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かまいたちの夜 - (2019/06/06 (木) 10:34:29) の編集履歴(バックアップ)


この項目ではスーパーファミコンソフト『かまいたちの夜』と、その移植版であるプレイステーションソフト『かまいたちの夜 特別編』、ゲームボーイアドバンスソフト『かまいたちの夜 ADVANCE』の紹介をしています。



かまいたちの夜

【かまいたちのよる】

ジャンル サウンドノベル
高解像度で見る
裏を見る
対応機種 スーパーファミコン
メディア 24MbitROMカートリッジ
発売元 チュンソフト
開発元 チュンソフト、アクアマリン
発売日 1994年11月25日
定価 10,800円
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2007年2月13日/800Wiiポイント
【Wii U】2013年8月7日/800円(共に税別)
レーティング CERO:D(17歳以上対象)*1
判定 良作
ポイント 選択によって展開が大きく変わる革新的な推理ゲーム
サウンドノベルの代名詞的傑作
チュンソフトサウンドノベルシリーズリンク

概要

チュンソフトが『弟切草』(以下「前作」)に続いて世に出した、サウンドノベルの第2弾。
雪に閉ざされたスキー場のペンションを舞台に連続殺人が巻き起こる、という設定のミステリー作品。シナリオは人気ミステリー作家の我孫子武丸(あびこ たけまる)氏が担当している。


あらすじ

大学生の主人公・透(名前変更可能)は、同じ大学に通う真理(名前変更可能)に誘われ、彼女の叔父が経営する信州のペンション「シュプール」にスキー旅行にやってきた。
真理に好意を抱いているもののなかなか距離を縮めることのできなかった透は、真理からの泊りがけの旅行の誘いに舞い上がるが、やがて「シュプール」で起きる事件に巻き込まれていくこととなる…。


+ 登場人物(長いので折りたたみ)

登場人物

  • 透(とおる)
    • 本作の主人公。名前は変更可能。大学生で、同じ大学に通う真理に好意を寄せている。
  • 真理(まり)
    • 本作のヒロイン。名前は変更可能。透のことは憎からず思っているようだが、彼からの熱烈なアプローチを曖昧な態度で躱している。
  • 小林 二郎(こばやし じろう)
    • ペンション「シュプール」のオーナーで、真理の叔父。料理の腕は一流。
  • 小林 今日子(こばやし きょうこ)
    • 小林の妻。脱サラしてペンションを開業した小林を支える良妻だが、料理の腕は壊滅的。
  • 香山 誠一(かやま せいいち)
    • 小林の知人で、大阪から「シュプール」にやってきた会社社長。薄くなった髪と中年太りの著しい腹、コテコテの関西弁が特徴。
  • 香山 春子(かやま はるこ)
    • 香山の妻。どこか儚げな印象の婦人。
  • 渡瀬 可奈子(わたせ かなこ)
    • 「シュプール」にスキー旅行でやってきた18歳のOL3人組の1人。若干軽薄そうな印象を受けるロングヘアの美女。
  • 北野 啓子(きたの けいこ)
    • OL3人組の1人。色気より食い気タイプのぽっちゃり体型で、いつも菓子の袋を手にしている。
  • 河村 亜希(かわむら あき)
    • OL3人組の1人。ショートヘアでメガネをかけている。
  • 美樹本 洋介(みきもと ようすけ)
    • 透たちの後に「シュプール」にやってきたフリーのカメラマン。長身で口髭を蓄えた山男のような外見だが、振る舞いは紳士的。
  • 久保田 俊夫(くぼた としお)
    • 「シュプール」で住み込みのアルバイトをしている学生。単位そっちのけでスキーとアルバイトにのめり込んでいる自称大学6年生。
  • 篠崎 みどり(しのざき みどり)
    • 「シュプール」で住み込みのアルバイトをしている女性。透は20代と推測しているが詳しい年齢は不詳。俊夫に負けず劣らずのスポーツ好きで雪焼けしている。
  • 田中 一郎(たなか いちろう)
    • 「シュプール」の宿泊客で、室内でもトレンチコートを着込みサングラスと帽子を外さない怪しい風体の人物。

