ディープダンジョンIII 勇士への旅
【でぃーぷだんじょんすりー ゆうしへのたび】
ジャンル
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3DダンジョンRPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2Mbit+64kRAMROMカートリッジ
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発売元
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スクウェア
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開発元
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ハミングバードソフト
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発売日
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1988年5月13日
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定価
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5,900円(税別)
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プレイ人数
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1人
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判定
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クソゲー
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ポイント
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理不尽な戦闘バランス やたらと広いマップ 低クオリティなBGM 全方位で地味にクソ
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概要
よくあるタイプの『Wizardry』型3DダンジョンRPG。
『ファイナルファンタジー』やII以降のドラクエシリーズ、あるいは『ウィザードリィ』や『ザ・ブラックオニキス』といったゲームからの影響か、 前2作と違ってパーティー制。
前2作とはストーリー的なつながり等はほとんど見られず、今回のこれは全方位的に低クオリティな駄作である。
また、前2作ではディスクシステム専用ゲームソフトだったが、今作からROMカートリッジでの発売となった。
問題点
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今回はパーティー制であり、主人公以外は「狩人」「僧侶」「魔術師」という職業から自由に選んでいい、という建前なのだが…。
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手に入る装備や戦力バランス的に「それぞれ1人ずつ」という組み合わせでないと中盤以降の戦闘がほぼどうにもならず、そもそも人数枠と職業の数が同数というあたりから根本的に固定枠が想定されていて、実質的に自由度はどこにも無い。
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さらに売り文句の1つであった「リアルタイムエンカウント」システム。
アクション性が無いこの手のゲームには珍しく、こちらがダンジョンを移動しなくても(立ち止まって考え事をしていても)エンカウントが発生するようになっている。
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かと思うとメニュー表示で無効化はできるので、一体何のための要素なのかよく分からない。
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戦闘についても総じて不安定。
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キャラクターのHPに対して戦闘ダメージのばらつきが非常に大きく、戦力の拮抗している状況では不意の一撃で簡単に死んだり、また「戦闘中の魔法は使用に失敗することがある」という仕様のおかげで、回復なども安定しない。このため、戦術も重要なのだが、こうした要素のせいで運に見放されると何をやっても死ぬという、かなり理不尽なバランスになっている。
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そのダメージ値が表示されたりされなかったりする謎仕様。
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ダメージを与えても敵を倒せなかった場合は「(敵)は○HPをうしなった」と表示されるが、倒せた時にはダメージ数値が出ない。ダメージのバラつきが大きいのに「いくつダメージを与えると倒せる敵なのか」という推測がしにくくなっている。
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前2作では「○ポイントのきず(ダメージ)を… (××は)てきをたおした」等と普通に表示されるので、なぜわざわざ不便な仕様に退化させたのか謎。
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レベル上げのために稼ごうとしても、こちらがある程度強くなってしまうと、弱くて倒しやすい敵というものはパーティーを避けるようになる。
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このあたりのバランスが非常に厳しく、「以前の階層だと全く敵が出ず、次の階層だと強敵ばかりで死を覚悟しながら戦うしか無い」という事態が頻繁に発生する。
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終盤では敵が、こちらの魔法使いが使える「相手を一掃する威力の」範囲攻撃/全体攻撃の魔法を容赦なく使ってくる。パーティーが4人、敵が最大9体であることを考えるとまったく手加減なし、というより何をしても運次第で瞬殺されるレベル。
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特に魔法使いは主人公の半分以下のHPしかないので、主人公なら2発程度は耐えられる程度の魔法攻撃で即死というのは極めてありがち。
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序盤はそうでもないが、後半戦での(強敵との)エンカウントの多さのおかげで、探索だけでも相当にストレスが溜まる。
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エンカウントから実際の戦闘に移った後の敵の表示が小さすぎて迫力が無い、という意見もある。
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隊列変更が宿屋でしかできず、しかも剣士(主人公)は先頭以外に配置できない。実質的に死にコマンド。ダンジョンにいる他の冒険者を仲間にした時くらいしか使わないだろう。
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更に隊列の構成に一切関係なく、主人公が死んだら「(主人公)たちは もくてきを うしなった」となりその場で即ゲームオーバーという鬼システム。主人公以外が無事でも、僧侶が復活の魔法を覚えていても、もちろん駄目。
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周辺のマップを表示する「てかがみ」というアイテムが序盤を過ぎたあたりで入手できる。しかしどこにアイテムなどが隠されているかは分からず、その上、終盤の重要な階ではこれも機能しない。意図的なデザインではあるのだが、非常に不親切。
