フロントミッション フォース
【ふろんとみっしょんふぉーす】
ジャンル
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ドラマティックシミュレーションRPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元・開発元
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スクウェア・エニックス
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発売日
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2003年12月18日
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価格
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6,800円(税込)
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廉価版
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アルティメットヒッツ 2006年5月11日/2,940円
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判定
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なし
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ポイント
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2人の主人公による入れ替え制シナリオ リンクシステム・特殊BPの本格導入 『FM』オンラインの叩き台的な習作
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フロントミッションシリーズ
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ストーリー
2096年、E.C.ドイツ軍の基地が襲撃されたことを発端とし、E.C.とUSNの全面戦争の危機にまで発展。
一方、同時期にU.S.N.ベネズエラ州が独立宣言をし、中央政府は鎮圧部隊を派遣。紛争へと突入する。
一見、無関係とも取れる2つの事件が、実は同じ陰謀から引き起こされたものであった…。
オープニングムービー
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夜間の、とあるドイツ軍基地からオープニングムービーが始まる。吹雪と暗闇のなかで、基地に向けて進軍する謎のWAP部隊。ドイツ軍は反撃も虚しく壊滅させられてしまう。
その映像はシリーズ初のプレイステーション2作品であるために、このムービーがユーザーに与えた衝撃は大きかった。
引き続き、エルザ編のデュランダルの入隊オリエンテーションが始まるが、フルボイスであり、軽妙な会話のやりとりもあって没入感を際立たせる。
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南米ベネズエラ。エルザ編とは対極的で、陽気な草原からダリル編は始まる。
ダリルは親友のビリー、チェイファーと共に、退屈な哨戒任務の途中で輸送機の墜落を目撃。現場に駆け付けた彼らは、輸送機から大量の金塊を発見する。
草原に墜落した輸送機、乗員は死亡、大量の金塊。彼らが行動を起こすには充分すぎるキッカケであった。
概要
ロボット兵器「ヴァンツァー」のカスタム性とミリタリーテイストあふれる世界観・シナリオが魅力の、スクウェア・エニックスの人気SF・シミュレーションRPGシリーズ『フロントミッション』(以下FM)のナンバリングタイトル第4作。
FMシリーズ再始動のため2003年に立ち上げられた「Front Mission Project」の第2弾でシリーズ初のPS2向けタイトルでもある。
なお、『FM』シリーズ内の時系列的には『1st』と『2nd』の中間に位置する。
特徴
ゲームシステム
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リンクシステム
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本作最大の特徴にもなっている新システム。前作『3rd』において部分的に存在していた「複数機体による同時攻撃」を主要ゲームシステムとして本格的に採用したもの。出撃前に設定した「リンク」により最大4体4による乱戦が展開される。
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リンクは攻撃時に発動する「攻撃リンク」と防御時に発動する「防御リンク」をそれぞれ設定可能。
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特殊バックパック(BP)による機体の役割の明確化
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過去作ではアイテム載積や出力アップ程度しかなかったが、本作では様々な機能を持つものが新たに登場し、攻撃以外の面でも機体の差別化が可能になった。
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回復用の「リペア」・ミサイル誘導用の「センサー」・機能障害を与える「EMP」・支援要請を行う「ラジオ」・高度地形へ登れる「ジェット」が新登場。
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特にリペアBP装備機は、リンク導入の関係で被弾率が増したこともあって部隊に最低1機は必須である。
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またEMPBPとラジオBPは、防御リンクに設定することでミサイルを完全回避できる「アンチロック」(EMP)と撃墜ユニットを復帰させられる「サルベージ」(ラジオ)を発動させることが可能。
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スキル
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本作のスキルは「アビリティ」というカテゴリに収められ「EP」というリソースによって購入する方式を採用している。
