしている。
    • RPGとしては異例だが敵味方双方に回復技が無い*4という特徴がある。
      • ひたすら回復連打で耐え凌いで敵を倒すような抜け道染みた攻略はできない代わりに、敵の突然の回復でこちらのプランが狂うこともなく、思考することが多い分なるべく長丁場にならないように設計されている。
      • ディレクター・河津氏曰く「回復を重視してダラダラ長く続くのは時間の無駄」「しっかり考えてクリアしてください」とのこと。
  • ロマンシングな展開を引き起こす独壇場
    • そして、バトルの最大の評価点はやはり独壇場である。
      • 独壇場の魅力点はアニメや漫画のような大逆転を自分の手で起こせることだが、どのタイミングで起こるかはある程度操作はできるが確実な予想はつかないという点にあり、劣勢時に独壇場が発動して逆転勝利できた際は非常に爽快感がある。
      • 特に前作では最後に術士が残ってしまうと詠唱してる暇がないため負け確だったが、本作では独壇場が発動すれば無詠唱で強力な術を連発できるので、最後まで勝負の行方が分からなくなった。
    • また、この要素に副次的に「自軍の残人数が減ったらただ単に劣勢になる」「こっちの構成が万全すぎるとボス戦も消化試合になってしまう」「そうならないようにインチキ染みた敵専用技を覚えさせてアンフェアすぎる技の性能差をつける」
      …といったRPGでよくある問題点の解決にも繋がっている。
    • メリットだけの要素ではなく、「前後2マスが空いてると発動する」と言う点が絶妙に見落としやすい作りで、タイムラインをよく見ていないとうっかり相手の独壇場を発動させてしまうこともある。
      • 突然バンプ技をひらめいてしまい、偶然にも相手の独壇場が発動する位置に動いてしまい大ピンチに…という運命のいたずらも起こりうる。
    • 一方で独壇場を毎回狙えばそれだけで勝てるという単純なシステムでもない。
      • 1ターン目から使える配置になることもあるが、BPが溜まっていない序盤では攻撃回数が少なく大した威力が出せないため、真価を発揮するのは必ずバトル中盤以降となる。
      • この仕様のおかげで雑魚戦で初期配置が悪くいきなり独壇場を使われてPTが全滅するような理不尽なこともない。総じて運と戦略・ゲームバランスの調整をハイレベルにまとめた、やみつきになるシステムと言える。
  • サガらしい濃いキャラクターと独特のテキスト
    • 発売後に行われた人気投票では、ほんのわずかな出番しかないような各世界の案内役含めて100名以上のキャラクターに票が入ったり、
      前作同様大半の仲間キャラはメインシナリオの会話劇に参加しないのだが、戦闘中の一言セリフ+ボイスが印象的で、短いセリフで上手くキャラを立てている。
    • 仲間になる人外キャラも復活したので、進め方によってはロボットとモグラとカマキリとカカシと赤血球のPTというカオスなPTも組める。
    • テキストも場面によって妙に理論的だったり乱暴だったり恐ろしいテンポの良さで進んだりと場面場面で観客を振り回しに来るため、実に味わい深い。
  • 分岐パターンの豊富さ。
    • 公式でシナリオの変化の多様さを謳うだけあって、全パターンを見ようと思ったら100時間あっても足らないぐらいのストーリー展開の差分がある。
    • これは体験版配信の時点で顕著であり、同じ世界のイベントでもプレイヤーによって出現ボスや結末が全く異なるため話が噛み合わないなんて事もよく見られた。そして製品版では該当箇所も分岐がさらに増えている。
    • 分岐も単純に「特定のポイントでAかBかだけを選ぶ」という箇所は少ない。