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無意味に広いマップ(特に「洞窟」)。とにかく探索でマップを埋めること自体が攻略につながる、という事にしても、エンカウントやら戦闘バランスやらの理不尽さ、システムの不親切さなどのせいで、それらのマイナス要素を増幅する要素でしかなくなっている。
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ついでに緊急脱出用アイテムも一定確率で発動せずに壊れる。
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前2作の脱出アイテムが「失敗した場合は即死」という無茶な仕様だったのに比べれば遥かにマシだが、強力なアイテムの副作用としてはもう少し別のやり方があったのではないだろうか。ちなみに2の「てんまのはね」はこんな仕様でも重要アイテムであった(これ以外に戻る手段の無いエリアが広い+探索中にセーブ可能なので失敗を無視できる)。
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移動中に使えるコマンドは極端に少なく(前述の通り隊列変更も不可、装備を「外す」コマンドも無い)、そしてその割には「はなす」などが極めて限定的な状況でしか使えない死にコマンドになってしまっている。
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音楽も全体的に低クオリティ。特に戦闘中の曲は単調な上に極度に短い。しかもボス用の曲なども無い。
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また呪文詠唱でBGMが中断する、店などの特定状況ではBGM自体が無い、メッセージ表示の音も耳障りなどなど、難点を見逃す方が大変というレベル。それなりに良い曲も無いことはないので、そこは何とか弁明の余地はあるにしても、音の悪さはどうしようもない。
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ちなみに階ごとにBGMが違うので曲数だけは多いが、大体においていずれも短い。無理な増量が低品質に繋がってしまったとも言える。
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前2作が拡張PWM音源を持つディスクシステムの作品であり、そうした優位性を持たない通常のROMカートリッジに移った結果、こうした完成度の低い部分がより顕著になってしまった、と見ることもできる。
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移動時の小さな矢印4つ、戦闘後などに一瞬乱れる耳障りなBGM、少しチェックすれば判別できるはずの誤植の数々など、よくわからない、完成度の低い要素が他にも多く見られる(多くはシリーズを通しての微妙な問題点だが、3作を通して改善されておらず、BGMに至っては劣化と見なされても仕方が無い。)。
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「くだるかいだんがある。つかいますか?」どうみても梯子です。本当にありがとうございました。
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また、今回は前2作と違い、町のマップも3D迷路になっている。一応説明書に町の地図は載ってはいるが、特に3D化に重大な意味があるわけでもなく、進化の方向性に疑問が残る。
評価点
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仕様外のバグは少ない。
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故に、上記の問題点さえ無ければ良作になったかもしれない。上記の問題点さえなければ…。
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戦闘にしてもシステム的には戦術で左右される良デザイン。これで効果音やゲームバランス等がまともでさえあれば…。
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パーティー制の採用。「たったひとりのダイアモンドの騎士」を育てるゲームだった『I』から進化。
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とはいえ、上記の仕様から4人に指示を出すのは案外苦痛だったりする。
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ゲーム性自体はオーソドックスかつ非常に単純でわかりやすく、比較的プレイしやすい。
総評
このシリーズは元から厳しいバランスの上にバランス崩壊の裏技、バグ技などが多くあり、ゲーム的には不安定な部分が多かった。
そんな中での本作『III』だが、ストーリー的になんら見るべきところはなく、キャラクター等にも魅力はなく、完成度そのものも低く、単純にストレス要因となる部分ばかり多くなった、シリーズ最低のクソゲーと成り果ててしまった。
全体のクオリティがバランスよく低水準なため、「クソゲー感」として突出した部分もあまりなく、ひいき目に見るなら「駄作に近い凡作」とどうにか呼べなくもない…かもしれない。
余談
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前作までに比べて中立キャラとのやり取りが簡略化されており、「たたかう」事ができなくなっている。
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ゲーム進行にはほぼ関係のない、ある意味では無駄というか邪魔な要素ですらあったが、ゲームの雰囲気として独自性のあった部分が無くなったのはシリーズ的には残念と見られるかもしれない(『I』の、魔物が化けた偽者どころかラスボスよりも強いエトナ姫がトラウマになっている人も多いはず…?)。
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本作のゲームブックが双葉社と勁文社から発売されている。本作の劣悪な評価とは裏腹にゲームブック版の評価はいずれも非常に高い。
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双葉社からは『ディープダンジョンIII 魔宮への招待』というタイトルで発売。
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原作との関連性はほぼなく名前だけを借りたほぼ別物の作品となっているが、ストーリー・システムの完成度も高い良作。
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勁文社からは『ディープダンジョンIII 魔界都市からの脱出』というタイトルで発売。
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勁文社のゲームブックシリーズであるアドベンチャーヒーローブックスシリーズの最終作であり、これまでの勁文社のゲームブック作品の総決算とも言える重厚な内容になっている良作。
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本シリーズのその後は、よく分からないことになっている。
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版権が一時的にアスミックに許可されて『ディープダンジョンIV 黒の妖術師』が発売された。
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その後、スクウェアに思い出してもらえたかと思いきや、どう見ても今作より縁の薄い『ファイナルファンタジータクティクス』の「隠しダンジョン」の名前に使われたり。
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権利を所有していたデベロッパーのハミングバードソフトは既に倒産しているが、本シリーズの『III』までや『カリーンの剣』等のDOGから発売されたゲームがスクエニのホームページで記載されているので、現在の権利はスクエニが所有していると思われる。
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上記のダンジョンの名前に使われたのもその縁かも知れないが関係は不明。
最終更新:2024年11月05日 02:40