*ファミスタ'94 【ふぁみすたきゅうじゅうよん】 |ジャンル|スポーツ(野球)|&image(https://www.suruga-ya.jp/database/pics_light/game/174001081.jpg,height=220)| |対応機種|ファミリーコンピュータ|~| |発売・開発元|ナムコ|~| |発売日|1993年12月1日|~| |定価|3,900円|~| |プレイ人数|1~2人|~| |判定|BGCOLOR(khaki):''シリーズファンから不評''|~| |ポイント|いろいろな意味で最終作にして原点回帰&br;時期を考えれば寂しい内容|~| |>|>|CENTER:''[[ファミスタシリーズリンク>ファミスタシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 1993年12月にナムコから発売された人気野球ゲームシリーズ第9弾(他にゲームボーイで3作品、スーパーファミコンで2作品ある)。~ 野球ゲームとしての根本的なゲーム性は、これまで通り前作から引き継いでいる。~ ファミコンでの年度ナンバリングシリーズ最終作であり、ファミコン草創期からソフトを供給してきたナムコのファミコンソフトという括りでも最終作。また、ファミコン野球ゲーム全体でも最後の作品となった。~ ゲーム内容は『[['88>プロ野球ファミリースタジアム'88年度版]]』以降、様々な付加要素があったのに対し、本作はそういったものは一切なく、固定データによる純粋な野球のみの簡素な構成。~ そのためか、価格も『[['87>プロ野球ファミリースタジアム'87]]』以来となる3,900円を実現している。 『[['89>ファミスタ'89 開幕版!!]]』発売直前時、任天堂とのライセンス契約更改に絡む問題に伴い、1989年内に2つ発売された影響は『[['90>ファミスタ'90]]』以降そのまま持ち越されているため、タイトルと実際の年度が1つズレており、本作も『'94』と冠しているものの実質『'93』にあたる。 ファミコンでの年度ナンバリングの前作『[['93>ファミスタ'93]]』との間には『[[スーパーファミスタ2]]』(SFC)『[[ファミスタ3]]』(GB)が存在しているが、ハードが異なる都合上同等には扱えないため、本項目では『'93』からの変更点を主体に記述する。 ---- **内容 -前作の『'93』にあった野球カードやクイズといったものはなくなり、完全に野球のみのシンプルな構成。 -試合やリーグのシステムは『'93』からほぼそのまま引き継がれており、違いは下記の通り微差程度。 --グラフィックでは選手の体型が元通りのずんぐり体形に戻っている。 --試合結果告知のナムコットスポーツはロゴが変わった程度でほぼそのまま。 --日本シリーズの導入デモやエンディングは完全に一新されている。 ---そのため開幕のデモで相手チームのカラーが見えなくなり、その場で相手が誰なのかはわからなくなった(直後の先発投手選択の画面ですぐわかるが)。 --微妙な変化点としてスイッチヒッターは打席を自由に選べるようになった。 ---タイムをかけてセレクトを押すことで左右の打席を切り替えられる。 ---対象の打者は背番号表示欄に「すいっち」と出ている。 -チーム構成も『'93』と同じでNPBセ・パ12球団と、それぞれのオールスター2チーム、助っ人外国人のみで構成された「オールアメリカン」とナムコキャラ連合の「ナムコスターズ」の16チーム。 --前作同様当時は外国人選手の捕手が一人もいなかったため「オールアメリカン」では本来外野手でしかないメル・ホール(ロッテ)がムリムリ捕手として当て込まれている。~ 言うまでもなくホール自身は前作で同じ扱いだったマーティ・ブラウン(広島)同様に米球界時代はおろかアマチュア時代ですら捕手など一度もやったことがない選手である。しかもホール自身は捕手を抜きにしても守備は下手で実際のチームでは指名打者での起用であり、ゲームでもロッテ単独のチームでは指名打者扱いになっている。よりにもよって一番ザルになりそうなのを起用している。因みにブラウンは本作では代打として名を連ねている。 --また1993年シーズンは前年まで在籍していた外国人選手のピッチャーが軒並み退団したせいで極めて少なく、ゲームではリー・タネル(ダイエー)のみで他は「ろす」「さんふらん」「しかご」「はわい」「ぐあむ」「ぼすとん」とアメリカの地名を使った架空選手で残りの枠を埋めている。因みに前作で単独チームにはいなかったものの「オールアメリカン」のみに収録されていたロビンソン・チェコ(広島)はこの年も在籍していたのに何故か収録されていない。 ---これらはモデルすらいない架空選手のためか能力では底辺クラス((過去例として『スーパーファミスタ』(1992年3月発売)の「アメリカンズ」も全選手が同じく地名だったが、旧来作の「メジャーリーガーズ」にあたるものでメジャーの選手をモデルとしていたため能力では抜群に高いものだった。))