ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ 不思議のダンジョン
【ざ ないとめあ おぶ どるあーが ふしぎのだんじょん】
ジャンル
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ローグライク
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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アリカ
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開発元
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マトリックス ナムコ(監修) チュンソフト(開発協力)
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発売日
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2004年7月29日
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定価
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6,980円(税別)
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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判定
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スルメゲー
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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「不思議のダンジョン」らしくない 本編より先を目指すとバランスが不安定に レベルを上げると不利になる
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不思議のダンジョンシリーズ
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バビロニアンキャッスルサーガシリーズ
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概要
1984年、アーケードに登場したアクションRPG『ドルアーガの塔』。
手強い敵配置と困難な謎解きが各フロアに敷き詰められた全60階層のダンジョン(塔)を攻略していくという内容だった。
本作は大胆にもジャンルを変更し、『ドルアーガの塔』のシステムをベースにチュンソフトの『不思議のダンジョンシリーズ』風のシステムを足すことで、良くも悪くも非常に尖ったゲームに仕上がっている。
パッケージイラストおよびキャクターデザインは、漫画家でありイラストレーターでもある岡崎武士が担当。
時系列上は原作シリーズ第3作目『イシターの復活』の後にあたり、最終作『ザ・ブルークリスタルロッド』のパラレル的なストーリーが展開する。
なお、『ドルアーガの塔』の開発者である遠藤雅伸は、自分(とゲームスタジオ)が製作に関わっていない作品は本編と直接の関連性は無いと定めているため、本作も本編と一切関連のない外伝作となっている。
ストーリー
ギルガメスがドルアーガを打倒してから3年後。
バビリム王国は復興し、ギルガメスの戴冠式とギルガメスとカイの結婚式が翌日に迫った日、
カイが魔物達を率いるスカルドと名乗る女魔導師にさらわれてしまう。
ギルガメスはスカルドを打倒するものの、カイが突如として消えてしまうばかりか
スカルドのティアラはカイのティアラに瓜二つだった。スカルドの正体とバビリム王国の未来を知った時、
ギルガメスは真のブルークリスタルロッドとカイを取り戻し、ドルアーガを完全に滅ぼすために
イシターの力を借り、自分の精神を過去のドルアーガの塔へ飛ばす。
(wikipediaより)
基本システム
主に原作である『ドルアーガの塔』のシステムをベースにしたものが多い。
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ほとんどのダンジョンは『ドルアーガの塔』と同様に構造固定。
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あらかじめ練られた敵・トラップ・アイテムの配置に対し、どのように攻略していくかはプレイヤーの裁量に委ねられる。
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到達したばかりで主人公が低レベルでもテクニックを駆使すれば進行できるし、じっくりレベルを上げ、装備品を鍛えてから突破するのも自由。
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主人公のレベルは引き継ぎ制。
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ただし、拠点である町で受けられる「依頼」をこなしている最中はレベルと装備が初期化され、いわゆる「縛りプレイ」的な環境でお題に挑む。
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装備カテゴリは武器・盾・兜・鎧・小手・靴と多め。
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未鑑定品は装備できない。鑑定は町でしかできないので、ダンジョン内で装備を変更するには鑑定済みの装備を持ち込む必要がある。
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各装備には「銘」を入れられる。
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有料で付けられる装備の数にも限りがあるが、銘を付けておくとダンジョンで力尽きても装備を失わずに済む。
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装備は主に「合成」で強化していく。合成回数が15回を超えるとアビリティの引き継ぎができるようになる。
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各フロアには「鍵」が落ちていたり隠されていたりし、これを拾わないと先のフロアには進行できない。
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また、一度突破したフロアにもう一度来ると、鍵を使わず扉を壊して進むことで高難度フロア「アナザーダンジョン」に行ける。
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こちらはフロア構造が入るたびにランダム生成される。アイテムは落ちていないが、敵からのドロップ率が格段に跳ね上がり、レアアイテムも入手しやすくなる。
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敵が普通のフロアより大幅に強化されている上、帰還アイテムの「フェザー」も無効化されてしまうという死と隣り合わせの一攫千金コースとなっている。
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各フロアには「銀の宝箱」「金の宝箱」も存在する。
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いずれもなんらかの条件を満たすと出現する。銀の宝箱を取得すると、金の宝箱が取得できるようになる。やり込み要素のようなもの。
