*彼女、お借りします ~水平線と水着の彼女~ 【かのじょおかりします すいへいせんとみずぎのかのじょ】 |ジャンル|アドベンチャーゲーム|CENTER:&amazon(B0DBYS9PGH)&amazon(B0DBZ4MJ8W)| |対応機種|Nintendo Switch&br()プレイステーション4|~| |発売・開発元|MAGES.|~| |発売日|2024年11月28日|~| |定価|パッケージ版:8,580円(税込)&br()ダウンロード版:8,580円(税込)&br()限定版、デジタルデラックスエディション:12,980円(税込)|~| |レーティング|CERO:B(12歳以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|江の島を舞台としたストーリー&br()キャラの良さを生かしたシナリオ|~| |>|>|CENTER:''[[少年マガジンシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 週刊少年マガジン連載のラブコメ漫画『彼女、お借りします』をもとにした、アドベンチャーゲーム。公式の略称は「スイカノ」。~ 過去にスマートフォンアプリでパズルゲームが出ていたが、本作は一般的なアドベンチャーゲームである。~ 今回のストーリーは原作15巻満足度127、アニメ3期4話の後の時系列で、江の島を舞台としたオリジナルストーリーが描かれる((amazonやジョーシンなどのECサイトでは「TVアニメ第三期にあったかもしれないオリジナルラブストーリー」とあるほか、公式サイトの原作者コメントにもifストーリーとある。))。~ 限定版には特典CD5枚組が同梱。妄想シチュエーションドラマ(メイド、義理の妹、高校生活、新婚生活)CD4枚組とサントラCD1枚という構成。~ ダウンロード版はデジタルデラックスエディションに付属するデジタルコンテンツアプリで視聴可能になっている。 ---- **あらすじ >彼女たちと過ごす、夏の江の島での七日間。 > >千鶴主演の自主製作映画を撮るためにクラウドファンディングに成功した和也だったが、資金不足が発覚。~ 資金捻出のため、泊まり込みでアルバイトをすることに。~ 場所は江の島にある「民宿」と「海の家」。~ 和也は、千鶴、瑠夏、墨、みにも巻き込んでしまった事を申し訳なく思いつつも、~ 彼女たちと一つ屋根の下で過ごす特別な七日間に心を躍らせる。 ([[公式サイト>https://kanokari.mages.co.jp]] ストーリーより抜粋) ---- **ゲーム内容 -アルバイト --和也がバイトリーダー的な立ち位置となり、4人の誰かを1日4回(朝と昼は海の家、夕と夜は民宿)サポートしていくことになる。 --時間ごとの役割は予め決まっており、成否によって各ヒロインのパラメータ「体力」「調理」「接客」「清掃」「親密度」とお店のパラメータ「掃除」「評判」「食材」が変化していく。数値はA~Fで表現され、Aが最高値で、Fが最低値。 --サポートする相手を選ぶことで成功度が上がるほか、体力が回復し、親密度も上がる。 ---アルバイトのパートで親密度を上げる手段はこれのみ。サポート3回分で親密度が1段階上がる。 ---サポートした相手によって仕事内容にちなんだイベントが発生することもある。 --体力は仕事の成否にも関わってくるステータスで、仕事の内容、成否に応じて減っていき、低いほど成功しにくくなる。毎朝回復するが完全には回復しない。 --7日間を通して提示された目標金額を達成しないとゲームオーバーになってしまう。 -灯籠祭り --3日目までに売り上げが順調だと江の島で夏に行われている「灯籠祭り」に出かけることになる。 --ここで親密度が1番高いヒロインとの個別ストーリーが展開する。 -妄想イベント --親密度が一定値に達すると、妄想イベントが夜に発生する。1番親密度が高いヒロインが優先される(次の値に達するまでは2番目に高いヒロイン優先)。ヒロイン1人につき3種類ある。 --この後の朝に当該ヒロインが登場する形となる。この朝のイベントもヒロイン1人につき3種類ある。 -期間に目標総額を超えていた場合アルバイト生活のその後を描いたキャラクターストーリー(いわゆる個別ルート)が見られるようになる。 --キャラクターストーリー移行するには各パラメータに極力偏りが出ないように気を配りつつ、当該ヒロインの親密度を上げていくことが求められる。少なくとも特定ヒロインにずっとサポートでは最終日に目標金額到達まで行ける程甘くはない。 --キャラクターストーリーでは選択肢の選択によって友情度(上記の親密度とは別)が増加し、最終的な友情度の数値によってEDが分岐する。EDはそれぞれグッドとノーマルが2種類ずつ存在し、Bランク以上だとグッド、Cランク以下だとノーマルになる。 -4人のエンディング(グッド・ノーマル問わず)を見ると「みんなでルート」、10個のエンディングを見ると「七海麻美ルート」が解禁される。 --アルバイトのパートからの分岐ではなく、ゲーム起動直後のメニュー画面から直接選択してプレイする形となる。こちらにもEDの分岐あり。 ---- **メインキャラクター -木ノ下和也(きのした かずや) --主人公。都内在住のダメダメ大学生。優柔不断な性格で、難ありな性格だが、周囲の人を思いやる優しさも併せ持つ。 ---プレイヤーの分身たる主人公の人物像としてはやや尖っているためか、本作ではダメな部分は若干抑えられ、良い意味で優しさがかなり強調されたキャラクターとして描かれている。 --千鶴に想いを募らせており、千鶴の夢を叶えるために、千鶴主演の自主製作映画を撮るためにクラウドファンディングをした。 -水原千鶴(みずはら ちづる)(画像中央の長髪の女性) --「女優として活躍する」という目標を叶えるために日々努力している真面目な性格の女性。 --水原千鶴はレンカノとしての名前で、本名は一ノ瀬ちづる。 --レンカノとして和也と出会ったが、和也が家族や友人に対して「彼女」と紹介してしまったため、それに付き合うことに。 -七海麻美(ななみ まみ)(画像左上の金髪の少女) --ゆるふわ小悪魔系少女。和也と1ヶ月だけ付き合ってたがすぐに別れた経緯を持つ。 --ヒロインの一人だが彼女だけ扱いが異なり、本作ではメインには関与せず、専用のシナリオが用意されている。 -更科瑠夏(さらしな るか)(画像左の黒髪のリボンの少女) --元気で明るい性格で、ショートカットにリボンがトレードマークの美少女。『五等分の花嫁』の中野四葉を彷彿させる造形(アプリのコラボで一緒になったこともある)。 --自分をドキドキさせてくれる存在を探す中で、条件付きで和也の「彼女(仮)」となる。 -桜沢墨(さくらさわ すみ)(画像右側のピンク髪の少女) --笑顔がかわいい、健気で頑張り屋な少女。千鶴の所属するレンカノ事務所の後輩。 --極度の人見知りで、スマホを使った筆談で意思表示をすることが多い。本作では筆談は二重カギ括弧で表現され、彼女の声で読み上げる形となっている(声は心の声のような演出になっており、口を動かす演出がされていない)。 -八重森みに(やえもり みに)(画像右上の黒髪の少女) --八重歯と「っス」という語尾が特徴的な少女。 --「コロネ丸」というコスプレイヤーとして活動しており、和也を「師匠」と呼ぶ。 --今回のアルバイトを紹介したキャラで、チュートリアルも担当する。 ---- **評価点 -シナリオ --アルバイトや妄想イベント等、各キャラクターの描写は個性が十分に発揮されており、その点のクオリティは非常に良好。 ---アルバイトにしても、料理では各ヒロインの料理スキルが垣間見えたり、接客では客への対応などと言ったものが見れたりする。 --キャラクターストーリーでは江の島デートが楽しめる。 ---海で遊ぶものや、江の島を観光するものもあり、後者は名所に関する説明もある。 ---和也、ヒロイン双方とも、一人とじっくりと向き合うからこその良さも引き出せている。 --基本的には原作のあらすじや人間関係を押さえているファン向けのキャラゲーだが、原作エピソードの話題が出る部分はそれほど多くなく、独立したストーリーを描くことが出来ている。 -チュートリアルが丁寧。 --チュートリアルとしてみにが3回に分けてゲームの説明を教えてくれるためとても親切な方である。 -グラフィック(立ち絵、CG、背景)の出来は良好。 --CG、背景にも江の島の名所をしっかりと表現できている。 --立ち絵も、原作やアニメの特徴はきちんと捉えており、出来は良好。墨の筆談描写でも「スマホで入力する→スマホの画面を見せる」という流れを立ち絵できちんと表現している。 --CGの量は差分なしで千鶴、瑠夏、墨、みにが17枚ずつ、扱いの異なる麻美が7枚、その他は8枚という配分。 -音楽 --BGMは20曲程度だがアップテンポな曲の「目指せボーナス! お仕事サンバ」「青春全開ビーチフラッグス」や、落ち着いた曲の「壊したくない柔らかい何か」「水平線と水着の彼女 (Piano ver.)」といったものが揃う。場面にも合っている。 --主題歌「サイダーの向こう」は爽やかさに切なさを内包した楽曲に仕上がっている。 ---アニメではhalcaやthe peggiesといったアーティストが主題歌を歌っていたが、本作では5人のヒロインが歌う。これは『彼女、お借りします』においては非常に珍しいことである((アニメ2期12話では4人で歌うものがあったが、みにがいなかった。))。ヒロインが1人ずつ歌うソロバージョンも収録されている。 -アドベンチャーゲームで必要である機能は一通り備えており、システムに関しても充実している。 --オートモード、バックログ、クイックセーブや未読/既読スキップ、キャラごとの音量変更の機能も当然のように備えてあるほか、アルバイトのパートではメニュー画面右側に1番親密度が高いヒロインが表示される。 -セーブ&ロード時間はかなり早く待たされることは無い。 ---- **賛否両論点 -和也とヒロインの一対一のシーンが多め。 --ヒロイン同士のやりとりはプロローグやバイト終了後とみんなでルート等と量的にはそれなりにあるものの、和也とヒロインの一対一のシーンの豊富さと比べると少なめな方である。この辺りはキャラゲーに求める方向性にもよるか。 ---- **問題点 -和也のボイスについて。 --事前にアナウンスがあったが、バイト1日目前とエンディングのみ入っており、それ以外には入っていない。 --前述の通り一対一のシーンが多いこともあり、声優の堀江瞬氏の作業量がかなり多くなるのは想像に難くないが、やはり物足りなさや違和感はある。 --この現象は2021年以降のMAGES.製キャラゲーでは標準となりつつある。 -進め方によっては当該ヒロインのアルバイトのパートの各イベントを見るのが難しくなる。 --妄想イベントは最終日には発生しないため、6日目夜までに当該ヒロインの親密度をBに上げておかないと3つ目の妄想イベントが見られない。 ---各パラメータに極力偏りが出ないように意識させられるシステム上、親密度がCのまま最終日の朝を迎えてしまう場合も。 --サポートする相手を選ぶことで見られるCGを取り逃しやすい。 ---1回のサポートでは発生しないものも少なくなく、CGありのサポートイベントを見れないままアルバイトのパートが終わってしまうことも。 -ゲームオリジナルキャラのおかみさんは台詞が多く、要所要所で登場する割に新規にデザインは起こされておらず、立ち絵なしとなっている。 --木部芳秋(和也の友人)は出番の割に立ち絵が用意されているが…。 ---- **総評 原作のファン向けのゲームとして良く出来た内容で、1つのアドベンチャーゲームとしての完成度は良好。~ 原作の漫画やアニメが好きな人には勧められるゲームになっている。 ---- **余談 -MAGES.製アドベンチャーゲームの通例で本作は動画サイトでの実況・配信が公式にて禁止されている。 --バイト生活1日目に入るとスクリーンショットが撮影不可になる。撮影不可エリアはギャラリーやチュートリアルも含まれる。 -2024年10月28日~12月15日には江の島で漫画・アニメ・ゲームの聖地を巡るデジタルスタンプラリーが行われた。 --江の島が本作で登場しているのは上記の通りだが、原作では18巻満足度155~156、アニメは3期10話に登場している。 -同社の『五等分の花嫁』のADV作品(『[[ごとなつ>五等分の花嫁∬ ~夏の思い出も五等分~]]』『[[ごときす>映画「五等分の花嫁」 ~君と過ごした五つの思い出~]]』『[[ごとかの>五等分の花嫁 ~彼女と交わす五つの約束~]]』)とは、サブタイトルの付け方、5人で歌う主題歌、SE(決定音や友情度上昇時等)、フォント等、共通する部分が見受けられる。