      • 「一周目はAルート、二周目はBルート固定」「AとBの中で更に細かな分岐が無数に存在する」「条件を満たしているとAでもBでもないCになる」「前周までにCを見ているとDになる」等世界ごとに予想しにくい分岐箇所が用意されており、幾度も周回プレイするゲームなだけにそれに耐えうる無数のパターンが確保されている。
  • 20作目記念としてか、過去作プレイヤーならニヤリと来るようなシリーズのセルフオマージュをした要素も見受けられる。
    • 前作になかった様々な技・術が復活し、武器にも過去作にて印象的だったアイテムがいくつも採用されている。
    • シリーズ定番の「獅子王」のみならず、前作に登場したヴァッハ神や『Sa・Ga2 秘宝伝説』の人気キャラ「せんせい」といった過去作キャラも登場する。
      + ストーリーのネタバレ注意
      • 特に、最終盤に元のボディを取り戻したディーヴァの固有技がシリーズを代表する技である乱れ雪月花であり、これを携えて最終決戦に臨む…という筋書きになっているのはシリーズファンから好評。
  • 今回もBGMはファンには説明不要のイトケンこと伊藤賢治が担当しており好評。
    • 前作同様各主人公ごとにテーマ曲が存在し、周回開始時にも新鮮な気持ちで始められる。
    • 一部の世界のボス戦の「希望を捨てるな」、ある重要な場面で流れるボーカル曲「扉を開けて」、『ミンサガ』の人気曲「熱情の律動」を意識したような「心躍らせて」などは人気。
  • 後述のような問題点もあるが、育成・システム面でも前作ならびに過去作と比較した場合の改善点・遊びやすくなった点も多い。
    • どのステータスを参照して技の威力が決まるのか、防具に特定の状態異常耐性があるなら具体的に数値としてどのぐらいか、敵種族が何か、などが説明文やアイコンで明確に分かるようになった。
    • 不得意武器の概念が撤廃され、好きなキャラに好きな武器種を持たせて育成がしやすくなった。
    • 前作ではロールを習得のための必須技がイメージ優先で定められており、全くパラメーターの流用が効かないような関係ない武器を2つ使い込んだり、場合によっては3種育成しないと取れないロールも多かったが
      本作では基本的に特定の武器種の技or同じ武器種内のサブタイプが異なる武器同士を使い込んでいるだけで新たなロール習得できるようになった。
    • 前作だとLPが3しかないため不意の事故やボス戦を想定した場合メインをはるのが厳しいキャラもいたが、本作では少ないキャラでも6ぐらいになった。
      • 各キャラはバトル後にLPを回復できる応急手当or修理というロールを持っているため、(ロール枠を1枠減らすことにはなるが)「LPシステム自体が受け入れられない」という人もこれである程度カバーできるようになった。
      • 半面前作にあった「野いちご」のような手軽なLP回復手段はなくなった。リカバリーに便利すぎたので妥当な調整*5と言える。
    • シナリオ進行面では、前作では州の進行ルート次第では本来先に見るべきイベントを飛ばせてしまうため話の流れがおかしくなることがあったが、今回は1つの世界の話が終わるまで連結世界に戻れないのでこの問題が解消された。
    • エメラルドヴィジョンの導入によりメインシナリオとそれ以外の違いが攻略サイトのネタバレなどを見ずとも分かるようになった。
      • 特に過去作では一見なんでもないようなポイントを軽い気持ちで進めるとその時点で別のフラグが消失してしまうことがありがちだったので、こうしたことの解消に繋がっている。
      • 前作はイベントが発生すると何かありそうなところを総当たりで回ることになりがちだったため、どこに進めば進行するのか明確なのはありがたい。

