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メタルギア

【めたるぎあ】

ジャンル タクティカル・ロールプレイングアドベンチャーゲーム
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 コナミ
発売日 1987年12月22日
定価 5,300円
備考 ザ・ツインスネークス』の限定版に移植版が付属
判定 クソゲー
劣化ゲー
ポイント 統一感の無いシステム
ステルスできないステージ設計
メタルギアが出てこない
生みの親もクソ呼ばわり
アメリカ独自の続編も
メタルギアシリーズ


概要

小島秀夫らが制作したMSX2専用ソフト『メタルギア』は、日本初とされるステルスゲームであり、従来のアクションゲームの要素を強く併せ持つステルスゲームであるステルスアクションゲーム、その世界初の作品ともされる。
それまでの「多数の敵を戦って倒す」から「多数の敵を戦わずにやり過ごす」という画期的視点で衝撃を与えた。
本来は『戦場の狼』や『』のようなゲームを作れとの上からの命令に対し、MSX/MSX2の性能では多数の敵を動かすのは難しい*1と言う事から、「敵が少数でも成立するゲーム」と言う苦肉の策であった。
しかし、結果として新たなジャンルを確立しゲーム史に名を残すシリーズとなったのだから、世の中判らないものである。

そのMSX2版の人気により、FC移植版として発売されたのが本作である。
ただし小島監督をはじめとしてMSX2版のスタッフは関わっていない。この件が本作の完成度へ如実な影響を与えてしまったと思われる。
そういった経緯もあり、ジャンル名も説明書に記載されている「タクティカル・ロールプレイングアクションゲーム」で、シリーズおなじみの「ステルスアクション」ではない。


問題点

総じて残念なことに、原作MSX2版の面白さをスポイルする問題点だらけである。

  • 無線や武器・アイテムの切り替えにおけるボタン操作の統一がなされていない。
    • メニューを出すためにはSELECTを押すが、閉じるためにはBボタン。SELECTで閉じることができない。
    • しかしアイテム等のサブメニューに入った場合、SELECTでゲームに戻るが逆にBボタンでは反応しない。
  • MSX2版では海上から要塞に直接侵入するが、FC版では追加されたジャングル面に空挺降下する。しかしこのジャングル面が長いうえに出来が悪い。
    • なぜかスネーク以外にも降下する兵士がいるが、結局彼らに会ったりすることはない。
      • なおこのジャングルでの進み方次第では真っ先にカード4を入手することもできる*2
  • ステージ上の敵の配置に問題があり、移動した途端に発見されることがある。MSX2版の様に部屋に入る方向によって敵配置を工夫、なんてことを考えもしていない。
    • 特に最初のジャングルで顕著。最初は銃も持っておらず体力も少ないため、複数の敵に追い回されるとあっという間に死亡。
      • トラックの前には大抵敵兵が待ち構えているため、出た瞬間に発見されてしまう。
    • 画面を切り替えると倒した敵が復活するくらいなら良いが、双眼鏡で隣の画面を見ただけでも復活する
      • しかも、この双眼鏡が置いてあるトラックから出ると必ず敵に発見される。この時、上か下を押し続けないと撃たれてダメージを受けてしまう。
    • ある程度ゲームが進めばMSX2版に忠実な配置が多くなり、進入→即発見というケースはかなり減るが、そこに至る前に心が折れた人も多いだろう。
      • また一応、ダンボールを被っていれば即発見される事も少なくはなる。
    • このバランスへの救済策か、敵に発見されて画面を切り替えても追いかけてくる『!!』モードが無くなった。これにより敵に発見されても画面を切り替えれば警戒状態が解除されることとスネークの性能が強化されている*3ので下手にステルスするよりも強行突破した方が被害が少なくなることの方が多い。
    • 結果的にステルス要素がコンセプトであるこのゲームのコンセプトを真っ向から否定してしまっている。
  • コンティニューポイントが異常に少なく、かなり進まないと死亡時にスタート地点まで戻されてしまい、ゲーム中一番出来の悪い所を何度もプレイする羽目になる。
    • 武器・アイテムは死亡時のものがそのまま引き継がれるのが数少ない救いではある。
    • ビル1内を粗方探索し終わり、一定数の捕虜を助け階級が一つ上がったところで初めてビル1からのコンティニューが可能になる。
    • これは、あと少し進めばわざと敵に捕まるイベントが発生し、次のコンティニューポイントに移行する時期である。いくらなんでも遅すぎる。
  • 電源オフからの再開はパスワードなのだが、それが表示されるのはゲームオーバー時に「END」を選んだ時のみと、少々ややこしい。
    • パスワード自体もアルファベット・数字込み25文字と長め。
  • 敵がアイテムを落とさないため、消耗アイテムの補充は部屋やトラックに置いてある物を取りに行くしかない。
    • なお、消耗アイテムは画面を切り替えるたびに復活するが、これはMSX2版からの仕様。
  • メタルギア開発者であるペトロヴィッチ博士とその娘は「ビル5に捕らわれている」という情報を得ることができるのだが、どれが何番のビルなのかはどこにも書かれていない。
    • 肝心のビル5は「ビル1から2、または2から4の間の道を左に逸れ、ループするジャングルを決められた順番通りに移動すれば辿り着ける」と、かなりややこしいのだが、道順はおろかそもそも「そっちにビル5がある」という情報すら誰も教えてくれない。
      • MSX2版ではビル1~3がちゃんと順番通りに並んでいたため、少なくともこんなどうでもいい所で迷うことはない。
  • 最大の問題点として、核搭載2足歩行戦車「メタルギア」が登場しない。
    • 代わりにメタルギアを制御するスーパーコンピューターを破壊することになるのだが、シリーズ目玉でタイトルにもなっている超兵器と戦わないというのはすっきりしない。
      • 正確に言うとMSX2版でも倉庫に突っ立っているだけの(起動前の)メタルギアを破壊するのであって、どちらかと言うと敵はレーザーを発射する監視カメラだったのだが、FC版では姿すら見せてくれない。なお、ちゃんと起動したメタルギアと戦うのは『メタルギア2』まで持ち越し。
      • MSX2版では、監視カメラのレーザーをやりすごしつつ、メタルギアの左右の足に決められた順番通り爆弾を仕掛ける、という攻略法だったが、FC版のスーパーコンピューターはどこでもいいからとにかく爆弾を16発仕掛けろという非常にアバウトな方法になった。ついでに監視カメラも無く、部屋にいる4人の兵士を排除したあとは完全に無防備。
      • スタッフに「左右の足の片方にだけ有効」という状態を作る技術が無かったのかもしれない。同じように、ビル2に登場するボス「ブルタンク」もMSX2版では正面からの攻撃を受け付けなかったのだが、FC版では全体が弱点となっている。
    • 破壊したのはスーパーコンピューターなのにもかかわらず、エンディングでは「メタルギア破壊に成功」と無線で報告している。
    • 他にもフライングアーミー、攻撃ヘリ「ハインドD」などいくつかのボス、兵士が変更の憂き目にあっている。
  • スタッフロールの後でラスボスから入る「私はまだ死なん。いつかまた会おう」という通信が無くなっている。
    • 後に『メタルギア2』で語られた話によると、この時の彼は両手・両足・右目・右耳を失った瀕死の状態で、実際はこんな通信を送れた方がおかしいのかもしれないが、それでも続編の予定が(製作時点で)なかった以上、元々有ったものが無くなったことは劣化には違いない。
    • スタッフロール自体も紹介されるスタッフの数が少ないためエンディング曲が1ループする前に終わってしまい、最後まで曲を聴くことができなくなっている。
  • FOX HOUNDを「ホックスハウンド」と表記する誤字まで存在する。
    • これについてはフォントセットにアルファベットが全文字入っていなくアルファベット表記ができなかった上に、さらに小文字の「ォ」がなかったという止むに止まれぬ事情があったらしい。でも「フオックスハウンド」のほうがまだよかったかもしれない。
      • なお、アルファベット表記のFOX HOUNDは普通に何度も出る。なぜその場面だけカタカナ表記だったのか…。

