SDガンダム GGENERATION WORLD
【えすでぃーがんだむ じーじぇねれーしょん わーるど】
ジャンル
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ウォー・シミュレーションゲーム
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル Wii
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発売元
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バンダイナムコゲームス
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開発元
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トムクリエイト
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発売日
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2011年2月24日
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定価
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通常版:5,800円(税別) コレクターズパック:8,800円(税別)
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廉価版
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PSP the Best 2012年9月6日/2,800円(税込)
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判定
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良作
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SDガンダム Gジェネレーションシリーズ
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概要
トムクリエイト制作Gジェネシリーズの一作。PSPとWiiで出ているが、どちらもステージ数など基本的な内容は全く同じ。
システムとしては、前作『WARS』(PS2/Wii)のものを色濃く受け継いでおり、完成度の高さも前作譲り。
その一方で対応機種に携帯機が入ったためか、スケールダウンしてしまった部分や、賛否両論ある改変点も見受けられる。
新システム、および調整されたシステム
STAGE RANKの導入
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本作では全てのステージ(戦闘マップ)が、RANK A・B・C・D・FINAL、計5段階の「STAGE RANK」いずれかに属しており、難易度が明確に区分されている。
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A~Dはそれぞれ、通常10ステージ+EXステージの11ステージ構成。FINALは例えるなら最終章であり、ここだけは3つのステージで構成される。
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プレイヤーはA~DからFINALへとRANK順に、つまり全11×4ステージ+3ステージを戦い抜くことになる、同じRANKの中では、EXが最後ということ以外は好きな順に挑める。
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クリア済みステージの再プレイも可能。
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一応本作でも各ステージは原作の特定名場面を題材にしており、展開もそれをなぞっていくが、プレイヤーを驚かす仕掛けが新たに増えている(後述)。
シークレットミッション
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前作の「ウォーズブレイク」に相当するジェネレーションブレイクを発生させる際、さらに追加条件を満たすことで出現する。
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成功すると、ベースになった作品とは別作品の全く違うキャラが唐突に登場する。例えば、『1st』をベースにしたステージの最中に『00』の面々が乱入するなど。そのまま物語が進むのはシュールですらある。
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乱入するのはエースクラスの強敵揃いだが得られる経験値も多く、出現させた時点でキャピタルボーナスももらえるため儲けは大きい。
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基本的に仕組みはウォーズブレイクと同様。自信のない人はあえて発生させずにステージクリアすることも可能。
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ちなみに最終ステージ一歩手前で登場するシークレットは『SPIRITS』最終ステージに登場したあの機体。
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なお本作では条件を満たせばそれを自軍で使えるため『SPIRITS』版に比べるとかなり性能が抑えられている。とはいえ、さすが隠し機体だけあって圧倒的に強い。
マイキャラクターの作成
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新登場のキャラメイクシステムにより、名前・性別・容姿・戦闘BGM・担当声優・成長タイプなどを自由に選べる。
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容姿は一般兵風のヘルメット姿。上記の各設定を、たとえプレイ途中でも自由に変更できるのが嬉しい特徴(性別と成長タイプだけは途中変更不可)。
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初期能力は低いが、ノーコストで8人まで作成できるので序盤の数合わせとしても役に立つ。経験を積ませればちゃんと成長もする。