賛否両論点

  • 前作に続き「ゲームとして最低限成立しているならば製作上ある程度の妥協をする」という開発者の方針が随所に見受けられ、会話で表現しきれない部分は簡素なスチルやSEが流れるだけで済ましたり、人物やモンスターの3Dモデルの流用も引き続き目立つ。
    • ただ、「前作に比べれば」という枕詞がつくものの、敵の種類自体は増えており、前作のようなただ単純に色を変えただけの3Dモデルにならないよう各世界の服やアクセサリーをつけて別人に見えるようにしたりと努力の跡はうかがえる。
      • また、スチル自体もいい意味でユニークな物があったり、主人公ごとの差分があったりとただの手抜きというほどでもない。長ったらしいムービーシーンなども見ずに済むのでテンポはよい。
    • 各世界のボスも大半は色と名前変えただけの流用なので、進行ルートによっては二世界連続で似たようなボスと戦うことになってしまうこともある。
      • 前作もこうした流用はしていたが、大地の蛇や不死鳥など話の区切りで出てくる大ボスはきちんと専用モデルが用意されていただけに、もう一歩頑張って欲しかったところ。
      • 一方で、流用の仕方が余りにも力技染みてシュールなギャグのような印象を受ける場面もあったりする。
    • ラスボスも複数周回前提の作りなのにもかかわらず、アメイヤ編の特定ルート以外は基本的に同じラスボスと戦うことになる。
      • ただし、ディーヴァ編はラスボスこそ他の主人公と同じだが、専用演出・各キャラの特殊セリフが存在するため差別化自体はなされており、評価点に記述した通り終盤の流れ自体は好評。
      • もっとも残りの3組は(綱紀編の特定周回を除き)筋書きこそ違うが戦う相手や演出は同じである。27年前のゲームの『サガフロ』は全主人公でラスボスもBGMも違ったのだが…。
  • 難易度はなかなか歯ごたえがあり、近年のゲームで時折見受けられるストーリー目的のユーザーに向けた自軍がやられなくなったり相手が極端に弱くなるような救済措置はない。
    • 敵の強さ:楽勝と表示されていても相手が状態異常使いだったり独壇場を発動させてしまうとPTが半壊する。強さ:普通になればこちらの全滅がありうる、強さ:強敵と最凶はそれ以上に強いという調整になっている。
      • ただしこの敵の強さは戦闘後全快・再挑戦とLPのシステムと言った本作独自の要素とのバランスの兼ね合いもある。
        他のRPGのように回復できない連戦や、一発勝負で勝つ必要があるイベントなどが実装できない*6ので、その中で難易度を確保しようとしたらこうなる部分はある。
    • プレイヤーの手を取って学ばせてくれるチュートリアルバトルなどはなく、ゲーム開始直後から投げ出されて始まることになる。
      • 自分で攻略法を考えるのもゲームの醍醐味という人からは好評だが、なにぶん独特なだけにもう少し解説してもよかったかもしれない。
      • 補足するとゲーム内TIPSにはある程度解説があるので、一般的な読解力を備えている人ならばそちらも読みながら進めれば徐々に理解できるとは思われる。
  • 仲間キャラクターの安定した加入ができない。
    • 特定の主人公で条件を満たした場合のみ加入するキャラや、同じ世界を訪れても2周に1回しか仲間にできるチャンスのないキャラがいるため、気に入ったキャラで自由なPTを組むことは難しい。
      • 加えて初期の周回では各世界への移動すら不安定なため、狙った仲間を加入させるというプレイは困難を極める。前周でお世話になったキャラに次周では再会すらできないなんてことも頻繁に起きる。
      • もっとも前作及び過去作では容易に加入させられるキャラに限ってパラメーターが優秀で効率だけを考えたら1軍が固定されがちだったので、恐らく開発側としては周回ごとに色々なキャラを使わせたいという思惑があると思われる。
      • 「誰を仲間にするか」という結末ありきではなく「誰が仲間になったか」という過程に応じたマネジメントをするゲームだと言える。
    • ただ、本作も一通りのシナリオの分岐を見ようとしたら何度も周回プレイを行うことになるので、クリアデータ引継ぎを考慮した場合ほぼ無条件加入するキャラや特定主人公間で使いまわしが効くキャラは育成優先度が高い。
      • 各編で必ず加入する初期メンバーは安定しやすいため、同じシナリオを何度も周回するなら育成しがちだが、そのほとんどがシナリオ限定メンバーであり、他主人公での流用が効かないという欠点がある。例外は綱紀編・アメイヤ編で両方初期メンバーとして加入するボウぐらい。
      • 他には、デルタベースをクリアすれば特定状況を除いてほぼ確実に仲間になるゴールド主任、アメイヤ以外でミヤコ市を訪れれば順当に拾える綱紀など、ダイレクトジャンプ解放後なら多くの主人公で比較的安定して拾えるメンバーもいる。
