スライムもりもりドラゴンクエスト2 大戦車としっぽ団
【すらいむもりもりどらごんくえすとつー だいせんしゃとしっぽだん】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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512MbitDSカード
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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トーセ
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発売日
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2005年12月1日
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定価
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4,990円
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廉価版
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アルティメットヒッツ 2008年10月23日/2,940円
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レーティング
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CERO A(全年齢対象)
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判定
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なし
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ポイント
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スライムてんこ盛りのほんわか路線 新要素「勇車バトル」 難易度は極めて低し
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ドラゴンクエストシリーズ
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概要
GBAで発売された『スライムもりもりドラゴンクエスト 衝撃のしっぽ団』の続編。
前作のようなアクションに加え、本作では勇車バトルが重要な位置を占める。
スライム族が暮らすスーラン王国の国民たちは、しっぽ団の襲撃を受けて連れ去られ、宝箱の中に閉じ込められてしまった。
偶然難を逃れた若きスライム(デフォルト名:スラリン)は、仲間を救うために立ち上がる。
…と、ストーリーのプロットは前作とほとんど変わりない。
ストーリー自体は前作の続きではなく独立しているが、一部キャラクターが共通している。
システム
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ステージ構成やアクション、100匹のスライムを助けるストーリーも前作とほとんど同じ。以下、変更点。
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「スーランの街」が「スーランの城下街とその城」に変化。
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登場する魔物が変化。追加されたものもいれば、削除されたものもいる。
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しっぽが2本生えている「二本兵」は通常種と違う魔物に。たとえば、ももんじゃの二本兵はダックスピルと同じ色をしている。
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最大HPが10メモリ(20)から16メモリ(32)にアップ。
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スライムを助けた時に送られてくる手紙に、弾や錬金のレシピなどお礼の品がついてくるようになった。
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スライムや魔物を街に運んでくれるトロッコは最大3つまで物を載せられるように。収集が大幅に楽になった。
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「砂に潜る」「スラ・ストライクを溜めている時にBを押して軽く物を投げる」などのアクションが削除。代わりに、スラ・ストライク使用時にBを押しての遠投が追加。
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ミニゲームは「なみのりコゼニトール」のみが続投。新たなものにカンバスに絵を描く「お絵かき」が追加された。
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錬金釜の登場。本家『VIII』から輸入された。
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複数のアイテムを合成して別のアイテムを作りだす。主に勇車バトルで使用する弾を作るのに使われるが、ゲーム後半ではストーリー上の重要な役割も担う。
勇車バトル
発売前から注目されていた本作の目玉要素の1つ。
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ゲームを進めていくと、巨大なスライム型のメカ「勇車スラリンガル」を手に入れる。しっぽ団の面々もこうした大戦車を有していて、これで砲弾の撃ち合いをするのが勇車バトルの概要。
勝利条件は「砲台から弾を撃って相手戦車のHPを0にし、エンジンルームに侵入してエンジンを破壊する」こと。
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どの戦車にも弾をまっすぐと山なりに撃てる砲台が二門、弾を供給するすべり台、敵の侵入を防ぐシェルター、すべり台とシェルターを制御する機械、死んだキャラクターが復活する教会、中枢のエンジンルームが搭載されている。