ストーリー

  • ミステリー編:「シュプール」で起こる殺人事件を推理によって解決するメインシナリオ。
  • スパイ編:凄腕スパイ「かまいたち」を巡る謀略に巻き込まれた主人公が戦いに身を投じることになるシナリオ。
  • 悪霊編:「シュプール」に現れた悪霊によって起こる惨劇を描いたシナリオ。
  • 雪の迷路編:スキー場から車で「シュプール」へ向かう途中に事故を起こしてしまった主人公とヒロインが、猛吹雪の中「シュプール」を目指して彷徨うシナリオ。
  • 釜井達の夜編:メタフィクション的な要素を含んだ短いシナリオ。
  • Oの喜劇編:ギャグシナリオ。ミステリー編のセルフパロディ。
  • 暗号編:ミステリー編の途中から分岐するシナリオ。死体ではなく暗号を記した紙が発見され、主人公たちは暗号解読に挑むこととなる。
  • チュンソフ党の陰謀編:隠しシナリオ。暗号編のある場所に隠された暗号を見付け、その指示に従うと見ることができる。
  • 不思議のペンション編:「チュンソフ党の陰謀編」をクリアすることでプレイ可能となるSFC版における最終シナリオであり、『不思議のダンジョン』シリーズをパロディ化したギャグシナリオ。

特徴・評価点

システム

  • 基本システムは『弟切草』と同じく、画面一杯に出る文章を読み進め、途中で現れる選択肢を選んでいくシステム。
    • 前作『弟切草』は基本的に文字通りノベル(=小説、読み物)として製作されており、選択肢でシナリオの分岐こそするが、謎解きや正しい選択・誤った選択といったものも存在せず、常に何らかの結末に到達して話が終わる仕様だった。
    • それに比べると本作はプレイヤーに推理を要求するなど幾らか従来のアドベンチャーゲームに近い形に戻っており、プレイヤーは悲劇的な結末であるバッドエンドを回避し、グッドエンドのエンディングを目指してプレイするのがゲームの目的となる。
  • 画面上の背景は実写加工、登場人物は青い影のシルエットとして表現される。
    • このアイデアは我孫子氏によるもので、当時のスーパーファミコンの描画スペックで多様の人物表現を可能にしつつ、作中の文章からプレイヤーが想像したキャラ像を崩すこと無く感情移入させる効果を出している。
    • これ以降ノベルゲームにおける1つの表現技法として定着し、容量の増加でより細かい描写が可能になった昨今においても演出として度々使われている。
  • メインのシナリオはペンションの殺人事件をめぐるミステリーだが、クリア後の2周目以降のプレイでは選択肢次第で、スパイアクション、オカルトホラー、ギャグなどバラエティに富んだシナリオに分岐する。

プレイヤーが「解決」するミステリー

  • プレイヤーは事件の真相を推理し、真犯人とトリックを指摘することでゲームをクリアすることができる。これだけだとよくある推理アドベンチャーだが、『かまいたちの夜』が特別であり傑作とされるのは、プレイヤーの推理が、物語の結末だけではなく、その形態自体をも変化させる構成のダイナミックさにある。
  • 物語の序盤で最初の殺人事件が起こり、話が進むごとにさらに人々が殺されていく。連続殺人が続いた物語の中盤で、プレイヤーは犯人を推理することになり、当てられないとバッドエンドしか残っていない終盤に進まなければならない。もし犯人が当たれば、エンディングに到達する。
    • 普通の推理ゲームであればそこで終わりだが、本作ではそのエンディングもまたグッドエンドではなく、バッドエンドの一つにすぎない。
  • 実は最初の事件が起こった直後の場面で3回の選択肢を全て正解すると犯人の指摘が可能で、そこで犯人を当てることができると真のグッドエンドにたどり着くことができる。
    • 推理小説や推理ゲームというのはその性質上、事件が起こったことを前提に推理して解決しなければならないが、本作ではプレイヤーの推理によって惨劇を事前に防ぎ回避することができる点が非常に斬新で、プレイヤーが物語に介入できるゲームならではの面白さとして高く評価された。