      • 逆に初期メンバー以外のシナリオ限定キャラ(特にシウグナス編で顕著)は、手塩にかけても他主人公での流用が効かないことから育成優先度が低くなってしまうという側面もある。
    • そのへんの村人すら仲間になってた前作と比べると「仲間になりそうで仲間にならないキャラ」がわりといるため、該当キャラが気に入ったユーザーからは使ってみたかったという声も。
      • とはいえいつ帰って来れるかも分からぬ異世界への旅路なので、キャラクター側の視点で考えると同じ大陸内の話であった前作とは違い物見気分で気軽に加入できる世界観ではないという事情もあるが。
  • メインストーリーは異世界同士で双方向に干渉・作用しあっている一本のストーリーラインになっているわけではなく、各世界ごとのエピソードが独立した短編集のような構造になっている。
    • 大河ドラマ的なストーリーを求めるユーザーからは否定的な意見がある。一般的なRPGのように各地のボスを倒して徐々に世界の真相に迫っていくような話ではないのでそのように思って始めると面食らうと思われる。
      • ごちゃ混ぜ感がシリーズ初期作のようで好き、先の予想がつかず初来訪時には新鮮味を感じるという意見もある。
      • フラグ管理が複雑になりすぎるため、別世界のシナリオ同士を密接に連動させることは断念されたことがインタビューで語られている。ただし名残として、特定のイベントを進めると関連する世界への移動が制限されるケースはある。
    • 各世界のシナリオについても、その内容や濃淡に格差が見られる。
      • 美しくも切ないカマラや、少年漫画のようなアイテム争奪戦となるマーレノストラムなどは好評の声が多い。
      • 一方で、盛り上がりのないまま長丁場になりがちなブライトホームや、ただ敵に襲われるだけで攻略上のメリットも薄いグレートツリーなどは面白みに欠ける。
      • デルタベースやヴェルミーリオのようなエキセントリックな登場人物や展開は好評な一方、攻略上はギミックが面倒だったり移動に時間を取られるといった一長一短な世界もある。
  • 五行について
    • 前作では五行の色分けが木=緑、火=赤、土=黄、金=白、水=青と概ね国産RPGでよくある色分けで分かりやすかったが、本作では木=青、火=赤、土=黄、 金=白、水=黒となり、どれが何属性なのか初見の人は混乱しやすくなった。
      • ただし、本来の五行思想の色分けでは本作の当てはめの方が正しい
    • 全てのキャラのパラメーター欄に五行属性が存在するのだが、自軍で「金行術」を使えるのはアメイヤ編のイベント習得専用となっているため、彼女以外のキャラにとっては金行術のステータスの意味がない。
      • 「ヴァーミリオンサンズ」や「塔」と言った過去作でお馴染みの一部の術も、今作では金行術に属するためアメイヤ専用術になっており、強力ではあるが出番がかなり限られる形となってしまった。
      • 一応、アメイヤ編のクリアデータを引き継ぐことで他編で仲間にしたアメイヤが行使することは可能だが、再びアメイヤ編を始めると冒頭イベントで強制的に魔力を奪われるため覚え直しになってしまう。
      • アメイヤ自体は綱紀編を除いてプールクーラのイベントで択一加入なのだが、アメイヤ編で猫あつめをしっかり行ったクリアデータを引き継いだ場合は唯一無二の強力な術使いとなるため、他の仲間との格差が大きい。
  • 装備の強化
    • 前作では装備の強化のために鍛冶屋に歩いて行く必要があり、鍛冶屋ごとの得意不得意・常連ボーナス・一部の装備は特定の鍛冶屋でなければ強化出来ない…等のシステムがあったが、本作でこれらが撤廃されメニュー画面からいつでもどの装備でも同じ消費量で最強段階まで強化できるようになった。
    • しかしながら、前作では先にキャラを指定して装備品を選ぶUIだったのが全ての手持ちアイテムから直接選択する仕様になったので、どの装備を誰が装備しているのか分かりにくく、見当ての装備を強化しにくくなってしまった。
      • 厳密に言うと「装備済みのアイテム」のみに絞る機能はあるのだが、PTに組み込んでいない控えのメンバーも含めた全キャラが装備しているアイテムから選ぶという細かな融通の効かない機能になっている。
  • 会話の既読スキップ機能がないため、以前別主人公の周回時に訪れた世界でも似たような趣旨の会話を再度見ることになる。
    • もっとも主人公ごとに相槌や相手の対応も微妙に異なるため、仮に既読スキップをつけてもすぐに見たことないセリフが出てきて止まることは予想がつくので、あっても役立ったかは微妙な所もあるが…。
    • 一応プールクーラ等世界によっては来訪二度目以降に各世界のルール説明会話が簡略化される世界もある。