評価点

  • 細かい点だが、アイテム画面の配置が固定でカードキーも順番通りに並ぶため、アイテムが多くなった中盤以降はかなり選びやすくなった。
    • MSX2版ではアイテムが全て取得順に並んでいたため、ロックされた扉を開ける際はやや面倒だった。
      • ただ、逆に言うとアイテムの少ない序盤は何も無いスペースを無駄にカーソル移動させなければならないとも言えるため、一長一短ではある。
  • ビル1突入以降は、ビル5方面のジャングルなどを除けば概ねMSX2版に忠実。
    • あくまで「原作からの劣化が少ない」だけで決して元より優れている訳ではないがストーリー展開には変更が無いので、大体の雰囲気は味わうことが出来る。
  • 重要人物でありながらMSX版では破壊方法を知っていれば無視できたペトロヴィッチ博士と娘のヘレンだが今作では両方救出しなければスーパーコンピューターを破壊できなくなったためにストーリー面での印象が強まった。
    • もっとも、一々ビルをうろつきまわる必要が増えるために批判される面でもあるのだが…。
  • MSX2版ではレジスタンスリーダーのシュナイダーの連絡先を誰も教えてくれなかった*4が、FC版では早い段階で本人から直接通信が入るようになった。
  • ゲームオーバーになってもアイテムや救出した捕虜などは引き継がれるため、コンティニューポイントを通過して以降は立て直しがしやすくなった。
    • ビル内での用事を済ませたらわざと死んでコンティニューすることでビルから脱出できる。

総評

典型的な劣化移植作品であり、本作独自のアレンジ・改善点にも際立ったものが無いため、オリジナル経験者がわざわざプレイする価値は無いだろう。
一応、FCの普及率の高さやプレイ環境のハードルの低さ、メタルギアが出ない以外のストーリーの改変点は少ないこともあり、MSX版の代替品的な需要はあったのかもしれないが…。