ホラーあり笑いありの作風

  • メインシナリオは連続殺人事件がテーマのミステリーだが、恐怖や不気味さを煽る演出が多く、ホラー作品としての要素も強い。『弟切草』同様、限られた表現力でありながらプレイヤーの想像力を掻き立てる演出になっている。
    • 一方でコミカルなギャグ的文章も多く、暗さ一辺倒でない作風が作品の幅を広げている。これはふざけた描写を選択肢の一つとして入れることで、ギャグにより過ぎない適度なバランスを生み出していると言える。

音楽

  • 女性の悲鳴やインターホン・吹雪やノック音など効果音の使い方が的確。BGMも序盤は楽しいスキーリゾートを連想させる穏やかなものだが、殺人事件の発生から恐怖と不安を煽るものが中心になり、プレイヤーを引き込む。
    • 後者は報道番組やワイドショーなどでしばしば使用されており、プレイしたことが無い人でも1度は聞いた事があると思われる。
    • それ以外にもBGMのバリエーションは豊かで演歌調の香山社長のテーマ曲を始め隠しシナリオのBGMも各シナリオの雰囲気に合っている物が用意されている。

賛否両論点

  • 隠しシナリオである「チュンソフ党の陰謀編」を出す方法のヒントが少なく、非常に難易度が高い。自力で発見したプレイヤーはどれ位いるだろうか。
    • またその方法も他の作品に類を見ない極めて斬新なもの。
      • 遊び心があって面白い要素ではあるが、斬新過ぎて戸惑ってしまうほど。
      • PS版やバーチャルコンソール等では比較的無難な方法になっており、増補改訂されたファンブックにもヒントが載っている。
    • 一応劇中にもヒントはある。「そのシナリオで登場した暗号の解き方と同じの物がここより前にある」と匂わせる程度ではあるが。
      • また後述のドラマCDの劇中でも、登場人物がヒントらしきセリフを言っているほか、ドラマ終了後に流れる隠しトラックとして「チュンソフ党の陰謀編」クリア後の実質的な最終シナリオ「不思議のペンション編」でしか流れないBGMが収録されており(サウンドトラックCDには未収録)、間接的なヒントになっている。

