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RPGツクール5 - (2016/07/26 (火) 14:45:36) の編集履歴(バックアップ)


RPGツクール5

【あーるぴーじーつくーる ふぁいぶ】

ジャンル RPGコンストラクションソフト
対応機種 プレイステーション2
発売元 エンターブレイン
開発元 空想科学
発売日 2002年8月8日
定価 7,800円
分類 スルメゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 最強の家庭用ツクール
内容が本格的すぎて難解さも最強
ドラ○エツクール?
「残念ながらできません」
演出の自由度自体はPC版超え
ツクールシリーズリンク


概要

コンシューマー向け『RPGツクール』の第5弾。本作よりハードがPS2に移った。
アジェンダ製の前作『RPGツクール4』が多くの問題を抱えていたためか、開発元が『3』までの空想科学に戻された。
ただし、スタッフは大幅に異なる。

内容面ではスクリプトの採用によってできることの幅が大きく広がったが、その反面、制作手順が一気に複雑化してしまったため、批判と不評の声も大きい作品となった。

特徴

  • スクリプトの採用。多彩なスクリプトコマンドを組み合わせることで、さまざまなことができるようになった。
    • 簡単に言うと、前作までの「イベントコマンド」の中身をいじることができるようになった、ということである。
    • 道具や魔法の効果などもスクリプトを組むことによって作成する。
    • 今までは用意されたものを使うしかなかった「ダメージ計算式」も自分でツクれるようになった。
  • マップやキャラクターが3Dポリゴン化された。
    • 視点操作などの3Dならではの演出も可能になった。
  • エフェクトをかなり自由にツクれるようになった。
    • 非常に自由度が高い分、高負荷のエフェクトを同時にいくつも表示したりするといとも簡単にフリーズしてしまう点には要注意。
  • 「変数」はもちろん使用可能。
  • 「ゲームスイッチ」が「フラグ」に名称変更。
  • 制作開始時に初級から上級まで選ぶことができる。
    • 初級や中級を選ぶと「プリセットデータ」というある程度完成されたデータが読み込まれ、これをもとにゲームをツクることができる。そのかわり一部の入力箇所が封印されているので、細かく作り込むことができない。
    • 上級は、すべての入力可能箇所が解禁されるが、そのぶんありとあらゆるすべてを一からツクる必要がある。
    • これは制作途中でも変更可能なので、上級で作るにしても初級や中級で始めてある程度プリセットデータだけ読み込んでおいてから、上級に切り替えて細部を調整することが強く推奨されている。(理由は後述)
  • キーボード対応になり、文字入力が楽になった。
  • サンプルゲーム『fu-ma』は過去最大のボリュームの作品。
    • シナリオとコンセプトはドラゴンクエスト7に参加した折尾一則氏。BGMは、すぎやまこういち氏と関係が深い松尾早人氏が担当した。内容はいい意味でも悪い意味でもドラゴンクエストに近い雰囲気となっている。
    • 今作のサンプルゲームにはパスワードが設定されており最初からサンプルロードする事はできない。このパスワードはサンプルゲームをクリアする事でわかるようになっている。

