ドラゴンクエストVI 幻の大地

【どらごんくえすとしっくす まぼろしのだいち】

ジャンル RPG
高解像度で見る
裏を見る
対応機種 スーパーファミコン
メディア 32MbitROMカートリッジ
発売元 エニックス
開発元 ハートビート
発売日 1995年12月9日
価格 11,400円(税抜)
プレイ人数 1人
セーブデータ 3個(バッテリーバックアップ)
判定 良作
ポイント 転職システム復活
特技の台頭による呪文の価値の暴落
良くも悪くも考察の余地があるストーリー
粗削りながらもドラクエらしい佳作
ドラゴンクエストシリーズ


概要

ドラゴンクエストのシリーズの第6作で、リメイクを除くとSFC最後のナンバリング作品。
「発見」をテーマとする本作では*1、自分の住む世界と「幻の大地」を行き来しながら冒険を進める。
開発元は前作までのチュンソフトからハートビートに変更され、この作品からチュンソフトが本編シリーズに基本的に関わらなくなっている*2*3


ストーリー

「仲間たちと共に大魔王との決戦に挑むも、返り討ちにあう」…そんな悪夢を見た主人公は、ベッドから転げ落ちて目を覚ます。

山奥の村ライフコッドに妹のターニアと暮らす主人公は、村長の依頼でふもとの町まで使いに出かけることになった。
しかし、ふとした事故で主人公は「大地に開いた奇妙な大穴」に落ちてしまう。

落ちた先にあったのは、自分の住んでいた世界と同じようでいて、同じではない奇妙な世界。
自分からはその世界の人々の姿も声も認識できるが、自分の姿が見える人は誰もいなかった。
どうにかライフコッドへ帰り着いた主人公は、それがこの世界とは異なるもう一つの世界「幻の大地」であることを知る。


特徴・評価点

本作は過去作で好評を得た要素を取り入れながら、進化したグラフィック・操作性・BGMによって、当時のRPGの中で高いレベルの完成度を誇る作品となった。

「2つの世界」を中心とする、シリーズ屈指の広大な世界

  • 主人公の住む世界(上の世界)とは別に「幻の大地(下の世界)」という全く同じ広さのマップが存在しており、不思議な井戸を覗きこんだり、上の世界の大穴から落ちたり、大地から伸びる階段で行き来したりする。
    • 上の世界・下の世界は密接な間柄にあり、一方の世界で変化が起きると他方がそれに連動して変化することも多い一方、どちらの世界にも存在する同じ町の状況が正反対になっていたり、登場人物の関係性が微妙に異なったりと、繋がってはいるが同じではない2つの世界の存在がフルに活かされたシナリオとなっている。
    • 上下の世界に関する真実と、それが明らかになるまでの過程とが丁寧に描写されており、多くのプレイヤーが予想外の展開に驚かされた。
    • 中盤にとあるアイテムを入手することで探索できるようになる「海底」、終盤に訪れる更なる別世界も合わせると、舞台の広大さはシリーズ屈指となっている。
    • シナリオ進行に必須な城・町・村だけでなく、クリアのためには特に訪れる必要のない小屋やほこら等の「寄り道ポイント」も多数存在する。
      • その中には後述の「おまけ要素」の項で紹介するような有用な景品が獲得できる施設や、強力な装備品を購入できるお店、宝箱の存在する小ダンジョンといった攻略の一助となる施設だけでなく、
        メインシナリオで出会ったキャラの関係者や、2つの世界の秘密について言及する人物が住んでいたり、メインシナリオで語られなかった人物の顛末が語られたり…と本作の世界観をより深く知るためだけに存在する場所もあり、世界を探索する楽しみは非常に大きい。
  • 本作のストーリーは中盤まではいわゆる「一本道」で進行するが、先述の海底を探索可能になるアイテムの入手後は行動範囲が大幅に広がり、以後はとある目的のために世界中を隅々まで探索してまわる作りになっている。
    この探索の期間はゲーム全体で見てもかなりの割合を占めており、発見に満ちた広大な世界・多数のイベント群を順不同で攻略できるため、本作の進行の自由度はシリーズの中でも高い部類に入る。

転職システム

  • III』に登場した転職システムが復活。ゲーム序盤の終わりごろに「ダーマ神殿」で転職できるようになる(レベル20前後)。
  • 今作の転職システムは、キャラのレベルはそのままに「職業毎に8段階の熟練レベル」という形式をとっている。
    • 職業は下級職9種、上級職7種、特殊なモンスター職2種の計18種類。
    • 上級職は下級職を複数マスターすることで転職可能になり、モンスター職への転職解放には「○○のさとり」というレアアイテムを消費する。
      • 熟練レベルは職業に就いている状態で、弱すぎない敵相手*4に規定の戦闘勝利回数をこなすことで成長し、同時に熟練レベル毎に設定された呪文や特技も新たに習得する。
        覚えた呪文・特技は別職へ転職しても消えることはない。
      • 職業に就くとステータスパラメータに○○%(実際は分数での補正)という形で補正がかかる。また、上級職ではその職についている間はさらにステータスが上昇したり、特殊効果が発生する。戦闘系の職業は攻撃やHPが上がり、MPなどが下がるなどの変化を見せ、非戦闘系の職業との差別化を図ることで職業ごとの個性にもなっている。
  • 上記の仕様により、「転職解禁直後にストーリーを進めずに一気に上級職を目指す」というプレイングには、システム側が枷を掛けている。
  • しかし、ゲーム後半の敵相手ならば熟練度上昇限界レベルはどこでも無制限となり枷が完全に外れるため、最終的には「旨味の乏しい敵でも大抵は熟練度強化に繋がる」ゲームバランスとなる。
    • これらの仕様は「効率的なキャラ育成はメタル狩り一辺倒」な過去作の状況に一石を投じる試みとも言える。
  • 今作の各仲間キャラクターは、基本的には従来シリーズと同様にレベルアップでも呪文・特技を覚えるが、レベル20程度を境に自発的な習得は打ち止めとなる。
    つまり、転職前ではキャラごとに個性があらかじめ設定されているが、転職可能になった先からはプレイヤー自身がキャラクターの個性を決めていくのである。
    • また、今回『勇者』が職業として追加された。ドラゴンクエストシリーズファンからは「『勇者』というのは選ばれた特別な存在じゃないと駄目、世の中に何人も居るのは有り得ない」と反発もあったものの、この仕様には「特別な血筋でない人やスライムの様なモンスターですら、夢見て諦めずに努力すれば勇者にだってなれる」というメッセージが込められている…らしい。
      • 主人公のみ勇者になるための条件が緩和されており、他のキャラより勇者の資質があるという設定となっている。主人公が勇者に転職するために必要な戦闘回数は選択する職業によって差はあるが最速500回程度。これより多くの戦闘が必要なルートもあるが、それでも普通にプレイしていれば終盤には無理なく勇者になれる。
      • 主人公以外のキャラクターの道のりは険しく、最短でも約2,300回程度となっている。
    • 前作では終盤になると戦力外になる仲間モンスター*5が多かったが、キャラ格差があるとはいえ、この職業システムによって「完全に役立たず」となることはなくなった。

仲間モンスターシステム

  • V』に引き続き採用。特定の条件で敵を倒すと、戦闘終了後に一定の確率で仲間にできる。仲間にできるモンスターは全18種類。
    • モンスターも人間キャラクターと同様に転職でき、レベル上限も前作より上がっている者が多いが、極端に低い者も散見される。
    • モンスターの管理は、前作に登場した「モンスターじいさん」ではなく、人間と同じ「ルイーダの酒場」に統合された。