問題点

ミステリー面のツッコミどころ

+ 犯人の行動についての指摘、ネタバレ要注意
  • 冷静に考えると、第2の殺人以降の真犯人の行動がおかしい。物語的に破綻が起こるわけではないが、疑問が残る。
  • あるエンディングでのみ明かされる犯人の動機は金銭絡みで、犯人の計画は「邪魔者である最初の被害者を始末した上で『犯人は既に逃走した』『自分にはアリバイがある』と偽装し、何食わぬ顔で検問避けのために宅配でペンションに送った大金の到着を待つ」というものであった。
    最初の犠牲者は犯人が過去に犯した犯罪の「その場限りの協力者」で、欲をかいてより多くの分け前を要求した為に殺された。
    2人目(ペンションのアルバイト)は状況から分かる通り、最初に犯人に気づいてしまったが為に殺された。
    ここまでは、劇中のある人物の発言の通り「殺す必要」のあった人間だけを殺している。状況的に言ってもそれ以上殺す必要性はないのである。しかし…
  • 最有力容疑者の1人が地下室に閉じ込められる展開になるが、何故か真犯人はわざわざ地下に侵入してまでその人物を殺害している……わざわざ最有力容疑者を殺して「犯人は別にいますよ」アピールをする意味は?
    • 侵入に必要な鍵を管理している人物2人やもう1人の最有力容疑者も当然のように殺害。
    • 更に、脇に物を挟んで脈を止める小細工までして死体を演じて主人公らを欺きつつ、隙をみて器用に3人を殺害…そこまでする意味は?しかもやってることが妙にまわりくどい。
  • 犯人はその場の人間を憎悪しているわけでもなく、犯行がバレかかって錯乱しているわけでもないのに、ペンションにいた人間を皆殺しにしようとしている。
    • 犯行を見破られない限り善人の演技を最後まで貫き通しており、見破られても取り乱すどころか、あるエンディングでは「大量殺人は趣味じゃない」と嘯いている。そんな人物が敢えて皆殺しに至った思考が不明瞭である。
    • 2人以上の犠牲を出す惨劇の末に犯人が判明するルートでは、犯人はなにやら悟りを開いたように開き直るだけで詳しい動機を語らず、直後ヒロインが主人公を助けるためにやむなく犯人を殺してしまったため真相は闇に葬られる。
  • こうした流れの異様さについては「第2の殺人の時点で計画が破綻しているため仕方ない」という見方もあるようだが、その時点で(かなり怪しい)容疑者が数名存在している為、余計なことはせずだんまりを決め込んでいればよかったはず。
    • あるいは第2の殺人で計画が破綻した時点で全てを諦めて自暴自棄になっていたのかもしれないが、それにしては犯人は恐ろしく冷静に淡々と殺し続けている。
    • 仮に殺人を続けることに必要性があったとしても、何故真っ先に容疑者を始末したのかそこが謎。
  • ついでに言うと殺人現場に宅配便で金を送ったら警察に中身を調べられるのでは?
  • 死体が発見されなければミステリのゲームにならないが、現実的にはわざわざトリックを使ってアリバイを確保しつつ第一の被害者を発見させる必要すらない。「シュプール」までの道中から外れた森や沢にでも遺体を捨てれば数日の間、あるいは春の雪解けまで発見される可能性は低いのだから。
    • 犯人は「死体を完全に消すにはけっこう手間だし警察から逃げているから自由に動けない」と語るが、道中で始末しなかった説明にはならない。
    • 動機が判明するエンディングでは「相棒は前科持ちだが、自分は前科持ちではないため警察が自分と相棒の接点に気付く可能性は低い」と犯人自ら語っている。
  • ちなみに、下の項で触れている2人目の犠牲者が出た直後のバッドエンドは明らかに「そんなことをしたら他の人間にも誰が犯人か一発で知れてしまう」というようなもの。
  • 加えて、プレイヤーに「犯人はヒロインではないか」と疑わせるためなのだろうが、ヒロインも不可解な行動ばかり取っている。
    • 階下で物音が聞こえたからと、同室で寝ているはずの主人公を起こさず1人で調べに行く。
      • 主人公を危険に巻き込みたくないからか…と思いきや、後に別の人間が殺されると「調べて来てよ!」と主人公を1人で調べに行かせる。
    • 特に必要でもなさそうなものを取りに、1人だけ自室に戻る。
+ 2人目の犠牲者が出た直後のバッドエンドの問題点について、中程度のネタバレ注意
  • 普通に進めると出てくる2択の内の1つでバッド直行なのだが、「現場を調べに行く主人公とヒロインに同行し、(恐らくヒロインを先に襲った後で)先に部屋の中に入っていた主人公が異変を感じ廊下へ戻った所を襲う」というものであるため、真犯人がはっきりわかってしまう。最早推理も何もない。テキスト中で言及こそされないが、状況的に容疑者がほぼ確定されてしまう。
    • 襲われる一瞬とはいえシルエットまで出る。髪型までわかるのでこれだけでも犯人の性別が特定され、この時点で最有力容疑者2人が除外できてしまう。
  • これが終盤とかならまだしも、「2人目の」と書いたように結構早い段階である。しかもこのバッドの到達が2択な為にかなり容易なのも問題。下手をすると初回プレイでもこれだけでわかる。
    • さらに言えば、状況の所為で心理的にそのアウトの方の選択肢を選んでしまう可能性も高い。
  • ただし序盤はトリック自体が分からなければ犯人当てパートまでは辿りつけないため、誰が犯人なのかの目星をわざと付けさせる救済措置とも考えられる。
  • プレイヤーが犯人とトリックを分かっていれば、後はそれを主人公に発言させるよう誘導するだけなのだが、一見突拍子も無い発言から展開するので事件を解決しづらい。
    • もっともこれは難易度を上げるためのトラップとしても機能しており、サウンドノベルならではの表現でもあるため、単に不親切な問題点というわけではない。