問題点

意欲的なツクールであった本作だが、今まで慣れ親しんだ仕様から大きく変わったことに多くのツクラーは苦しみ挫折していく。

難解すぎた仕様

  • 本来ならより細かく作りこめるとなるはずだった「スクリプト」だが、そのスクリプト、スクリプトコマンド、スクリプトとイベントの関係の仕様から、作りたい項目を選んでから内容を作るといった従来のツクールのスタイルではなく、スクリプトで内容を作ってからそれをどの項目にするかという従来のツクールと全く異なる製作手法が求められる。
  • このため前作までの仕様に慣れた多くのツクラーが最初から「上級」モードで作ろうとして、あまりの制作感覚の違いに対応できずに投げ出してしまう人が続出し、本作の入口時点で挫折者を多く出してしまった。
    • つまり本作の「上級」モードはスクリプトをちゃんと理解した上で選択するモードであり前作のツクールに慣れた人が最初から選択するものではないのである。
    • かといって「初級」から始めるにしても、簡単な回復魔法を一つツクるだけでも相当に仕様を理解する必要があり、中途半端に編集しようものなら、当然「バグ」も発生する。
    • スクリプトコマンドの中には「素早さサーチ」のように、熟練者でも「苦手なので、できれば使いたくない」と言われるものもある。
    • このため、このツクールを使いこなそうと思うと「プリセットデータ」「スクリプトコマンド」を一つ一つ解析し、スクリプトの仕様と組み立て方を頭に入れるという、気の遠くなる苦労が必要となった。もはやそこに「誰でも簡単にRPGを作れるソフト」の面影はない。
  • 初心者救済となるはずだった「プリセットデータ」の多くにミスがあり、そのまま使うと確実に不具合が出る。
    • 結局、読み込んでも上級に切り替えて修正しなければならなかった。
    • 当然、修正には仕様を理解することが必須。初心者は負のスパイラルに陥るしかなかった。
  • 公式サイトに質問受付があったが「こうしたいのですがどうすればいいですか?」と質問すると、たいてい「残念ながらできません」と返答されてしまい、「じゃあ、なにもツクれないの?」とツクラーを悩ませた。
    • 一応「制作者の想定以上のことはわからない、できるものもある」と返したこともあった。
  • 3Dマップ制作の仕様も操作が極めて複雑で、これも直感でなんとかなるものではなかった。
    • マップだけでなくイベント配置なども三次元で物をとらえねばならず、これも人によっては厳しいものだった。
  • あまりに内容が膨大なので「説明書」は当然役に立たない。
    • 説明書の内容は「とても難しいのでプリセットで作ってください」の一点張りである。
    • これをカバーするためのヘルプ機能がある。が、分からない人にとってはそのヘルプの内容自体がすでに謎の塊である。
  • そもそも操作方法からして非常に難しく、L3R3を含めた3つボタン同時押しでの作業は当たり前。
  • 発売直後にVジャンプブックスからツクール5のガイドブックが発売され、複雑な仕様を理解する為に別売のガイドブックに頼る人もいた。後にエンターブレイン自らも発売する予定だったが突然発売中止となるという異例事態となった。
  • またこれらの仕様を理解できたとしても、完成させるには前作までと比にならない膨大な量の入力とテストプレイ(バグチェック)作業が必要である。よほどゲーム作りに思い入れがなければ、とても気が持たない。
    商業ベースでのゲーム作りの過酷さを嫌というほど味あわせてくれるといっても過言ではない程。

その他問題視されたこと

  • サンプルゲーム『fu-ma』を作ったスタッフがドラゴンクエストシリーズに関わっていた影響からなのか、ゲームシステムの仕様が『ドラゴンクエスト』に酷似している。
    • メニューウインドー、戦闘シーン、職業熟練度システム等、とにかく様々な箇所が当時の最新作である『ドラゴンクエストVII』に酷似している。何も知らない人が画面を見たら「ドラクエの新作?」と言われそうなほど、そっくりそのままである。
    • 主人公の成長パターンのサンプルの中にも、『戦士系』『魔法使い系』などのオーソドックスなものに混じって、他のRPGではあまり見られない職業である『船乗り系』『羊飼い系』『笑わせ師系』(全て『ドラゴンクエストVII』に登場する職業)というものがある。
    • 実際、シナリオ担当の折尾一則氏も自らのサイトで「ミニドラクエ」と語っていた。
    • 本家から何か文句言われるのではと思われてもおかしくない程、酷似しすぎていてドラクエっぽさを嫌う人によって最大の不評点となってしまった。
      • ただ、RPGツクールはRPGを作るツールソフトであり、日本のRPGがドラクエスタイルの影響下で発展してきたことを鑑みれば、ドラクエに近い雰囲気でRPGを作るという手法自体が悪いわけではない。他のRPGツクールでも本作ほど露骨ではないにしろドラクエを意識している部分がある事も追記しておく。
  • 人物の3Dモデルが、デフォルメの効いたかわいらしい造詣になっており、シリアス系には向かない感がある。
  • ロード時間がとにかく長い。フロア移動、戦闘開始終了全てに時間がかかりすぎる。
    • 迂闊にエンカウント率を上げたり小さなフロアが大量にある町やダンジョンを作りたい人には嫌がらせである。
  • 恒例のコンテストは同時期に開催されたゲーム甲子園のコンストラクションツール部門の1つとして行われ、定期的に開催されるはずだったのだが、コンストラクションツール部門の審査方法に問題があったために1回限りで打ち切られてしまい、第2回ゲーム甲子園以降はゲームプログラム部門に統合・代替される形でXPといったスクリプト機能を搭載したPC版ツクールで製作した作品のみ対象となり、ツクール5をはじめとした家庭用コンストラクションソフトを使用した作品は対象外となってしまった。