グラフィックの進化

  • 32メガビットと当時のSFCとしては大容量のROMを用いており、グラフィック・操作性・サウンドの品質も大きく向上した。
    特にグラフィックとサウンドの作り込みは前作を大きく凌駕したと高く評価されている。
  • 今では当たり前となった、敵モンスター攻撃時のアニメーションも今作が初*6
    • 特殊な例外*7を除き全てのモンスターがアニメーションするがラスボスを除いて効果音は鳴らない。
    • これまで他のRPGでも同じ試みは散見され、また効果音は原則としてアニメと同時には乗らない簡素な演出ではあったが、有名シリーズで取り入れられたことがプレイヤーに与えた衝撃は大きい。
  • 移動・操作性
    • 町中やダンジョンでの移動速度が上がり、地形などに半身が引っかかっても自動で避けてくれるようになった。それに比べてワールドマップだけが『遅い』ため、町ごとの距離感等を演出することにも繋がっている。
    • 戦闘中、前回使ったコマンドのカーソル位置が記憶されるようになった。
    • 主人公だけの特技「おもいだす」。これはゲーム中のNPCとの会話を、Xボタンで記憶して一定数表示する会話ログ・メモのような機能で、レベルが上がると表示数が増える「もっとおもいだす」「ふかくおもいだす」と、不要な記憶を削除する「わすれる」を習得する。
      • SFC版発売当時はスマホはもちろんパソコンも一般家庭には少なく、つまりはインターネット上の攻略サイトは存在しなかった。公式攻略本(定価 2,000円で、上下巻)を持っていない限りは町人の情報をヒントにダンジョンを攻略する必要があったため、非常に便利な機能だった。
    • 「とびら」コマンドが自動化され、対応している鍵を持っていれば扉に触れるだけで自動で開くようになった。後述の「ふくろ」のおかげで鍵をうっかり所持し忘れることもなくなった。
  • 瞬間移動呪文「ルーラ」の消費MPが1と前作までの8から大幅に軽減され、移動にかかるコストが激減した。これにより広大な世界でも移動にかかるプレイヤーの負担が減り格段に遊びやすくなった。
  • アイテム整理
    • 持ちきれないアイテムを入れることができる「ふくろ」が初登場、アイテム預り所まで行く必要がなくなり、 アイテム管理のわずらわしさが軽減された。
      以降の作品でも「ふくろ」は続投され、「預かり所」は「ゴールド銀行」というお金だけを預かる施設に変更された。
    • 「どうぐせいり」コマンドで、全キャラクターの装備品と一部の貴重品以外をふくろに収納できるようになった。
    • 「アイテム」コマンドから直接アイテムを装備できるようになった(前作までは「そうび」コマンドからしかできなかった)。
  • 高品質なBGM、当時として最高級のサウンドドライバ
    • 前作のサウンドドライバがすぎやまこういち氏からも苦言を呈されるほど低品質であった反省を踏まえ、今作ではSFCとして最高レベルの音色・音質を実現した。どの音源も臨場感たっぷりで、プレイヤーを魅了させる。
    • タクティクスオウガ』の音楽を担当した崎元仁氏が編曲に参加したことにより、これまでのドラクエとは一線を画した、ベースとドラムが大活躍するロック調の曲もあり、プレイヤーの予想を良い意味で裏切った。
    • サウンドデザインは『イーハトーヴォ物語』でマイナーながらも一部で高い評価を得ていた多和田吏氏*8
    • 作品を効果的に演出する工夫として、全編のBGMに通して登場する共通モチーフの存在、対応した場面におけるアレンジ楽曲の活用が挙げられる。
      • 中でも印象的なのが「悪のモチーフ」。前作でも、同名のごく短い効果音に近いメロディ(今作のものとは異なる)が用意され、クライマックスでそれをアレンジしたBGMが流れるという実験的な演出は限定的に見られた。しかし今作の「悪のモチーフ」は「ラ-ソ#-ラ-ファ」という短くシンプルな4音ながら、魔物とダンジョンに関連した全ての曲に例外なくふんだんに盛り込まれており、まさに本作の象徴ともいえるメロディになっている。アレンジは先述のロック調からオーケストラ風、宗教音楽風まできわめて幅広く、良い意味で同じ曲には聞こえず個性豊かでありながら、全編通じての世界観の統一に大きく寄与している。
      • 町・娯楽施設といった人々が暮らすシーンも、同じ曲を多彩にアレンジして用いている。
      • 2つあるフィールドの曲も同様。実は序盤のフィールドBGMは物語の核心に迫るネタバレになっていることが後からわかるのだが、それをそうと感じさせない見事な仕上がりになっている。
    • ドラクエとしては初めて、フィールドやダンジョンのBGMが流れている時にエンカウントでBGMが途切れ、戦闘後にBGMが戻った際、途切れた部分から再生されるようになった。
      • 過去作では、戦闘後に途切れた部分からではなく最初から再生されてしまうので、BGMの序盤しか把握されず全貌を知らない人が多く、BGMの序盤以外を生かせていなかった。
      • 今作以降、いちいち最初から再生されなくなったことで、BGMの全貌が多くのプレイヤーに把握され、BGM全体が生かせるようになった。
      • ただしラストダンジョンのBGMのみ、戦闘後に最初から再生されてしまう。恐らく意図しない不具合で、リメイク版では修正されている。

ラスボスに関して

  • 本作のラスボスは強さ・ストーリーの両面で非常に印象深いものとなっている。
+ ネタバレ注意
  • 本作は職業システムによって、終盤になるにつれて特技・呪文・仲間が充実してくるためにゲームバランスは徐々に緩くなっていくが、ラスボスはそれまでのボスと比べて急に強くなり、戦闘時の難易度は歴代ラスボスの中でもトップクラスと言える。
    • 第1形態は2つの玉を持った老人。高めの素早さから1ターンに1~3回行動をし、「激しく燃えさかる炎*9」「念じボール」など防御無視の全体攻撃をしてくる他、「もうどくのきり」「マホカンタ」などの搦め手も備えている。「第1形態なのだから小手調べ」といったレベルではない。
    • 第2形態は筋骨隆々の魔人の姿となり、その攻撃力は本作最高の410。それを「バイキルト」で高め、「ルカナン」でこちらの守備力を下げ、「まわしげり」で全体攻撃してくる。ほぼ確実に先手を取る「しっぷうづき」や防御を固める「スカラ」「だいぼうぎょ」も使う。行動回数はランダム1~4回行動となっているが、3回以上の行動をしてくる確率は低いのが救い。
    • 第3形態は巨大な顔と両手に分裂。実質的に常時3~4回行動となり、消耗したこちらのパーティーを激しい攻撃で追い詰めてくる。最大の特徴は左手がザオリクを使うということ。本体を最初に倒したり、全体攻撃を連打してHPの低い右手を最初に倒したりすると、左手が完全な状態で復活させてくるのは本作を語る上で欠かせない話*10
    • またいずれの形態でも無属性かつ防御無視のダメージを与えてくる特技を使ってくるので、はぐれメタル(ないしはぐれメタル職をマスターさせた味方)ににおうだちさせて猛攻をやり過ごす事もできない。
    • 演出面でも、ラストバトル中は作品中で唯一敵の行動アニメーションに合わせて効果音が鳴る仕様で、迫力が巧みに演出されている。
  • ストーリー上においても、人間の夢や希望を奪って侵略する、自らの脅威となる存在を次々と封印・破壊し、易々と復活させないよう強力な魔王に守護させるなど非常に狡猾に立ち振る舞う。
    • 前作『V』同様その存在が明かされるのは終盤になるが、それまでも存在を仄めかすような描写もあり、また存在発覚後も重要人物の1人を主人公達の眼前で抹殺したり、街1つの人間を全て石や動物に変えるなどの暴虐で存在感を見せつけたりする。
    • そのため、ゲーム上・シナリオ上ともに非常に強力な、ドラクエシリーズでも屈指の名魔王と言えるだろう。
+ ……のだが。裏ボスのネタバレ注意。
  • ある条件を満たして裏ボス(ダークドレアム)を倒すと「この裏ボスが一時的に味方となり主人公たちの代わりにラスボスを倒す」という特殊エンディングが見られる。
    その戦いぶりは「先程主人公と戦った時は思い切り手加減してやっていた」と言わんばかりに、ラスボスの全ての攻撃を全く受け付けず、その後完膚なきまでに蹂躙しつくすというもので、イベントでの一時的な仲間であることを差し引いても極悪すぎる。
    • なお、このイベントで撃破すると、ラスボスの台詞が変化するなど、お遊びにしては芸が細かい。
    • このイベントのインパクトのせいか、この裏ボスは『バトルロード』や『IX』での登場時、非常に強い魔王として『V』の裏ボスと並んで別格扱いされている。

