raf WORLD
【らふ わーるど】
ジャンル
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2Dアクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2MbitROMカートリッジ
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発売・開発元
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サンソフト
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発売日
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1990年8月10日
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定価
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5,500円
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配信
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プロジェクトEGG:2017年6月13日/500円(税別)
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判定
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良作
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ストーリー
宇宙暦373年……人類は宇宙に新天地を求めた。JAYの父は優秀な技術者であり、生活圏を得るために宇宙コロニーを建造するシリウス・プロジェクトの中心人物であった。しかし、突然の爆発事故により父は帰らぬ人となってしまう。唯一の肉親を失い途方にくれていたJAYは、父の机から一枚のディスクを発見する。「何者かがシリウス・プロジェクトへの妨害工作を行なっている。もしも私に何かあった時は、シリウスプロジェクトを頼む!」JAYは父の望みをかなえるため、父の敵を撃つため。単身姿の見えない敵へ戦いを挑むのであった。
概要
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ライフ制の横スクロール2Dアクション。武器は射撃武器で、『ロックマン』に『魂斗羅』の要素を加えたゲームと言ったところ。
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本来は映画『ターミネーター』のタイアップ作品として開発されており、国外のゲーム雑誌に実写取りこみのシュワルツェネッガーのスクリーンショットが掲載されていた。ところが、映画のライセンスを管理するCreative Licensing Corporation(CLC)の創設者であるRand Marlis氏は完成したゲームソフトのデモを見て、サンソフトから『ターミネーター』のライセンスを引き上げてしまった。その理由は「ゲームに現代の世界やサラ・コナーが登場せず、未来の世界でスカイネット率いるターミネーターの軍隊と戦うカイル・リースを主人公としたものになってしまっていたから」とのこと。開発にあたった日本のチームに対し、サンソフト・オブ・アメリカ側からは情報提供がなかったとされており、この結果を招いた一因と考えられている。こうした経緯でオリジナルタイトルとなったため、一部の敵キャラデザインや、BGMにその名残がある。
システム
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ライフ・残機・コンティニュー制。コンティニューは3回あり、それ以降はゲームオーバーでタイトル画面に戻る。
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ライフ回復はステージクリアによる全回復と、敵が落とすライフアイテム(回復量1.5目盛り)しかない。
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残機とコンティニューは増えることがない。(ただしコンティニューは下記の方法で増やすことは出来る)
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武器選択システム。最初主人公はハンドガンとショットガンを装備しているが、中ボスを倒すと新たに武器が順次追加されていく。
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ハンドガン以外の武器は使用のたびエネルギーが減少。エネルギーは一括で管理され、敵を倒すと回復アイテムを入手できる(回復量3目盛り)。
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武器の変更はスタート画面中にセレクトボタンを押して変更、順に武器が変更されていく。
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ジャンプ中の空中制御は出来ないが、方向転換は可能(同メーカーの『アトランチスの謎』とほぼ同じ挙動)。
評価点
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本作を知る人が最も良く語るのは「BGMが素晴らしい」である。
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とてもファミコンの音源とは思えないクオリティ。その音の抜けの良さや厚みから拡張音源を使用していると思われがちだが、実は内蔵音源だけで構成されており、拡張音源非対応のシャープファミコンテレビC1でも遊ぶ事ができる。
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シリアスでタフな世界観とマッチしたロック調のBGMは、バラード調からアップテンポな曲まで良曲揃いでゲームを盛り上げる。
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使用BGMは、クラリスディスクから販売されているサントラCD「RomCassetteDisc In SUNSOFT」に収録されている。
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この時期のサンソフト開発のファミコンタイトルのBGMはどれも評価が高い。『バットマン』『ギミック!』も参照されたし。
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典型的な覚えゲーなのだが、ただ敵を覚えるだけではなく、様々なテクニック(先置き弾による瞬殺・スクロールでの敵出現調整など)を使用するようになっており、とてもやり応えがある。
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敵の配置が実に巧みで、パッと見ではわからない面白さがある。
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末期FC作品なだけあってグラフィックレベルは高い。
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効果的な武器使用で難易度が抑えられるバランスになっており、多少歯ごたえはあるものの遊びやすい難易度になっている。
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敵の固さが程よく、敵を倒してる感をきちんと出しながらテンポ良く進めるようになっている。
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ただ、最終ステージの5面は敵が居ない強制スクロール面のため、この爽快感が失われている。
賛否両論点
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忍耐を要求されるステージデザイン。
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先述の通り、大半の敵が一撃では倒せず、サイズが大きく回避も難しいため、初見でダメージを受けずに進もうと思うと、牛歩で進みつつ一体ずつ確実に敵を倒していく必要がある(もっとも、敵は頑丈そうな見た目ほどは耐久力が高くないので、逆に拍子抜けする場合もあろうが)
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慣れたプレイヤーであれば、ある程度は敵を無視しながら進むことも可能ではあるが、それでもノーダメージで進むのはかなり難しい。
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ステージが短いため、その部分を補ってプレイ時間を稼ぐためのデザインだと思われる。
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後半ステージでは上から下に降りながら進むシーンがあるが、落ちたその場に敵が配置されており、知っていてもダメージを受けてしまう箇所が少なからず存在する。
