ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国
【がらくためいさくげきじょう らくがきおうこく】
ジャンル
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ラクガキRPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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タイトー
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開発元
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タイトー(ガラクタスタジオ)
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発売日
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2002年3月20日
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定価
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7,140円(税込)
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廉価版
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Playstation 2 the Best 2003年1月16日/3,045円(税込)
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判定
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良作
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ラクガキ王国シリーズ ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国 / 天才ビットくん グラモンバトル ラクガキ王国2 魔王城の戦い
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概要
「落書き」をテーマとした異色のRPG作品。
プレイヤーが描いた落書きをそのまま3Dキャラクター化して戦わせるというユニークなシステムが大きな話題となった。
ゲーム内容
ラクガキ
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プレイヤーが自由に描いたキャラクターが3D立体として変換され3D空間に反映されるというシステムが本作の大きな特徴であり、ゲーム性の根幹をなしている。
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作成するキャラクターは「からだ」「あたま」「あし」「はね」「うで」などのパーツに大別され、「からだ」を基調として各部位を描いて付け足していくことによりキャラクターを作っていく。
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ゲーム開始直後は「からだ」と「かたい」しか使用できないが、ストーリーを進める事で使用できるパーツが増えていく。
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描いた部位に応じた動きが自動的に付加されるようになっている。
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「あし」はくの字に曲げた部分が膝に、「うで」の先端に付けたパーツは指になり、「あたま」に「かたい」を付けると角になったりする。
プレイヤーの発想次第で基本の動き以外にも様々な動作を表現することもできる。
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ラクガキのサイズ及び使用した色は、後述のラクガキファイトにおける自作のラクガキの強さに影響する。
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最後に描いたラクガキは、自動的にホームに放牧される。
描いたラクガキで対戦する『ラクガキファイト』
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描いたラクガキは一般的なRPGに近いシステムの「ラクガキファイト」で自分側の駒として使うことができる。
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前述の通り、キャラの性質は基本的に使う色のバランスや大きさによって決定される。
タイプはメインに使った色で3種に分かれ、赤系・黄色系はこうげきタイプ、青系・緑系はまほうタイプ、白・黒・灰色はバリアタイプになる。
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こうげきタイプ:HPと攻撃力と素早さが高くなりやすく、単純な体力の削り合いに強い。その代わりまほうワザの威力が低く2つしか習得できない、バリアワザは特別な効果のない「バリア」になる。また、最大PPに3タイプ中最大の減少補正がかかるため、PP切れを起こす危険が高め。撃てる回数こそ少ないものの相手のまほうのデバフをほぼ無効化する「まほうしっぱい」などまほうに牽制できるまほうが得意なタイプで、それを活かして相手のコンボを無効化し殴り合いに持ち込むのが得意。
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まほうタイプ:まほうワザの威力に補正がかかる上に、まほうワザの習得数も最大の4つ。最大PPの増加補正も大きくまさにまほう特化。バリアワザの「マバリア」は威力は低いが相手のまほうワザを受けた時に、そのワザの消費PP分だけ自分のPPを回復する。欠点としては攻撃力や最大HPへの減少補正がかかっているため、単純な殴り合いに弱くデバフを上手く使えないと不利。まほうの中では「バリア暴走」などの相手の行動をコントロールするまほうが群を抜いて強力で、「まほう封印」と合わせてPPの限りずっと相手に行動させないコンボなどは特に強力。
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バリアタイプ:バリアワザの威力に補正がかかり、バリアワザの「マカエシ」は相手のまほうワザの効果を反射する。ステータスは特別大きな増減補正はないバランス型で、まほうワザの習得数も他タイプの中間となる3つ。まほうは低コストで相手の攻撃力を半減させる「ペッタンコ」や時限式で相手に特大ダメージを与える「水ふうせん」など持久戦を意識したものが多い。まほうを反射してこそ価値が発揮されるタイプのため、あいこ狙いをセオリーとしてプレイするとやや活かし辛い。
