本項ではPSV版『俺達の世界わ終っている。』と、PS4/Switch版『JUDGEMENT 7 俺達の世界わ終っている。』の2本を紹介します。
判定はすべて「良作」です。
【おれたちのせかいわおわっている。】
ジャンル | 新世界ADV | ![]() |
対応機種 | プレイステーション・ヴィータ | |
発売元 | レッド・エンタテインメント | |
開発元 | ウィザードソフト株式会社 | |
発売日 | 2017年11月9日 | |
定価 |
パッケージ版:6,800円 DL版: |
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セーブデータ | 95個+オートセーブ1個+クイックセーブ1個 | |
レーティング | CERO:C(15才以上対象) | |
備考 |
小冊子とショートストーリーDLCが付属した Amazon限定版あり |
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判定 | 良作 | |
ポイント |
「終っている」ゲーム会社が紡ぐ 笑いあり涙ありの 「終わりと始まり」の物語 |
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レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー |
気を付けて……
もうすぐ……世界が始まるから……
レッド・エンタテインメントの7年ぶりの完全新規タイトル。略称は『オレオワ』。
原案及びディレクターはサクラ大戦シリーズで原案と世界設定を担当した森田直樹氏、シナリオは『ぼくらはカセキホリダー』でレッドとタッグを組んだ同社元社員でもあるライトノベル作家の阿智太郎氏、キャラクターデザインはライトノベルの挿絵で活躍する白井鋭利氏が担当する。
架空のゲーム会社「ジャッジメント7」を巡る数奇な運命の物語が、現実世界と仮想世界の2つの浅草を舞台に描かれる。
レッドの本社はかつて浅草に存在しており、それが本作の製作背景となっている他、セルフオマージュも含まれている(*1)。
ジャッジメント7の本社はひさご通り商店街の一角、浅草にあったレッドの本社は鷲(おおとり)神社の敷地内、というように両者の間には当然ながら差異があり、メタフィクション要素はあくまで副次的な面白さに留められている。
システムはオーソドックスな一本道のアドベンチャーゲーム。選択肢によってノーマルEDと真EDの2つに分かれ、キャラクター毎のエピローグ(個別ED)も用意されている。
個性的な女性キャラが多数登場する点などでレッドが過去に手掛けた美少女恋愛ゲーム群と共通するが、エピローグを迎えられるキャラのうち2名は男性である。
2017年、ジャッジメント7の代表である尾張世界は拡張現実プログラム「W.O.R.L.D.プログラム」を開発した。その検証実験に参加していた午前零時は、廃墟と化した浅草と捕えられた仲間達、謎の少女の幻を目撃する。この時すでに、運命の歯車は回り始めていた…
+ | その一例。ゲーム開始1分程度で出てくる会話で既にこれである。 |
+ | 具体的な言及はなるべく避けるが、一応ネタバレ注意。 |
バカゲーに片足を突っ込んだギャグ満載の軟派な作風でありながら、要所要所でプレイヤーの心を熱くし、最後にはキッチリ感動させてくれるエンターテインメントのお手本のようなストーリー。
問題点も没入感を阻害するような致命的なものではなく、あらゆる要素が一定以上の高いクオリティを維持している。
登場人物のクセがかなり強く人を選ぶ一面はあるが、それ故に独特かつ強烈な魅力を放つ名作である。
【じゃっじめんとせぶん おれたちのせかいわおわっている。】
ジャンル | 新世界ADV | ![]() |
対応機種 |
プレイステーション4 Nintendo Switch(*5) |
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発売元 | 5pb.(MAGES.) | |
開発元 |
レッド・エンタテインメント ウィザードソフト株式会社 |
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発売日 | 2019年2月28日 | |
定価 |
パッケージ版:7,800円 DL版:7,000円 |
