蒼き狼と白き牝鹿 元朝秘史
【あおきおおかみとしろきめじか げんちょうひし】
ジャンル
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歴史シミュレーションゲーム
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対応機種
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PC-9801、PC-8801、X68000、FM TOWNS、MSX、 ファミリーコンピュータ、スーパーファミコン、 PCエンジン スーパーCD-ROM2、メガドライブ、 メガCD、プレイステーション、Windows |
発売・開発元
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光栄
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発売日
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【PC98/MSX】1992年 【FC/SFC/MD】1993年3月25日 【MCD】1993年9月24日 【PCE】1993年9月30日 【PS】1998年9月17日
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配信
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【Wii】2010年5月11日/800Wiiポイント 【WiiU】2015年7月22日/832円(税8%込) 【Steam】2017年6月28日/1,200円(税8%込)
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象) |
判定
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なし
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ポイント
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オルドのパワーアップ 気候や文化の概念の導入 細かい能力値の排除
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蒼き狼と白き牝鹿シリーズ 初代 / ジンギスカン / 元朝秘史 / IV
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コーエー歴史SLG作品
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概要
蒼き狼と白き牝鹿シリーズの3作目にあたる。今作では東西の文化や気候の差異といった地域ごとの差異が強調されている。
また、軍師に相当する政治顧問の導入、直轄地の廃止、『ランペルール』で導入された能力値のランク化(能力は数値ではなく、A~Eのランクで表示される)などが盛り込まれた。
評価点
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オルドの強化。
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シリーズの目玉、オルドは大きくパワーアップした。今回は后と一夜を過ごすために彼女を口説かなければならない。
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后にも好みや能力があり(ただしマスクデータ)、それに応じた口説き文句を選択する必要がある。
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口説き文句は「后へお世辞を言う」「自慢する」「愛をささやく」の三種類。さらにそれぞれのコマンドはさらに細分化されており、例えば「お世辞」も「美貌を褒める」「気丈さを褒める」「聡明さに驚く」などがある。
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最初は素っ気無い(?)グラフィックだったのが、交渉が進むと乗り気(?)なものに変わる。そしてオルド交渉が成功すると后の色っぽいグラフィックが拝める。R15的な要素すらないがなかなかセクシーである。
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ちなみにシリーズおなじみのラッチは……破壊力抜群である。
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全くの余談だが、海外版では「家族と過ごす」というコマンドになっているとか。
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興味があればどうぞ。くどいようだが、元からR15でさえないのであまり期待しすぎないこと。
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シナリオ面の強化。
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今回は前作のモンゴル編に相当するシナリオ1「モンゴル高原の統一」と世界編に相当するシナリオ2「チンギス・ハーンの雄飛」に加えて、フビライハーンの時代であるシナリオ3「元朝の成立(1271年スタート)」もある。
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前作では1206年以前にモンゴル編をクリアすると強制的に1206年にジャンプしたが、今回はクリアした年から始められる。また、移行時に世界編に連れて行く将軍(武将)を選択できるようになった。
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前作のモンゴル編はテムジン(チンギスハーン)のみプレイできたが、今回のシナリオ1は彼のライバルであったジャムカ(ジャダラン族)、トオリル・ハーン(ケレイト族)、ダヤン・ハーン(ナイマン族)でもプレイできるため、歴史シミュレーションの醍醐味であるIFシナリオをはじめから作れる。
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シナリオ1をクリアするとユーザーシナリオ「世界への道(1185年スタート)」が開放される。この年は源頼朝、サラディン、リチャード1世といった有名人が多く、かつ彼らでプレイできる。