海外での評価

  • 海外では当時MSX2版が知られていなかったのもありかなり人気を博し、MS-DOS・コモドール64にも移植された。
    • その結果、KONAMIアメリカにおいて独自の続編『Snake's Revengeが発売されている。
      • 内容は、再び暗躍する謎の軍事集団と彼らのもつメタルギアの破壊。本作ではサイドビューの横スクロールシーンがあるほか、ちゃんとメタルギアとの戦闘もある。
      • 「量産され、輸送船に並ぶ複数のメタルギア」「復活する過去の強敵」「サーチライト」「足元が弱点のボス」「スネークがナイフを装備」といった後の作品につながる新機軸が含まれており、評価は高い。
  • ジェームズ・ロルフの「Angry Video Game Nerd」でも紹介されたことがある。
    • 小島監督作品はアメリカでもファンが多いのでかなり抑え気味ではあったが、購入当時はハンドガンを手に入れるところまでたどり着けなかったと怒りを露にしていた。

余談

  • 『SUBSISTENCE』発売前は比較的プレイが容易な旧作であった。
    • メタルギアソリッド』発売後、「旧作もぜひプレイしてみたい!」と言うプレイヤーは多数存在したが、1998年当時、既にMSX2は本体&ソフト共に入手困難となってしまっておりMSX版や2をプレイするのはハードルが高かった。
    • この時点でも本体が生産されていたFCで出された本作はプレイするまでのハードルが低く、それなりに価値があったのである。
  • メタルギアソリッド ザ・ツインスネークス』公式サイト内、限定版のページ(リンク切れ)にて本作に関するコラムが掲載されている。
    • 小島監督自身も本作の完成度に対し「良くはなかった。いや、クソゲーでしたね」「見た目もなんとなくそれっぽいけど、僕にとってはもはや別モノ」と、否定的なコメントを残している。
    • 『ザ・ツインスネークス』限定版には、特典としてFC版を移植したディスクが同梱されている。その後、上記コラム内での「最初で最後の復活」の記述の通り再移植されることはなかったのだが、2023年発売の『メタルギアソリッド マスターコレクション Vol.1』で19年ぶりの復活を遂げることとなった。詳細は「その後の展開」の項にて。
  • 『MSXマガジン永久保存版』のインタビューでも、ファミコン開発室への配属を希望していたものの、MSX開発室への配属となったことが不本意だったと語っている。
    • しかし、MSX2版「メタルギア」発売の翌年(1988年)には『スナッチャー』(88SR/MSX2)を発表し、同作のCD-ROM2版(92年)を経てその2年後には『ポリスノーツ』(1994年、PC-9821)を完成させている。
    • そして先述の通り、MSX2版「メタルギア」の正統続編である『メタルギア2 ソリッドスネーク』が1990年に発売されている。
    • MSX市場はこの時期確実に終焉に向かっており、同年松下から発売された16bitパソコン「MSXturboR*5」は不振に終わり、MSXはついに終焉を迎えることとなった。
  • MSX2版は「ステルス要素を完全に取り入れた最初のビデオゲーム」として2008年にギネス認定されている。
    • ステルスゲーム自体は81年・Apple IIの『Castle Wolfenstein』などですでに出ていたという意見もある。
      • ただしステルスゲーム自体は『メタルギア』以降一気にメジャーになったことは確かなようで、また前述の『Castle Wolfenstein』があまり従来のアクションゲームとしての要素がなかったので、おそらくステルスアクションとして世界初のゲームは『メタルギア』である。
    • なお、本作ではオリジナルと同様に敵兵の視線は一直線上なので、同じ列にいなければ発見されないという特徴がある。視界が左右45度になるのは『メタルギア2 ソリッドスネーク』からで、よりゲームとして完成されていく。
  • アメリカではUltra Gamesというメーカーから発売されているが、これは海外NESも日本のファミコンと同様に1メーカーが年間に発売できるソフト本数に制限があったことから、これを回避するために設立したダミー会社である。ちなみに続編の『Snake's Revenge』もUltra Gamesからの発売。

その後の展開

  • 2023年10月24日にSwitch/PS4/PS5/XSX/Winで発売された『メタルギアソリッド マスターコレクション Vol.1』にて、本作がボーナスコンテンツとして収録されている。
    • 加えて、長年日本未発売だった『Snake's Revenge』もボーナスコンテンツとして移植されている。
    • 「小島監督がコナミを退社したために復刻が容易になったのでは?」と噂されているが真偽は不明。

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最終更新:2024年02月09日 17:00

*1 「全くできない」ほどMSX2の性能は低くないので誤解なきよう。あくまで「小島氏がやりたいレベルのものを作るには性能が足りない」というだけの話である。

*2 もっとも、このカードは中盤以外は殆ど役に立たないので持っていても余り影響はしないが。

*3 特に、ハンドガンの射程やライフの上昇がMSX版よりも大きい。

*4 説明書でも空欄になっている。本人から連絡が来るのは最初に名前が出てからかなり経った後のゲーム中盤頃。

*5 MSXシリーズは共通規格であったが、MSX2/MSX2+と代替わりするに従い参入会社は減っていき、最終ハードであるMSXturboRはついに松下からしか発売されなかった。