SIMPLE2000シリーズ Vol.113 THE 大量地獄
【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむひゃくじゅうさん ざ たいりょうじごく】
ジャンル
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パニックアクション
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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CD-ROM 1枚
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発売元
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D3パブリッシャー
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開発元
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タムソフト
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発売日
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2007年2月22日
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定価
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2,000円(税抜)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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判定
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怪作
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ポイント
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大量の「アレ」や「アレ」が主人公を襲う 人を選ぶ度合い120% D3ご乱心 ホラー? パニック? バカ? …どれとも言い難い
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SIMPLE2000シリーズ
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WARNING!!!!!!!
このゲームには生理的嫌悪感を催す表現が含まれています。
生理的に「怖い」「気持ち悪い」生物が、画面を大量に覆い尽くすゲームです。
概要
ナンバリングで分かる通り、PS2でのSIMPLEシリーズブランド「SIMPLE2000シリーズ」の末期作(113/全123作)。この時期のD3の暴走ぶりを象徴する作品。
パッケージとタイトルを見て「ひょっとしてああいうゲームなのか?」と思って手に取り、パッケージ裏を見て「やっぱりそういうゲームなのか」と思いそっと棚に戻すようなゲーム、それが本作である。
端的に説明すると、画面を埋め尽くすような数で迫り来る
アレ
相手に女子高生を操り逃げ回るという内容である。
※この時点で嫌な予感を覚えた人はこの先は読まないことをオススメします。
ストーリー
私立エリソン学園の2年生、水咲エリカは携帯電話を忘れて深夜の学校にやってくる。
しかし、携帯は見つからず、不思議な鏡に触れた途端エリカは見知らぬ森に飛ばされてしまう。
果たしてエリカはこの恐怖の地獄をかいくぐり、携帯電話を取り戻せるのであろうか…?
システム
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とにかく、大量に敵としてわき出てくる(正しくは設置されている)「蟲共」をかわしつつ、先に進む。基本はそれだけである。
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学校を拠点として各ステージに移動させられる。ステージは森、下水道、古城、昭和風の無人の町と、不気味極まりないものが揃っている。下記の蟲共が犇めくこれらステージを進んでいくのである。
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ステージの最後には巨大なボスが待ち構えている。ザコの蟲とは違い、直接攻撃でダメージを与えて倒さなければならない。
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最後はそれまで安らぎの場所だった現実の学校に蟲が溢れ、そのまま最終ステージとなる。
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主人公の取れる行動はジャンプ、武器による攻撃、気絶した蟲を持ち上げて投げる、しゃがみ移動、である。
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しゃがみ移動は飛び回る蟲を回避する際に、ジャンプは蟲を踏み付ける際に使用。段差や穴を飛び越えるシーンは無いので、そう言った用途ではジャンプは使わない。
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蟲はジャンプして踏みつけたり各種アイテム(武器)を使って気絶させることができる。
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気絶させただけではしばらく経つと復活するが、持ち上げて投げると消滅し、完全に倒すことが出来る。
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ボス戦では蟲を投げて攻撃する事も。
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蟲にまとわりつかれると、画面上に「ぞわぞわ」の文字が表示され、「ぞわぞわぞわ」「ぞわぞわぞわぞわ」…と徐々に増えていく。これが画面左端から右端まで到達すると、ゲームオーバーになる。
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まとわりつかれている間は動けない。レバガチャで振り払える。
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「ぞわぞわ」の文字はアイテムで回復できるほか、放置しておくと自然に回復する。
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基本的には武器には使用回数制限があり、一定回数使用すると壊れる。
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ジャンプ、ダッシュなどのアクションにはスタミナを消費し、尽きると少しの間身動きが取れなくなる。
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ストーリーのモチーフは『不思議の国のアリス』らしく、先々で白ウサギが落とした手紙を拾うことができる。尤も、『アリス』成分はほんの気持ち程度だが…。
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マルチエンディング方式であり、プレイヤーの取った行動で三種類に分岐する。
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グッドエンドでは騒動も解決し、何故わざわざ主人公が深夜に携帯電話を取りに行ったのかも明かされる。
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ノーマルエンドは全て有耶無耶のまま終わり、主人公の苦難が続く事が示唆される。演出はあっさりだが内容的にはバッドエンドに近い。