問題点

メニュー画面・UI・システム部分に関して複数の看過できない問題がある。

  • 操作性の悪いメニュー画面・UI
    • 本作のUIや最適化全般の問題点の原因として、スマートフォンやタブレットPCのようなデバイスでも操作できるようにしたUI・仕様全般が全機種にてそのまま流用されていると思わしき部分があげられる。
      • フィールド・会話画面ではCS・Steam版でもタッチ操作を想定しているであろう仮想ボタンが表示されっぱなしになるため、見栄えが悪い。
      • 複数の技やアイテムを表示する場面や下記の並び替え場面で「スワイプしてタップする」操作を前提としているのか、一画面内の情報量を減らしページを送って確認するようなUIになっており、一目で得られる情報量が少なく分かりにくい。
    • 近年のサガシリーズの利益の中心はそういったデバイスで遊べるソーシャルゲームにあるため、そちらのユーザーを第一としたのかもしれないが…。
      • 「スマホ版等を想定したUIや仕様を流用して不評」は現行機移植版『ロマサガ2』『同3』でもやってしまったのだが、同じ過ちを繰り返す形になってしまった。
      • こうしたデバイス間の違いを想定して『緋色』ではUIを携帯機向けと据え置き向けとで二通り用意する親切設計だったのだが、残念ながら本作では引き継がれてはいない。Switch版でもタッチ操作には対応していない。
    • どの機種でもメニュー画面内の動作がやや重い。ハード側のスペックに縛られないSteam版で遊んでも画面の変遷のテンポが悪いため、ハード側の問題ではなくソフト側の最適化不足と言わざるを得ない。
  • メンバー入れ替え画面が使いにくい。
    • 「現在のPTメンバー」「サポートに配置したキャラ」「どちらでもない控えキャラ」が全員縦一列に配置される。
      • どこからどこまでが現在のPTメンバー・サポートなのかはメンバーの左側の小さな数字とアイコンのみでしか判断できないので非常に視認性が悪い。
      • 「バトル&サポートは画面左に別枠を表示して右側に控えメンバーを表示する」「現在のメンバーは装飾がある枠で囲む」「控えメンバーは色を暗くする」など簡単な方法で対処できそうなのだが未だに改善されていない。
    • 各キャラクターをサポート担当に配置した場合、どんなサポート能力を持っているのかを実際に配置するまで確認できない。
      • 厳密に言えば各キャラの詳細ステータス画面で見れるが、複数人のサポート能力を一度に確認するすべがなく、比較して採用しにくい。
    • 「陣形・バトルメンバーの入れ替え画面」と「装備・スキル変更画面」でのUIの色合いや配置などが似通ってるため、今どちらの操作を行っているか混同しそうになる。
  • 前作や近年のサガシリーズのリマスター作品にあるフィールドでの高速移動やバトルの早送り機能がない。
    • これもスペックが低いスマホでの動作も考慮すると、グラフィックが前作より向上しているので両立できないという事情もあるのだろうが、CS・PC版ユーザーからすればスマホ側に足を引っ張られたという印象に繋がっている。
    • また、連接世界ではダッシュ機能が使えるのだが、各世界のフィールドではダッシュできなくなる謎の制限が存在する。
  • いらないアイテムを出品して異なるアイテムを入手できるトレードという機能が存在するのだが、とにかく不評。
    • レベルアップするごとに出品できる品目が増えるのだが、取引はほんの数件ずつしかできないのにレベルアップのための要求ポイントは膨大なので、ちまちまやる必要がある。
    • ゲームプレイ中数十~百回近くチェックするにもかかわらず、トレード画面を開くためには「メニュー→アイテム→出品か入札を選択」という階層が深く、いちいち面倒。
      • 特に出品は、出品を選択後更にアイテムを選択するというプロセスが挟まるため尚更。
      • フィールドでのコントローラーの使用キーのうちR、ZR、ZL、+、-には何も割り振られていない。いずれかをトレードへのショートカットボタンにできなかったのだろうか?
    • 以上のように面倒なのであまりやりたくならないのだが、序盤からトレードランクを上げておかないと上位素材が集まりにくく、装備強化が頭打ちになりやすい(せんせいの試練・敵からのドロップ等、他の入手方法が皆無というわけではないが、ある程度まとまった数を入手しようと思えばトレードが必要。)。
      • しかも頭打ちになるタイミングが中位クラスの魔石・魔獣シリーズとその上位の巨獣シリーズとで2回もあり、簡単に上位装備を作らせないようになっている。
      • 最強装備を作るのに必須の素材などはやり込みボスがドロップするのだが、そのやり込みボスを安定して倒せる段階まで強化するためにはそうした素材がいるという、さながら「服屋に行く服がない」ような本末転倒な調整になっている。
    • 最初からより多くの素材を出品できるようにする、下位素材を規定数集めると常時上位素材に変換できる機能をつける、などにして欲しかったところ。