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通常攻撃(ハンドガン)では当てることのできない箇所に敵が配置されており、天井も低く無視するリスクが高いため、こまめに武器を切り替える手間がかかる。
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これらの要素を「やりごたえ」と取るか、「ストレス要因」と取るかは好みが分かれる。
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プレイヤーのアクションがシンプル。
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基本的な左右移動、ジャンプ、しゃがみ、左右ショットのみの操作で、シンプルで簡潔ではあるが特徴に乏しい。
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同時期にリリースされた同タイプのゲームを見ると、『ロックマン3』ではスライディング、はしご昇降、水中移動など、『スーパー魂斗羅』では、8方向ショット、段差移動など、それぞれに特徴的なアクションが用意されているため見劣りしてしまう。
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ただ、高いところから落ちる時、真下ではなくややななめ前方に弧を描くような軌道で落ちるので、下に動かない敵がいる時に落ちる時など、加減が非常に難しい。
問題点
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見た目のインパクトに欠ける。
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BGMの質も高くゲームの出来もいいのだが、実際に触ってみないと面白さが伝わりづらい。
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ステージは全部で5面。全ステージクリア後、エンディングののちにループゲームとなるが、やや物足りない感がある。
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ライフ回復アイテムは、ドロップ率が非常に低く、1ステージ通して1つも出ないことさえあるほどだが、出ても肝心の回復量が少なく、1ダメージの重みがかなり大きい。
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逆に、武器回復アイテムは良くドロップする上に回復量も多いため、特殊武器を使用して極力ダメージを受けないよう攻略するゲームとなっている。
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ただし、よく落ちるとは言え、むやみやたらに特殊武器を連射してるとすぐゲージが空になるので、考えて武器を使っていく必要がある。
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また、特殊武器のゲージは『ロックマン』のように武器別ではなく、1本を全武器で共有しているシステムのため、どれか1つで使い切ったら終わりになってしまう。
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さらに、ボス戦でやられると、武器のゲージが回復しないまま再戦になるため、ハンドガンで戦うしかなくなってしまう。
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ステージバリエーションが乏しい。
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基本的に一本道で、分岐やアイテム回収などの寄り道要素もない。
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回復アイテムや1UPアイテムのセットもないため、少し無理をしてアイテムを回収する、といったルート選択の楽しみもない。そのため、ライフ回復は完全に運任せ。
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ステージごとに特徴的なギミックもない。見た目の雰囲気と登場敵が変わる程度。
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上下昇降するリフトが登場するステージもあるが、乗っている間は操作不能で敵も登場しないため、単なる演出でしかない。
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唯一、最終ステージだけ、強制スクロールに加え、ベルトコンベアとその上を流れるコンテナを飛び移るギミックが登場するが、練習シーンもなくいきなり本番(失敗すると落下して1ミス)になるため面食らう。
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最終ステージは他にも、液体が落ちる仕掛けの発動時間がスクロールの速さのわりには長く、途切れるまで待っていると間に合わないという強制スクロールにはそぐわない仕掛けや、下から押し上げる仕掛けはハマると二度と降りられず、電気のダメージで倒れるのを待つだけになるという酷い仕掛けがあり、かなり理不尽。
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ボスを倒すと自機の動きが止まってボスの爆発が始まるのだが、このとき「自機の当たり判定」も「ボスが倒す前に発射した弾」も消えていないので、ライフがギリギリだと、最後っ屁的な弾に当たって死んでしまうことがある。
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こうなるとまたボス戦を最初からやり直すハメになるので、当たらないタイミングで倒す、倒した瞬間伏せるなどの注意が必要である。
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また、ボス自体の攻撃は非常に単調で、パターンがあるため、それを見切ればハンドガンだけでもあっさり倒せてしまうため、歯ごたえが無い。
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エンディング後、スタートを押すと、またステージ1から始まるのだが、特殊武器がショットガン以外無くなっているのはともかく、ライフと武器ゲージはラスボス撃破時の状態のまま。つまり、ラスボス戦で減ったら減ったまま2周目に入ることになる。それくらいは全回復でもよかったのではなかろうか…。
総評
グラフィックやBGM、やり応えなど高いレベルでまとまっており、ファミコンの隠れた名作である。
特にBGMは一部で人気が高く、サンソフトの底力を感じさせる。
途中で制作方針が変更され、作り直しを余儀なくされた影響からか、ボリューム不足な点や、それを水増ししようとした感も見受けられるが、目立った不具合もなく丁寧に作られた作品である。
余談
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2019年にゲーム関連資料の保存を目的としたグループGaming Alexandriaによって本作が『ターミネーター』として開発されていたころのPVが発掘された。(動画)
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当時はその後MindscapeやLJNといったメーカーから海外向けにターミネーターのゲームが多数発売されたがどれも評判はあまりよくなかった。(『ターミネーター2』)
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説明書には4ページにわたって、オープニングの曲の楽譜が掲載されている。
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PS『メモリアル☆シリーズ サンソフト Vol.5』に今作が収録されている。(『へべれけ』と同時収録。)
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タイトル画面でBボタンを33回押し、スタートボタンを押すとコンティニューを増やしたり、サウンドテストができる。クオリティの高いBGMを自由に聞けるのもうれしいところ。ちなみにファンファーレ系の短い曲は未収録。
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タイトル画面のタイトル表記は「rAf」であるが、上記の裏技で行ける隠しオプション画面ではタイトル表記が「ROUGH」となっている。
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北米版は『Journey to Silius』というタイトルで発売されている。
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北米版は主人公のグラフィックが違うが、内容的には同じである。欧州版は英名こそ同一だが主人公は日本版と同じグラフィック。なお、海外版のグラフィックは日本で使われる予定だったようだ。
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後期サンソフト作品はレアソフトと化していることが多いが、本作もまたその一つである。
最終更新:2024年05月15日 12:33