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過去作では強化のためにレベルアップや戦闘を重ねることが必要だった武器熟練度なども、本作ではEPさえあればレベルに関係なく購入可能。
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さらに「コンピューターショップ」というメニューを開けばキャラごとの機体アップデートにないアビリティも購入できるため、本来の運用と異なる幅広いキャラクター育成も可能。
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スキルは購入しただけでは意味がなく「スキルスロット」にセットすることで初めて効果を発揮する。スロットは有限であるためステージと機体セットアップに応じた付け替えが重要。
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武器
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射程・攻撃属性については『3』をほぼ踏襲し、加えて『2』にあったハンドウェポンの弾数制限制を再び採用。
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格闘武器は機体出力に対して機体重量を軽くすることで、その差が与ダメージとして加算される仕様となり、AP消費の少なさもあってリンク戦闘における重要なダメージ源となっている。
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その他バトル面の仕様変更
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『3rd』からの射線システムや高低差補正に加え、機体の向きによる命中率補正が追加。これにより正面から攻撃を当てにくくなっており、リンク戦闘の重要性に一役買っている。
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戦闘マップに昼夜・天候の概念を導入。これらは武器やBPの性能に影響を与え、またターン経過によっても変化する。
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好評だったシミュレータも続けて採用。条件を満たすことで強力な武器・パーツが入手できる隠しシミュレータが出現する。
シナリオ・キャラクター
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2人の主人公による同時進行シナリオ
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ナンバリング作では初、そして唯一となる複数主人公制となっており、女性主人公・エルザと男性主人公・ダリルのパートが1つのシナリオでザッピング方式で入れ替わり展開される。それぞれの物語はリンクしていて、途中でお互いに通信するやり取りもあり、最終的には合流する。
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物語の舞台もエルザ編は欧州、ダリル編は南米とそれぞれ正規FMでは初めて焦点に当てられた地になっている点も特徴である。また『1ST』でも黒幕的存在だった国家・ザーフトラ共和国が両パートの事件で暗躍する存在として本格的に掘り下げられている。
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一部システム面も各主人公パートごとに異なるものとなっており、ミサイル・EMPBP・センサーBP・ラジオBPが使用できるのはエルザ編のみ。
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ダリル編ではそれらが使用できない代わりにゲリラメンバーを傭兵ユニットとして追加出撃させることが可能。またロケットが使用できるのもダリル編のみ。
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キャラクターデザインなど
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キャラクターデザインはそれまで外注デザイナーではなくスクエニ社内デザイナーで過去には『Unlimited:SaGa』などを手掛けた直良有祐を起用。
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シリーズ初となるキャラクターボイスを採用。外国人キャストによるオール英語ボイスである。地方特有の訛りまで表現する徹底ぶり。
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しかしながらほとんどの日本人(特に若年層)にはさっぱり理解できない点でもある。
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語学が堪能な人にとっては、訛りが不自然にキツすぎるという指摘もある。
その他
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音楽担当は岩崎秀則を起用。元サウンドマニピュレータという技術職上がりの作曲家であり本作がメインコンポーザデビュー作となった。
評価点
システム
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リンクシステムや特殊BPの導入により、ユニット毎により的確な運用(配置やAP管理など)が求められるようになりSLGとしての戦略性が向上した。
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リンク導入により、過去作では使い辛い武器であったライフル・バズーカ系武器が援護用武器として有用なものとなった。
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当然のごとく敵もリンクを使用してくるため、単騎突入は本作では自殺行為に等しい。
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EMPBPによりそれまでの作品ではランダム性の強いスキルか消費アイテムによる状態異常の付与を能動的・断続的に発生させられるようになった。
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スキルが購入制となったため、EP次第で様々な性能のキャラを作れる。全クリア後の2周目には、EPの持越しが可能であるため、育成自由度は歴代でもトップクラス。