であり唯一実在のタネルでさえ優秀ではないため説明書では「守りは弱いが」と堂々と公言されている。 --ペナントにあたる「めざせ日本一」で使えるのはNPBセ・パ12球団のみなのも変わらず。 ''球場ラインナップ'' |球場名|モデル球場|両翼|中堅|芝|h |じんぐうのもり|明治神宮球場|91m|120m|人工| |うまか~ドーム|福岡ドーム|100m|122m|人工| |アクアリウム|オリジナル|90m|110m|土| -アクアリウムはガラス張りで水族館のような球場だが、ステータスそのものは前作「もうぞうドーム(モデルは「出雲ドーム」)」と同じ。 --割れたら選手も観客もまず溺死は免れないだろうが、とんでもなく強化されたガラスなのか絶対に割れることはない。 --「じんぐうのもり」は前作『'93』から「うまか~ドーム」はゲームボーイ版『3』からそれぞれ続投で登場。 ---- **評価点 -ファミスタらしさは健在で、慣れ親しんだ操作はそのままで旧来通り快適なプレー感覚。 --特にファミスタらしい9イニングフルに行っても程よい時間でできるバランスなどはそれまでの良さを踏襲している。 -スイッチヒッターの打席自由化によりプレイヤーにとって使いやすい方を選ぶことができる。 --スイッチヒッター自体がかなり少ないいこともありスイッチヒッター自身の存在価値をより高めたものになった。 -アクアリウム球場。 --仕様自体は前作の「もくぞうドーム」とまったく同じながら海中のような球場は他作品でも見られなかった。 ---後述の通り使い回し感が目立ち、この球場も前作の上記球場を元に、真っ白だった壁を海背景に変えただけに近いが、まるで別物に感じられるのでアレンジが上手い。 ---- **問題点 -上記の通り、いろいろな意味でも最後を飾る作品であるが、中身は野球のみで過去作品にあったような付加要素が一切ない。 --具体的には『'88』『'89』なら選手エディット、『'90』はフリーなリーグモード、『[['91>ファミスタ'91]]』はホームラン競争、『[['92>ファミスタ'92]]』は練習モードやオールスター、『'93』はクイズといった特有なモードがあったが、それらがなくなって純粋な野球だけのゲームになり、それ自体も『'93』からそのまま持ち越したもの。 --当時は完全に後継機スーパーファミコンへの世代交代は完了したような時期で、更にファミコン自身も当初位置づけられていた「初心者のエントリーマシン」という役割も終えようとしていた時期だったことから今更半端なものを搭載するよりはとことん原点回帰によって低価格化を狙った判断はビジネスの上では悪くないものだったのかもしれないが。 -全体的に使い回し感が目立つ。 --中身そのものは無印→『'87』同様にチームデータを入れ替えたのみで、クイズとカードがなくなっただけでしかない。 ---試合後の結果報知の新聞は多少変わっているがパッと見ではまったく同じと思ってもおかしくない。 ---日本シリーズのデモに関しては大きく一新されているものの、試合を5勝しなければ見られない。 -1コンであれば打席のスイッチは2Pは勿論COMPの選手でもできてしまう。 --2P対戦ならばともかく、1人でペナントを戦っている場合でもCPUの相手打者までスイッチヒッターであればプレイヤーが自分に都合よく打席を自由に動かせてしまうのはさすがに問題。 --一応スイッチヒッター自体少ないので、そこまで大きく影響を及ぼすものでもないのだがインチキができてしまうことに変わりはない。 -無理矢理な代替選手。 --上記の通り1992年シーズンはゲームに取り込むほど優秀ではなかったものの外国人ピッチャーがいるにはいたのでなんとか取り込めたが、1993年シーズンは本当にゼロ同然だったため架空選手を使ってまで「オールアメリカン」にこだわる必要はなかったと思われる。 ---後述の通りナムコスタッフまで選手入りしていることや、ナムコキャラそのものも豊富な頃なので、第2のナムコスターズでもあれば個性にもなったのだろうが。 --また、タネル以外ではロビンソン・チェコも一軍出場こそなかったものの所属はしていたので取り込まない理由もないのだが。 ---- **総評 ファミスタらしい、手軽でシンプル且つ快適な操作性でサクサク楽しめる馴染みやすいプレイスタイルは、この作品までしっかり引き継がれている。~ ただ、『'91』以降のファミスタは物足りなさも否めなかったながら、「ホームラン競争」・「練習モード」・「クイズ」など、独自要素を持っていたが、本作はそういったものは一切なく、『'93』の野球本編を流用してデータを入れ替えただけに近い。