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DSの下画面には、通常ステージと同じ見下ろし視点でプレイヤー周辺の様子が描かれる。こちらを見ながら、スラ・ストライクで持ち上げた弾を砲台に投げ込む事になる。
上画面には勇車バトルの遠景が描かれ、向かい合った戦車間を弾の飛び交う様子が窺える。こちらの弾が敵弾と相殺されないよう、軌道の異なる二門の砲台の使い分けが重要。
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持って帰ってきたアイテムとお金を使って勇車のHPを強化できる。しんかのひほうによる強化もできてしまう。
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通信プレイも可能。HPを自由に設定できる他、4人対戦時は2チームに分かれて戦うこととなる。
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こうして見るといたってシンプルなルールだが、かなり戦略性が深い。
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「弾」と「仲間」
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手に入るアイテムはすべてが弾として発射可能。たとえ「はがねの剣」だろうが、呪文の「メラゾーマ」だろうが、「ぬいぐるみ」だろうが。
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1つの戦車に積める弾は種類による個数制限なしの30個で、これを「デッキ」と呼ぶ。弾をすべて撃ってもデッキ切れにはならない。
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弾はそれぞれ性能が異なる。速かったり遅かったりするものもあれば、一撃で撃ち落とされない耐久力がある盾系、撃つとHPが回復する薬草系、まっすぐ・山なりに縛られない動きをするものなどその種類は豊富。
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仲間は最大3名まで。特定のスライムを助けたり、街に30匹運んだ種類の魔物が参加してくれる。
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仲間ごとにそれぞれ2種類の命令を持つ(特例もある)。それらは個別に指定可能で、弾を撃ったり、弾を運んできたり盗んできてくれたり、プレイヤーを守ったり相手戦車に攻撃しにいったりする。
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命令を切り替えたりするとそのたびにその仲間がしゃべる。敵を倒す、敵に攻撃されるなどの条件によってしゃべってくる。
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もちろん敵の大戦車にも仲間はいる。単に弾を撃ってくるだけなら問題ないが、様々な作戦でこちらを妨害してくるものも。
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非常に豊富な戦略
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HPが0になった戦車はシャッターが自動的に開き、さらにエンジンルームも解放。エンジンを攻撃されれば負けてしまうが、攻撃されない限りは戦えるため、逆転することも不可能ではない。
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シャッターだけなら攻撃することで破壊可能。そのまま敵の戦車内部を荒らせば有利になる。
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滑り台やシャッターを管理する機械を破壊すれば、滑り台は落ちてくる弾が燃えて触れるとダメージになり、シャッターは自動的に開閉を繰り返すようになるので、こうした妨害が戦略の多くを占める。
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どの乗員も敵が侵入してくると迎撃態勢に入る。乗員は倒れても一定時間後に教会で復活するが、こちらに攻め込まれた時はなんとかして追い出し、向こうに攻め込む時は妨害されないようにしたい。
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ただし、本編でプレイヤーが倒れるとそのままゲームオーバー。通信対戦では徒歩で教会まで戻らないと復活できない。
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砲台に入ったキャラは人間(?)大砲状態になる。弾が当たると相殺して落ちていくが、相手の戦車に着弾するとそのまま侵入できる。こうしての侵入は難しいものの、そのメリットは大きい。
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狙わずとも、仲間が砲台に向かって弾を投げる→それに当たってダメージを受けて吹き飛ばされる→気が付けば空の上……という事態も割と起きる。
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戦車の種類も数々存在。基本的にどれもDQのモンスターを模している。
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本編で使えるのはスラリンガルのみだが、CPU対戦(タンクマスターズ)や通信対戦では一度戦ったことのある戦車が使用できる。
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外装内装が異なる他、戦車ごとにエンジンルームの構造もわずかながら差異があり、相手を少し惑わすことができる。
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特殊能力を持つ戦車も存在。
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バトルレックスをモデルにした「ギャオックス」は一定間隔で弾を破壊する斧を振り下ろす、いっかくウサギをモデルにした「ウサンダー」はデス・キャロットという巨大ドリルを一発だけ撃てるなど。デザイン元のモンスターを活かしている。特定のアイテムだけが必ず出てくる滑り台がある戦車もある。