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これとは別に、お馴染みの「Gジェネオリジナルキャラ」達も続投している。彼らの設定変更は残念ながら不可能で、これまでのシリーズで可能だった名前変更もできなくなった(次作以降でも不可能)。
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PSP版はすれちがい通信で、自分の作ったマイキャラデータを他者へ配信することも可能。
登場作品
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下記作品が新規に登場している。また前作『WARS』ではゲスト扱いだった『00』のセカンドシーズンが本格参戦。
『機動戦士ガンダム戦記 BATTLEFIELD RECORD U.C.0081』
『機動戦士ガンダムUC』(当時発売されていたepisode 2までの収録)
『F91-MSV』
『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』
『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』
『M-MSV』
『ASTRAY』
『X ASTRAY』
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さらに今まで原作再現されていなかった『ASTRAY』にようやく単独ステージが用意された。
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『F』を最後に原作再現がされなくなった『センチネル』の機体やキャラもシークレットミッションで乱入してくる。
ユニット関連
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マップにおけるユニットサイズが一部変更になり、前作まで4マス相当の2Lサイズだったものは1マスのLサイズ、もしくは9マス相当のXLサイズに変わった。
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また呼称が変化したものもあり、9マス相当の3Lサイズは「XLサイズ」に、ユニットによって使用マスがバラバラだった4Lサイズは「XXLサイズ」とされるようになった。
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さらに戦艦については、前作までシルエットに忠実な形状だったが全て大ざっぱに長方形として扱われるようになった(もちろんサイズによって長方形の面積は異なる)。
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このおかげで「戦艦の凹み部分に別のユニットが来てしまい、戦艦の移動・方向転換ができなくなる」という難点については発生しなくなった。
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MSにマルチロック武装が登場し、射程内の敵を最大3体まで同時攻撃できるようになった。
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これまでは戦艦専用だったが、本作では一部のMSにも搭載されている。
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ユニットのレベルアップ時のアビリティアップボーナスが、キャラクターのレベルアップ依存ではなくユニットレベルが20を超えると自動的に上昇する仕様となった。
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マスターキャラクター選択時に参入するベーシック機の能力値(HP・攻撃力・防御力・機動力・移動力など)が統一された。
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ただし、移動適性や変形など機体固有のアビリティについては機体ごとに差異がある。
メニュー関連
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移動後、攻撃可能な敵には自動的にターゲットが表示される「ターゲットアシスト機能」が追加。
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設計可能なユニットの組み合わせを自動で行い、一度に生産リストへ登録できる「全設計」が追加。
評価点
参戦作品の増加
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新規参戦が増えたことでユニット数、キャラクターおよびスカウト可能キャラクター数、戦艦数の全てにおいて前作よりも増加した。
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敵やラスボス専用のオリジナル機体も条件を満たせば使えるようになっているのも特徴。
UIの充実
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前述のように全設計が追加されたことで設計の組み合わせをいちいち探す手間がなくなった。
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また、設計済みの組み合わせと未設計の組み合わせが色分けされており、未設計の組み合わせがわかりやすくなっている。
スカウトキャラクターの多さ
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スカウト可能(自軍で雇用できる)キャラクターは非常に多い。主人公キャラはもちろん、原作では敵だったキャラもスカウトして多数使用できる。
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さらに中には明らかに戦闘要員でないキャラ(マリーメイア・クシュリナーダなど)までいる。
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また、本作では一部を除いてスカウト可能キャラに関する制約がなくなった。そのため資金さえあれば、最初からいきなり自分好みのドリームチームを作ることもできる。
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カチュア・リィスやシス・ミットヴィルといった『F』のオリジナルキャラクターや、『SPIRITS』にいたキャラクターが何人か復活している。PS時代からのファンにとっては嬉しい限り。声優も一部変わった。
主題歌
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前作にはなかったオープニング・エンディングテーマ、挿入歌がある。