そんなこんなで「わけわからんツクール」「またしてもクソツクール」とのレッテルを貼られた本作は、大半のツクラーから「残念ながらできません」と投げられ、販売店でも多くの店でワゴンゲー化、投げ売りされていった。
結果、『4』とは違った意味でツクラーにトラウマを刻みつけたツクールとして名を残した。

・・・と思われていたのだが、後年になって意外にも再評価の動きが現れることになった。

再評価へ

多くのツクラーに投げられた本作だが、一方で熱心に研究、解析し、ゲーム制作に挑んだツクラーたちもいた。
解析が進んだことにより、公式サイトで「残念ながらできません」といわれたものも知識と工夫により実現していった。
そして、本作を極めた者の中には「アクションRPG」や「シューティング」「ボンバーマン?」などのRPG以外のゲームをツクる猛者まで出現し、本作のポテンシャルの高さを多くの人々に見せつけ驚愕させるのであった。

当然、ソフト本来の用途であるRPG制作の上でも優秀であり、3Dポリゴンであることを活かして、カラクリ仕掛けが作動するといったようなマップ演出をすることが可能など、PC版のツクールも出来ないようなことがこのソフトでは出来る。
例えば隠し階段一つとっても、従来のツクールならばマップチップが出現したり動かしたりするだけで終わりだが、このソフトならば、それ以外にも階段の段差の仕掛けが動いていくシーンを立体感あふれる演出でちゃんと作ることが可能。
つまり、ビジュアル面での演出に凝りまくれるのが本作の強みなのだ。
その点だけ見れば、パッケージ裏に躍る「史上最強のツクール」の謳い文句に偽りはなかったと言えるだろう。

レビューサイト等を見てみても、「投げたけど価値は認める」「上級者、自信がある人なら是非」といった声が多く、ただ難しいだけのゲームとは一味違うことを感じ取っている様子である。

総評

スクリプトの導入によるやれることが大幅に増えたことによる自由度の高さの反面、従来のシリーズと大きく異なる制作仕様の難解さ・複雑さによって、明らかな上級者向けのツールと化してしまい、ツクールシリーズならではの利点が大きく損なわれたために大きな不評を買ってしまうこととなった。

一方で、複雑・難解な制作システムである分、そのポテンシャルはPC版を凌駕するほどまでに高く、スクリプトに関する知識をしっかり持っている人であるならば、家庭用でPC版シリーズに匹敵する以上のクオリティを持つ作品を、RPG以外のジャンルにまで渡って幅広く作れることが大きな魅力となりうる。
実際、上述のように少なからず評価する声も見られており、ソフトそのものに制作ツールとして成立し得ないような大きな欠陥があったから批判されているというわけでもない。
つまるところ、本作の問題点は、これだけのポテンシャルを兼ね備えた高度なソフトを「初心者向けとして出してしまった」という点にあるだろう。
せめて本流のシリーズとは別口の扱いにして最初から上級者向けを謳って出していれば評価も大きく違っていたはず。ソフトそのものは極めて優秀なだけに、ただ切り捨てるのはやはり惜しいものがある。
ユーザー側からの質問に対する公式側の回答を見る限りでは、制作上の自由度を追及した結果、ここまで上級者向けのツールに仕上がってしまったことは、恐らく公式側にとっても想定外のことだったのかもしれないが・・・。

いずれにせよ、初心者向けの家庭用制作ツールとしてみた場合、スクリプトの仕様の理解から要求する作り自体に厳しいものがあるのは事実。
家庭向けゲーム制作ツールにおける制作自由度の高さと制作の容易さの両立がいかに難しいかを端的に示した1作となったと言えよう。

その後。

一部には評価された『RPGツクール5』だったが、やはり複雑化への不評を無視できなかったのか、またPC版との差別化もあったのか、その後の作品は難易度が下がり簡略化していく傾向にある。