~ いくら安価のためにシンプル路線を取ったとはいえ、グラフィックが多少リニューアルされた程度というのは、『'91』『'92』以上に物足りなさが顕著で、「最新作」「シリーズ最終作」どちらの意味でも名目だけにとどまったものになっている。 ---- **その後の展開 -1994年3月4日に『スーパーファミスタ3』を発売。 --ファミコンの年度ナンバリングシリーズで『'95』(実質『'94』)は発売されず本作が最後、ゲームボーイも10月に発売された『3』が実質最後となり((『ファミスタ4』は『ナムコギャラリーVOL.2』(1996年11月29日発売)に収録されているだけで単独での発売はされていない。中身は選手データが1996年シーズンベースで作られた『3』の簡易版(オリジナルチーム機能やバックアップがオミットされている)なので新作とは一概に言い切れない。))以後はスーパーファミコンの『スーパー』シリーズに一本化される。 --実質『'94』にあたるのは開幕版が上記で、決定版がその翌1995年3月発売の『スーパーファミスタ4』が担うことになる。 -このような年度ナンバリングのファミスタは実に10年近く後の2003年5月3日にゲームキューブで発売する『ファミリースタジアム2003』までおあずけとなる。 --この作品でやっとナンバリングの1年ズレが解消し14年ぶりに当年ナンバリングに戻ることになる。 ---- **余談 -上記の通り本作はシリーズ初作の1986年や『'87』当時と同等の3,900円という安価を実現している。 --1987年当時は6,000円以上のソフトは皆無だったのに対し1990年以降は8,000円超のソフトが急増していたこともあって、同じ価格でも相対的にはより安く感じられる。 --とはいえ、この当時のファミコンソフトの大多数に言えることだが完全に世代交代が終わって終焉に向かう頃の作品と言うことでソフトの売れ行きと言う点ではかんばしくなかったことから現存数が少なめで、中古価格ではゆうに倍以上、カセット単体でも当時の定価を超えていることが多い。 ---そのため、安価が狙いだったとは当時とは対照的に現在ではちょっとした高額ソフトの部類に入る。 ---同年発売で同様に安価路線だったファミコンソフトは『[[悪魔城ドラキュラ]]』『[[バイオミラクル ぼくってウパ]]』(ともにコナミでディスクカード既存作の移植・3,900円)などがあり、これらも同様の理由で現在はかなり高額になっている。 -オリックスブルーウェーブの勝呂壽統の打席ではBGMが『[[スカイキッド]]』のメインテーマに切り替わる。 --実際には近鉄バファローズに在籍していた吉田剛の応援歌がこの曲が元になっており前作では現実通り吉田の打席で流れていたため設定ミスと思われる。 -ナムコスターズの代打に入っている「ふじおか」はイラスト担当の藤岡勝利氏である。 --この当時ではナムコキャラは豊富なストックがありながら、それらを押し退けてナムコスタッフが初登場している。((一応、「ふじおか」と言うナムコキャラは92年にアーケードゲームとしてリリースされた『ナックルヘッズ』から「タケシ・フジオカ」がいるので、(本作の開発時期などを考えると多少こじつけに近いが)こちらのキャラだと解釈出来なくもない。)) --因みにナムコスタッフ登場は監督としてなら『スーパーファミスタ2』で前例がある。 -前作のマーティ・ブラウン同様に捕手経験がないながらゲーム都合で無理矢理捕手に当て込まれているメル・ホールは強力な打棒こそ頼れるものだったが、守備がヘタだっただけでなく素行面が最悪な選手として知られている。 --捕手は肩や守備だけでなく、投手をリードする上で戦略的頭脳面や人格面も非常に大事なポジションであるだけに、本当にとことん向いていない。同じ素人なら、まだ前作同様にブラウンが担っていた方がマシなほどである((ブラウンは捕手経験こそゼロながら人柄は良くプレーに取り組む姿勢は真摯なものだった。))。 ---現実でやったなら、本当に何点取っても足りたものではないノーガード試合になりそうだが、もちろんゲームでは何の影響もない。 -テレビ東京系のゲーム番組『スーパーマリオスタジアム』第11回放送分(1993年12月16日)で、本作が「マリオクイズファイト」2問目の題材に使われた。 --「ラッキー7でのデモで何をするか?」という問題で選択肢が、「A・風船飛ばし」「B・ウエーブ」というもの。 ---正解は「A」で、「B」の「ウエーブ」は『'91』『'92』での内容である。正解率は全体の1/3程度と高くはなかった。 ---本作はそこまで売れておらず、元々の注目度も低かったことに加えて、当時は発売間もない時期だったため知らないのは無理もない。片や、不正解の元ネタである『'91』『'92』は、そこそこ売れていたものの、既に発売から2年以上が経過していたこともあり、記憶が風化していたことなどの要因が重なったことが如実に表れた結果と言えよう。