おまけ要素

  • 『V』で好評だったクリア後のおまけ要素として、隠しダンジョン、裏ボス、隠し職業・仲間モンスター、隠し装備などが存在する。
  • ちいさなメダル
    • 『IV』『V』では所持メダルから所定の枚数を渡して景品と交換するシステムだったが、今作では一定数を集めるごとに景品が貰える累計方式となった。今作では100枚まで景品アイテムが用意されている。ちなみに総数は106枚。
      • 今作以降は作品によって上記2つのいずれかの形式が採用されるようになる。リメイク前後で形式が変わったり、累計方式の景品を全て集め終わると交換方式に変更される作品も。
  • 途中での名前変更
    • 中盤以降、とある施設で「命名神マリナン」に仕える神官と会話することで、主人公および仲間の名前を任意のタイミングで変更することが出来るようになる。
      • さらに仲間だけでなく、なんと「ふくろ」にも好きな名前をつけることができる。
    • ただし、「ああああ」といった同じ文字を4つ並べただけの適当な名前や、下品でふざけた内容のキーワードを名前にしようとすると神官に警告され、それを無視して変更すると「命名神の怒りに触れた」ことになり、高額な罰金を払わないと名前を変更出来なくなる*11ペナルティも存在する。
    • また、他の仲間キャラクターや重要人物の名前は付けられないようになっている。
    • この命名神による名前変更は『リメイク版3』、『7』でも登場した。
  • ベストドレッサーコンテスト
    • 本作より実装された新ステータス「かっこよさ」を競うコンテスト。
    • キャラ自身のかっこよさの値に加え、装備品や職業による補正も重要になるため、強さよりもいかにカッコよく着飾るかという新しい方向での戦略性が試される。
    • 優勝してランクが上がるにつれて 男性のみ、女性のみ、モンスターのみといった縛りが発生するランクも出てくる。
    • タキシードに蝶ネクタイを合わせたりと、ボーナスポイントがもらえる装備の組み合わせを探すのも一興。
  • 3か所のカジノ(問題点に記述あり)
    • 前作では1か所だったものが分散され、交換できるアイテムが異なる。
    • 遊べるゲームはスロットマシンとポーカーのみ。ナンバリング作品では最も少ない。
  • スライム格闘場
    • 仲間にしたスライム系モンスター*12をAIで戦闘させる。
      • こちらは一匹で参戦だが、敵は複数。呪文特技・装備が揃わないと難易度は高い。
      • 施設内には、パーティーをスライム系のみにした場合にだけ入れる場所がある。この場合は「ご主人様」が居ないために試合に出ることができない、施設内のスライムと会話ができるなど細かい演出もある。

賛否両論点

本作はシリーズの中でも特に評価が割れやすい作品でもあった。

ストーリーに関して

  • ストーリーや人物像の詳細をぼかした表現を用い、解釈をプレイヤーの想像に委ねている部分が目立つ。
    • オープニングのドラゴン、エンディングのラストシーンなど、意味深な演出がされているにもかかわらず明確な説明がなく、意図を読みにくいシーンが少なくない。
      • 悪く言えば世界設定が不明確なまま解釈をプレイヤーに丸投げしているともとれるが、プレイヤーによる想像の余地が広く残されているという好意的な解釈も可能。
    • 仲間の1人であるミレーユは、エピソードがぼかされていて謎が多い。
      • 出自の設定に関しても、弟がいるなど優遇されており掘り下げる余地が多くありそうだが、出自に関して各メンバーの中で最も不明確で最後まで謎が多いまま。
      • またオープニングに主人公やハッサンとともに登場しムドーに敗れているが、その後本編で初登場するまでの経緯が主人公やハッサンとは異なり最後まで不明のままである。
      • いずれも彼女のミステリアスなキャラクター性を補強する要素とはなっているが、他のキャラより作り込みが浅いという受け取り方もできてしまう。
  • 道中の「おつかい」の動機が弱いものが多い。
    • 道中での人助けはドラクエのお約束かつ醍醐味で、個々のエピソードはよくまとまっていると評される一方、今作では主人公たちが協力する必然性が薄い、すなわち導入部の練り込みがやや甘いシナリオが散見される。
      • 特に中盤でこの傾向が強く「とりあえず行けるところに行ってみたら困っている人がいたので(時には、頼まれることすらないまま)力を貸す」というシチュエーションが複数ある。
      • こうした「おつかい」をクリアすることで先に進む条件が解放されることはメタ的には当然で、今作の自由度の高さの裏返しとも言えるが、物語の流れとしてやや弱く「やらされている感」を拭えない人もいた。

職業に関して
今作の職業に関しては、過去作『3』とは大きく異なるものとなっており、仕様について賛否が聞かれる部分は多かった。

  • 熟練度稼ぎに関する仕様はわかりやすい一方、やや荒削りな部分もある。
    • 今作では上記の通り自発的な特技の習得はLV20辺りで打ち止めとなり、人間キャラの技・呪文習得は転職システムでほぼ賄われるため、レベル上げに加えて熟練度稼ぎも非常に重要となっている。
    • 熟練度は純粋に戦闘で勝利した回数によってのみ上昇し、経験値稼ぎにおけるメタルスライム系のような近道がない。
      • 雑魚かボスか、格上か同格か、単体か群れかなど問わず、全て等しく戦闘勝利1回ごとに熟練度1回分の扱いである点にはやや納得いかないとする声もある。
    • また今作には「地域ごとに『熟練度を得られる上限のレベル』が設定されており、これを超えたキャラはそこでいくら戦っても熟練度が加算されない。」という仕様がある。
      • ただし、ゲーム後半のエリアではこの上限が撤廃されるため「レベルを上げ過ぎて熟練度を稼ぐ場所がなくなる」ということはない。
      • つまり、ダーマ神殿解放直後は、大量の経験値が入る魔物を倒してしまうと本来稼げるはずだった戦闘回数分の機会損失につながってしまうため、熟練度が上がるギリギリの地域で、できるだけ経験値を得ずに戦闘することが最高効率の熟練度稼ぎとなる。これを狙おうとするとかなり煩雑である。
      • この仕様の存在は作中で明言されているが、肝心の「その戦闘で熟練度が稼げたか否か」のメッセージが一切ないため、気づかないまましばらく戦っていたが一向に熟練度が上がらない…と、時間を浪費してしまったプレイヤーも多くいた。
  • 上級職への転職条件の設定がアンバランス。
    • 「上級職」は当該キャラが複数の下級職をマスターすることが条件で解放されるが、9つある下級職のうち「下級職1つにつき2パターンの上級職への転職を目指せるグループ」と「下級職1つから1つの上級職しか目指せないグループ」とで2分されてしまっている。
    • 前者は「戦士・武闘家・魔法使い・僧侶」4基本職が該当し、そもそも習得特技の汎用性が高いうえ、各職業1つにつき「バトルマスター・魔法戦士・賢者・パラディン」の4上級職のうち2つへの転職を目指せる*13ため、育成が効率よく行える。
    • 一方、後者は「踊り子・遊び人・盗賊・商人・魔物使い」の5基本職が該当し、踊り子+遊び人のマスターでなれるスーパースターと、盗賊+商人+魔物使いの3職マスターでなれるレンジャーしか用意されていないうえ、習得特技もニッチなものが多い。
      • スーパースターは最もマスターが早い(=主人公なら最速で勇者になれる)、上級職での習得特技も比較的有用、ベストドレッサーコンテストでも有利など独自のメリットを複数持つが、レンジャーは基本職の頃を含めパラメータ補正・習得特技・職業特性がどれも微妙なうえマスターにも時間がかかるという四重苦を背負っている。
    • 初見ではどの職業が有用かは判断しづらく、職業選択を誤ったせいで本来強いはずのキャラをスタメンから外すことになったプレイヤーも少なからずいた。
  • 職業とキャラの相性は実はバリエーションが狭く、悪い意味でプレイヤーの個性を発揮しにくい仕様。
    • 職業ごとの能力値補正は、キャラ固有の数値に職業ごとのパーセント補正をかける仕様であり、可能な装備もキャラ依存で職業では変化しない。
    • 本作は各キャラの素の能力値はキャラごとの差が非常に大きく、転職したとしても有利な戦い方は主にキャラの素の能力値に左右される。
      • そのため「力が高くMPの低いハッサンを魔法使いにする」「同じ魔法を2連発する強力な『山彦の帽子』を装備できるが、攻撃力の高い武器がなく力も低いバーバラを武闘家にする」のようにキャラの個性に反する職業選択はキャラの強みを打ち消すだけとなる。
    • 以上より、本作の転職は一見自由度が高いようで、必ずしも選択の幅は広くない。適した職業を見定めることも攻略上の重要なポイントとなっている。
  • 職業ごとの、戦闘での運用しやすさの格差が非常に大きい。
    • 下級職全般に、前衛系職業以外におけるHPのマイナス補正が大きい。
      • 特に魔法使いは「力、身の守り、最大HPが全て-40%」と強烈なマイナス補正があるが、引き換えに得られるのはわずか「MP+10%」のみ*14
      • 魔法使いが適するキャラはたいてい素のHPが低いため、そこから最大HPが更に大幅に減少すると生存しづらさに大いに直結し、魔法使いに就いたキャラを馬車の外に出すのはハードルがきわめて高くなっている。
      • 今作は馬車内の仲間にも経験値・職業熟練度が必ず入る*15仕様のため、マイナス補正が大きい職業に就いているキャラはマスターするまで馬車に入れておく といった育成戦略は取りうる。
    • 職業「魔物使い」も、戦闘中の使い勝手が非常に悪い。
    • モンスターを仲間にするには「魔物使い」の職業に就いたキャラを馬車から出して戦わせないとモンスターは仲間になってくれないが、この職業のスペックが著しく低い。
      • ステータス補正があまりに貧弱なうえ、習得する特技も実用性が低いものばかり。
      • また魔物使いをマスターすることでなれる上級職は、前述の不遇なレンジャーのみ。
    • そもそも本作の職業システムではマスターした下級職に就き続けると損をする仕様であり、特定のモンスターを仲間にしようとして戦闘を繰り返すと、魔物使いに就いたキャラの育成だけ他キャラより相対的に遅れてしまうことになる。
      • しかし、強い仲間モンスターほど加入に必要な魔物使いの熟練度が高く設定されており、どの敵が仲間になるかわからない初見プレイヤーが仲間モンスターをタイムリーに加入させるには、基本的に誰か一人は魔物使いで固定し、熟練度を上げ、マスター後も就かせ続ける必要がある。
  • ただし、ここまで挙げた扱いにくい職業の存在やアンバランスさも含めて育成、運用の戦略をトータルコーディネートすることもまた本作の戦略性、醍醐味ではある。
    • 扱いにくい職業の存在は、有用な上級職の解放や仲間の加入に必要な代償であるとも解釈でき、必ずしも批判されるばかりではなく、作品全体でみればバランスが取れているとして受け入れる人も少なくない。
  • 転職のユーザビリティに関する賛否。
    • 転職にはいちいち上の世界のダーマ神殿を訪れる必要があるうえ、毎回の転職時の演出もやや冗長。
      • 職をマスターした人は直ちに転職しなければ以後の獲得熟練度が無駄になるが、パーティ最大8人のうち誰か一人が職をマスターするたびにいちいち進行を中断してダーマ神殿へ行くのは非常に煩雑。
      • ボス戦などでパラメータ補正や有用な特性を得る目的で一時的に転職する戦略も気軽にはとりにくい。
    • この点は、同時期に双璧をなす存在であった『FF』のジョブシステムと比べると小回りが利かず不便を感じやすいと批判されがちである。
    • ただしこのシステムは『DQ3』の転職を世界観として引き継いでいるもので、また次作でも同じシステムとなっており、当時からこれを強く問題視する意見が主流だったとは言えず、ドラクエの世界観として受け入れていた人も決して少なくはなかった。
  • ゲームをはじめから開始してすぐに転職できるわけではないので「転職システムによる多彩な成長」を目的にプレイするとしばらくお預けを食らうことになる。

