仙界大戦 ~TVアニメーション仙界伝封神演義より~
【せんかいたいせん てれびあにめーしょんせんかいでんほうしんえんぎより】
ジャンル
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アドベンチャーRPG(自称)
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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バンダイ
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開発元
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ゼネラル・エンタテイメント
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発売日
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2000年6月29日
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定価
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5,800円(税抜)
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判定
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クソゲー
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ポイント
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メチャクチャなストーリー 自由度ゼロ っていうかRPGじゃねぇだろ、コレ
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少年ジャンプシリーズリンク
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概要
かつて週刊少年ジャンプで連載されていた人気漫画『封神演義』のゲーム化作品。ジャンルは一応RPG…のはずである。
タイトル通り、原作ではなくアニメ版を元にしておりパッケージ裏には「来たるべき大きな戦いのために…」「5人の主人公が描く「封神演義」のパラレルストーリー!」など、胸躍る文言が並んでいるが…。
なお、機種依存文字が非常に多い作品なので一部の表記をカタカナにしていることはご容赦いただきたい。
システム
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全六章のRPG。各編の主人公は、太公望、楊ゼン、ナタク、黄飛虎、蒼尚(オリジナル主人公)、合流編となっている。
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戦闘システムは、宝貝(パオペエと読む)を用いた最大3対3のバトルとなっている。
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各宝貝には火、水、地、風、体の属性が付加されており、その宝貝を使う度に該当する属性のゲージが貯まっていく。
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属性ゲージがフルの時にその属性の宝貝を使うと、ゲージがゼロになって威力が大幅に上がる。ゲージは敵、味方共有なので「敵にゲージを使わせず、自分たちだけ使う」ことが重要になってくる。
問題点
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ストーリーが極端にふざけた軽いノリになっており、原作の重厚な側面が全く再現されていない。
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確かに原作もギャグパートはそれなりにあったが、根幹となるシナリオは非常に重いものであった。
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しかし本作では「酒池肉林」「人肉ハンバーグ」など、原作における重い描写はことごとくカットされており、味方陣での封神者もほとんど出ないなどの原作改変が目立つ。
対象年齢を考慮したのかもしれないが、それでも「趙公明が完全なチョイ役と化しており、ほぼ一ステージで撃破される」「申公豹がストーリーにほとんど関わってこない」「姫昌の出番が皆無」など原作を考えるとありえない描写が多い。
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特に姫昌の扱いが悪いのは漫画版封神演義に限らず、封神演義を題材にしたあらゆる作品に目をやってもありえない描写である。原作においては超がつくほどの重要人物なのに…。
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では改変してまで入れたギャグパートが面白いかというと、そうでもない。
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そもそも「シリアスなストーリー中に箸休め的に入るから面白い」ギャグパートを、最初から最後までやられても困る、というのがある。
「楊ゼンが妲己の影武者コンテストに参加する」「太公望が趙公明主催のクイズ対決を行う」とかどう笑えというのか…。
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一応終盤、オリジナル主人公が登場してくる辺りからはシリアスになってくる。
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ただ、オリジナル主人公が抱えている秘密は容易に察しがつく物であり、終盤のシナリオは単純に原作をなぞっているだけなので、別に本作独自の評価点というわけでもない。
というか、終盤の展開が原作と同じになるなら、「パラレルストーリー」を名乗るのも微妙なところだが…。
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自由度ゼロの進行システム。
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本作では「一つの町のシナリオをクリアする→次の町に移動」というシステムを採用している。昔の町に戻ることはできない。
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つまり、出来ることは極端に限られており、メインシナリオ関連のイベント以外は皆無。お使いイベントすら最初から最後まで一つたりともない。
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選択肢のあるイベントも存在するが間違えても大したペナルティはなく、正解を選んでもさしたるメリットはない(場所によっては消耗品がもらえる程度)。
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進行上重要な選択肢は間違っている方を選ぶと、正しい方を選ぶまで無限ループする。つまり完全に無意味。
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ダンジョン(と呼べるかも微妙だが)も2つぐらいしかない。そもそも後述するがエンカウントがないので、ダンジョンといっても本当にタダの迷路である。