ミステリー編以外のシナリオ

  • 本編クリア後は様々なシナリオに分岐することができるが、本編である「ミステリー編」の重厚さと比較すると、他のシナリオはボリュームも完成度もあまり高くなく、言わばオマケのような扱いになっている。
    • 推理要素のある「暗号編」やギャグシナリオはともかく、「スパイ編」や「悪霊編」は特にオチなども、ゲームとしての面白さに欠ける。
    • もっともこれは、本編の「ミステリー編」が細かなツッコミを凌駕するだけの魅力を持っていたことの裏返しでもある。
    • また、これらの派生シナリオは「ミステリー編」をクリアした後に出現するという関係上、登場人物はそれまで本編をプレイして見知った面々なのに設定が大きく異なるというギャップを楽しめるという面もある。

システム面

  • リトライ地点は章ごとにしか選べないので、選択肢まで進むのが面倒。
    • サウンドノベルがジャンルとして成熟していなかったことと時代を考えると致し方ないことではあるが、システム面は不便な点が多い。移植版では当然ながら様々な機能が追加されプレイしやすくなっている。
  • ピンクのしおりにしてしまうと、その時点から主人公とヒロインの名前が変更できなくなってしまう。
    • それまでは名前変更が何度でもできるため、うっかり変な名前にした状態でピンクのしおりの条件を満たしてしまうともう戻せなくなる。名前を変えたい場合は新規にやり直すしかない。
    • ピンク以降で名前を変更不可にしなければならないストーリー上の必然性も特になく、単純にプレイヤー側に不便を押し付けられるのみである。これについての警告なども出ない。
    • 後の移植版ではピンクのしおり後も名前変更に制限がなくなった。
  • ゲームコンプの証である金のしおりの条件が「ゲーム中の全ての選択肢を選ぶ(犯人入力も全パターン必要)」という非常に困難な条件となっている。
    • これを達成してもゲーム内ではしおりの色が変わるのみで追加シナリオなどの特典は無く、当時行われていたキャンペーンに応募できるというだけだった。
    • こちらもPS版以降では条件が緩和され、ゲーム内の要素として別の特典が用意された。

総評

プレイヤーの推理によって、単に事件が解決するだけではなく、物語全体の展開が根本から大きく変化するという斬新な発想と完成度の高い構成は非常に高く評価され、今なお推理ゲームの傑作と名高い。
プレイヤーは物語上の同じ時間を何度も繰り返し行き来し、推理の情報を集めて事件を解決しようとする、さながら「ループもの」作品の主人公であるかのような冒険を体験する。
何度もバッドエンドを繰り返し、惨劇を経験した末に苦労してグッドエンドにたどり着いた際の喜びは、用意された物語を読むだけの推理小説では決して味わうことができない、ゲームというインタラクティブなメディアでしか味わえない感動である。


かまいたちの夜 特別編

【かまいたちのよる とくべつへん】

ジャンル サウンドノベル
高解像度で見る
対応機種 プレイステーション
発売元 チュンソフト
開発元 アストロール
発売日 1998年12月3日
定価 4,800円
配信 ゲームアーカイブス
2011年8月24日/800円(税別)
レーティング CERO:D(17歳以上対象)*2
判定 良作

概要(特別編)

チュンソフト製のサウンドノベル3作をPSソフトとしてリメイクする『サウンドノベルエボリューション』シリーズの第2作として作られたリメイク版*3


主な変更点(特別編)