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メガCD版とPS版は日本編とも言える「源平の争乱(1180年スタート)」がある(後述)。
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文化圏の導入。
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今作では日本・中国・蒙古・中央アジア・インド・イスラム・東欧・西欧の文化圏が導入されている。これは地域だけでなく、国王・将軍・后にも割り振られており、内政・軍事・人事に影響を与える。
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文化圏が離れている国王と后との間で生まれた子どもは一定の確率でスーパーキャラとして誕生する場合がある。
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気候区分の導入。
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気候は熱帯気候、乾燥気候、温暖湿潤気候、西岸海洋性気候、地中海性気候、温帯夏雨気候、冷帯湿潤気候、冷帯夏雨気候の八つである。それぞれの国の気候データはケッペンの気候区分によるアルファベット表記で表される。これによって、画一的な住民配分は非効率となり、気候ごとに産業人口を割り振る必要が出てきた。
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こうした文化圏と気候の導入によって、世界各地の特色がより強く反映されるようになっている。
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兵種の増加。
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前作では歩兵・弓兵・騎兵しかなかった。しかし、今回は「軽装歩兵」「重装歩兵」「槍歩兵」(以上、歩兵)、「短弓兵」「長弓兵」「弩弓兵」(以上、弓兵)、「騎士」「突撃騎兵」「槍騎兵」「象兵」(以上、騎兵)、さらに騎兵の機動力と高めの直接攻撃力と遠距離攻撃ができる弓騎兵「軽弓騎兵」「狩猟騎兵」「蒙古騎兵」「武士」、「投石機」「火砲兵」の攻城兵器まで登場する。
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これらはどこでも雇えるわけではなく、それぞれの文化にあった兵種しか雇えない。そのため、貴重かつ重要な兵種をどう保持するか、あるいは新しいものに変えていくのかを選択する必要がある。
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王子の能力が改善された。
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チンギスハーンの息子たちのように史実の王子たちの能力はかなり改善されている。また、新しく誕生する王子も両親の能力を受け継ぐため、前作のような悲惨な能力しかない子どもは生まれにくくなった。
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といっても、父親の能力が低いと息子の能力も高が知れているのだが。
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史実により近くなった。
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前作のように既に死亡している国王を無理矢理生かしているということはなく、ほぼ当時の国王が登場している。
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イギリスはアンジュー朝、フランスはカペー朝、日本は鎌倉幕府と歴史でよく見かける名称が用いられている。
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他国の国王が死亡しても、後継者が以前の国家・国土を引き継ぐため、前作に見られた架空の国家乱立ということはなくなった。
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仕方のないことだが、インドのようなその時代に統一国家が存在しない場合はやはり架空の国家に近い。
問題点
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前作の将軍候補(武将)の問題点がほとんど改善されていない。むしろ悪化している。
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前作では将軍候補は5人までとなっていたが、今作では8人+政治顧問となっている。一見、改善されているかのようだが…。
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戦闘時の各軍団(軍団は1~4つの部隊からなる)を国王と将軍候補が指揮する仕様のため、大軍を動かそうとすると大量の将軍候補が必要となる。最大5軍団動員できるが、国王(=プレイヤー)は第1軍団しか指揮できず、他の軍団は将軍候補が指揮する。つまり、戦闘によってはさらに4人将軍候補が必要となる場合もある。
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直轄地という概念がない。このため、支配地域に直接命令できず、将軍候補を派遣するという仕様のため、支配国を増やせば増やすほど将軍が不足する。
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一応、将軍が足りない場合には架空の将軍が抜擢されるのだが、これがカスばかり。能力値オールEはザラ。当然、内政にも軍事にも役に立たない。で、有能な将軍と交代させるためには人事コマンドを実行しなければならない(もちろん、体力=行動力は消費)という二度手間仕様。
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名前も東アジア以外ランダムな文字列に特定の語尾をつけたものである。特に中央アジアの架空武将の名前は適当な文字列のみで構成される。
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これらのため、将軍が増えたという実感はなく、むしろ中盤以降は前作以上に将軍不足に悩まされる。
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やはり血縁関係でない将軍は謀反を起こすことがある。後方で謀反を起こされたときにはCPUの自動戦闘とせざるをえないため、かなりストレスがたまる。