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戦闘システム
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手持ちのラクガキから最大3体を選び、「こうげき」「まほう」「バリア」「チャージ」の4種のワザをターンごとに選んで戦う。
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ルールはじゃんけん方式だが、「連続で同じワザは選べない」「三すくみだけでなく第四の選択肢としてチャージがある」「まほうワザによりPP管理や状態変化と言った戦略性が加味されている」と言った独自のルールが存在する。
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ワザはこうげき→バリア→まほう→こうげき…の三すくみになっており、有利なワザを選んだ方はそのターン一方的に攻撃を行える。
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「こうげき」:直接攻撃する高威力ワザ。ラクガキのパーツで使う技の頻度や威力が決まる。
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「まほう」:PP(いわゆるMP)を消費して相手にダメージ+状態変化を与えるワザ。
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「バリア」:相手にダメージを与えつつまほうワザをガードできるワザ。
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「チャージ」:相手にダメージを与えられず、全ワザに勝てないが負けることもない、HP回復+次のワザの威力を倍増させる効果がある。
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PPは毎ターン開始時に自動で1回復する。
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同種のワザを選んだ場合(あいこのターン)はすばやさ順で互いにワザを打ち合う。この時に先手の攻撃でHPが0になると、後手側の攻撃は発生しない。
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ラクガキは色や形によってタイプや得意ワザなどが変化するため、シンプルながらロジックや読みが重要となっている。
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戦略性について
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まほうワザの種類は豊富でRPGでよくある行動不能・デバフ・追加ダメージの他、特定のワザ種を一定ターン使用不能にする「○○封印」系や、特定のワザ種を勝手に発動させる「○○混乱」「○○暴走」、相手のPPに作用する「PPはかい」や「PPろうひ」などまである。
まほうのアドバンテージの比重が非常に重く、これらを駆使して有利に立つ事、逆に自分が喰らわないようにバリアや自身もまほうでコンボを防ぐ事が戦略上求められる。
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特にまほうの得意なタイプのデバフはPPが続く限りずっと自分のターンになるコンボなどが存在し、対策されていないと一方的なゲームになりやすい。一方でそれらを完全に無力化し一方的に勝てる構成も存在し、一強にならないメタが存在する。
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強いラクガキを作る上では、まほうの種類を吟味する事も重要なファクターとなる。
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連続で同じワザ種は選べないため、相性で勝った次のターンは有利な選択肢からワザを選ぶ事ができる。
一方的に攻撃されない選択を重視する事は攻略本でも紹介されたセオリーの一つ。
しかし、ステータス差がある場合やまほうによる状態変化が心配される場合はセオリー遵守以外の選択も必要になり、ただのじゃんけんには無い戦略性が生まれている。
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ただし、深い戦略が不可欠となるのは裏ボス程度。
ラスボスですらそこまでの熟考はしなくても勝てる難易度な上、裏ボスに挑むには後述の問題もあるため、ストーリークリアで終わってしまった人に戦略性が認知されていないのも仕方がない。
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ラクガキファイト終了後にはラクガキを描くのに必要な「カラー石」が戦闘結果に応じた量をもらうことができる。
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お金はカラー石を換金することで入手でき、ラクガキやペンを購入することができる。
評価点
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個性的な世界観や魅力的なストーリー
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メインストーリーは、「ラクガキ」と「人間」の関係や、ヒバナとタローのガリレオへの思いなどが描かれており評価も高い。
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ゲーム内アニメーションはスタジオジブリが手掛けている。
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自分の書いた「ラクガキ」を戦わせるという斬新なシステム
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誰もが一度はイメージする自分の頭の中のキャラクターを描き、それを戦わせることができる。
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適当にパーツを組み合わせるだけでもちゃんと動くが、工夫をすることで色々な動きを作れるので非常に楽しい。
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オリジナルや二次創作のキャラ、バトル特化のキャラを描いたり単純に面白い動きをする物体を描くなど、自由度は高い。