  • 新機能としてエンディングリストとフローチャートが追加された。
    • このため重要な分岐点まで簡単に戻ることができ、シナリオのやり直しが容易になった。
    • ただし「スパイ編」というシナリオは、ある選択肢を選んだ上でチャート移動を使わずに特定の場所まで読み進めないと入れないので、「選択肢を選んでチャート上にラインを出現させる→分岐点に戻って別の選択肢を選ぶ」という行動を繰り返すと、けして辿り着けない。
    • 「暗号編」というシナリオでは、ある選択肢からバッドエンドに続くチャートのラインが消えてしまうというバグがある。その選択肢を再び選び、もう一度バッドエンドを見直せばラインは復活する。実害は無いが、なぜここにだけそんなバグが有るのかは謎。GBA版では修正された。
    • エンディングリストにもミスがあり、実際に見たエンディングと登録されるエンディングが入れ替わっている例がある。こちらもGBA版で修正。
  • 音声出力の切り替えと振動機能のON/OFFもあるが、なぜかこの2つは切り替えがセーブされず、再開するとデフォルトのステレオ・振動ONに戻っている。
  • オートセーブ機能は失われており、スタッフロールは見終わってからでないとセーブできない*4
  • 時代背景等に合わせ、テキストの一部が改変されている。これはGBA版以降の移植版でも同様。
  • 新たなシナリオとして、ヒロインを主人公にした書下ろし番外編(「真理の探偵物語編」)と、SFC版のピンクのしおりの応募プレゼント特典だったドラマCD(「ちょっとエッチなかまいたちの夜」)が追加されている。
    • それぞれ、「真理の探偵物語編」はこの前日談となる特定のグッドエンドを見ること、「ちょっとHな~」は金のしおりにすることが条件となっている。また、金のしおりの条件自体も「全エンディングを見る」に緩和されている。
    • しかし「真理の探偵物語編」ではなぜかフローチャートが使用できない。このシナリオでは選択肢を選ぶ順番によって犯人が変わるという仕掛けがあるのだが、セーブ場所を考えないとプレイするたびに冒頭の長い前振りから読み直さなければならない。
  • SFC版ではグッドエンドの1つだったものがPS版ではバッドエンドに変更されている。それに伴い、このED用のスタッフロール演出も同時に削除。
    • エンディングの内容的にはバッドでも頷ける変更ではあるのだが、全ルートにおいて犯人の目的と最初の被害者の詳しい素性が唯一明かされるエンディングであった事と、それまでの展開に無理がない事、他のグッドEDとは違って哀愁感のあるスタッフロールだったものが削除された事もあって賛否両論でもある。
    • なお、到達すると新シナリオが解放される点はSFC版と変わらず。

かまいたちの夜 ADVANCE

【かまいたちのよる あどばんす】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 128MbitROMカートリッジ
発売元 チュンソフト
開発元 サン・テック、ピカイチ
発売日 2002年6月28日
定価 4,800円
判定 良作

概要(ADVANCE)

PS版をベースとした移植作品。

  • その為かカートリッジでの移植にも拘らずオートセーブ機能は無い。

主な変更点(ADVANCE)

  • 主人公の透とヒロインの真理に『2』同様の苗字が追加された。
    • 本作発売当時、『かまいたちの夜2』の発売が近いためと思われる。
  • 条件を満たせば『我孫子氏からの挑戦状』と称した『2』の宣伝を見ることが出来る。
  • PS版にあった番外編とドラマCDは残念ながら削除されている。

続編においての扱い

  • SFC版発売から8年後、シリーズの第2作『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄?』が発売されたが、その中で本作は「作中作(ゲーム内のゲーム)」という事にされてしまった。『2』の出来に色々と問題点があった事もあり、本作のファンの中にはこの設定変更にがっかりした人も多い。
    • そして第3弾『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』では、『2』の本編終了後の世界を直接引き継いだ設定となり、本作は公式に「無かったこと」が確定してしまった。
    • 『1』本編の未来を描いたPS版の「真理の探偵物語」では次回作への伏線らしきものが貼られていたのだが、世界観が変わってしまったためこちらの伏線は回収されなかった形になる。
    • 『3』の攻略本でも「後に『1』の物語は作中作の設定に過ぎなかったと判明するが…」と明記されている。
    • この公式での『1』否定とも取れる行為に反発したファン達によって、当時は「『2』を逆に架空の出来事とする『1』の"続編"」等が独自にフリーソフトで作られたりもしていた。
    • 第4作目となる『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』では登場人物が一新され、『1』のメンバーは同作の宣伝PVで関わるのみとなっていた。