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戦争時にも将軍が指揮する軍団に対して、プレイヤーができることは大まかな方針だけ。軍団同士の戦闘はCPU任せなので、とんでもない被害を出すことも多い。部隊の雇用費はかなり高いので、部隊が壊滅すると財政危機に陥りかねない。
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オルドに力を入れすぎ。
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后を褒め、自分の力を誇示し、愛をささやく…比較的シンプルな前作と比べてボリュームは増えたのだが、オルド自身が重要コマンドで何度も行う必要のあるもののため、最初はともかく後の方になると作業感が漂う。倦怠期の夫婦関係を再現させたかったのだろうか。
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前作と違って、1度成功すれば懐妊するのだが、以上の点からとにかくめんどくさい。システムでオルド交渉シーンをカットできるのだが、そうすると成功したのかしなかったのか分からない。
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弓騎兵無双。
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いろいろな兵種が登場するが、機動力・攻撃力にすぐれ、遠距離攻撃もできる弓騎兵(軽弓騎兵・狩猟騎兵・蒙古騎兵・武士)が結局最も強い。上手く指揮すれば、ノーダメージで敵軍団を壊滅させられる。他の兵種は頭数あわせか第1軍団の露払いでしかない。
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というのも、このゲームでは戦闘に入ると移動と攻撃で同じ枠の行動力を使用する。このシステムにより、移動力が高い部隊=攻撃回数の多い部隊という事になる。直接攻撃は攻守お互いに被害がでるため必ずしも有利とはいえないが、前述の弓騎兵系統だと、高い機動力を生かして多数の間接攻撃を敵に一方的に叩きこむ事ができるため、矢弾の補給さえ万全ならば、圧倒的に有利となる。
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さらに突き詰めると機動力最大、全ての攻撃力が平均以上の蒙古騎兵が最強というオチに。
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だが蒙古騎兵は史実だと地上戦は最強であり、史実通りという意見がある。
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数値を廃したことによる弊害。
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ただでさえ、歴史シミュレーションは人物の能力値が話題になりがちだが、大まかにランク化されたことで「なんで○○と××の政治能力が同じなんだ?」という事態がさらに悪化。
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兵種も能力がランク化されているため、攻城兵器である投石機と軽弓騎兵の遠距離攻撃力と射程が全く同じという妙な事態となっている。これが弓騎兵無双を招く一因ともなっている。
総評
焦点の当てられることの少ない時代をテーマとしたことは果敢な挑戦として評価できる。
特にフビライハーンの時代と言えば、三国時代(中国)や戦国時代(日本)と比べてマイナーでしかない。
だが、そこに焦点を当てたのは(良くも悪くも)珍しく、世界各国の軍団が入り混じる多国籍な雰囲気も悪くない。
しかし、システム周りがそれらの長所を押しつぶしてしまっている。人事・能力値などで『信長の野望』や『三國志』シリーズと差別化を図ろうと試みたのだろうが、裏目に出てしまった惜しい作品だった。
この後の『チンギスハーン 蒼き狼と白き牝鹿IV』では『信長の野望 烈風伝』に近い作品となったことからも今作のシステムは失敗だったとされたのではないだろうか。
批判点が多くなったが、別に悪い作品ではないことは、Win版がプレミア化していることやPC版発売時のほぼ全てのコンシューマ機に移植されたことが示している。
『チンギス・ハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV』が良くも悪くも「普通のゲーム」になった一方で、今作は(これまた)良くも悪くも『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズらしさを強く醸し出していると言えるだろう。
移植版
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コンシューマ移植版では以下のような変更点と追加要素がある。
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オルドの際のグラフィックはオルド交渉成功時の時だけ表示される。ただし、PS版はそれすらカットされた。
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このため、PS版に血涙を流した紳士もいるとかいないとか。
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メガCD版とPS版では「源平の争乱」が追加され、プレイヤーに源頼朝(清和源氏)、平清盛(桓武平氏)、藤原秀衡(奥州藤原氏)、木曾義仲(木曾源氏)が追加された。もちろん、后(候補)に巴御前や静御前が登場する。
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ちなみにこのシナリオは同社から発売されたSLG『源平合戦』のシナリオ1「頼朝、鎌倉に拠を構える」を元に当作のシステムにあわせた上で簡略化されたもの。
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「世界への道」も最初から開放されている。
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戦闘時は真横視点の2D戦闘。好みは分かれるところだが、この方がプレイしやすい。
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命令コマンドや国パラメーターの項目表記が、漢字ではなくアイコン。覚えればどうということはないだろうが、分かりにくいのは確か。
最終更新:2022年01月10日 20:40