*風の伝説ザナドゥ 【かぜのでんせつざなどぅ】 |ジャンル|アクションRPG|&amazon(B0000ZPLW2)| |対応機種|PCエンジン SUPER CD-ROM2|~| |発売元|NECホームエレクトロニクス|~| |開発元|日本ファルコム|~| |発売日|1994年2月18日|~| |価格|7,800円(税抜)|~| |プレイ人数|1~2人|~| |セーブデータ|3個|~| |配信|プロジェクトEGG:2007年4月13日/1,000円&br;バーチャルコンソール:2008年11月25日/800Wiiポイント|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''[[ドラゴンスレイヤー&英雄伝説シリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『ドラゴンスレイヤーシリーズ』の第8作目にして最終作。また、ファルコムが初めて家庭用に自社参入して開発したタイトルでもある。~ 『[[ザナドゥ>XANADU]]』の名を冠してはいるが、音楽やシステムを一部継承している程度で世界観やストーリーなどの繋がりは存在しない。~ 後にラジオドラマなどのメディアミックスも行われ、ファンからのリメイク要望も高いタイトルであるが、現在までに移植のみでリメイクは行われていない。 **ストーリー 1000年前、魔物の軍団を引き連れて現れた邪竜ダルダンティスは暴虐の限りを尽くしたが、聖剣を携えた勇者アイネアスにより討伐された。~ 王となったアイネアスにより、世界はいくつかの国に分けられ、アイネアスは邪竜を倒した山の上に城を築き、邪竜の持っていたクレーネジュエルを備えた。~ クレーネジュエルの力により、人々は魔法を使えるようになり、人々の生活は豊かになっていった…。 アイネアスの子孫であり、王都イシュタルの百騎長となった青年アリオスは、辺境クロロス島で魔物の討伐を行っていた。~ しかし、戦いの最中に現れた謎の紫の髪の男に気絶させられ、気付いた時には船に乗せられていたのだった。~ 男は言う「伝説の風が吹き始めた」と…。 ---- **特徴 -本作は見下ろし型のフィールドマップを探索し、横スクロールのアクションステージでボスを倒すことで進めていく。 --ストーリー進行に応じてフィールドは行ける場所が制限され、ボス戦まで含めて一つのステージとなっている。 -フィールドでの戦闘は『[[イース]]』と同じ体当たり戦闘で、半キャラずらしの要素もある。 --オプションで移動速度を変更できる他、IIボタン押し続けでダッシュが可能。 --仲間がいる場合、アリオスが止まっていると仲間たちが自動的に攻撃してくれる。ステイタス画面で「ATT」ボタンで仲間に戦ってもらうか選べるため、熟練度稼ぎの邪魔にはならない。 -アクションステージは『[[イースIII>イースIII -ワンダラーズ フロム イース-]]』に近く、攻撃とジャンプを駆使して攻略していく。 --方向キー上で防御、下でしゃがむことが可能。斜め下を入力しながらIIボタンでスライディングが出来る。 --ジャンプ中、上を押しながら攻撃すると上突き、下を押しながらだと下突きが出せる。 --IIボタン押し続けでチャージ攻撃。また、チャージと各種攻撃を組み合わせると攻撃が変化する。 --敵を倒した際に出現する鈴を獲得すると、仲間を呼び出して一緒に戦って貰える。仲間は一定ダメージを受けると去る。 ---また、2Pが仲間を操作して二人プレイで遊ぶことも可能。 -成長システムは『ザナドゥ』同様の熟練度制を採用している。 --剣・鎧・盾それぞれに熟練度が設定されており、剣は敵を攻撃する、鎧と盾はダメージを受けると熟練度を獲得出来る。 --装備品は入手した直後は性能をフルに発揮できず、熟練度が100%になることで本来の性能となる。熟練度は100%が最大のため、本来の性能を超えるような事はない。 ---ただし、アリオスより極端に弱い敵からは熟練度を得ることは出来ない((厳密には、一撃で倒せる敵やダメージを受けない敵。))。 --最大HPは減ったHPを回復することで上昇していく。他のステータスは存在せず、基本的に能力は装備品に依存する。 -その他のシステム --アイテムはステイタス画面から使用した場合と装備した場合とで効果が変化する。 ---例えば、回復アイテムの「プロテア」は使用した場合は一定量のHPを回復するが、装備した状態でHPが0になると自動的に使用され、HPを最大まで回復してくれる。 --ショップは販売所と買取所に分かれており、買取時はルーレットで買取価格が決まる。ルーレットは何度でもやり直せる。 --宿屋は存在しないが、拠点となる教会のベッドで無料で回復出来る。また、敵が非ストック型回復アイテムのハートを落とす事もある。 --時間の概念があり、リアルタイムで経過する。 ---街の人々も時間に従って生活しているので、夜中になると会話できなくなったり店を利用できなくなる。 ---アイテムの「アワーグラス」を使用すると時間を変更したり、時間経過を遅くすることが出来る。 --セーブはフィールド上ならステイタス画面からいつでも可能。アクションステージではセーブ出来ないが、脱出コマンドが使える。 ---- **評価点 -美麗なビジュアルと豪華声優陣 --CD-ROM2のゲームではお馴染みだが、オープニングから始まり、各ステージクリア時には毎回ビジュアルシーンが挿入される。 --キャラクターのデザインは90年代ファンタジー風で美形揃い、作画もOVA並に美麗。当時の作風が好きな人にはたまらないだろう。 --声優陣もアリオス役に山口勝平、ヒロイン・ソフィア役に佐久間レイ、他の仲間たちも矢尾一樹、塩沢兼人、勝生真沙子など非常に豪華なメンバーとなっている。 ---他にも複数のサブキャラクター掛け持ちで中尾隆聖氏を起用するなど、気合の入った選出。 -ファルコムらしくBGMも良曲揃い --ストーリー進行に応じてフィールドのBGMが緊張感あるものに変化したり、ビジュアルシーンで流れる曲も壮大で世界観にマッチしている。 --『ザナドゥ』のメインテーマが使われていたり、効果音が『イース』のものが使われているなど、ファルコムファンには嬉しい要素も。 --フレーズを流用したアレンジ曲がほぼないにもかかわらず、ジングル等のごく短いものを除いても使用曲数が約100曲もあり、流石はファルコムと言わざるを得ない。 -ストーリー・世界観 --正義感の強い主人公が魔物に苦しめられている人々を助け、やがて聖剣ドラゴンスレイヤーを手に入れ勇者となっていく王道なストーリーとなっている。 --仲間たちも個性豊かでやりとりを見るだけでも楽しい。戦闘でも頼もしい活躍をしてくれる。 --他にもモブキャラクター全員に固有の名前が設定されていたり、王都から遠い場所ほど魔法の力が弱まるため苦労している事が聞けるなど、世界観はしっかり描写できている。 -プレミアムモード --一度ゲームをクリアし、初めからプレイするとプレミアムモードとなり、序盤の町に追加される立て札から好きな章へ飛んだりビジュアルシーンを見返すことが可能。嬉しいご褒美である。 --裏技を使えば最初から使用することも出来る。 ---- **賛否両論点 -ゲームバランス --敵の強さと熟練度のバランスが絶妙で、自然と適正値まで上がりやすくなっている。適正値近くまで上がればダッシュしながら敵を薙ぎ倒していけるため、爽快感も高い。 ---防具の熟練度はダメージを受けることが条件なので、棒立ちのまま攻撃を食らい続けるだけでも上昇するため、稼ぎも非常に楽。 ---ただし、その時点での最強装備で熟練度が一定になるとフィールドの敵からはノーダメージとなるため、緊張感が削がれるという声もある。 --一方、アクションステージではその時点での最強装備かつ熟練度MAXでもダメージは大きめで、緊張感がある戦いが可能。 ---アクションステージには専用の熟練度があるらしく、ダメージを受けていくと徐々に軽減していくため、アクションが苦手な人でも効率は悪いが稼ぐことで突破しやすくなる。回復アイテムを大量に持ち込んでのごり押しも可能。 ---もちろんアクションがそこそこ得意なら、ほど良い緊張感を保ったまま問題なくクリア出来る。 --死亡時のペナルティも幽霊になって教会のシスターに復活させてもらわねばならないだけで、所持金などはそのままと非常に緩い。 --章を跨ぐと敵の強さが段違いに跳ね上がるので、前章の装備のままではとても戦ってはいられない。しかし各章の最新装備もまた段違いの性能を誇るため、装備を新調することが最重要の攻略要素となり、熟練度依存のバランスとなってしまうのである。 ---因みにこの章跨ぎによる強さについて、作中でラストダンジョンを偵察しにいって帰還した仲間が「あいつらに比べたら、カコース((第2章に登場する魔物のボス。))なんか雑魚だぜ!雑魚!」と言う場面がある。 ---まさにその通りで、カコース戦では1発でも30~50ダメージくらいだが、ラストダンジョン突入時では一番弱い雑魚でも平然と&bold(){1万以上}のダメージを受ける。 -お使い感の強いゲーム進行 --どのステージにおいても熟練度を上げながらお使いをこなしていくのが基本で、後半になるにつれフィールドも広大になっていくため、ややダレやすい。 --フラグの立て方も分かりにくい箇所があり、話せる人全員と会話し、行ける場所全てをしらみつぶしにする事となる。 --ダンジョンの謎解きもやや難易度高め。隠し通路や敵の攻撃を利用したり、調べる順番と条件…など多彩な謎解きがプレイヤーを待っている。 ---一応、隠し通路などは移動補正オプションを使いながら壁に向かって歩き続けることで発見できるなど、ヒントも少なくはない。 --この辺は当時のPCゲーム市場で活躍していたファルコム、ひいては当時のメインプログラマーだった木屋善夫氏らしいところと言えよう。 -長大なラストダンジョン --最終章では、前項のお使いモードとは打って変わって、31階層にも及ぶ広大でギミック満載のダンジョンをストイックに攻略しなければならない。 ---各階層は広い上に複数階にまたがるギミックも多く、さらにダンジョン途中でのイベントはほぼないため、ストーリーが目当てな人だとダレやすい。 ---ファルコム側でもあんまりだと思ったのか、マニュアルにラストダンジョンの全マップが記載されている。 --ゲーム性が目当てなシリーズファンにとっては「ここからが本編」という意見もある。 ---10階層毎にBGMが変化するため、盛り上がりに欠ける事はなく。10~19階層、20~最上層のBGMは作中でも人気の高いBGMである。 ---- **問題点 -一部消化不良なシナリオ --訪れる各地では富豪が勝手に「ジジババ税」なるものを設定して搾取していたり、とある国の書記官が賄賂を貰っているといった悪事の話があるのだが、これらは基本的に解決されないまま放置されるため、やや消化不良なところがある。 --他にもメインキャラクターの心情描写が殆どないため、展開がわかりにくい部分も見受けられる。 -先に進むと以前のステージに戻れない --期間限定のサブイベントも多いので、見逃しやすい。 -時間経過があまりに早すぎる --数フレームごとに時間が経過していくため、恐ろしく時間経過が早い。特定の時間に発生するイベントや夜にしか出現しないモンスターなどもいるが、正直邪魔に感じやすい。 --特に序章はアワーグラスが入手出来ないので、尚更窮屈に感じやすい。アワーグラスが売られるようになるのは第3章から。それまでは宝箱から入手できる数個で凌ぐしかない。アワーグラスを装備することで時間の流れを遅くできるので、1つは残しておき要所要所で装備して対応すると良い。 ---- **総評 『ザナドゥ』の成長システムに『イース』の戦闘、『[[英雄伝説>ドラゴンスレイヤー英雄伝説]]』のストーリー性を加えたような内容で、当時のファルコムの集大成的タイトルとなっている。~ 今からプレイすると当時のPC用RPGをそのまま家庭用に持ってきたことによる悪い部分が目につきやすいが、全体的にはよくまとまっており、完成度の高い一作である。 ---- **続編・移植 -本作のその後を描いた続編として『風の伝説ザナドゥII』が発売されている。 --木屋氏の退社後に制作された為、ドラゴンスレイヤーシリーズとしてカウントしない場合も多いが、副題は「The Last of Dragon Slayer」である。 --全体的に洗練された作りで、ドット絵に関してはPCEタイトルでも最高峰の出来。逆に本作ならではの尖った部分も無い。 --ゲームの流れも概ね前作を踏襲しているものの、最終ダンジョンの難度は大幅に下がっている。 -Windows向けに何度かエミュレータ搭載で移植されている。 --『ファルコムスペシャルBOX'2004』に本作が収録。 --『[[XANADU NEXT]]』の初回版に『II』と共に収録。 --プロジェクトEGGにて有料配信。 ---『風の伝説ザナドゥII』もプロジェクトEGGにて配信されている。 -家庭用では、唯一Wiiバーチャルコンソールで配信されているが、2019年1月31日になってからWiiのバーチャルコンソールの配信が終了した。WiiUやPCエンジンアーカイブスでは未配信。 ---- **その後の展開 NECホームエレクトロニクスはその後、『3×3 EYES 三只眼變成』、工画堂スタジオ開発の『マッドストーカー フルメタルフォース』、『ソリッドフォース』、『機装ルーガII』、電撃PCエンジン(現・電撃G's magazine)連載の読者参加企画をゲーム化した『女神天国』、『21エモン めざせホテル王』、『雀神伝説』、『レッスルエンジェルス・ダブルインパクト 団体経営編&新人デビュー編』、『プライベート・アイ・ドル』、『はたらく☆少女 てきぱきワーキン・ラブ』などをPCエンジン用ゲームソフトとして発売する事になった。 ---- **余談 -本作でもセクシー系ビキニアーマーキャラとして神官戦士メディアが登場する。 --女性ながら長身((明記はされていないが主人公アリオスが166cmで、それよりもかなり高いので170cm以上の可能性が高い。))でナイスバディなモデル体型でセクシーキャラとして申し分なしだが『[[夢幻戦士 ヴァリス]]』の麻生優子や『[[ドラゴンクエストIII そして伝説へ…]]』の女戦士など有名どころの存在感には勝てず、現在はどっちかといえばマイナーな方である。