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歌唱を担当するのは川添智久と鵜島仁文によるユニット「TOP GUN」と米倉千尋。
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ちなみに3名とも「ガンダムシリーズ主題歌の歌唱経験がある」という共通点を持つ。
シナリオ性の強化
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今作は前作に比べてクロスオーバーの要素が強くなっている。また、あらゆる原作作品が無秩序に混ぜ合わされており、そのような状態になった経緯も作中で説明される。
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今までのトムクリエイト制作Gジェネでは、どんな原作キャラだろうとスカウトできるプレイヤー軍の存在理由や、時代を超えて異なる原作世界を転戦している理由は「そういうゲームだから」とばかりに何の説明もなく済まされていたが、本作ではそれらがストーリー上で意味のあるものとして詳細が説明されている。
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ゲーム開始後、最初に「オープニングステージ」をプレイすることになり、『00』セカンドシーズンをベースに『UC』と『DESTINY』のクロスオーバーが展開される。そしてここでの戦いの結果、先述した「STAGE RANK」で区分される世界構成が生じた、という展開でゲーム本編の幕が開ける。
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なおオープニングステージでは自軍部隊の出撃はできず、マップ上に配置されたゲストユニットのみで攻略することになる。
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通常ステージは(ジェネレーションブレイクによる乱入を除けば)ほぼ従来通り原作を再現したものとなっているが、EXステージは大胆なクロスオーバーステージとなっており、様々な作品のキャラが世界観も時間軸も超えて轡を並べる、夢の共演が実現している。
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EXステージの冒頭ではファン感涙のアムロ(何故か『1st』)・カミーユ・ジュドーVSシャア(『逆襲のシャア』)・ハマーン(『Ζ』)や絶好調すぎるギンガナムVSドモン・ヒイロ(『EW』)・ガロードなどの夢の対決がムービーで見られる。ファンなら一度は見ておきたいところ。
ゲームバランス
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『F』から前作『WARS』までのトムクリエイト制作Gジェネでは、ステージは作品ごとに区分されており、プレイヤーはどの作品から手を付けるかを自由に選ぶことができた。
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例えば『SEED』作品が好きなプレイヤーは、真っ先に『SEED』絡みのステージだけを最初から最後まで遊ぶといったことができる。
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こうした自由度の高さが大きな魅力・特徴だったのだが、一方で全ての作品=ステージが初期状態からでもクリアできる(少なくともそれを意識している)難易度調整になっていたため、自軍の陣容が整ってくる中盤以降は、敵が弱すぎて作業ゲーになってしまいがちという欠点も持っていた。
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本作ではそのシステム・コンセプトを一新し、「RANKが高いほど敵が強い」というオーソドックスな難易度設定となり、進行上おおむね自軍の強さに見合った敵が常に出現するようになり遊び甲斐が増した。
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EXステージをクリアするごとに新たなマスターユニット(主人公キャラと主人公機のベーシック機のセット)を選ぶこともできるようになった。
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もっとも終盤になれば大抵ベーシックどころかオリジナルの機体を入手しているので、マスターユニットを選ぶ意義は「主人公キャラを無料でスカウトできる」ことに移ってしまうが。
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ちなみにマスターユニットにできるキャラをスカウト済みの場合、一緒についてくるユニットしか手に入らない。
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先述した通り、STAGE RANKが上がるほど敵が強くなっていくため、自軍の成長と敵軍の強さのバランスがちゃんと取れており、最後まで歯ごたえのある戦闘が楽しめる。
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ただし従来作と同様にクリア済みステージを何度も再プレイしての稼ぎができるので、それにより自軍を極限まで鍛えて敵を一蹴するプレイも可能。
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中でも特に、EXステージに登場するオリジナルの敵機体およびキャラクターがかなり強めに設定されており、緊迫感のある山場となっている。
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基本的にオリジナル機体と戦うのはEXステージのみだが、それなりに育てていないと苦戦する。
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そしてこれらと最後の決着をつけるRANK FINALでは、相当育てていないと歯が立たない。
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シナリオ上のライバルキャラやラスボスについては、常軌を逸した強さが不自然にならない本作オリジナル機体の乗り手であり、『F』以来の問題点(機体を強化しすぎて後半の戦闘が作業と化す)に対する一つの回答とも言える。
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さらに一度クリアすると、『SPIRITS』で隠し要素だった難易度3倍モードに当たる「HELL WORLD」が登場。最初のステージのザクII&一般兵ですら最新鋭ガンダムに匹敵する性能とエースパイロット並の能力を持って襲いかかってくる。