その他

  • ゲームバランスについて。本作では後半になると仲間・呪文特技の充実により徐々に難易度が下がっていくが、逆に前半の難易度はかなり歯ごたえがある。
    • まず最初の冒険からして、始まりの村を出たらいきなりダンジョンである。しかも、そのダンジョンではこちらは1人旅なのに対して最大で敵4匹同時出現があるため、最弱ザコのぶちスライムに敗北したプレイヤーも多かった。
      • 最初のダンジョンの宝箱には有用な装備品が入っているが、それを取って生きて帰ってくるだけでも至難の業。
      • RPGに慣れたプレイヤーでない限り、初期費用で装備を整えたり、ダンジョンに入る前にレベル上げをしたりしておかないと、間違いなく全滅する。
    • その後も難易度が下がることはなく、次のシエーナ周辺では一人旅なのにこちらの行動を1ターン封じてくる敵が2種類も出てきたり、攻撃力が高い上に最大6匹で出現し回復までしてくる敵がいたりする。その次のトルッカではルカニ+集団戦法をかましてくる。
    • そして次の目的地まで超長丁場というところで、キアリーが無い段階でバブルスライムが毒を盛ってくる。「キアリーがあるからお役御免」になることが多かった毒消し草のありがたみが分かった人も多い。
    • その次も難易度は緩まず、ダメージの大きいヒャドやギラ、厄介なルカナンが容赦なく飛んでくる。
    • 序盤における重要アイテムが手に入る月鏡の塔では、異様にエンカウント率が高い。
    • 極めつけがトラウマモンスター・ストーンビースト。
      • 地底魔城より登場するが、大半のステータスが同時期に登場する敵より軒並み高い上、何よりこの時点ではかなりの威力を持つベギラマを唱えてくるのがとにかく脅威。SFC版では同時に出現するのは最大2体となっているが、それでも2体からベギラマを2連発で受けてパーティが壊滅なんてことはザラである。他にもアストロンを唱えてこちらの通常攻撃を無効化することもある。
    • ムドーの島やムドー城の敵も、かなり後の敵が先取りして出てくるので手強い。そしてムドーそのものも鬼のような強さ。
    • …と、物語前半はとても歯ごたえのある難易度。本作が初めてのRPGだったり、あるいはRPGに不慣れなプレイヤーは、前半で投げてしまったという人も。
  • そして後半は徐々に難易度が下がっていくのだが、ラスボスは非常に強いので油断できない。
    • 総合して、「本作はRPGとして歯ごたえのある難易度である」というのが一般的な認識である。
  • 金策が限られる。
    • 今作では終盤に価格が1個2~3万G(ゴールド)する装備品も多く売られている中、戦闘1回あたりの報酬は終盤でも3桁G程度と少なく、全モンスター最多のGを落とすのは序盤の敵…と、ややバランスを欠いている。
      • 他の金策として商人の職業特性(戦闘での獲得G増加)や特技「あなほり」による金銭入手などもあるが、いずれも入手金額の期待値は低く、あまり実用的でない。
    • ただし今作は宝箱などから有用な装備品が比較的多く手に入るため、資金難でクリア困難になるほどではなく、世界の綿密な探索を行う動機づけとなっている面もある。
  • 馬車の入れないダンジョン内において、馬車が完全に切り離されないため、外の馬車で待機している仲間が、ダンジョン内の仲間へ移動中に呪文を使えてしまうほか、馬車のメンバーも経験値や熟練度を獲得する事ができる。
    • 今作は転職によって誰でもベホマやザオラルを覚えさせることができるため、この仕様を利用すると移動中に控えのメンバーからメインのパーティへ回復呪文を使い放題になってしまう等、ゲームバランスを大きく崩せてしまう。
    • 「しのびあし」や「くちぶえ」「リレミト」も可能。便利なのは確かだが、極めて不自然であり違和感も強い。
    • ただし、経験値のみではなく熟練度によっても成長する本作では、ダンジョンで馬車を完全に切り離してしまうと、前2作以上にメインメンバーと馬車の待機メンバーの成長格差が起きてレギュラーメンバーが固定化しやすくなってしまうため、仕方の無い面もある。また、この仕様により前2作の問題点であったメインメンバーと馬車の待機メンバーの成長格差が緩和されたのも事実である。