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シンプルな戦闘システム
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コマンド選択式のバトルなので複雑な操作はいらず、システム自体もシンプルでわかりやすい。
そこにラクガキのタイプによる得意技の違いを設けることで変化をつけている。
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敵として出てくる沢山の魅力あるラクガキ達
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3000体以上のラクガキが収録(公式ソース)されていて、様々なデザインとそれらの生み出す動きを眺めるのも楽しい。
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スタッフ以外に、一般の人からプロの漫画家・イラストレーター等(公式ソース)までと幅広い人から寄せられたラクガキが収録されており、デザインのバリエーションは非常に豊富。
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やなせたかし氏や松本零士氏などといった大御所作家からも提供されている(ソース)。
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ゲーム終盤や裏ボスとして登場するラクガキは不気味さやかっこよさが際立ち、通常のラクガキとは違った魅力を持っている。
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高度なNPCのAI
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プレイヤーの行動パターンを分析して学習するAI
が採用されている。
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例えばプレイヤーが「チャージ」の後「こうげき」を選択する頻度が高い場合AIはこうげき重視の思考であると判断しプレイヤーが「チャージ」をした次のターンは「まほう」を優先して出しやすくなる。
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NPC毎に学習レベルが保持されており、対戦回数が多いNPCほど行動パターンを読んでくる。逆にそれを利用してセオリーから外した行動で引っかけることもでき、その場合NPCが驚いたようなリアクションをとる。あたかも対人しているようなプレイ感覚が味わえる。
賛否両論点
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シンプルな戦闘システム
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評価点の一つでもあるが、「単調過ぎてつまらない」「同じようなバトルの繰り返しでダレた」と言う意見も少なからず上がっている。
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ベースがじゃんけんであるため、前述の戦略性を理解できなかった人からは運ゲーと思われている事も。
問題点
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ロードが長い
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エリアを移動するたびに長いロードが入るため非常にストレスがたまる。
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育成のために海ギャラリー(ラクガキファイトができる)を何度も利用することになるので嫌でも悩まされるハメになる。
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戦闘テンポの悪さ
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ひたすら戦闘を繰り返すというゲーム性ゆえに戦闘テンポの悪さは致命的。
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一回一回の行動が長く、早送りやスキップの様な物も存在しない為、上記したロードの長さと相まって一回の戦闘をするだけでもかなり時間を取られてしまう。
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ラクガキの形状や使用したパーツがダイレクトにステータスに影響する
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強力なラクガキを作るためには見た目を捨てる必要がある、強力なラクガキは幾何学図形のような無機質なものになりやすい。
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攻略本によればワザの習得にはロジックが決まっている。まほうワザの習得もランダムではない。
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タイプごとの格差が大きい
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ゲーム内容の項目で述べたようにタイプごとで性能に個性が付けられている。しかし、長所と短所の釣り合いが十分とは言い難く、格差を生じさせてしまっている。
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こうげきタイプのPPの尽きやすさはリスクとしてかなり大きい。最低消費のまほうの分のPPも無ければじゃんけんの手が減る事態になるため、消費の大きなまほうは使わせづらい。そのせいでまほうの効果で相手をコントロールし有利を取ることも難しい。また、バリアでまほうを無効にできた時の追加効果がないことも残念なところ。
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バリアタイプはマカエシによる反射が強力なものの、あいこ狙いが基本セオリーなこのゲームで反射できる機会は多くない。反射できたとしても状態異常効果は相手のまほうに依存するためコンボに繋げづらい。対人戦となるとなおさら警戒されやすく反射はまず不可能。バリアタイプ専用のまほうワザもパッとしない効果のものが多く、ステータスもバランス型のため今一つ長所に欠ける。
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一方で終盤ボスや裏ボスはボス専用の強烈なまほうワザを使用してくるため、バリアタイプで積極的に反射を狙うと有利に戦えることもある。