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出現条件は各フロアスタート時に「女神イシターのお告げ」として曖昧ながらヒントがもらえる。この点は原作よりも親切。
戦闘関連システム
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戦闘システムはもちろんローグライク方式で、「こちらが何か一回行動を入力すると、敵全員も何か一回だけ行動する」というシステムのもと、多数の敵と戦っていく。
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また、本作には「速さ」というファクターも加わっている。
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速さの詳細
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主人公には「移動速度」と「攻撃速度」が設定されており、敵にも同様に各速度が設定されている。
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こちらの速さが敵に劣っている場合は、なんとこちらの行動がすぐには行われず、敵が行動したあとに、プレイヤーの行動が発生する。例えば…
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【速い敵に隣接している状態】で、その敵へ攻撃しようとすると、敵から先制攻撃を食らう。従来の不思議のダンジョンシリーズではあり得ない光景である。
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【速い敵と1マス離れている状態】で、敵の方向へ攻撃を素振りすれば、それより敵のほうが早く動き距離を詰めてくれるので、素振りのはずの攻撃が当たる。
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逆もしかり。主人公より遅い相手には隣接状態で先手を取れるが、離れていると今度は主人公の攻撃が空振った後に近付いて来るので攻撃が入らない。これは従来作通りの光景だが。
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本作は敵の攻撃力が苛烈に設定されており、うっかり先制を許すと一気に不利となるため、速さの管理は死活問題である。
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主人公の速度は、装備品の「重量」に依存する。強力な装備ほど重いため、装備の選定が悩ましい。
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ちなみに敵との速度差は、敵の「影の色」で分かる。
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青なら自分より遅く赤なら速い。気づかれていない場合影そのものがないので、察知されているか否かの目安にもなる。
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敵には「視野角」という概念がある。これにより主人公を察知してくる。
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「視覚」で確認する魔物は、視覚内なら遠くの主人公さえ察知するが、背を向けていて視覚外だったりすると、こちらが真後ろまで近づいても気付かない。
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「感覚」で確認する魔物は、距離を離せば気付かれないが、近づくと背後からでも気付かれる。このタイプには遠距離攻撃が有効。
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ダンジョン内には高低差がある。
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高いところから低い場所を攻撃するとダメージが上昇し、逆もしかり。移動時にも高低差でいくらかの制限がかかる。
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高所からうまく敵の背後をとって攻撃すれば大ダメージが見込める。
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アビリティ
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各武器に様々なアビリティが設定されており、これを活用することで戦闘は楽になる。
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一度使ったアビリティは一定時間「ブースト」状態になる。この間そのアビリティの消費APは増加するが、同時に効果も高まる。連続で使えると有効。
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「女神イシターの加護」
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真っ暗なダンジョン内でも主人公の周囲が明るいことについて、「女神様による加護」という理由付けがされている。
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しかし時間の経過で加護は薄れ段々暗くなっていき、戦闘はもちろんのこと探索もできなくなる。
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そこでアイテムを女神様に「捧げる」ことで加護を取り戻せる。捧げられるアイテムに制限はない。
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この要素が、『不思議のダンジョンシリーズ』お馴染みの「満腹度」の代わりになっている。
賛否両論点
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ローグライクのシステムを一部採用しつつ、他に類を見ないオリジナル要素も多く盛り込んだ内容になっているのだが、システムのあらましを読めばわかる通り、ローグライクの根本やそれらを引き継いだ不思議のダンジョンシリーズの作風から大きくかけ離れた部分が目立つ。
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そもそも原作はアクションRPGであるためローグライクの要素を入れた時点で全く別のゲームになってしまうのは明白である。
が、更に不思議のダンジョンシリーズともまるで違ったゲームに仕上がっているので、シリーズ経験者含め慣れるのに誰もが苦労する。
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『ドルアーガ』風味を残しつつ「探索中に力尽きると、銘の入った装備以外はロストする」というシビアなところはしっかり不思議のダンジョンなので難易度が高め。
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ぱっと見だと本作は「構造固定のダンジョンをレベル引き継ぎ式でクリアしていく」というものなので、この時点で評価が分かれる。
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レベル引き継ぎ式と言えば『チョコボの不思議なダンジョン』や『ドラゴンクエスト・キャラクターズ トルネコの大冒険3 ~不思議のダンジョン~』といった前例があるが、どちらも大きな賛否を呼んだ作品であるものの、前者は「他社のゲームを土台にした版権ものであり、従来作とはターゲットも違う」として、現在では別系統として評価されている作品である。