    • 「特定のアイテムを規定数出品すると確定で希少アイテムが交換候補になる」という隠し仕様があるのだが、ゲーム内にヒントがないどころか攻略本でも触れられておらず、普通にプレイしているとまず気づかない。
    • せんせいへの挑戦状のようにキーアイテム欄に入るアイテムを入手すると、こちらが出品するアイテムの最初の欄にこのキーアイテムが来るようになってしまう。
      • それまでは素材類が1ページ目に出てくるので、間違ってキーアイテムを出品しそうになりそうになる。そうでなくてもこれまでと違いいちいちボタンを押す回数が1回増える。優先的に出品する物ではないのに何故最後のページに追加ではないのか?
  • せんせいの試練
    • 前作のリワードに相当する戦闘時に条件を満たせばアイテムがゲットできる要素なのだが、同時に3つしか受注できない。
      • 特に達成が難しい試練を偶然達成してしまった場合、当該条件設定していないと非常に損した気分になる。
      • クリアデータを引き継いで周回を繰り返すと序盤から4個以上まとめて達成できるような状況になるのだが、それらもセットしてはいちいちやり直しになるので面倒。
      • 単純に常時全て同時受付であればまとめて達成しやすかったのだが。
    • オート受注機能が何故かデフォルトでオフになっており、周回をスタートするたびにオンにし直す必要がある。
  • 各世界ごとのストーリーは起承転結があってきちんと完結するのだが、メインストーリー終盤は唐突にラスボスと戦う流れになりがちで、ラスボスもどのような存在なのか明確な説明はなされない。
    • 前作ではゲーム外のメディアとはいえ設定資料本にてラスボス周りの種明かしがあり、ラスボスのキャラクターとしての格に箔がついていたのだが、本作ではガイドブックにも敵勢力について「正体は謎のヴェールに包まれている」との記載されており謎が謎のまま。
      • 一応ラスボスを抱える勢力は「世界を統一させる」or「世界の多様性のバランスを保つ」ことが目的らしいことはセリフからなんとなく察せられるのだが、その背景事情が観客に伝わらなく、いまいちさっぱりとしない。
      • 普通のRPGのような「魔王を倒したら魔物がいなくなる」といった世界観的な分かりやすさのあるラスボスの撃破がその主人公の最終目的とイコールで繋がる展開になりにくく、釈然としないままEDを迎えることになる場合も。 
  • パズル要素のリトグラム
    • ストーリー中に三角形のパズル「リトグラム」を解く場面があるのだが、ほぼ完成していてパチっと一個はめるだけだけで即完成する場面が多く、存在意義が感じられない。中には多少複雑なものも一応あるが、攻略の妨げとなるほどではない。
    • 「はめ方や集めたピースの種類によってストーリーが分岐する」「パズルの解き方に応じてバトルに影響が及ぶ」と言った要素はなく、雰囲気作り以上の物になってない。
      • 一応、「パズルを解くのに失敗することで展開が分岐する」という場面もあるにはあるのだが、その対象となるイベントが前述のように難易度が非常に低いパズルであるため、むしろ意図的に失敗しないと起こせない。
  • 武器ごとの使いやすさに大きな格差が存在する。
    • 特に使いにくいのが細剣。習得技傾向から言って「ヘイトを取らない、属性攻撃が撃てる」という点で差別化しようとしたようだが、どうしても攻撃を食らいたくないキャラがならプロテクトで守った方が早いし、属性攻撃もあるなしでそこまで極端に攻略難度が変わるというわけでもないので、他武器と比べると持ち味が見劣りする。
      • こうなってしまったのは前作で細剣が持っていた各インタラプト技や状態異常技、大技などが軒並み取り上げられたためで、ここまで弱体化するほどの理由があったのか疑問に思うほど。
      • 一応、強力な二刀流系ロールのひとつ「二刀の達人」を習得するために必須なので育てる価値はあるが…武器種そのものへの評価点とは言いにくい。
    • 逆に便利すぎるのが片手銃。
      • 間接攻撃扱いなので突インタラプト以外はノーリスクで解除できるだけでなく、有用なインタラプト技や特殊ボスの取り巻きに刺さる防御無視技のワンホールワンを習得するため、迷ったらとりあえず持たせておけば困ることがないぐらいには強い。
      • 他の武器種はサブタイプ依存のどの技を採用するかというジレンマがあるのだが、何故か片手銃はサブタイプも存在しないため技の取捨選択が発生しないのも強みになっている。
  • 取り返しのつかない要素の存在
    • 特定のシナリオ展開は初回のみもしくはフラグを立てる前のみ起こせるというものがいくつか存在し、該当フラグを通過してしまうと以降はその展開が見られなくなってしまう。
  • アップデートによる改善点
    • 最初期版はどの武器がそれ以上改造できるかが分からないかったが、Ver1.02にて改造できる場合はマークが表示されるようになった。
    • トレードで特定アイテムを多数出品した時に発生する不具合があったがVer2.00にて修正。