余談

  • 作中の背景写真の撮影に使われたペンション「クヌルプ」は、今で言う「聖地巡礼」に行くファンまで出た程である。
    • ただし一部の写真はミニチュアを作って撮影されたものであり、実際の設計とは異なる部分がある。
    • 前述の通りSFC版当時は金のしおりを写真に撮って送ると、先着でこのペンションへの招待券がプレゼントされるというキャンペーンが行われていた。
    • 現在も長野県白馬村にて営業中であり、今なお「聖地巡礼」の宿泊客は途絶えていない模様。
  • 公式ファンブックでは原作の我孫子武丸氏による短編小説版『かまいたちの夜 A Novel』が掲載。犯人やトリックが異なる別のシナリオとなっている。
    • このファンブックでは『A Novel』に分岐を付け加えてオリジナルの展開をファンから募集する企画が行われたのだが、予想以上にクオリティの高い応募が集まったため、後に優秀作をまとめて本にした『あなただけのかまいたちの夜』が発売された。中には本格的なゲームブック風の作品もあり、ファン作品ながら評価も高い。この企画は続編『2』の方でも同様のものが行われた。
    • 小説版『A Novel』については後に携帯アプリ版及び『輪廻彩声』にてゲーム化されている。ただし選択肢は無し。
  • SFC版に合わせてサウンドトラックCDと、ドラマCDが発売された。
    • ドラマCDはゲームとは異なる独自のストーリーであり、声優も棒読みは存在しない…のだが肝心のストーリーがご都合主義かつ超展開で、唖然とすること必至である。
      • また構成や尺の取り方もおかしく、殺人事件が起きたばかりなのに何事も無かったかのように雑談をして楽しげに笑うシーンが有ったりする。
      • なお、原作ゲームでのバッドエンド時のBGMをただ何分も流し、その後に何の音も入っていないパートがこれまた何分も続いたりしている謎のパートも存在するが、実はこれはゲーム版の隠しシナリオを示すヒントになっている。
    • なお原作ゲームでは主人公とヒロインの苗字が不明だったが、このドラマCDでは「矢島透」「小林真理」と設定され、『2』『×3』に逆輸入された。
  • 1996年に『月の氷柱 もうひとつのかまいたちの夜』という題名で舞台演劇化されたのだが、映像ソフト化はされていない。
    • なおこちらでは、主人公とヒロインの名前は「村上透」「遠藤真理」になっている。
  • 後にTBSでドラマ化(ゲームとは違う世界観で)され、2002年7月3日に次回作のタイアップも兼ねて放映されたのだが、「本格的恐怖ミステリー」「推理しろ!でなきゃ、みんな殺される」という煽り文句とは裏腹にサイコホラー要素が強く出ており、賛否両論が激しい。
  • 「燕返しは柔道の技じゃなかったと思うが」という台詞が登場しているが、柔道にも同名の技は存在する
    • 本作は何度も移植やローカライズが行われているが、このくだりはまったく訂正されなかった。
    • もっともこれは主人公の独白のため、単純に作中の主人公が知識不足だったと言えるかもしれない。
  • PS版、GBA版の他に携帯・スマートフォンアプリ版やインターネットブラウザ版(現在はサービス終了)なども存在する。
    • アプリ版「かまいたちの夜 Smart Sound Novel」では背景画像とBGMが一新され、時節も2010年代に合わせたためにテキストの変更が特に多くなっている。
      • ただし、本作の特徴であった青いシルエットが一切無くなってしまった事には批判が多い。

かまいたちの夜 輪廻彩声(参考記述)