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本作の場合、『不思議なダンジョン』ではなく本家筋の『不思議のダンジョン』とそのまま名乗ったため、本家同様のシステムの基礎をそのまま踏襲しているとユーザーに思われていたことも賛否両論に繋がった。
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独特な満腹度システムである「イシターの加護」だが、加護全快の状態でもダンジョンが相当暗い。
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この暗さはゲームのイメージにも浸透してくるほどである。
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画面端の部分はほぼ常に暗く、普通の不思議のダンジョンに例えると全ての部分が通路扱いということである。
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魔物の「視野」という概念に合わせた仕様だと思われる。背後から敵の寝首をかくのは本作ならでは。
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難易度が高い一方で、ボリュームも多いのでシステムを完璧に掌握したやりこみ層からは評価されている。
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装備品の種類は極めて豊富。アビリティも含めて選定には頭を使う。組み合わせのパターンも豊富。
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速さと重量関連のシステムのおかげで「強力な武器に、強力なアビリティを付ければいい」とならなくなっている。
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重い装備にも、脆すぎる軽い装備にもそれなりに使い道はある。初心者にはむしろ軽装備が推奨される。
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そのためアビリティや属性の違う武器を何種類も用意するという手段がある。プレイしまくってそれを集める人も多い。
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アナザーダンジョンの「ゲートキーパー」と呼ばれる強敵撃破はすさまじく高難易度。これにやりがいを感じた人も多いとか。
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入手方法が隠しダンジョンの最上部の魔物が極めて低い確率で落とすのみという、もはや廃人向けのようなアイテムさえある。しかも入手した時点では未識別のため、手に入れたことに気づかないまま捨ててしまうこともありえる。
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さらに隠しダンジョンも1フロアにいつまでも留まってはいられないため、手に入らなければ1Fからやり直し。
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そんな苦難を乗り越えてアイテムを集めてこそ、このゲームを極めたともいえる。
問題点
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アナザーダンジョンの難易度が非常に高い。
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理由は「敵の強さが主人公の強さに比例する」ため。普通にゲームを進めてギルを育てていると、どれだけ鍛えた装備品を持っていてもやられる可能性が高い。
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レベルリセット制なら「ダンジョンの入り口から可能な限り戦闘を回避して進める」という戦法が通じるのだが、本作はレベル継続制である……。
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レベルを下げる手段はないので育てすぎるとアナザーコンプがほぼ不可能になってしまう。おまけダンジョンと見なすにはボリュームが多すぎるため、泣き寝入りやスルーしてしまうには酷な存在である。
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なお、アナザー内の魔物からは経験値が入らないため、ここの魔物を倒す分には問題ない。
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アナザーの制覇とアイテムコンプを狙うなら「最序盤から極力敵を倒さず、装備品だけ回収し強力な装備品を作成しアナザーに挑む」という「不殺戦法」が必須になる。
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もちろん本編での金・銀の宝箱の内、敵を倒すことが条件になっている品は回収が非推奨(もしくは回収が事実上ムリゲー)となる。
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その中でも酷なのが「スキルオブバビロン」。
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一時的に3倍速になれるという能力が唯一手に入る垂涎ものの装備品だが、金の宝箱であるため先に銀を手に入れなければならない。
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銀の条件が「フロアに入ってから70ターン以内に4体の魔物を倒す」金の条件が「フロアに入ってから最初の攻撃で3体の魔物を同時に倒す」。低レベルではまず不可能な条件なのである。
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ゲームバランス上、不殺を強いる上で有益なものほど撃破が必要になるあたり、ジレンマを感じさせたかったのだと思われるがやり過ぎと感じさせる場面が多い。
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隠しダンジョン「天と地をつなぐもの」も超絶難易度である。
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アナザーと同様「敵の強さがギルの強さに比例する」が、アナザーと違い経験値が入ってしまう。
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しかも魔物が道をふさぐなど、倒さざるを得ないケースも多い。
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一方、このダンジョンでのレアドロップでしか手に入らないアイテムが存在するため、それを集めるためには戦わないわけにはいかない。
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そのため、実はアナザーのほうをコンプリートしてからこのダンジョンに挑むのが良いことになるが、初見では気付きようがない。
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最低目標はこれまでの不思議のダンジョンにもなかった120階。さらに本編などと違い、ダンジョンの途中から始めることさえできない。
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実際は20階までもいけないまま投げた人が多いのではなかろうか?