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雑誌「Vジャンプ」では大戦車のデザイン募集が行われた。また、GBAスロットに前作のロムカセットを挿し込んだり、教会で特定のコマンドを入力することにより入手出来る隠し戦車もある。
評価点
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アクションのやりやすさやゲームデザイン、音楽やシナリオについては前作同様に評価点と言える。
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スライバ戦で流れるBGM「王者はどちらだ?」は、当時のドラクエでは珍しいエレキギター全開の作風で人気・知名度共に高い。
本シリーズ以外のドラクエ作品でも使用されている。
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前作では、「アクションステージで、時間経過で夜になると無敵の赤ももんじゃが現れて強制的にアウトになる」という言わば時間制限があったが、今作ではそのシステムが撤廃され、昼と夜を繰り返すだけで、同じステージにいつまでもいられるようになった。
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グラフィックについても前作同様だが、コミカルな世界観に戦車という要素が登場したのは大きな変化点。
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戦車はデザイン元になったモンスターを踏襲しつつも、メカデザインやその内装はそれぞれ異なり、ドット絵もかなり出来が良い。
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本作自体がこれまでのDQシリーズ作品とはやや異質な世界観でありながらも、大きな違和感もなく二つの要素が共存している。
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非常に対戦性の高い勇車バトル
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「自分だけのデッキを組んで挑む手軽な対戦アクションゲーム」は意外と例が少なく、概ね好評。特殊な弾や仲間モンスターの個性をはっきりと感じ取れるので盛り上がる。
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相手の弾を盗みまくる構成など、ネタ重視で戦うことも可能。ガチの対戦になってもデッキや仲間の幅は広い。
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やりやすいインターフェース
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操作性は良く、直感的で馴染みやすい。
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タッチペン不用かつ2画面を有効利用しているというデザインは不自然さがなく、快適で遊びやすい。
問題点
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相変わらず低い難易度
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前作に比べてプレイヤーの最大HPが1.5倍になっているのに対し、アクション面はまったく難しくない。
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ボスも強くない。元から強くないのに自滅攻撃をしてくるデンべえや、手下が吹き飛ばせるようになってかなり弱体化したドン・モジャールなどが目立つ。ステージによってはボス戦が勇車バトルになったため、単純にボスの数も少ない。
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収集要素の関係で再戦が必要なボスも居ないため、本作のボスキャラは非常に空気な存在となっている。
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勇車バトルもCPU戦だと盛り上がりに欠ける。
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自分を弾として撃ちだして強襲を狙っても、優先的に撃ち落としてくるなどはしない。ちょっとアクションの腕があれば大砲前に立ちふさがって弾を打たせないことだって可能で、誰が相手でも常勝パターンの繰り返しになってしまいやすい。
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シャッターを強引に破壊しての侵入も容易。もちろん相手は妨害してくるが、こちらのHPの高さと隙の大きさからまったく怖くない。
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頻繁に戦う主人公のライバル・スライバはいるが、弾・背負える数・戦闘能力・復活の早さなどがきわめて強いのに対し、1人しかいないので完封することは容易。
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一応、これらの戦法を使わなければ戦えないというわけではないので、普通に撃ち合いによる正攻法で戦えばよいという話ではあるが。
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タンクマスターズというやり込み施設のようなものはあるが、そこも単なるCPU戦と同じ。様々な奇襲を仕掛けてくるため、各ステージでのバトルより強めだが、手ごたえがあるのはラスボスと裏ボスだけ。勝利しても、アイテムがもらえるのは1度きり(それも特定の相手だけ)。
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ボリュームも少なめ。ラスボス撃破までなら10数時間くらいで終わる。
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勇車バトルは粗も目立つ。
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特殊能力を持った戦車はごく一部。大多数の戦車には特殊能力がなく、目立つ違いはエンジンルームの構造のみという場合がほとんど。