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しかし実際のバッドエンドはまさしくタイトルそのもの。演出、内容共にバッドエンドと呼ぶ事すら生温い大量地獄が待っている。
賛否両論点
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徹底的にプレイヤーの嫌悪感をあおってくるゲームデザイン。
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本作最大の評価点にして問題点。あらゆる要素が結託してプレイヤーを嫌がらせようとしてくる。
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蟲どもの動きは無駄にリアル。動く際の効果音が種類ごとに違ったりする。ヒル系の敵が落ちてくる際の「ベチャァ…」という音も非常に嫌らしい。
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そして蟲にまとわりつかれると主人公が「いぃ~やぁ~!」と叫びつつ悶える。そして画面上には「ぞわぞわぞわぞわぞぞぞぞぞ…」と表示されプレイヤーも悶えたくなる。
+
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主人公に襲い来る蟲共(名前を見ただけで気分が悪くなる人は見ないで下さい)
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人類の永遠の天敵ゴキブリを筆頭に、蜂、カマキリ、毛虫、カマドウマ(便所コオロギ)、蛾などなど。
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ムカデ、ダンゴムシ、蜘蛛といった節足動物ももちろん登場。
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蟲以外にもドブネズミ、カエルなど言った生物も登場するが、やはり気持ち悪い事に変わりはない…。
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後述のステージ4には目玉、手首、人形なども。最早物の怪の類である。
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このメンツを見れば分かるように、「一匹、出ただけでも嫌」な生物が厳選されている。
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ボスは巨大な蛾や蝿、妖怪など。
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ラスボスはなんと、ここまでの案内人であった白ウサギが巨大化して襲いかかってくる。校舎より大きくなった白ウサギが無数の蟲をばらまく光景は悪夢の一言。
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ステージ4の不気味さが際立っている。
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誰もいない昭和風の街並みをもの悲しいBGMが響く中、大量の蟲達をかいくぐりつつ女子高生が探索する…。異常などというレベルではない。
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蟲がデカすぎる。
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パッケージにあるリアルなサイズの蟲が大挙して迫ってくるような恐怖感ではなく、B級パニック的な内容となっている。
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勿論、巨大な分気持ち悪さも増大しているし、これが大挙して襲い掛かってくる様は正に恐怖ではあるが、人によっては逆にシュール過ぎて笑ってしまうこともあり得る。
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(視認性や処理落ちの問題も考えられるが)パッケージから想起されるようなリアルサイズの蟲の群れに襲われた方が怖いという意見もあれば、このくらいインパクトがあった方がパニック感が出て良いという意見もある。
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この点はプレイヤーが本作をパニック、ホラー、
バカゲーのどのジャンルとして捉えるかで印象が変わるだろう。
問題点
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妙に強すぎる主人公。
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一応「無力な女子高生」という設定でありながら、バットやゴルフクラブを手に蟲をなぎ倒したりバカでかい蟲を平気で踏み潰すのは不自然である。しかも気絶した蟲を素手で持ち上げて投げると言う…。
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そもそも携帯電話一つのために蟲だらけの見知らぬ場所を駆け巡るアグレッシブさは、どう見ても普通の女子高生ではない。そもそも生身のままボス(巨大な化け物)に果敢に立ち向かい、貧相な武器だけで打ち倒す女子高生って一体…。
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また、蟲達は別に主人公を殺そうと「刺す」「噛み付く」などの殺傷攻撃を繰り出して来る訳ではなく、ただまとわりついて来るだけである。
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従って、出血や残酷描写と言ったタイプのグロ表現は無く、ゲームオーバーも「死亡」はなく、あくまで「気絶」である。だからと言って、嫌な事に変わりはないが…
そっち方面のリョナは期待しない事。
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蟲達には蜂や毛虫などの危険な害虫(しかも大きい)も少なくないが、主人公が物理的なダメージを受けることはない。蟲達に攻撃の意思が無いのか、主人公が頑丈なのか…。
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ラスボスのみ殴りつけて来るのだが、これを喰らって吹っ飛ばされても「ぞわぞわ」の文字が増えるだけ。どうやら本当に頑丈らしい。
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一応、バッドエンドでは××(自主規制)されてしまう為、不死身の超人ではないのは確かだが…。
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この手のゲームではシステム上の都合や主人公補正で、一般人であるはずの主人公が異様に強かったり有り得ないほど頑丈というのはままある事だが、それにしても設定との乖離が激しい。
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バカゲー要素として解釈しようにも、公式サイトやパッケージ、説明書にはこれでもかと「普通の女子高生」と書いてある。どこがだ
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終盤になるほどステージの構造が単調になってくる。
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序盤のステージは5~6のエリアにまたがっているのに対し、ステージ4はたった2エリアでボス戦。最終ステージに至っては階段を往復するだけで目的が達成できる。