問題点

主に職業と特技のバランスに関して批判されることが多い。

いわゆる「特技優遇・攻撃呪文冷遇」の問題

  • いくつかの攻撃特技は、消費MPが0であるにもかかわらず呪文と同等かそれ以上の強力な効果を持つため、攻撃呪文の存在価値が大暴落した。
    • その代表例が武闘家→バトルマスターの流れで習得できる格闘技系の攻撃用特技。
      • 「武闘家」は誰でも就ける下級職だが、強力な特技を多数習得できてしまう。「まわしげり」は複数対象の攻撃で雑魚の一掃に有用で、「せいけんづき」「ばくれつけん」による強化攻撃はボス相手に有力なダメージソースとなり、いずれも高攻撃力のキャラが使えば威力は呪文以上。更にレベル依存の非物理攻撃「かまいたち」も備え、非力なキャラでも安定したダメージを出せ、強化打撃の効きにくい高守備力の相手にも通りやすい。
      • そして武闘家と他の特定の職業をマスターすると就ける上級職の特技も有用。戦士からの「バトルマスター」は「がんせきおとし」、僧侶からの「パラディン」では「しんくうは」と、それぞれ強力な全体攻撃技を覚える。
    • 極めつけは特殊職業「ドラゴン」で覚えられるブレス技。
      • 「かがやくいき」「しゃくねつ」は呪文を遙かに凌ぐ高威力なのに、これすら消費MP0。クリア後のザコ戦では「全員でドラゴンをマスターして『かがやくいき』を連発」という状態になってしまうことも珍しくない。
  • このような強力な特技の数々に対し、呪文はほとんどが覚えた時点で既に威力不足かつ特技で代替できる威力となってしまっており、使いどころがない。
    • 敵全体にダメージを与える上級呪文「イオナズン(消費MP15)」ですら序盤のダンジョンに出現する無耐性の敵を一撃で倒せないことがあり*16、終盤の敵相手には最大HPの3分の1も削れない事もざらである。
    • 180~200ダメージを与える最強の単体攻撃呪文「メラゾーマ(消費MP10)」も、冒険終盤には「せいけんづき」にあっさり追い抜かれる*17
    • 勇者で習得できるシリーズ通しての最強呪文「ギガデイン(消費MP15/グループ/175~225ダメージ)」は、一見するとかなり強力に思えるが、その後すぐに「ジゴスパーク(消費MP25/全体/210~290ダメージ)」や「ギガスラッシュ(消費MP20/グループ/350~410ダメージ)」という、コストパフォーマンスも威力も圧倒的に優れた特技を習得してしまうため、存在意義がほぼなくなっている。
    • しかも、魔法系職業はステータス補正や特性などにも恵まれていない。
      • 下級職の魔法使いは最大HP・力・身の守りすべてが-40%補正で、後衛キャラを魔法使いにすると耐久のなさがさらに進行するし、前衛キャラでも厳しい数値となってしまう。魔法使いを極めて別の職業に就くころには習得した中級呪文はほとんど威力不足になっている。
      • そこから上級職になっても、魔法戦士は前述のように不遇気味な職業。もう片方の賢者は職業特性で消費MPを軽減できる(マスターすると半減)ためにお得感は出てくるが、その頃にはほぼ全ての攻撃呪文が威力不足でお役御免になっている(回復・補助呪文は別)。
    • よって、活躍可能な攻撃呪文は序盤にミレーユが自力で覚える「ヒャド」や、中盤に基本職「魔法使い」で覚えられる「メラミ」「イオラ」「ベギラゴン」、魔法戦士で覚える「メラゾーマ」、そして主人公がイベントで習得する「ライデイン」くらい。それも習得直後の環境の話であり、少し育つとやはりそれらもお役御免になる。
      • 一応「やまびこのぼうし」+「メラゾーマ」という方法により、最強レベルの火力まで押し上げることは可能*18
  • 攻撃呪文冷遇になってしまった背景は「今作から敵のHPを大きくインフレさせており、特技の威力はそれに見合った数値になっているのに、攻撃呪文の威力だけなぜか過去作と同じ数値がそのまま採用されてしまっている」という説明に尽きる。
    • 今作から使用者の攻撃力を計算式とする剣技や格闘技などが登場し、特にクリアレベルを超えてもキャラの力(攻撃力に深く関わるパラメータ)の成長が鈍くならないようになったため、味方キャラの特技による火力が大幅にインフレしてしまっている。また、それ以外にも素の威力が高い特技が多数登場している。
      それに合わせて敵のHPも大幅に増えているのだが、攻撃呪文の威力は過去作のまま据え置きのために威力不足になるのは自明の理。
    • 敵も強力な特技を使用してくるため、それに合わせて味方のHPも前作までより高めになっている。一方、敵が使った場合のみ攻撃呪文の威力も前作までより上昇しているが、ブレスなど他の全体攻撃系の特技に比べるとあまり強くないのはそのまま。
    • もう1つ、副次的な原因として、「(特技は攻撃力やレベルの上昇によって威力が大きく上がっていくものが多いのに)呪文はレベルやステータスが上がっても、威力が上昇しない仕様のまま」なことも挙げられる。
      • 素の威力の底上げがあったとしても、多少底上げした程度では、レベルや賢さでの威力上昇が無い限り、結局は終盤やクリア後の冒険で攻撃呪文が弱すぎになることは目に見えている。逆に素の威力を大きく上げ過ぎてしまうと、終盤のバランスは良くなっても、呪文習得直後のバランスが壊れる可能性がある。過去作に比べて冒険が進むほど敵のHPのインフレ具合が大きくなっていく本作において、この問題を上手く調整し解決するためには、呪文の威力上昇の仕様は必須であったと思われる。
      • たとえ素の威力は過去作と同じであっても、レベルや賢さで威力が大きく上がっていくのであれば、キャラを鍛え上げた際にそれにふさわしい高威力になり、攻撃呪文も最後まで活躍できたはずである。
      • 説明書には、「賢さが高いと呪文の威力が上昇する」との記載がある。開発の当初ではその予定があったのかもしれないが、結局実装されなかったのが悔やまれるところ。
    • 攻撃呪文はMPを消費して使う以上使用回数に制限があるし、回復呪文用のMPも考えると多用できない。そのため、攻撃呪文の方を高威力に、特技は低威力に調整するのが普通だろうが、これが全く逆になってしまったために起きた悲劇である。
    • 一応、後述の「ねる」を使えばMPの問題だけは解消できる。また、1回の呪文で2回分の効果を得られる「やまびこのぼうし」を装備すれば優位性もある。
      • しかし、前者には「特技を使えばわざわざMPを回復する手間もいらない」「工夫しないと眠った状態で戦闘が始まってしまう」、後者には「防御力や耐性が他の頭装備より低い」「装備可能者が限られる」「入手時期は最速でもクリア直前(事前情報なしだとほぼクリア後限定)」などの問題があり、完全にはフォロー出来ていない。
  • その他の呪文について
    • 補助呪文も、一部が上位互換の特技により存在意義を失っている。
      • 特に痛いのが「メダパニ」。敵グループを混乱させるという非常に強力な呪文だが、何と消費MPが0で同様の効果を持つ「メダパニダンス」が登場してしまった。メダパニダンスは呪文ではないので、マホカンタなどで跳ね返されることも、怪しい霧で封じられることも無く、踊り封じを使ってくる敵もわずか1種類しかいないので、使えなくなる心配はほとんどない。しかも踊り子に転職すれば誰でも簡単に覚えられてしまう。
      • 同様に、「ラリホー」も「甘い息」の完全下位互換になってしまっている。
      • 一方で、消費MPは多いものの、より高確率で相手を眠らせる「ラリホーマ」は面目を保っている。
      • 相手を幻惑する「マヌーサ」は、同じ効果を持つ「すなけむり」「まぶしいひかり」に比べて効果の強さや持続ターン数などで差別化ができている。
      • 「バイキルト」「スクルト」などステータス上昇系の呪文も特技にはそれに相当するものがなく、呪文の方が優位に立てている。アイテムで代用できてしまうが。
    • 回復に関しては、呪文が特技に比べ優勢ではある。
      • 回復特技には味方全体を回復するスーパースターの「ハッスルダンス」や、自分のHPを500ポイントも回復する勇者の「めいそう」など強力なものが存在する。だが、前者は回復呪文「ベホマラー」と比べて回復量がやや小さい上にやまびこの帽子による2回発動の対象にならず、後者は習得することが困難であるうえに自分しか回復できず、移動中に使用することができない。
      • 任意の仲間1人のHPを完全に回復する「ベホマ」も重要。
        前作以前でも終盤になれば極めて重要な回復手段であったが、本作では味方のHPも過去作よりもかなりインフレしているので、尚更ベホマの存在は大きい。そして、代用できる特技は存在しない。
      • また、状態異常の治療や蘇生を「確実に」「移動中に」できるのは呪文だけの特権である。魔法使いを極めたキャラでも僧侶から賢者になれば回復呪文のエキスパートとして活躍できるため、完全に存在意義を失ってはいない。
  • 一方で、一部の強力な呪文・特技の習得方法が容易すぎるため、序盤のバランスブレイカーになっている。
    • メラミ
      魔法使い☆1(1回戦うだけでOK)で習得。単体に80前後のダメージを安定して与えられる上に、消費MPは4とお手軽。転職直後では前線キャラの特技よりも強く、魔法使いの面目躍如といったところであるが、誰でもすぐ習得可能なのはさすがに手軽すぎた。複数人に一気に覚えさせることで中盤を楽に進めるテクニックは「即メラミ」「火攻め」と呼ばれるほどであった。
    • まわしげり
      武闘家☆2で習得。敵1グループを攻撃することができる。ムチやブーメラン使いと違い、元々の攻撃力の高く強力な武器が装備可能な前衛キャラも使えるため、ゼロコストの攻撃にしてはかなり強力。2体目以降は徐々にダメージは減っていくが、それでも汎用性が非常に高い。なお、名前は「蹴り」だが普通の攻撃と同じ扱いで装備している武器の攻撃力も加算される。ただし、武器の追加効果までは発動しないため、剣技等武器を使う特技との差別化は、武器の追加効果によって表現していると言える。
    • せいけんづき・ばくれつけん
      「せいけんづき」は武闘家☆5(ハッサンはイベントで習得)、「ばくれつけん」は武闘家☆8で習得。前者は岩石耐性のある敵には命中率が下がるもののダメージ2倍、後者はランダムターゲットとなるが合計でダメージ2倍。これらも武器の攻撃力が加算される。
      ただし、武闘家は成長が遅いのですぐに覚えられるわけではない。技の威力も上記の通りキャラの攻撃力に依存しているため、非力なキャラでも高威力を発揮できるわけではない。
    • ねる
      遊び人☆5で習得。「ねむり」状態になる代わりに、移動とともにHPとMPが回復する。本作はマップチップ1マスあたりを2歩で移動するため、ダンジョン内でも手軽にMPを満タンにできる。エリア切替後はしばらくエンカウントが発生しない仕組みなので階段付近では安全に回復できる。
      一応、前述したように「特技を使えばわざわざMPを回復する手間もいらない」「このように階段付近で使わないと眠った状態で戦闘が始まってしまう」などの欠点はあるが、MP切れでダンジョンを引き返すことが減るのは非常にお得。
  • また、こうした呪文・特技とは逆に、習得してもその時点では既に威力が低すぎて使い物にならない呪文・特技も数多く存在する。
    • 終盤でなれるドラゴン職の序盤に覚えられるのは「ひのいき」「つめたいいき」など序盤のザコが使うようなブレス攻撃だったり、前述の魔法使いで習得できる「メラミ」の後に覚えられるのがグループに20ダメージ程度の「ギラ」だったり。
    • 下級職で習得できる特技の中には、敵が使用する特技をそのまま引っ張ってきたために使い勝手に困るものが多い。「たいあたり(自分と相手に現HPの8割ダメージ、無効率高)」「ふしぎなおどり(敵のMP減少)」「どくのいき(毒状態は戦闘中には効果が無い)」など。