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最強とされる戦車は前述の「ギャオックス」と、それとまったく同じ性能をした「アルゴーン」一択。斧攻撃のタイミングは固定だが、一方的に相手の弾を破壊できるメリットは計り知れない。公式大会では使用禁止。
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次点とされるのはスライバの持つ「エリスグール」。滑り台が通常より2つ少ないが、シャッターとエンジンを繋ぐルートが1つになっているので攻め込まれても対処がしやすい。公式大会でも使用率が高かった。
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ただし、公式大会優勝者が通常性能の「カブト・カブットル」を使用しているなど、ギャオックスとアルゴーンを禁止にさえすれば、戦車の性能はプレイヤーのテクニックでカバーできる。
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ゲームバランスを崩すほどに強い弾は数が多い。
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相手の弾を弾き返す「ミラーシールド」は1つで相手の弾を2つ分無効化できる。極端な話、これ30個ならミラーだけにミラーマッチでもない限りはどんな相手でも倒せてしまう。公式大会では4つまでと言う制限を設けている。
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戦車がうねるように火炎放射をし、当たった弾を問答無用で破壊する「とうがらし」。大砲を使わずに相手戦車を攻撃できる「バルカンほう」とのコンボは非常に強力で、ハマればノーダメージで勝てる。第1回大会ではその性能に気づいたプレイヤーが使用したため、第2回大会では同様に制限が課せられた。
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相手の弾を5発も耐えられる「メタルキングのたて」は一撃で撃ち抜く手段が限られており、これを多く積んだデッキも強いと言える。
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背負うことで剣を振って戦える「スライムナイト」はほとんどの相手を一方的に倒せる他、シャッターの破壊にとても役立つ。使い過ぎると眠るデメリットはあるが、投げて拾えば起きるので機能していない。
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一方で、個性はありながらも弱い弾は多い。
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対戦でよく用いられる「メラゾーマ」は攻撃力90で、命中すると敵砲台前に火の玉が降り注ぐ。
同様に特殊効果を持つ弾は色々あるが、ほとんどの弾とぶつかってもすり抜けられる「オバケだん岩」は攻撃力13、与えたダメージだけ回復する「きせきのつるぎ」は攻撃力35と、効果は見るものがあっても実戦投入が難しい威力。
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「ド・リ・ルのせきばん」や「かくれみの」など特殊な使い方をする弾はCPUが性能を理解してくれない。
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「勇車の剣」はいいとしても、「はかいのてっきゅう」「ミサイル3」など1個しか手に入らない弾も存在する。
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錬金限定の弾は入手が面倒なものが多い。特に「とくバルカンだま」はこれを用いての戦法だと最低でも10個は必要なのに、1個入手するのもそこそこ手間。
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対戦で強力な「メラゾーマ」や「いんせき」なども錬金での入手がかなり面倒。ラスボス(3戦目以降)を倒しまくった方が早い始末。
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仲間は極端に弱いものから、弾として飛ばすと相手の弾をキャッチする「スラまる」、戦闘能力と弾運びが高水準な「スラゾー」など強めのものまで存在するが、それでも選択肢は多いので他2点に比べるとまともなところ。
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セーブデータが1つしか作れない。
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前作ではセーブデータの保存できる数が2つ存在していたが、今作では1つに減ってしまった。最初から遊びたい場合はセーブデータを消すしかない。
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また、前作でも同じだったが、中断セーブが無いため、アクションステージ途中での中断が不可能。
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前作に存在したクリア後限定の高難度ダンジョンが存在しない。
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裏ボスに相当する敵も存在しないため、前作をクリアしたプレイヤーからしたらやや物足りないところがある。一応スライバとの最終決戦のようなクリア後限定のイベントは存在している。
総評
前作からの正統進化と言うよりも、「勇車バトル」という派生先を見つけての進化といったところ。
とはいえ低難易度なのは相変わらず。雰囲気ゲーの面もあり、何に価値を見出すかで評価がバラつきがちなので、安心して人に勧められるかどうかはやや心許ない。
勇車バトル独特のゲーム性をソフト単体では十分に堪能しにくい事、これがネックである。
クリア後などに難易度の高い対CPU戦を用意するか、全国を対象に通信対戦できる環境が整っていれば、本作は更なる盛り上がりを見せたかもしれない。
一緒に遊べる友人がいれば主な問題点の1つは解消され、強く尖ったデッキを作るモチベーションを維持できるだろう。
単にかわいいだけではないのだが、それを実感するまでにちょっとしたハードルのあるゲームである。
最終更新:2022年08月14日 21:35