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序盤の量産機&名無しの一般兵ですらそれなので、終盤のガンダム系&エースパイロットともなると生半可な機体やパイロットでは触れることすら叶わず塵にされてしまう。
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また、このモードでしかプレイできない、隠された真の最終ステージも存在する。
賛否両論点
総ステージ数が減少した
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機体数などは前作よりも多いが、ステージ総数については減っているため、実際にプレイしての体感としては前作よりボリュームが減少しているとも感じられる。
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前作ではEXステージで4回も発生した「ウォーズブレイク」の回数も、今作のジェネレーションブレイクでは全ステージにおいて最大2回までとなっている。
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もっとも容量との兼ね合いもあるし、手軽と見るかボリュームが少ないと見るかは人それぞれだろう。
ジェネレーションブレイクの存在
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ジェネレーションブレイクは前作のウォーズブレイクよりカオスな流れになっていることが多い。
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STAGE RANK Aの「木馬 出航ス!」からして『1st』の序盤を再現しているステージなのにガンダムMk-IIやガンダム試作2号機が登場し、『00』の人類革新連盟が地球連邦軍所属のホワイトベースの敵に回るなど深く考えるとよく分からない状況になっている。
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先述したように場所や状況を主軸として原作再現が無秩序に混ぜ合わされている理由は作中で説明されているのだが、原作に詳しいと却って違和感を抱えたままプレイすることになりがちで好みが分かれる仕様となっている。
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一方でステージ数の制約に囚われずに多くの原作の再現を行えているという側面も存在する。
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その他、ミーア搭乗のライブザクウォーリアや(実戦配備型ではない)0ガンダムのような原作の展開からすると戦闘機会を用意するのが難しいユニットもシークレット枠で出すことが可能となっており、取り敢えずゲーム内に収録されているだけという状態に陥らずに済んでいる。
レベルアップ時のアビリティアップ(成長ポイント)増加の仕組みが大きく変わった
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先述の通り、キャラクターレベル依存からユニットレベル依存に変更された。
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また開発時に、開発前の機体能力値によって上昇値にボーナスが付くことも無くなった。
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つまり、育てた強いユニットを弱いユニットへわざと先祖返りさせボーナスを得るということは出来なくなり、弱機体の育成の近道が塞がれてしまった。
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しかしながら、理論上の最強機体を作り上げるために必要な手間や時間は大幅に減っており、そのことを喜ぶプレイヤーもいるため、プレイヤーの反応は大きく賛否両論に分かれた。
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開発ボーナスを無くすならいっそのことキャラクターのレベル&機体のレベルの両方(片方の上昇ボーナス+もう片方の上昇ボーナス)で上昇値ボーナスが決定するようにすれば良かったと思われるのだが。
戦闘演出の簡略化
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前作にあった戦闘前の登場演出、コックピットカットインや被撃墜時の爆発演出、汎用の支援防御演出などがなくなり、前作より簡素になった。
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ただし戦闘アニメの質そのものは良好で、特定場面での連携演出などは前作以上に凝った演出を拝める。また、「簡略化のおかげでテンポが良くなった」との意見もある。
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前作にあった登場演出の一部は回避演出に流用されていたりもする。ただ、そのおかげで「華麗に決めポーズを取りながら被弾する」という妙な絵面が生まれる場面も。
キャラクターの容姿
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個人的な好みの問題にもなるが、一部の原作キャラクターのグラフィックは賛否両論である。
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戦闘時にヘルメットを着用するキャラの多くがヘルメット装備の顔グラになる。原作でもヘルメット装備だったといえばその通りなのだが、近年のスーパーロボット大戦シリーズはヘルメット装備のグラフィックはだいぶ無くなっており、本作でもそうして欲しかったという声も少なからずある。
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とはいえ、『Ζ』原作で「宇宙ではMSのコクピットの中でもヘルメットのバイザーを上げてはいけない、ノーマルスーツ&ヘルメット無しなんてとんでもない」という趣旨の発言があったため、少なくとも宇宙マップに限れば世界観の観点ではこちらの方が自然である。
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『X』のティファなど、一部キャラの顔グラに多少違和感があるものも。
マルチロック武装が強過ぎる
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全体的に燃費が悪く一回の攻撃につき狙えるのは3機までという制約こそあるものの、「移動後に攻撃可能」「攻撃力が高い」「最初に指定した機体(1機目)以外からは反撃されない」「1機目を撃破すればチャンスステップ発動」など元々のメリットから鍛えれば化け物じみた殲滅力を機体に付与する。