登場人物に関して

  • バーバラの離脱と加入に関する特例扱い。
    • バーバラはHPなど耐久面が弱くバトルではやや使いにくいキャラクターだが、なぜかパーティから外せない
      • バーバラが必要なイベントがごく一部存在するが、他キャラのイベントと同様に「連れていかなければ進行しない」という扱いも可能な範囲にとどまり、シナリオ全体を通した存在感は他の仲間と同程度。他の仲間を完全に自由に編成できる中でバーバラだけ外せない理由付けが不明確で、一部の人には足手まといに映り嫌悪の対象となってしまった。
    • 逆に、序盤のダンジョンであるムドーの島へ突入する際はなぜかバーバラが強制離脱してしまう。
      • 全シナリオを通して特定メンバーの強制離脱はこれが唯一の機会だが、その理由は取ってつけたように少し述べられるのみで必然性が乏しい。
      • 前述したムドー戦の難易度もあり、このダンジョンでレベル上げをする人は多かったが、その間バーバラにだけ経験値が入らないため、ムドー戦後に他の仲間と大きなレベル差が生じてしまう。
    • ただし彼女はMPが高く、大ダメージを与える最強魔法「マダンテ」を唯一イベントで覚える*19。この魔法の専門役として「砲台」呼ばわりされることも。
  • 仲間の一人であるテリーの、加入前後以降の扱いが異様に悪い。
    • 加入直前のイベントで主人公達と対戦するが、そのグラフィックはなんとフィールド上のドットキャラを引き伸ばしたもの(敵が味方キャラに化ける呪文「モシャス」と同じ仕様)。単純に戦闘画面における敵のドット絵として比較してしまえばFC版『DQ1』にも劣る解像度であり、当然アニメーションもしない。そればかりか、敵一覧のウインドウに「テリー  1匹」と表示される始末。表示名は他の人間の敵も同様でありシステムの制約と理解はできるが、唐突なドット引き伸ばしと相乗効果でイベントの雰囲気を壊しており、テリーのネタキャラ扱いの下地になってしまっている。
      • シナリオ内で戦闘を交える人間キャラはテリー以外にも多数おり、そのほとんどは無難に人型モンスターのグラフィックの流用で対処されているが、なんとチョイ役のおっさんの敵2名にはお腹の贅肉まで丁寧に描き込まれた専用グラフィックが用意されている*20。彼らはいずれもシナリオでの出番の限られるチョイ役に過ぎず、「なぜチョイ役のおっさんにまともなグラフィックがあって、さんざん引っ張って登場したテリーがこの扱いなのか」と思ってしまうのも無理はない。モシャスとの整合性や容量との兼ね合いなどの事情があったかもしれないが、そうだとしても専用グラフィックを作るべきはおっさんよりテリーの方だろう。
      • 因みに、この戦闘のBGMはボス戦闘曲である「魔物出現」。彼以外の人間との戦闘は全て通常戦闘曲の「勇気ある戦い」になっているのだが…
    • このイベントを経ていざ加入したテリーは、一言で言って弱い
    • まず、加入時の初期レベルが異常に低い。加入時期の公式攻略本で推奨されているパーティの平均レベルは約35だが、テリーの初期レベルはわずか23。
    • そして初期レベルが低いだけならまだしも、ステータスの成長率まで低い。
      • パラメータ全般が主人公やチャモロに大きく見劣りしており、レベル99のステータスは男性キャラの中で最低という体たらく。
      • ただし、回避率が他のキャラが64分の1なのに対して、テリーは16分の1と高い。バトルマスターの職業特性と重なって敵の攻撃を無力化しやすいという固有の長所はある。
    • また加入時点で上級職「バトルマスター」に就いているが、下級職でマスターしているのは「戦士」のみで、本来条件に必要なはずの「武闘家」は一切手つかずのままマスターしていない
      • 主人公の勇者への転職条件が緩和されているのと同様に、テリーも「戦士のマスターのみでバトルマスターになれる」という職業適性の素質を秘めていたという演出なのかもしれない。
        …が、実運用の観点では武闘家未経験はデメリットでしかない。先述の通り本作は武闘家で習得する攻撃特技が非常に有用なのにテリーはそれを一切持たず、☆4習得の回避率バフ技「みかわしきゃく」もないためせっかくの個性である回避性能の高さも活かしづらい。その残念さからネットでは「経歴詐称」と揶揄されることもしばしば。
    • それまでメインシナリオ内で主人公一行と何度も遭遇し、キザな言動を繰り返したり、強そうなモンスターを眼前で打ち倒して見せたりと、色々な「引き」を作り勿体を付けてきただけに、仲間となった後の実際の強さから来る「見かけ倒し感」は大きい。
    • 極めつけは、テリーの同行を条件として加入する仲間キャラのドランゴが、テリー本人とは対照的に作中トップクラスの強さを持っていたこと。
      • テリーは「ドランゴの加入のために必要な存在だが、それが済めば用はない」ということで「ドランゴ引換券」なる不名誉なあだ名までついている。またテリーは加入時点で極めて貴重な武器防具を初期装備していることから「装備引換券」を兼ねるともいわれる。
      • ドランゴは「某国の王命を受けて自身を討伐しに来たテリーに圧倒され、服従した」ということになっている。この一騎打ちは主人公一行の目の前で繰り広げられ、戦闘画面と同じ特殊な専用演出まで用意され、テリーの俊敏さと強力さをこれでもかと見せつけるものとなっていた。
      • しかし、いざ仲間になった際の強さはドランゴのほうがテリーより圧倒的に上で、なおかつ王からの依頼は「討伐」だったにもかかわらずドランゴが実際は生きていたなど、不整合な点が多いことから「八百長」などと揶揄されるようになってしまった。
    • 以上の要因から、テリーは「加入直後、ドランゴを仲間にするためだけに同行させられ、その後は身ぐるみを剥がされルイーダの酒場に送られそれっきり」というプレイヤーも少なくない。
      • 重要なサブイベントであるスライム格闘場をこなすには仲間スライムのためにパーティー8枠の少なくとも1つは確保する必要があり、メインキャラ8人の少なくとも1人は酒場送りにするしかないため、育っていない彼が選ばれることが多かったという事情もある。
  • アモスは人間キャラであるのだが強制加入ではなく、クリアに必要でない町のイベントで仲間になる少し特異な立ち位置のキャラクターである
    + イベントの詳細。ネタバレ注意
  • このイベントの途中で、とある真実をアモス本人に告げてしまうと、イベント終了後に彼は既に街を去っており、二度と会うことができない。それ以降は仲間にすることができなくなる。
    仲間にしなくてもクリアはできるが、選択肢次第でここまで大きな変化が生じる時期限定イベントはシリーズ初だった。また、彼が街から去ってしまった場合の物語の展開はとても切なく後味の悪いものである。
    • そもそも、本作はそれまでのシリーズと比べても会話中に「はい/いいえ」の選択肢が頻繁に登場する*21。そのため、軽はずみに選択してしまった、もしくは反応の違いを知りたくてあえて選択してしまい、イベントが終わっていることすら気づかないプレイヤーも多かったのではないだろうか。
    • さらに、真実を告げる選択肢を選んでも、それに対してアモスが「またまたそんな冗談を!」とサラッと流してしまい、まだ町を去らずにそのまま普通に進行するため、その後ダンジョンをクリアしてイベントを終えるまで、もう既に取り返しの付かない状況になっている事態に気づきにくい。
      • ただし、イベント前後に「アモスに真実を告げてはいけない」と町の人達から釘を刺されている上に、この時の選択肢は2回も念を押され、2回とも「はい」を選択しないと彼が去る結末にはならないため、この選択肢が何か重要な分岐点であると示すヒントには一応なっていた。
  • また、彼のグラフィックは専用ではなく、街などに居る一般の戦士の流用である。加入が任意なのでストーリーに絡むこともなければ固有イベントもなく、ただ一緒に戦ってくれるだけの存在であるため、当然シナリオでの存在感は非常に薄い。
    • しかしその実力たるや、人間キャラクターの中ではかなり強い方。彼と仲間モンスター1種しか習得できない準固有の特技「へんしん」を覚えている。
      • 加入が面倒な仲間モンスターと違って、確実に早期加入が可能な利点もある。
    • 攻略本では、上述した戦士の汎用グラフィックを元にイメージイラストが描き起こされている。