シナリオ
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男性主人公・ダリルのストーリーは「辺境左遷に腐っていた不良軍人たちが事件を通じて熱い心を取り戻していく」という物語を時に軽妙に、時にシリアスに描ききっており評価が高い。
演出
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スクエニのお家芸であるプリレンダムービーは今回も高クオリティ。
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その他雨天マップでは画面に水滴が垂れるなど演出面の拘りは歴代作品でも随一と評されている。
おまけ要素
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シリーズ恒例の隠しパーツも用意されている。数量はシリーズ通じて同程度。中には機体サイズが大きい(ミノタウロス)ものがあり、リアル編重なデザインをあえて崩すこともできる。
賛否両論点
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本作では機体出力が過去作より抑え目になっており、ハンドウェポン・ショルダーウェポンを一通り装備させた所謂「万能機」を作りづらくなっている。
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BP装備による特化運用を促すための調整とも取れる。シミュレータで得られる高出力の隠し機体で一応解消が可能。
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ハンドウェポン弾数制化もリアルさを評価される一方で、頻繁に攻撃を行うリンクシステムとは噛み合っていないとの評価も。
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従来のゲーム性を好むファンにはリンクシステム自体に対して「リンク攻撃前提で敵が硬くなり戦闘に爽快感がなくなった」として難色を示す向きも少なくない。しかしながら、リンクが繋がり硬い敵を短時間で破壊できる爽快感も併せ持つ。
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直良有祐による独特の濃さを持ったキャラクターデザインも好みが分かれている。
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岩崎秀則によるBGMも歴代作曲家と比較してメロディーを主張させない雰囲気重視の作風で「映画的で臨場感が増した」「無個性で耳に残らない」と評価が分かれている。
問題点
システム
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全体的に文字が小さくて読みにくい。
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『1ST』を意識したインターフェースとのことだが、不親切な結果に終わったため、『5』では『3』のような表示に変わった。
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目玉であるリンクシステムの設定が煩雑。専用メニューを開き、攻撃・防御と分けて細く設定する必要がある。
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特定の条件を満たすことで入手できる隠し武器・パーツも、入手次点で「超強力」とは言い難く、いまひとつ恩恵を受けられない。
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周回プレイで引き継げるのは未使用のEPのみ。スキルを覚えさせるにはもう一度稼がなければならない。
シナリオ
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ダリル編は腐っていた不良軍人が自分を取り戻すという熱さがシナリオを高評価に導く一方、エルザ編のストーリーはヨーロッパの国々が揉めてトラブルを起こすのがシナリオの進め方と政治描写が稚拙であり、それらを1つの研究機関が首を突っ込んで対処する格好になるなど正直いまいち。
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また、2人の主人公のシナリオが同時進行で描かれるとしているが、最序盤以外は通信で会話を交わす程度でほとんど絡みが無く、2つのシナリオを同時進行で流しているに過ぎない状況になっている。
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ただダリル編もリンク以外は旧作に近いシステムであるため、BP活用など新システムを楽しむならエルザ編、シナリオを楽しむならダリル編と割りきって遊ぶべきか。
その他
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『1st』『2nd』では戦闘シーンの演出、『3rd』ではマップでの移動手段としても登場した「ヴァンツァーのローラーダッシュ」だが、今作ではデモムービーでの登場のみに留まる。
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デモムービーでは「敵の攻撃を掻い潜りながらローラーダッシュで接近し、急ターンとともにパイルバンカー攻撃を叩き込む」というシーンがあるが、ゲーム中のヴァンツァーは戦闘でもイベントでもドタドタと通常の歩行・走行しかしない。次作である『5』では、ローラーダッシュの演出も増えている。
総評
PS2初作品だけあって、過去作からのグラフィックの進化はかなり大きい。
シリーズ再始動の一作として意欲的なシステムを多数導入するも、一方で未整理だったりちぐはぐさが目立つシナリオなど全体的には習作的印象が強い一作となった。
しかし、ながら本作における試みが一定評価を得たことも確かで、特にリンクシステムは続くナンバリング作品である『フロントミッション フィフス ~スカーズ・オブ・ザ・ウォー~』により洗練されて継承される事となる。
余談
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ダリル編のシナリオの内容が1999年のアメリカ映画『スリー・キングス』に類似しているとの指摘がネット上で散見されている。
最終更新:2024年05月13日 15:30