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例えば、敵A(ボス格)・敵B(ザコ1)・敵C(ザコ2)を同時に狙ったとして、1機目にAを選択するとAからの反撃を受ける可能性があるが、順番を変えて1機目にBかCを選ぶと、それだけでAの反撃を封じられる。プレイヤーにとってはメリット尽くしだが釈然としない。
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この結果、マルチロックの有る機体と無い機体との使い勝手及び利用価値において大きな格差を生んでしまった。
また、マルチロックのある機体(の武装)の選別も曖昧で、原作では実際に一度に多数の撃破をしている武装から実際にマルチロック機能があるにもかかわらず、本作のマルチロックが実装されてない武装を持つ機体が存在するなど、不公平性も目立つ。
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上記のメリットがMAP兵器のメリットを上回っているため、MAP兵器の存在意義が従来にも増して薄いものとなっている。
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ただし基本的にマルチロック武装のほとんどは元々前作まではMAP兵器扱いであり、MAP兵器だったがゆえに使いにくかった武器および機体に対する救済策とも取れ、これにより地位が向上した機体もある。
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流石に目に余ったのか、『OVER WORLD』では「マルチロックの2機目・3機目は威力半減」という形でやや調整が入った。
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それでも問題点の解消に至らないと判断したのか、OWから4年後に発売された『ジェネシス』では削除されている。
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なおMAP兵器にも「必ず命中する」「反撃を一切受けない」「ダメージ量が相手の防御力等に影響されず常に一定」「各種の特殊効果を与える物も存在する」といったメリット・特徴があり、有効な局面がある点は明記しておく。
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MAP兵器の特徴を強く実感するのは、実は敵に回した時である。自軍ユニットがどれほど強くなろうがお構いなしに、必中で一定量の損害を与えてくるMAP兵器は、常に大きな脅威となる。
BGMの変化
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原作由来のBGMは、過去作のような意図的に音を外したアレンジが撤廃され、概ね原曲に忠実な構成で統一されている。
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特に『STARGAZER』の戦闘BGMを原曲仕様で収録したのは本作が初。同作品は2024年に至るまでサウンドトラックが発売されていなかったこともあり、長きにわたって貴重な音源化の機会となっていた。
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一部のGジェネオリジナルBGMには曲名も設定され、本作で固有名詞が判明した楽曲も少なくない。
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この一方で、全体的にBGMの数は減少しており、作品によっては戦闘BGMが味方陣営と敵陣営の計2曲のみというのも多々ある。BGMの尺に関しても、ほとんどはループが短くなっていて簡略化されており、加えて変なところでループして盛り上がりに欠けるBGMも多い。
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例えば、『V』は敵陣営のザンスカール帝国の戦闘BGMがこれまでの「夏に春の祭典を!」からウッソ達の戦闘BGMと同じ「震える命」になったり、『G』の東方不敗マスター・アジアの戦闘BGMが専用の「惨劇の足音」から汎用敵戦闘BGM「激闘の中 それぞれの約束」に変更されるなど、全体的に専用の戦闘BGMが省かれて統一される傾向にある。
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マップBGMも、原作に合わせてBGMが個別に設定されていた過去作と違って本作ではゲームオリジナル曲で統一されてしまい、原作の雰囲気は薄れている。
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これらの簡略化に関しては容量の都合を考えれば仕方ない部分ではあるのだが、とりわけ古参のプレイヤーには「何か違う」と感じられることも。
問題点
一部のユニットの取捨選択が微妙
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新規参戦が多い分、微妙なユニットや「何故これを削った!」と言いたくなるユニットも多い。マイナーなMS、戦艦も多くが削除・生産登録不可になってしまっている。
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アストレイ系ではレッドフレームとブルーフレームはなんと最初の仕様のみで、強化型のパワードレッドやセカンドLなどは一切無い。
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ストライクやインパルスにはこれまで通りハードポイントシステム(以下HPS)による換装機能が残っているが、別にHPSにする必要のないクロスボーン・ガンダムのABCマントあり/なし、試作1号機とフルバーニアンのHPS化など、今までのシリーズをプレイしていたら首を傾げるような機体が換装可能になっている。
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一応、上記の例でいえばクロスボーンはマントありが削除されるよりはマシであり、GP01も換装化によって地形適性の幅が広がっているなど、ゲーム上で利便性が上がっている面はなくもないのだが…。
スカウト可能キャラクターが増え過ぎた弊害
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多作品に登場しているアムロやシャアなどに見られる、複数の容姿持ちキャラは作品ごとに別キャラ扱いされており、それぞれ個別にスカウトする必要がある。