総評

ゲームバランス・あからさますぎる素材の流用・過程は濃いが結末はあっさりめなシナリオ・周回前提の仕様など、人を選ぶようなポイントがいくつもある。
だが、開発側としてもこうした異論が出ることは承知の上で、他のゲームで味わえないような遊びの独自性の確立に意欲的にチャレンジしに行ったのだろう。
シリーズ35周年を迎える中でも日和って過去作の延長線上にある守りに入らず、かつてない新境地を切り開きに行くのは、実に『サガ』らしい。

しかしながら、使いにくいUIやシステムがどんな強敵よりも攻略上の最大の壁としてプレイヤーに立ちふさがってしまっており、無印版『サガスカ』のロード時間問題同様ここの部分さえ無ければ…という難点になってしまっているのが残念極まりない。

他方で更に練り上げられたバトルシステムは完成度が高く、とりわけ独壇場はRPGのバトルそのものに対する革新的な要素と言える。
公式自ら言うだけあって話の分岐量も膨大なパターンが用意されており、ハマってしまったプレイヤーをがっちりつかんで離さないような魅力はきっちり存在する。

各所のレビューでも100時間近く、あるいはそれ以上プレイした上で他人にはオススメしない人がいるなど、「俺は遊べたが一見さんには遊べないかもしれない」という類の玄人好みのゲームである。
幸いなことに今作は体験版が配布されているため、気になった人はまずはそちらを手にとってみて、どんなゲームか実際に自分で触れてみて判断して欲しい。


余談

  • 少々意外かもしれないが、真のラスボスの撃破や高難易度ルートの突破で得られるトロフィーは存在しない。
    • こうなったのは河津氏曰く前作で強化形態のラスボスを撃破したユーザーが1割にも満たなかったことと、海外を中心に超高難易度要素クリアが必須のトロフィーが不評だったことを勘案した結果とのこと。
  • 本作で3Dモデルが新造された過去作モンスターは妙に『ロマサガ2』の雑魚敵に偏っている。これに関しては将来的になんらかの関連作への流用を見越しているのではないかとの噂があった。
  • 2025年4月11日より『Vampire Survivors』にて本作とのコラボ無料DLC『Vampire Survivors: Emelard Diorama』が配信。
    • 本作のキャラクターたちが多数ゲスト出演し、技やシステム等も本作を意識したものとなっている。
最終更新:2025年04月11日 21:33

*1 主人公ごとに序盤のシナリオの都合などで訪れることができない世界が存在する

*2 他の主人公で2人を同時加入させることは可能。

*3 ゲーム中では"はく奪"と表記される

*4 厳密にはごく一部の虫系のボスのみ所持している

*5 野イチゴは周辺に逆にLPが減るイベントが混じっているのだが、見た目で判断がつくのでいつでも確実に回復できた

*6 厳密には本作にも初回で勝てないとゲームオーバーになったり強制的に敗北時ルートに進む場面があるが、バトル中に勝てないと思ったら再挑戦すれば仕切り直しできる