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隠しダンジョンとはいえ、『不思議のダンジョンシリーズ』と同様に「エンディング後が本番」と言わんばかりのボリューム構成になっており、初見殺しはともかく半ば詰みの要素まであるのは酷。
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リセットすると長々とお小言を食らう。
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それ自体はリセットペナルティとして容認できるが、問題は意思に反したリセットでもお小言の対象になること。停電や読み込み不良でも怒られる。厄介なことに、フリーズバグも報告されている。
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ついでにこのお小言、途中でフェイントが入っており○ボタンを連打して聞き流しているといつまで経っても終わらない。
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ロード時間が長い。
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特に町では移動する度にロードが入る。合成やらなんやらで移動頻度は多いのに…。
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他にもテンポを悪くする要因は多い。
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ワンフロアクリアすると特に必要性の感じられないリザルト画面が出てくる。
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アイテムを売ったり預けたりする際も一つずつ確認が入る。依頼の際はアイテムを未所持状態にする必要があるので手間がかかる。
評価点
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原作をリスペクトしている点が多いこと。
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音楽が「元祖ドルアーガっぽい」と旧作ファンからは好評。隠しダンジョン「天と地をつなぐもの」の音楽は特に評価が高い。
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20階毎に音楽が変わり、雰囲気が出てくる素晴らしい演出になっている。ただ、難易度の高さゆえに実際にそこまで到達できた人が少ないのが惜しいところ。
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アイテム名、敵の名前、アビリティなど全て英語表記なのも原作らしい。
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金銀宝箱の出現条件を模索するのも面白い。クリアしても条件が明確にならず、再挑戦した際にもう一度宝箱が出るとは限らないのもシビアだが原作風である。
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ロード画面では「ドット絵の主人公」が敵を追いかけ回したりしている。
総評
往年を彷彿させる謎解きは、ドルアーガファンにとっては久々にやりごたえがあって面白かったのではなかろうか。
一方、不思議のダンジョン系列の作品としてみた場合、ダンジョンが構造固定という本家のシステムと根本的に大きく異なる仕様の他、速さ・敵の視野・イシターの加護といった、これまでにないものが多く目につくため賛否が分かれている。
また、隠し要素とアナザーダンジョンについては本編との難易度差がありすぎて、攻略するにはあらかじめ序盤から工夫しておかないと手遅れ、という理不尽さが受け入れがたいだろう。
ただ、その分、最強装備やそれにつけるアビリティといったやり込み要素もまた斬新であり、不思議のダンジョンシリーズの系列作品という色眼鏡を外してみれば、十分に面白いと感じられるものになっている。
『ドルアーガシリーズの世界観とシステムを活かして、本流から少し外れたところに着地点を見出した亜流作品』として肯定的に受け入れられるか、それとも『"不思議のダンジョン"の名前だけ借りた別作品』と否定的に受け取るかは、プレイヤー次第といったところだろうか。
何はともあれ、『不思議のダンジョン』と『ドルアーガ』の二枚看板はさすがに重すぎたと言わざるを得ない。
その付けられた名前ゆえに酷評されてしまった悲劇の作品と言えよう。
これからプレイするなら先入観を捨て去った上で、「ドルアーガの世界観やシステムを根幹に据えて再構築されたローグライクゲーム」という認識で挑む方がよいだろう。
最終更新:2024年08月11日 14:30