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一応宝箱ぐらいはあるが、原作の世界観に宝箱というもの自体がそぐわない。中身も消耗品だけで強力な宝貝が入っていたりはしない。
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緊張感ゼロの戦闘システム。
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原作を再現したつもりなのか、雑魚とのエンカウントが一切なくボス級の敵以外に戦う相手はいない。しかし、ワンダースワン版では普通に雑魚敵とのエンカウントがあるので腑に落ちない部分がある。
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時々雑魚扱いの敵もいるが、一度倒すと二度と出現しないのは他の敵と同じ。しかも豚型の「キント兵」とカラス型の「カラス兵」しかいない。出現場所で性能は変わるが、この二体での性能差は一切ない。
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固定バトルしかないせいで、主人公格のキャラクター除きほとんどの仲間キャラは1~2回戦っただけでメンバーから外れてしまう。好きなだけ活躍の場面を見ることは出来ない。
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ではレベルアップはどうするか、というと各主人公ごとに用意された修行(という名のミニゲーム)を行って上げる。クリアすると宝貝も手に入る。
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しかしこの修行の内容が微妙にそれぞれの主人公と噛み合っていない。「四不象での飛行訓練を行う太公望」「哮天犬で間違ったパネルを打ち抜く訓練を行う楊ゼン」など。
ナタクの戦闘訓練ぐらいはまともだが、正解がわかってしまえばそれを繰り返すだけなので実は全修行中一番退屈な内容になっている。
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また各修行ごとに異なるトレーナーが付くのだが、黄飛虎のトレーナーが清虚道徳真君という微妙なチョイス。原作では息子の黄天化の師匠、ぐらいしか接点がないのに。
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一応各修行自体はそれなりに面白いのだが、ハイスコアが記録されたりはしないのでやはり微妙。
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そもそも、レベルアップによる能力値補正が小さいので特にクリアしなくても進めることは可能。宝貝の数が少なくなるので多少キツくはなるが。
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肝心の戦闘は難易度が極端に低く、緊張感がない。
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相手の属性に合わせた宝貝を持ち込み、ゲージがいっぱいになったらその宝貝を使うだけで大ダメージは防げてしまう。
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「素早さ」という概念がなく、行動順は完全に固定なので「どのタイミングでどの属性の攻撃が来るか」は容易に予測できてしまう。
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「体」属性の技は極端に少なく、対処しにくくなっている。
体術属性、ということなのだろうが一番この属性にふさわしいであろう黄飛虎の技はなぜか全て無属性になっている。
「天然道士は宝貝を使えない」という余計なところだけ原作再現しているので、黄飛虎は「体力が多いだけで攻撃力最弱」という残念キャラになってしまっている。
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そもそも「火水地風」という洋風の4属性システムという時点で違和感がある。中華風の世界観なのだから「木火土金水」の五行の方が妥当ではないだろうか(五行自体が殷の時代より後に作られ、原作の宝貝には地水火風の印があることから原作通りと言えば原作通りである)。
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演出過剰でテンポが非常に悪い。
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一つの技で数十秒など平気でかかる。大技ばかりの十天君戦など苦行の域。
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「重要ポイントには豪華声優陣によるボイス付き!」とパッケージ裏には書かれている。
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一応嘘ではないが、ボイス量はPS時代ということを考えてもかなり少なく、本当に「重要ポイント」にしか入っていない。
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ボリューム極薄。10時間程度でクリアできる。
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もちろん前述の通り隠し・寄り道要素など皆無。
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一応ワンダースワン版で手に入るパスワード入力で、オマケが手に入る、という要素はある。しかし宝貝はともかく消耗品はほぼ使う機会がない。
評価点
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BGMの雰囲気はそこそこいい。
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中華風なBGMはよく出来ており、場所によっては非常に勇壮。
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何十種類もある攻撃用宝貝にはそれぞれ個別の攻撃モーションが用意されており、かなり豪華。
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各キャラの専用宝貝ではボイスも入っている。前述の通り音質は悪いが。
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ただ、この攻撃モーションのせいで非常にテンポが悪くなっているので、手放しに褒めることも出来ないが…。
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敵を倒す度に魂魄が封神台に飛び、名前が封神の書から消える、という演出がある。
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特に封神の書は序盤以外かなり長いこと登場しない要素なので、原作再現としては悪くない描写である。
総評
RPGを名乗ることすらおこがましい出来。「戦闘付きのアドベンチャー」と言った方が妥当かもしれないが、自由度が低すぎるのでそのように見るのも難しい。
キャラゲーの側面からも明らかな改悪が目立ち、到底褒めることはできない。
どうしても封神演義のRPGが遊びたい、というならばワンダースワン版2作をオススメする。
その後
最終更新:2024年05月16日 13:17