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セーブデータ | 90個+オートセーブ1個+クイックセーブ1個 | |
レーティング | CERO:C(15才以上対象) | |
判定 | 良作 | |
ポイント |
シナリオ、ボリューム、UI、 全てがパワーアップした完全版 |
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レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー |
PSVで発売された『俺達の世界わ終っている。』に新キャラクターと後日談を追加し、UIを徹底的にブラッシュアップした移植版にして完全版。
本作の発売元は『科学アドベンチャーシリーズ』の5pb.となっており、「科学アドベンチャーファンに捧ぐ渾身の1作」と公式自身がそう宣伝している。
同シリーズを意識してか、タイトルは物語の主役であるゲーム会社「ジャッジメント7」を英語で表記する形式になった。
移植の際に新たにサブタイトルが付くのは良くある話だが、元々のタイトルがサブタイトルに移行するパターンはかなり珍しい。
+ | 終盤については、一応ネタバレ注意。 |
パブリッシャーが5pb.になった事による最大の変化がUIである。
5pb.は科学アドベンチャーシリーズをはじめとして幾つものノベルゲームを手掛けており、UIについてはこなれているのが「当たり前」としてユーザーには認識されている。そんな中でPSV版の微妙なUIをそのまま持ってくる事は出来なかったらしく、各段に快適なUIへとブラッシュアップされた。
その快適さはディレクター自らに「便利すぎてオレオワじゃないみたい!!」と言わしめる程である。
+ | 特定のシーンについて、かなり具体的に記載するのでネタバレ注意。 |
読み応え充分の追加シナリオと徹底的に見直されたUIにより、作品の完成度がさらに高まった。
特に、フローチャートの便利さは2019年現行のADVトップクラスと言っても過言ではなく、PSV版とは比較にならない程にプレイが快適になった。
新しく追加された用語集で没入感を阻害する問題点があったが、それも既にアップデートで修正されている。
新規はもちろん、PSV版をプレイ済みのユーザーにもオススメのまさに「渾身の1作」である。
*1 例えば、劇中では「ジャスティスオージ」というヒーロー番組が流行しているが、これはレッドの創業者である広井王子氏が元ネタと考えられている。広井氏とレッドは2006年に『魔弾戦記リュウケンドー』というヒーロー番組を実際に手掛けている。
*2 アップデートで次の選択肢や次章まで一気に飛ぶ機能も追加された。
*3 これとは別に、PS+加入者は製品版を240分間限定でプレイする事も可能。
*4 本作の導入部をかいつまんで説明すると、「東京の繁華街に拠点を持つオタク集団が自分達が作った発明品をきっかけに巨大な陰謀に巻き込まれていく」となり、『シュタゲ』のそれと非常に似通っている。他にも、主人公チームの一員がデブなオタク男子と天然な女子高生で共通している事や、主人公が共に炭酸飲料に拘りがある点(『シュタゲ』はドクターペッパーで『オレオワ』はコーラ)など。
*5 ダウンロード版のみ。
*6 ソニー自身は画一的な規定の存在を否定しつつも、グローバル基準を参考にケースバイケースで対応することは認めており、実際にPS4版と他機種版でセクシャル表現に差異が生じているゲームが複数報告されている。
*7 オートセーブはこのタイミングで行われる。
*8 既読シーンでもスキップが止まる不具合があったが、Ver.1.02のアップデートで修正された。
*9 もちろん、セルフネタバレの起きない範囲での修正である。
*10 ギャラリーとは別扱いで、エピローグと「総集編。」を閲覧出来る「スペシャル」が存在するがこちらも同様。
*11 レッドが過去に手掛けた『サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~』において、李紅蘭のテーマソングで「浅草のアン''ジェ''ラスでスイーツを」という趣旨の歌詞があるが、実在した浅草の喫茶アン''ヂェ''ラスは昭和21年開業、『サクラ大戦2』は大正をモチーフにした''太正''14年前後の物語で時代が合わない。間違いなく元ネタではあるが別物といえる。
*12 音声は日本語のみ。UIと字幕が2か国語に対応。