鉄道にっぽん! メモリアル JR東海 キハ85 特急南紀編
【てつどうにっぽん めもりある じぇいあーるとうかい きははちごー とっきゅうなんきへん】
ジャンル
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鉄道運転シミュレーション
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売・開発元
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ソニックパワード
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発売日
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2024年12月19日
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定価
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8,580円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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1個
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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走行距離240.1kmの大ボリューム JR西日本区間が未収録 キハ85というより「南紀」のメモリアル
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鉄道にっぽん! 路線たびシリーズ
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概要
『鉄道にっぽん! 路線たび』シリーズの派生ブランド第2弾『鉄道にっぽん! メモリアル』(略称「鉄メモ」)の第一作。
2023年限りで定期運行を終了したJR東海の特急型気動車「キハ85系」のメモリアル作品と位置付けられており、名古屋駅〜紀伊勝浦駅間の特急「南紀」のうち下りの名古屋→新宮を収録している。
ゲームモード・システム
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メモリアル運転
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通常の運転。システムは『EX』に準じており、運転ガイドに従って速度を上下させ列車を進めていく。
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キハ85系はツーハンドル車のため、ノッチ操作は左右スティックに割り当てられている。
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メモリアル資料館
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以下のコンテンツを収録している。一部を除き初期状態から閲覧可能。
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キハ85系 特急南紀 追憶の旅…「メモリアル運転」と同じ前面展望に、対向列車などのテロップを加えた映像。
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特急南紀 写真館…沿線で撮影されたキハ85系の画像(一部はローディング画面と共通)。スライドショーでの閲覧も可能。
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キハ85系 車両モデル…キハ85系2両編成(キロ85形+キハ85形100番台?)の3Dモデル。橋梁のモデルと背景も付いている。
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キハ85系 特急南紀 方向幕…側面方向幕を再現したもので、プレイヤーの操作で幕回しが可能。ただし「回送」「試運転」以外は「南紀」系の幕のみとなっているほか、号車表示は禁煙の3号車指定席で固定。
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特急南紀の車窓から…2分40秒の側面展望映像。
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前面展望映像〈オリジナル〉…特に加工などがされていない前面展望で、映像としては「メモリアル運転」および「キハ85系 特急南紀 追憶の旅」と同じもの。「メモリアル運転」で全区間をクリアすると追加される。
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オプション
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プレイ中の音声・画面表示を設定できる。
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本作独自の設定として、ATS確認操作の有無、運転台のグラフィックを貫通型にするか非貫通型にするかの切り替えも可能。後者は「メモリアル運転」で全区間をS評価でクリアすると追加される。
評価点
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ボリューム
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名古屋→新宮の走行距離は240km超、片道3時間以上かかる大ボリューム。シリーズぶっちぎりの最長距離である。
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路線自体も名古屋の市街地から山越え、田園地帯、海沿いの区間まで、走っても走っても飽きない感覚を楽しめる。この点は、同じくキハ85系が使われた「ひだ」ではなく「南紀」を題材としたからこそだろう。
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運転しやすさ
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シリーズでも1、2を争う高速運転だが、運転モニターの曲線表示に加え、『小田急電鉄編』で改良されたトップビューの停止位置表示により発車から停車まで非常にやりやすい。過去作や他の鉄道シミュレーターでつまづいた人も、本作で同じ轍は踏まないはず。
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理想運転曲線の表示はオフにもできるので、ヌルゲー化することもない。
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音にも随一のこだわり
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走行機器の音も手が込んでおり、トンネル以外では(おそらく)初めて「風を切る音」も聞こえてくる。
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ブレーキ緩解音のタイミングも実車同様のもので、聞いた瞬間にうなずきたくなるような再現度である。
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システム面の改善
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これまでの作品では高速走行時に映像がかなりカクつく傾向にあったが、本作では相当に滑らかになった。
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駅通過時に秒単位で早通・延通時刻が表示されるようになった。
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キャラクターを出さずガイドだけを表示することがようやく可能となった。
問題点
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メモリアル要素が全体的に残念
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資料は6つ中3つが車窓動画。言ってしまえば音声以外はキハ85でなくても成立するものであり、その音声もプライバシーを理由に再現となっている(かなりリアルに作られてはいるが)。色合いをセピア風にしたりできる割に、早送りがないなど機能面も今一つ足りていない。
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前面展望自体、『EX』や『RealPro』からあったビューモードと実質同じものであるため、モードの配置を変えて水増ししていると取れなくもない。
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キハ85そのものに関するコンテンツは写真・3Dモデル・方向幕があるのだが、これらも「メモリアル」をうたうにはいまひとつ微妙なもの。
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写真はクオリティ自体は高いのだが、全て沿線から車両を写したもので、車内や表示類などを写したものは一つもない。おそらく全て近年撮影された写真であり、記録という意味でも微妙さがある。
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3Dモデルはあまり実車に似ておらず質感ものっぺりとしており、グリーン車なのに車体表記が「キハ85」になっているミスもある。JR東海エージェンシー監修とのことだが、2020年代の作品としてお世辞にも質が高いとは言えない。
そもそも、再現されている車両および鉄橋は「南紀」ではなく「ひだ」のものである。
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方向幕についてはフォントまで相当現物に近く再現されているものの、号車表示の切り替えができず、「ひだ」や臨時列車関連のコマも一切存在しないため片手落ち感がある。
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総じて、本作はキハ85系のメモリアルというより「南紀」のメモリアルが多くを占めており、残りも実録ではなく「実車っぽく再現した」ものである。車両のファンにとっては残念な内容に終始している。
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JR西日本区間が未収録
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伊勢鉄道線の区間も収録している一方、JR西日本管轄となる末端の新宮〜紀伊勝浦間が未収録となってしまった。
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『鹿島臨海鉄道編』のように、過去には短区間で(別の)JR線を収録したこともあったが、本作では叶わなかった。
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開発側も思うところがあったのか、車内放送を紀伊勝浦行きから新宮行きに切り替える機能を用意している。
総評
運転ゲーム部分自体は『EX』と『RealPro』の良いとこどりをもって完成されており、そのうえボリュームも両立していることから、この点だけでも文句なしに良作といえる。キハ85系に乗ったことがない人でも、JR線をこれだけ走破できる鉄道ゲームとあれば十分に楽しめるだろう。
一方で、タイトルにもなっているメモリアル要素はかなり弱いものとなってしまっている。パッケージでは「特別収蔵版」とまでうたっているが、ぶっちゃけ大げさであり、鉄道ファン目線での目ぼしいコレクション要素はあまり存在しない。この辺りは次の「鉄メモ」に期待するべきところか。
余談
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ゲーム中でも再三お別れの挨拶がされているキハ85系だが、車両自体は京都丹後鉄道に譲渡されており、発売時点で未だ現役である。
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エンディングでも取材協力として同社がクレジットされている。
最終更新:2025年07月06日 22:29