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一方でマ・クベ(『1st』)やハイネ・ヴェステンフルス(『DESTINY』)等ある程度需要のありそうなキャラが使えない、とスカウトキャラの選考にやや偏りがある。
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この仕様のため同一キャラのみで構成されたチームが作れたりする。なお容姿だけでなく、それぞれ能力値とスキルが異なり、キャラクターとしての差別化はされている。
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トビアなどは『クロスボーン』版と『鋼鉄の7人』版を容姿変更で切り替えられるようになっているが、こちらは能力に全く変動が無い。この選定にも首を傾げてしまう。
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さらに「ウイングゼロに乗って暴走したカトル」「デストロイに乗って暴走したステラ」「ルイス(イノベイター版)」など、それこそ容姿変更で事足りるようなキャラも個別に分かれ、パラメータの性格が敵専用の「狂気」に設定されている。なお前々作の『SPIRITS』では容姿変更で性格がこれらと同じく狂気に変化するマレットがおり、この種の違いを容姿変更でまかなっていた。
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容姿変更での性能変化システムの方が、別キャラとして用意するより容量を食ってしまうなど何かしらの問題で本作では実装できなかったのではないだろうか。
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理由が上記の場合、カトル等の該当キャラはシナリオである程度重要な場面で登場するため、容姿変更が出来ない以上別データで出さざるを得ず、どうせ出すならプレイヤーにも使えるようにしよう、というサービスの一環とも捉える事ができるだろう。
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これらのキャラクターは通常のスカウトができず、ユニットコレクションの達成率によって加入するため、オマケ要素のような色合いもあったと考えることができる。
一部のキャラクターにボイスが無い
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一般兵は基本的に全員ボイスなし。戦闘演出の簡略化により、自軍に加わるスカウトキャラでもブリッジクルーなどのサブキャラ級はボイスなしの者がけっこう多い(イザーク、ディアッカあたりの主要キャラでもボイス無しだったりする)。
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にもかかわらず、ゲーム内で見られるキャラクタープロフィールには今作から全員に担当声優が記載されている。原作におけるデータという意味なのだろうが、ゲームに出演していない声優の名前を記載するのは誤解の元であろう。期待していると肩すかしを食らう。
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『WARS』にあった配置適性は廃止された。しかし原作では乗っていない組み合わせ(ミライ・ヤシマをパイロットにした場合など)にするとボイス無しになるキャラが多い。
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もっとも容量でPS2より劣るPSPベースでグラフィックなどを維持しつつ機体やキャラを増やしている以上、どこかしら犠牲になるのは致し方ないところであるが。
限定状況下で発生するダメージのインフレ化
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本作ではダメージ計算式の問題から、防御力が極端に低くなるとダメージが異常なまでに跳ね上がってしまう。バルカンでも余裕で1万超するほど。
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限定的とは言え、キャラクターアビリティ「冷徹」のレベルをMAXにすれば簡単に相手の防御力を下げる事すら可能。
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ただ、「HELL WORLD」にもなると敵の性能も底上げされるため、ダメージのインフレが起こらないばかりか、ダメージ増加自体も大した事のない数値になってしまう。
テンポの劣化・PSP版のバグの存在
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『WARS』では×ボタンを押し続ける事で敵ユニットの移動アニメや破壊前のショートアニメスキップ、メッセージ早送りなど、非常にテンポよく進行出来たが、本作ではXXLサイズのユニットの移動アニメとメッセージの早送りしか出来なくなっている。
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この他、START+SELECT+L+Rで強制リセットが出来るのは前作と同様だが、戦闘アニメの前後や戦闘前の会話中などの時は何故か強制リセットが出来ず、終わるのを待たなければならない。
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PSP版はWii版に比べてロードが遅いため、非常にテンポが悪い。また、フリーズバグの発生も多く報告されている。
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一応データインストールはあるので、実行すればテンポ面は大分マシになる。さらに言うなら、データインストールがなかった『PORTABLE』と比べれば雲泥の差である。
総評
参戦作品の増加とそれに反する容量の制限故に起きた弊害も否めないが、機体等のボリューム・グラフィック・アニメーションなど、かなりの高水準でまとめられた良作。
携帯機と据え置き機の両方で出ているため、プレイスタイルに応じて好きな方を選択できる。手軽にどこでも遊びたいならPSP版、快適さを求めるならWii版がオススメ。
余談
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本作には「バルバトス」という名前のオリジナルMSが登場する。
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本作発売から4年後に発表されたアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の主人公機が偶然にも「ガンダム・バルバトス」という名前であったため、一部で混乱を招いた。
最終更新:2024年04月25日 02:06