仲間モンスターに関して

  • 仲間にできるモンスターの種類・酒場に預けられる定員が減ってしまった。
    • 仲間にできるモンスター18種類のうち、ルイーダの酒場に預けられるのは15匹。つまり、どう頑張っても全モンスターを同時に仲間にしてはおけない
      • 仲間になる確率も(一部を除いて)全体的に低めで、16分の1(=6.25%)や32分の1(=3.125%)、64分の1(=1.5625%)という確率の壁が立ちはだかる。
  • 序盤のダンジョン「夢見の洞窟」を初めとしたいくつかのダンジョンではモンスターを仲間にできないが、この仕様についてゲーム中に一度も説明が無い
    • 仕様に気づきようもないまま、絶対に仲間にならない場所で無駄な戦闘を繰り返してしまったプレイヤーは多かった*22
      • 前作にも「仲間になるはずのモンスターでも、魔王の力の強い場所では仲間にならない」という設定はあったが、終盤の敵の本拠地2か所に限られていた。
      • サブイベントのスライム格闘場のクリアに有用な仲間モンスターである「スライムナイト」の加入時期が中盤以降まで遅れ、育成が遅れがちで日の目を見にくいという事態にも繋がった。

その他(戦闘関連)

  • 能力値「賢さ」が何の意味も無いステータス。
    • 説明書や公式ガイドでは「数値が高いと呪文の威力や成功率が上がる」とあるが、前述のとおり本作にそのような仕様はなく、誤った記載である
      • 前作では仲間モンスターの命令厳守率に辛うじて影響していたがそれもなく、次作のようなサブイベントもなく、完全に無意味な数値である。
  • 真実の姿を映し出す「ラーのかがみ」はイベントでこそ大活躍するが、従来作にあった戦闘中のモシャス解除機能が何故か備わっていない。
    • 今作ではモシャスを使用するカガミ系モンスターが序盤から終盤まで登場し、他の解除方法である「いてつくはどう」も習得が終盤限定のため従来作以上に需要があるはずの機能だった*23

その他

  • 序盤、主人公たちが「嘘」をつくことになるイベントがある。
    • ストーリー進行に必須のイベントで避けることはできないが、嘘がやむを得ないといえる必要性や正当性には乏しく、客観的に見て無理のある展開である。
      • 主人公たちの行動は悪行でしかなく、勧善懲悪で善行を重ねるのが基本の「DQ」のイベントとしては批判が多い。
      • のちにこの件は大事件へと発展し、これが遠因となって後味の悪い結末を迎えたキャラもいるなど、プレイヤー的に気分の良い展開ではない。
  • カジノが物足りない。
    • 本作のカジノはポーカーとスロットの2種類。『V』で初登場したスライムレースと『III』以来皆勤だったモンスター闘技場は削除された*24
      • 上記の削除された2種類は視覚的にも面白く、DQならではの独自性もあるものだったため、代替がポーカー1種類というのは寂しい。
    • また、今作のカジノはシリーズでも屈指の稼ぎづらさとなっており、「(別の金策手段*25を用いて)Gを稼いで景品分のコインに換金した方がマシ」とまで言われるほど。
      • 今作のスロットは、リーチ時に確率で演出が起こり最後のレールに変化が起こるなど凝ったものになっているが、当たりの確立も、当たった際の配当も少なすぎて実利も楽しみも薄い。
    • 『IV』『V』のカジノは解禁時点で作中最強クラスの装備品を景品で入手できたが、今作のカジノは世界に複数あって場所ごとに景品も異なっており、到着時点での店売りの装備品よりも強力なものが入手できる、という程度でやり込む動機にやや乏しい。
  • 特定のイベントで装備品以外の道具が勝手に袋の中に入る仕様が、サブイベントであるベストドレッサーコンテストやスライム格闘場でも採用されている。
    • 参加機会の多いこれらに参加するたびにアイテムの再整理が必要なのは非常に煩わしい。
  • アイテムの設定にミスが散見される。
    • 代表的なものとしては「伝説の武具であるオルゴーのよろいをおしゃれなかじやで鍛えると元々あった強力な耐性が消滅する」「店売り品のたいようのおうぎが売却できない」など。
      • これらはDS版では修正されている。
  • 「おもいだす」で記憶できる会話は直前に会話した人物の台詞のみという仕様上、複数の人物が連続して会話する場面は一番最後に喋った人物の台詞の部分しか記憶できない。
    • その前の内容を記憶できた方がクリアに有用である場面もいくらかあり、若干不便である。

総評

シナリオ進行やキャラクター育成においてシリーズ過去作にない自由度の高さを実現しているが、
ストーリー解釈の一部をプレイヤーに委ねる構造やプレイスタイルで難易度が大きく変わる仕様には賛否の意見が聞かれ、
また呪文や特技のバランス調整が不完全、仲間モンスターシステムが職業システムとやや噛み合わないなど、粗削りな面も残すこととなった。
しかし全体でみれば幅広いプレイヤー層を取り込める無難な仕上がりであり、『ドラクエ』の骨子を保ちつつ当時のRPGとして十分な高水準まで順当に進化した作品である。
アイテムの「ふくろ」、ボスの強さや演出、スピンオフに登場するキャラ…など後のシリーズ発展に寄与する要素も複数持ちあわせ、シリーズ史を語るうえでも重要な作品と言えよう。


その後の展開

  • 上記の通り本編では何かとネタにされがちなテリーだが、その反動からか、派生や外伝作品では非常に優遇されている。
    • スピンオフ作品として幼少時代のテリーを主役にした『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』が発売された。
      • 当時流行したポケモンタイプのゲームでありながら、配合システムなど独自のシステムで大ヒットを記録した。
        今作をきっかけに生まれた「ドラゴンクエストモンスターズ」は現在も続く人気シリーズ。この作品でテリーとミレーユを知ったという人も多い。
    • また、歴代ドラクエキャラが登場する『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』にも本作からはテリーだけがプレイアブルキャラとして参戦している。しかも弱かった本家と違い(むしろ設定通り?)作中屈指の強キャラという優遇っぷり。
  • 月刊少年ガンガンにて『ドラゴンクエスト 幻の大地』の題で漫画化された。作画は神崎まさおみ氏、脚本はDQシアターも手掛けるとまとあき氏。オリジナル展開が多い『ロトの紋章』や『エデンの戦士たち』に比べると、ダイジェストも多いながら原作に忠実な内容になっており、それでいて(はざまの世界を除く)ストーリーの完全補完、少年漫画らしいオリジナルのキャラ付け(やや熱血よりな主人公ボッツ、生意気お坊ちゃん風なチャモロ、ゴメちゃんを彷彿させる「キズブチ」など)、元々アクション漫画を得意とする作者と破壊マニアのアシスタントによる戦闘シーンなど見どころは多い。全10巻なので中だるみなく読める。
    • 余談だが、作者は原作のラストシーンにどうしても納得ができず、堀井雄二氏に直談判して許可をもらい、オリジナル展開で締めたという逸話がある。
  • 2010年1月28日にニンテンドーDSでリメイクされた。詳細は別項を参照
    • 2015年6月11日には上記DS版をベースにした内容のスマートフォン(iOS・Android)版も配信されている(こちらもDS版の項目を参照)。