  • 2017年2月16日には5pb.からPS Vitaでのリメイク『かまいたちの夜 輪廻彩声』が発売された。
    • スパイク・チュンソフトは監修のみで本作の販売には携わっておらず、公式サイトも5pb.側のみに存在する。
    • 追加シナリオとして上記の「A Novel」と、なく頃にシリーズ等で知られる竜騎士07氏執筆による完全新規書き下ろしシナリオ「辺獄の真理編」がある。
    • キャラクターデザインが原作のシルエットではなく、所謂ギャルゲータッチのビジュアルノベルAVGとなり発表時は旧作のファンからの批判が噴出、キャラクターデザインを担当した絵師「有葉」にも批判が殺到してしまうなど悪い意味で話題になってしまった。
      • 「影絵がウリのゲームにイラストを搭載する」という発想そのものがただでさえ賛否両論だった中で、5pb.代表「志倉千代丸」が「やっぱりシルエットモードが欲しい」とツイート、絵師が土壇場で謝罪するなど、ツイッターにてイラストにまつわる問題が勃発。誰よりもスタッフ自身がイラストの搭載に不安を抱いていたことが分かる。最終的にシルエットの使用は限定的な物に落ち着いた。
      • 絵師曰く、死体のイラストは頑張ったとのこと。グロ絵が苦手な人は注意すること。ただし、バラバラ死体の足が両方右足という作画ミスがある。
      • バストアップ+表情の差分のイラストがメインとなっている。そのため、過去作である『』の「青ムシ抄」や『428』の「カナン編」のようなほぼワンシーンのイラストだけで構成されたゲーム、それこそ『かまいたちの夜シリーズ』のポーズを取っている影絵や、影絵によるアニメーションをイラストで再現したゲームを思い描いている人も要注意。
      • 念の為にフォローしておくと、イラストそのもののクオリティは十分であり、いわゆる作画の乱れは存在しない。多くのファンにとって『かまいたちの夜』という作品は登場人物はシルエットで表示されるものと動かしようのない固定観念の土壌が出来上がってしまっているところに明確なイラストによる描写というファクターを持ち込んでしまった相性の悪さが原因なのである。……「バストアップのイラストでごまかして量描いてないんだから乱れようがないだろ」と言ってはいけないのかもしれない。
      • 絵師がエロゲをメインに活動していた(=美少女以外をあまり力を入れて描いていない)人物であるせいか、美少女として描いて問題ない真理はともかく他のキャラクターについては大なり小なり違和感を指摘する声も出ている。
        --イラストの搭載に数々のファンが困惑していた中で、我孫子武丸は「音楽のことは誰も心配しないのか?」という内容の冷静なツイートを残している。
      • 実際はMEが一部変更されただけで済んだ……と言いたいが、変更されたそのMEは主にコミカルなシーンに用いられていてファンには印象的なものだったり、かまいたちの夜シリーズの象徴として『金八先生』でも用いられていたりと圧倒的な存在感を誇っていたので、これの変更は基本的に「改悪」として扱われている。
    • 売上は芳しいものではなく、「こんな調子で、『1』がヒットしたという事実がないとあらすじとして成り立たない『2』はリメイクされるのか」と危惧されることに。
      • 志倉氏がツイキャスにて、「元のシナリオに新規シナリオを追加したものだから今までのユーザーは買わなくていい」というやる気のない発言を残したのが原因かもしれない。
      • その追加シナリオ「辺獄の真理編」についてもやや人を選ぶ内容。一部のユーザーからは竜騎士07氏の過去作「ひぐらしのなく頃に」に擬えて「かまいたちのなく頃に」等と呼ばれることも。
    • 志倉氏の発言の通り、イラストの採用などは「本シリーズを知らないユーザーにとっても、近年の同ジャンルに合わせた馴染みやすいデザインにする事で楽しんでもらう」というコンセプトによるものであり、それ自体には好意的な解釈を示すユーザーもいた。
      • 「辺獄の真理編」では従来のシルエットでは絶対に表現出来ない、女性がギャルゲーらしく描かれていることを利用した演出が存在する。インパクト絶大なものなので戦慄したユーザーも多いだろう。
      • しかしながら一枚絵などに見られる、いわゆるデスゲーム系作品にも似た安易なグロテスク描写に頼っているといった批判の声もあり、その点でもコンセプトが悪い部分として出てしまった感がある。
  • 2018年2月23日に、PC移植版『輪廻彩声』が発売された。
    • OPが新規のものに差し替えられた事を除けばほぼVita版のベタ移植であり、PCに合わせたインターフェイスの改善なども特に行われていない上に、指定された推奨環境スペックで起動できない環境があるなどの報告もあり、やや杜撰な移植となっている。また操作系統もコントローラーは使用不可でマウスオンリーとなっている。
    • さらに5pb.の公式サイトでは発売3ヶ月以上経っても「発売予定」の表記のまま更新されず放置など、せっかくのPC版でありながら公式側にあまりにもやる気が見られない状態である。