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本項では『SwordQuest(邦題:スウォード・クエスト)シリーズ』のうち、実際に発売された全作を取り扱います。
SwordQuest Earthworld/Fireworld/Waterworld
【すうぉーどくえすと あーすわーるど/ふぁいやーわーるど/うぉーたーわーるど】
スウォード・クエスト 地の世界/火の世界
【すうぉーどくえすと ちのせかい/ひのせかい】
ジャンル
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謎解きアドベンチャー
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対応機種
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ATARI 2800
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発売元
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アタリ
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発売日
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北米
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Earthworld
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1982年10月
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Fireworld
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1983年2月
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Waterworld
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日本
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地の世界
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1982年
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火の世界
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1983年
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備考
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『Waterworld』は日本未発売
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判定
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全作
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なし
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ポイント
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本物の宝探しゲーム ゲーム単体ではショボイだけのミニゲームセット 漫画もついてお得と思ったらそれもゲームの一部
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概要
1982年に始まった「スウォード・クエストキャンペーン」のソフト。ゲームと説明書を駆使して謎を解くと最終的に作り物ではない本物のお宝が賞品として手に入るという、あらゆる意味で前代未聞なキャンペーンのもと発売された。
ゲームには、コミックもついたおまけ盛りだくさんな構成。…と思いきや、コミックそのものがゲームを進めるための重要要素として機能する。
ゲームとしての前身は、映画『レディ・プレイヤー1』にも登場したATARI 2600用ソフト『Adventure』(1980年)である。『Adventure』では隠された1ピクセルの灰色ドットに触れると開発者の名前が表示されるイースターエッグがあった。これはしばしばビデオゲームにおける史上初のイースターエッグとも言われる。その後、話題を集めたイースタエッグの要素をさらに拡張した続編が企画されたのだが、このアイデアは次第にゲームと現実の両方で手がかりを探す謎解きゲームというものへと発展し、本作の開発とあまりにも壮大なキャンペーンにつながっていく。
付属のコミックはDCコミックスが手掛けたものである。原作ジェリー・コンウェイ、ロイ・トーマス、作画ジョージ・ペレス、ディック・ジョルダーノ。いずれもDCコミックスの大物である。
ストーリー
偉大な戦士ターにはトーとタルラという子供がいた。しかしターとその妻は凶悪王ティラヌスと、その手下の魔法使いコンジュローに殺されてしまう。トーとタルラは復讐のため、究極魔法剣(Sword of Ultimate Sorcery)を探す旅に出た。
貰える宝
今作『SwordQuestシリーズ』は、本物のお宝を獲得することが可能なのが最大の特徴である。
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もらえる宝は
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『Earthworld(土の世界)』ではタリスマン
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『Fireworld(炎の世界)』では聖杯
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『Waterworld(水の世界)では王冠
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『Airworld(空気の世界)』では賢者の石。
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の4種類。それぞれ25,000ドル(当時のレートで約700万円)の価値があり、さらに最終決戦にて手に入る剣は50,000ドル(当時のレートで約1,400万円)の価値という、今では考えられないほどのバブルっぷりである。
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ゲームを遊んでヒントを探り、それらをアタリに送る。正解者は決勝戦のためにアタリ本社に呼ばれ、そこでカスタム調整されたソフトを一番にクリアすることで賞品が手に入る。さらに各ゲームの優勝者4名にて最終決戦が行われ、勝者には50,000ドルの剣が与えられる。