余談

  • ファミ通クロスレビューでは34点と、当時既にDQブランドを確立していたことを考えると前評判はあまり高くなく、序盤の展開に関しては「平坦さにはちょっと閉口」「『ドラクエ』じゃないかとさえ思った」と酷評されていた。
  • Yahoo!ゲーム、DQMVBコンテンツ内での「一番思い入れのある(ナンバリング限定)主人公は?」の2010年8月から9月に行われたアンケートでは、全9作中、『VI』の主人公はビリから2番目だった。さらに同日行われた「お気に入りの(ナンバリング限定でIXとDQMB出場のみ)大魔王は?」のアンケートでは全9作品中、意外な事に『VI』の裏ボスが第3位、本来のラスボスはビリから4番目という結果に終わっている。
  • 開発元が変更されたためか、メタルスライム系列の物理耐久力が初期作品の仕様に戻ってしまっている。
    • 歴代のメタルスライム系列は簡単に倒されないように固くなっているのは共通だが、『II』までは守備上限値が255と低いこともあり、こちらの攻撃力が上がると普通に2ケタ台のダメージが入る。『III』と『IV』では上限値に余裕が出たので、理論上攻撃力上限の3倍以上の1023*26に守備力を設定して高レベルになっても通常攻撃では0か1しか出ないようにし、『V』では守備力上限値自体は低い(511)が専用処理で同じ状況にしていたが、本作では守備力999になっているだけなので、攻撃力を500以上にあげれば普通にダメージが入るようになった。
      なお、同じ開発元の『VII』でも同じく普通に攻撃力を上げれば十分破れる固さの仕様になっている。
  • 『IV』『V』が一般ファンからの人気が高いキャラを輩出していったのに対し、本作はメインキャラや敵・モブキャラに2chなど一部界隈で人気を持つキャラクターが多い。
    • ハッサンの風貌とその強さ、期待を大きく裏切る弱さから「ドランゴ引換券」とあだ名をつけられたテリー、地底魔城のストーンビースト、裏ダンジョンのデススタッフ、しあわせの国のジャミラス、某農夫の「おりゃ クワこうげき!カマこうげき!!」、海底の宝物庫のキラーマジンガなど。特にキラーマジンガは未だに根強い人気を誇る。
  • 便利ボタンと会話記憶のボタン配置が本作のみ他作品とは異なっている。
    • 便利ボタンは『V』から導入された人との会話や宝箱や足下を調べることが1回のボタンで行えるボタン、会話記憶は前述の通り今作で導入された人の会話を心に刻み込んで見直せるメモのようなシステムである。
    • だが、本作の便利ボタンはYボタン、会話記憶のボタンはXボタンとなっており、特に便利ボタンは同じSFCの『V』『I・II』ではXボタンだったため、過去作の感覚で便利ボタンを使おうとしてXボタンを押してしまい特に意味のない会話を記憶してしまうということも頻発する。
      • 今作をベースに作られたSFCリメイク版『III』では便利ボタンがXに戻り、会話記憶もYボタンに変更された(つまり本作とは配置が逆になった)。また、以降のシリーズはPS作品だとXボタンの場所にあたる△ボタンやDS以降の作品だとAボタンであったりするが、便利ボタンがYボタンに割り振られた作品は今作のみである。
      • なお、従来作と同じく便利ボタンはLボタンでも代用可能で、そちらはSFC作品通して共通となっているため、Lボタンを重点的に使う限りは操作の違和感は軽減される。ただし、『V』『I・II』で同様に便利ボタンとして使用できたRボタンは、今作と『III』ではワンタッチ地図に割り当てられている。
  • 四魔王の最後の一人デュラン(前座も含む)に敗北すると、伝説の武具を全て奪われるという、ドラクエには珍しいとんでもないペナルティがある。再戦して勝てば戻っては来るのだが、すぐに再戦する場合、当然他の装備品は伝説の武具に劣るわけで((伝説の武具 より性能が高い「メタル装備」は、この段階では盾しか手に入らない。その盾の入手条件もこの段階では非常に厳しい。))、更なる苦戦は必至となる。
  • 物議を醸したゲーム批評の堀井氏のコメント
    • ゲーム批評にて、マスタードラゴン=バーバラを仄めかす等、賛否ある設定について言及、「バーバラがマスタードラゴン(笑)という話もあるんですよね。そこまでいっちゃうと逆にちんけになるような気がして、あえて言ってないんですよ。」…と答えている。
    • 他にも、ミレーユが実体化していた件等も答えているが、ドラクエVIそのものが説明不足なのは意図的なものとしている。
      • 当時の堀井雄二氏は割と物議を醸す事を言って面白がる所が多々あったので、これもその一つかと。

最終更新:2025年03月01日 10:56
添付ファイル

*1 当時各メディアで流行ったのが「自分探しの旅」だった。

*2 これ以降チュンソフトが関わっているドラクエシリーズは『トルネコの大冒険』シリーズのみとなっている。

*3 降りる際に、中村光一氏が語った理由が「割に合わない」であった。予算や収入の面もあっただろうが、どうやら開発の所帯が大きくなり過ぎて調整役だった中村氏は相当、辟易していたとされる。

*4 地域・ダンジョンごとに設定されている「熟練度上昇限界レベル」よりレベルが低ければOK。

*5 ばくだんベビーやくさったしたいなど。

*6 前作までは呪文やとくぎで光る演出のみだった。

*7 カガミ系の敵(それらが「モシャス」で仲間をコピーした状態も含む)と、某パーティメンバーが敵として出現した時はアニメーションがない。

*8 すぎやま氏も『イーハトーヴォ物語』をプレイしたことがきっかけでの起用だと語っている。

*9 敵全体に大ダメージを与える火炎系最上級特技。「燃えさかる炎」とは異なるが魔法ではない。

*10 右手も、蘇生呪文・ザオラルを唱えるのだが、左手と比べて優先順位が低く、成功確率も復活時のHPも半分なのであまり語られない。

*11 このとき注意しなければならないのは、高額な罰金を支払った直後の名前変更の際に、入力をキャンセルしたり、変更前と同じ名前を入力したりすると、「名前を変えないのか」と言われ、罰金だけを取られてしまう。

*12 スライム、ホイミスライム、スライムナイト、キングスライム、はぐれメタルのみ。

*13 戦士+武闘家=バトルマスター、戦士+魔法使い=魔法戦士、魔法使い+僧侶=賢者、武闘家+僧侶=パラディン

*14 賢さも増加するが、賢さは意味のない数値である。詳細は後述。

*15 本作では、馬車の入れないダンジョン内での戦闘においても、ダンジョン外の馬車の味方にも経験値等が入る

*16 イオナズンのダメージは140前後だが、レッサーデーモン(イオ系に耐性なし)のHP116に乱数次第では到達しない。

*17 クリア後の冒険で仲間を鍛えていくと攻撃力も上がるので、比較的非力なキャラでもメラゾーマの威力を超えてしまう。

*18 「ギガデイン」の方が耐性が低い敵が多く攻撃範囲も広いが、最速で勇者に転職できる主人公が「やまびこのぼうし」を装備できず、装備可能な他のキャラクターを勇者に転職させる必要があるため、実用性に乏しい。

*19 他にはクリア後限定の特殊な職業「はぐれメタル」で習得するか、非常に仲間にしづらいモンスターのはぐれメタルを仲間にするかしかない。

*20 この2名は互いに色違いであり、造形自体は1種類で共通

*21 大抵の会話ではどちらを選択しても多少反応が変わるのみでストーリー進行に影響はない上、再び話かければ何度も選択肢を選べるケースが多い。

*22 Vジャンプの付録についてきた攻略冊子には「仲間になるモンスターでも、魔王の力の強い場所では仲間にならない」「夢見の洞窟に出現するスライムナイトは絶対に仲間にならない」と書かれており、仲間モンスターを最短で仲間にするための場所が記載されるなどしていたが、作中で説明がなく知り得ないプレイヤーが多数だった

*23 リメイク版では修正された

*24 モンスター闘技場については、自分の育てたモンスターを使って戦いたいという要望に応えてスライム格闘場として生まれ変わったとインタビューで述べている。

*25 先述の「あなほり」で大金を掘り出す方法。非常に低確率の運ゲーを要求されるが、どのみち運ゲーならばカジノよりは幾分マシ…といった具合。

*26 DQは被攻撃側守備力が攻撃側攻撃力の2倍になるとまともにダメージを受けなくなる。