雨月奇譚
【うげつきたん】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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トンキンハウス
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開発元
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ウィル
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発売日
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1996年7月5日
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定価
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5,800円
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プレイ人数
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1人
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廉価版
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ベストプライス:1999年11月11日/2,500円
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判定
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なし
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ポイント
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雨月物語を題材にした不思議な雰囲気のホラーADV
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概要
1992年11月6日に発売されたPC98ソフトのリメイク版。
オリジナル版は昭和の貸本漫画調のセピアカラーのノスタルジックなグラフィックだったが、リメイクにあたり実写取り込みやポリゴン表現を交えた幻想的なグラフィックに一新されている。
あらすじ
とある病院の一室。
重い病におかされ、絶望した青年は、何者かに引き寄せられるかのように階段を昇り病院の屋上へ。
青年は夕陽に染まる都会を見回し両手で手すりをつかみ、身を乗り出した。
その時、背後から声が。
「死んでも楽になんかならないよ」
ふり返ると、不思議な少女がいた。
少女は輪廻について語り、青年を誘う。
少女の跡を追う青年。
ユラユラと揺れる視界。
青年が行き着くところとは…。
特徴
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文人・上田秋成によって著された江戸時代の怪異小説「雨月物語」を題材にした和風ホラーADV。
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謎の少女に導かれ見世物小屋「雨月座」に迷い込んでしまった主人公が「見る」「話す」「移動」「アイテム」の4つのコマンドを駆使し、雨月物語の一篇である「吉備津の釜」、「浅茅が宿」、「菊花の契」を下敷きにした三篇の物語を体験する。
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その幕間では本作オリジナルの「三十年村迷宮奇譚」というエピソードが展開され、時代も人物も異なる三篇の物語はやがて1つの終局へと向かっていく。
評価点
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実写や初代PSの荒いポリゴンで表現されたグラフィックは、チープながらも一度見たら忘れられない不気味さがありインパクト抜群。
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幕間の三十年村迷宮奇譚では雨月座の中から日本の原風景に広がる夜の砂漠や戦時中の防空壕、ノスタルジックな写真館など、時空を超えた奇妙な旅をすることになり、まるで夢の中を彷徨うかのような幻想的な体験が味わえる。
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ジャンルとしてはホラーゲームだが、直接的に恐怖を煽るような描写はほとんどなく、絵巻物を見るかのような演出は情感たっぷり。
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ストーリーは雨月物語を背景に人の輪廻と業が描かれ、非常に示唆に富んでおり既存のホラー作品とは異なる独特な余韻をプレイヤーに残す。
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このセンスは母体が教科書メーカーの東京書籍であるトンキンハウスの面目躍如といったところか。
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PS版のBGMはアニメへの多数の楽曲提供で知られる音楽家の畑亜貴氏が全曲を手掛けており、作品全体に漂う幻想的な雰囲気を盛り立てている。「雨月座」、「パーティー」などが特に評価が高い。
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更にエンディング曲の「雨月物語」は畑亜貴氏自身のボーカル曲でファン必聴である。
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ちなみにPC98版は三浦忠司氏による全く別なBGMなので、聴き比べてみるのも良いだろう。
問題点
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とにかく短い。
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じっくり読み進めてもせいぜい5時間程度のボリュームで、ストーリーの分岐といったリプレイ性も一切ない。当時新品で購入した場合、これで定価5800円(税別)は高いという感想になるのが正直なところ。
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のちに廉価版が発売されそちらは2500円に値下げされたものの、それでも少々割高な印象は否めない。
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もっともオリジナルのPC98版は98ソフトの相場でもかなり高額な12800円(税別)なので、これでも内容相応の価格に抑えられてたりするのだが…。
総評
“静”の雰囲気に満ちた不思議なホラーゲーム。
短いのが難点ではあるが、裏を返せば1日で最後まで読み進めることが出来るので、雨の日の夜などに劇を見に行くような感覚で世界観に浸りながら一気にプレイしてみて欲しい。
余談
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エンディング曲の雨月物語は畑亜貴氏の作品の中でもアルバム「浪漫月裸の娘達」に収録されただけの知る人ぞ知るマイナーな楽曲だったのだが、発売から25周年の2021年に突如、畑亜貴氏が手がけた過去のゲーム主題歌の新録企画「懐古庭園」シリーズの第4弾に選ばれ、フルサイズバージョンが製作され初シングル化。
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更にこのCDに合わせる形でミュージックビデオも新規で製作されYouTube上で公開されている。
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トンキンハウスはオリジナル版の本作の姉妹作的な作品として、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」をモチーフにしたADV『銀河鉄道の旅』を1994年にPC98で発売している。こちらもかなり幻想的な雰囲気の作品である。
最終更新:2025年06月14日 16:10