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決勝出場者以外にも、答えを提出したプレイヤー全員に対して正答数に応じた称号が贈られた。例えば『Earthworld』の場合、全問正解ならSupreme Sage of Sorcery、3問ないし4問正解ならWise Warrior、1問ないし2問正解ならBrave Venturer。
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1983年5月に行われた『Earthworld』決勝戦ではStephen Bell氏が、1984年1月に行われた『Fireworld』決勝戦ではMichael Rideout氏がそれぞれ優勝し、タリスマンと聖杯を受け取っている。
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ただし、その後キャンペーン自体がアタリショックの影響により中止され、残りの宝は配られずに終わっている。また、『Waterworld』はAtari Club会員向けの数量限定販売で、『Airworld』は発売されなかった。
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法的な責任があったために『Waterworld』の決勝戦自体は開催されたようだが、ほぼ秘密裏の実施だったので結果や詳細は不明。優勝者には確かに王冠が渡されたとも、王冠ではなく代わりの賞金が渡されのだとも言われている。
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キャンペーン中止を受け、『Waterworld』決勝戦出場者に対して2000ドル、最終決戦出場者となる『Earthworld』および『Fireworld』優勝者に対して15,000ドルの補償金が支払われたという。また、2人の優勝者にはAtari 7800も贈られたという。
特徴とシステム
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付属マニュアルとコミックを片手に、プレイしながらヒントを見つけ出し、最終的に実在する5万ドル相当の究極魔法剣を手に入れるのが目的である。まさに本物の宝探し。
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究極魔法剣を手に入れるまで。
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ゲームには複数の部屋があり、それぞれが意味を持って割り当てられている。部屋には四つの道があり、そこから隣の部屋に移れる。
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部屋を移動していると、たまにアイテムのある部屋に入ることがある。そしてアイテムを取ったり置いたりする事ができる。このアイテムをどの部屋に置くかが鍵。アイテムには機能があり、持っていると効果を出す。これらは攻略のため持つ必要がある場合もあるので、その時は部屋に置いていくわけにはいかない。
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ここでコミックの内容がヒントになる。例えば、『Earthworld』のコミックでは雄牛タウルスを短剣で突き刺し、その後に鍵を奪うシーンがあるのだが、これはゲーム内の牡牛座の部屋に鍵と短剣を置くことで手がかりが表示されることを示唆しているのである。
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移動してるとミニゲームが始まることがある。クリアしても何ももらえないが、クリアしないと先に進めない。
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部屋とアイテムのパターンが合うと、虹色に画面が輝き、数字が提示される。この2つの数字は、実は付属コミックのページとコマ数を示しており、それが指示する場所にキーワードが隠されている。プレイヤーは暫く画面から離れてコミックと睨めっこしなければならない。
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こうして10個ほどのキーワードを集め、それを一つの文章とする。しかし実はキーワードの半分程度はダミーであり、正しいものを選ばないといけない。そのヒントはマニュアルにある。しかも謎解きのようなヒントであり、今度はマニュアルと睨めっこ。
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そして正しいと思うキーワードをメーカー、ATARIに送付。そして優秀者はATARIに呼ばれ、新規に調整された本作で決戦である。その優勝者が各ゲームの宝を手に入れられるのだ。だが究極魔法剣への道はまだ先だ。
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やがて四つの宝の保持者が決まると、彼らで決勝戦を行う。その勝者こそが究極魔法剣を手に入れられるのだ。
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が、シリーズはATARIの業績悪化から中止となったので、究極魔法剣を手に入れたものは誰もいなかった。
評価点
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「ゲーム上ではなく現実に宝を手に入れられる」というぶっ飛んだ企画。あたかもゲームと現実世界の境界を飛び越えるかのような驚愕のスケール感に、当時は胸躍らせたプレイヤーも少なくなかったことだろう。
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ゲームパッケージには総額15万ドルの宝が強くアピールされていた。
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各ゲームはそれぞれ神話にならった部屋の作りをしており(Earthworldは12宮星座、Fireworldは生命の樹、Waterworldはチャクラを元にしている)、世界観構築として芸が細かい。
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当時のゲームはハード性能の問題もあり単体で世界観を伝える方法が限られていたが、本シリーズでは付属コミックがこれを補強している。付属コミックは大物漫画家を招いて描かれた豪華なもので、読み物としてのボリュームも十分。
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部屋に入る時のドアにズームインするアニメーションは割と滑らかで、ちょっとした迫力。
問題点
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ゲーム単体としては単なるパズルとミニゲームのセットで、内容はそれほど豪華なものではない。
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ゲーム機本体はファミコンよりも低性能のAtari2600なので、画質もサウンドもかなりチープ。
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時間制限のある大会を催すことが最初から決まっていたので、ゲームとしての単純さはある程度は意図されたものと思われる。