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「まとわりつかれる→振りほどく」だけで殆どクリア出来てしまう、とシステム面からして批判されるケースもある。
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ボス戦が単純。
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基本的には「相手が出してくる雑魚敵を弾いて本体に当てる」の繰り返し。特にステージ3など、ゴルフクラブを振り回しているだけで簡単に勝てる。
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しかしステージ4だけは例外でかなり難易度が高い。理由は、雑魚が基本無敵で出現直後以外倒して弾にできないため。
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とあるアイテムを入手していると楽になるが、ノーヒント。くまなく探していれば見つかる物ではあるが、それに関してもヒントが無い為、隅々まで探すプレイヤーでなければ取り逃す可能性は十分ある。
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マルチエンド式だが、分岐条件が分かりにくい。
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「入手した手紙の数」「殺した蟲の数」が分岐条件だが、蟲を殺すには殴ったり振り払っただけではダメで、投げないといけないのだが分かりにくい。
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投げられた蟲は演出も何もなくただ消えるだけなので、初見では殺せているのか判り辛い。
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殆どの手紙はストーリー上の進行ルートに置かれている為、意図的に無視しなければ取り逃さないものばかり。
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エンディング内容とこの条件との因果関係も不明。なぜ手紙を集めて蟲を殺しまくると大団円で、その逆だと凄惨な結末になるのかはさっぱり分からない。
評価点
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素敵なクリア特典。
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クリアすると特典が解放される。一つはこの手のゲームの定番のコスチュームチェンジ。そしてもう一つは主人公の出身地の選択。
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用意されているコスチュームはバニーガールとメイド。無駄な萌え要素がステキ。しかも色もそれぞれ赤、黒、ピンクの三種類から選べる。
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ウサギだからと言う事なのか、バニーガール姿だとジャンプの飛距離が伸びると言ったゲーム面での
無駄なメリットも。どういう仕組みなのやら…。
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出身地を変えると主人公が方言をしゃべり出す。誰得。
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このために、主人公の掛け声などを含めた全ボイスを全方言パターンで録った模様。なんという
無駄な努力…
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「京都」「青森」「沖縄」といったベタなものの他に、謎な「帰国子女」なども含まれる。
総評
『バイオハザード』のような「常識外の存在が襲い来る恐怖」でもなく、『零シリーズ』のような「しっとりと絡みつくような恐怖」でもない、「そんなに難しく考えなくても人間これだけで恐がれるんだよ」となれなれしく肩を叩いてくるような独自の方向性が光る一作。
ある意味「ホラー」でも「パニック」でもない「嫌ゲー」という新天地を開拓した作品とも言えるだろう。…誰もそんなところには住まなかったが。
ゲーム性に関しては微妙なところだが、「方言で喋る女子高生が蟲に襲われて悶える光景に興奮する」という極めてニッチなフェティシズムには対応している。
余談
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ニコニコ動画では『地球防衛軍シリーズ』に次いでSIMPLEシリーズでは人気作。ゲームコンセプト上、実況プレイとの相性が良いようである。
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『THE 歯医者さん』にて、本作の主人公・水咲エリカは『ラブ★』シリーズなどに登場する水咲麗子の妹であると明言された。
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同作に患者のひとりとしてゲスト出演している。パッケージに半泣きの女の子が描かれているが、この女の子がエリカ。
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というか、3Dと2Dの差もあるとは言え、タッチが違いすぎてぶっちゃけ言われなければ気付かないレベルで似てない。
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急に方言を話し始めたり、エリカと「ぞわぞわぞわぞわ」が描かれた壁紙が用意されていたりと本作のネタもある。
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因みに『THE 水泳大会』にも、麗子の双子の妹という設定の「水咲響子」なるキャラが登場していたが…そちらとの関係は特に触れられず。それどころか響子の家族は「母と姉」としか書かれていなかったので、恐らくエリカも妹だというのは後付けなのだろう。
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本作の作中、エリカの携帯の着メロとして妙に軽快な音楽が流れるが、これはゲーム『ラブ★ピンポン』でメニュー画面に使われていた曲である。
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本作の冒頭はエリカが体験した「あの夜の不気味な事件」を回想する形のナレーションで進行する。
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しかしエリカが無事に生還した様子が描かれるのはグッドエンドだけであり、それ以外ではスムーズに繋がらない。特にバッドエンドでは明らかに死亡しているので、回想などできるはずもない。
あの世からしてる?
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かつて公開されていた公式サイトではミニゲームが遊べたのだが、その内容が「エリカの頭部を操って群がる蟲から一定時間逃げ続ける」という本編に負けず劣らずの気色悪いものになっている。
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蟲に接触するとエリカの表情も変わるのだが、正直言って蟲よりその顔の方が怖かった。
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現在ではインターネットアーカイブ内でFlashエミュレーターであるRuffleによりプレイ可能。ただし、当然ながら閲覧注意(リンク)
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『お姉チャンバラSPECIAL』に、本作に因んだ小ネタが登場している。
最終更新:2023年08月25日 14:09