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キーワードを探すだけならコミックの全てのコマを慎重に調べればよく、極論すれば必ずしも最後までゲームをプレイする必要はない。
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50ページほどのコミックの全てのコマを調べるのは骨が折れるし、ダミーの単語を排除するには謎解きをする必要がある。それでも『Fireworld』優勝者のRideout氏によれば、ゲーム内での手がかり探しを途中で断念し虱潰しにコミックを調べてキーワードを見つけた決勝出場者も少なからずいたようである。
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企画が途中で打ち切られ、最終作がリリースされなかった。企画が主体であった本作にとっては致命的なことである。
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当然コミックも打ち切り。物語は尻切れトンボに。
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企画部分を除けば、ゲームとしてはそれほど豪華なものではない。当時の雰囲気に思いを馳せるか、あるいはビデオゲームの歴史の研究の一環としては触れる意味があるかも知れないが、今となってはそれ以外で敢えて遊ぶ価値を見出すのは難しい。
総評
良くも悪くもキャンペーンありきのゲームであり、肝心のゲームとしての出来そのものは褒められた物ではなく、内容もひたすら薄い。とはいえ本作以前もゲームクリアに賞金やプレゼントをかけたゲームもそれなりにあったが、ここまで太っ腹かつ壮大なプロジェクトは無かった。
現在では高額な賞金が懸かる形式としてeスポーツが定着しつつあるが、それはあくまでも既存タイトルを競技種目とみなして行われるものである。だが本作のように、ゲームの世界観それ自体を現実世界とリンクさせて本物の財宝を争奪するキャンペーンが企画されることはまず無いと思われる。
キャンペーンは途中で終わってしまっているものの、このソフトそのものが「宝」と呼べるほどの希少価値をもつので、アタリマニアを自認するなら今から本作を探してもいいかもしれない。特に『Waterworld』は数量限定販売なので、よほど運が良くない限りは入手できないだろう。
余談
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お宝の行方について。
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Bell氏は優勝直後のインタビューでタリスマンをどうするかと問われたとき、「何も決めてない。まさか勝てるとは思わなかったから。(タリスマンを売って)車を買うかもな。今まで持ったことがないんだ」と語っていた。大会後の消息は不詳だが、純金の円盤部分を換金し、取り外した小剣、ダイヤモンド、誕生石のみを保管していたと伝わる。また、これらも後に売却されたようである。
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なお、換金後にBell氏が受け取ったのは15,000ドルほどだったと言われている。これは価値の高い宝石類を取り外していたことに加え、当時は金価格が下落し続けていたためである。
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一方、Rideout氏は2017年に取材を受けた時点でもそのままの形で聖杯を保管していた。このときの取材では「売りたい衝動に駆られることもあるが、どうしてもカネが必要にでもならない限り、売るつもりはない」とも語っていた。
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優勝当時にRideout氏が受け取った納税関連の書類によれば、聖杯の価値は21,600ドルあるいは22,600ドル程度とされていたという。恐らく製造時点では確かに25,000ドルの価値があったのだが、こちらも金価格が下落し続けていた影響を受けたものと思われる。
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プレイヤーに配られなかった残り3つのお宝の行方は不明。キャンペーン中止直後に溶かされ売却された、ATARIを買収したジャック・トラミエル氏が所有していた、どこかのコレクターの宝物庫に収まっている……等々、都市伝説として様々に語られてきた。
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トラミエル氏が所有していたという説は、彼の邸宅に究極魔法剣が飾られていたのを見たという噂が当時のアタリ社員の間でまことしやかに語られていたことに由来する。しかし、実際にはキャンペーン中止直後に決勝進出者への補償などに充てるために換金され、既に現存していない可能性が最も高いと言われている。
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ソフトと付属の書籍がひとつのゲーム性を持っているという点で言えば、2010年末にニンテンドーDSにて発売された『二ノ国 漆黒の魔導士』のご先祖様といえる。
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「ゲーム空間と現実世界を股にかけた壮大な宝探し」という発想はSF小説『ゲームウォーズ』のストーリーの元ネタとなり、後に『レディ・プレイヤー1』(監督:スティーブン・スピルバーグ)として映画化もされた。
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Steamで発売された『Atari Vault』や、復刻タイトル『Atari Flashback』シリーズ、ATARI創業50周年記念オムニバスの『Atari 50: The Anniversary Celebration』に三部作が全て収録されており、環境さえ許せばプレイ自体は容易である。ただし肝心のマニュアルとコミックがソフト内ギャラリーに収録された形式のため、プレイしながらの参照はそのままでは実質不可能なのが難点。
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なお、『ATARI 50』には6本の「新作」が収録されているが、その中にはかつてリリースされなかった『AirWorld』も含まれている。
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2017年、アメリカのコミック出版社Dynamite Entertainmentは、本作を題材とした新しいコミックシリーズを発表した。
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余命宣告を受けた中年男性ピーター・ケースは、ひょんなことから少年の頃に究極魔法剣を求めて熱中していた本作のことを思い出す。そして謎めいた人物の誘いを受けたケースは、かつて共に本作を遊んだ仲間たちを集め、今なお博物館に密かに眠るという究極魔法剣を手に入れるための最後の冒険に出る……という物語。
最終更新:2025年01月19日 08:58