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対人戦でも自分がバリアを選べる時は相手がまほうを選びづらくなるおかげで読み合いで有利。特に第1ターンやお互いがチャージを選んだ後のお互いが全ての手を選べる場面であいこ以上を狙いやすくなる。
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総合的にはまほうタイプが最も使いやすい。まほうタイプなりのステータス下降補正はあるにはあるが、上記のような大きな欠点はなく、強力なまほうワザを使いやすいという利点の方が大きい。
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行動範囲が狭く、できることが少ない
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ストーリーやマップは作りこまれているものの、プレイヤーが移動できるマップがとても少ない。
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できることは「ラクガキを書く」「ラクガキを戦わせる」位なので魅力ある世界観を能動的に楽しめないのが寂しい。
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町にはたくさんの個性的な住人が居るが、ほとんどは対戦相手としてしか関われない。ストーリーに絡むのもほんの一部。
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クリア後に100万ゴールドを集めると裏ボスラクガキ達と戦う事ができるが、それだけのゴールドを集める事は困難
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カラー石を売る以外にゴールドを稼ぐ方法は無いため、ラクガキファイトを作業的にひたすら繰り返すことになる。
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やり込み要素と言えばそれまでだが、100万ゴールドを稼がないと魅力溢れる裏ボスの姿を拝めないのは残念な点である。
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ちなみに裏ボスには余談の「ハクレイのミコ」や、地下ギャラリーのムービーでとあるキャラが使用するラクガキも含まれる。
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プレイヤーが使用できない「半透明」の色がある
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「半透明」のパーツは「エミリオ」と言うラクガキと、とあるボスラクガキに使用されている。
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半透明パーツは見栄えが良く、デザインの幅が広がるため、使いたかったと言うプレイヤーは多かった。
総評
いわゆる「ものづくり」を主体とするクリエイティブツール系にバトル要素を付け足したといえるシステムは非常にユニークかつ斬新であり、
簡単かつ自由に3Dで描けるラクガキと、じゃんけんを元にしたシンプルなシステムで幅広い層に配慮がなされているため、ゲームに入り込みやすい。
その一方で、好きな版権キャラをラクガキで再現してみたり、まほうの種類などを厳選したバトル向けラクガキを極めたりなどと、自由なラクガキという要素を活かしたゲーム性が満載である。
本編攻略中においても魅力的なストーリーに加えて、描けるようになるパーツの増加でラクガキを強化していく醍醐味も味わえるなど、プレイヤーを強く惹き込む魅力にあふれている。
余談
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開発側は絵が上手でなくても楽しめるようにとの理由でタイトルに「ラクガキ」と付けたそうだが、各ゲーム雑誌でプロの絵かきなどが描いたラクガキを大々的に取り上げていた影響もあってか、一般層よりマニア層の方が受けがよく、コアな作品と見られ易い傾向にあった。
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同人シューティングゲーム『東方Project』の製作者であるZUN氏がソフト開発に関わっており、同シリーズの主人公「博麗霊夢」をモデルとした「ハクレイのミコ」というラクガキが登場する(製作者の表記もZUNである)。
開発時期の関係で見た目はWin版以降よりPC-98版(所謂旧作に登場する博麗靈夢)に近い。
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発売元であるタイトーは本作のタイトルと同じ「ラクガキ王国」の名称でアミューズメント施設を経営している。
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一般人から寄せられたラクガキも収録されているためか際どいラクガキも存在する。例を挙げると「ルギア」にそっくりな「シルバームーン」や「ウィスピーウッズ」にそっくりな「キ~ボ~」など…。
その後の展開
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NHKのTV番組『天才ビットくん』の中でこのゲームのシステムを利用したコーナーが存在した。
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視聴者投稿のキャラを描き、このゲームの戦闘システムで戦わせるというもの。このゲームを知らなくても戦闘システムなどを知っている人がいたりする。
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後に『天才ビットくん グラモンバトル』として独立したゲームソフトとなった。本ソフトのラクガキデータを流用する事も出来る。
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ニンテンドーDSが発表された当初、開発タイトルとして本作が発表されていたが、結局発売されなかった。本作のコンセプトはタッチスクリーンとの相性抜群だけに残念である。
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2021年1月には本シリーズの流れを汲んだスマートフォン向けRPG『ラクガキ キングダム』がリリースされた。
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シリーズ恒例となるZUN氏の「ハクレイのミコ」は事前登録特典として配布されている。
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CGの質は本作よりも『2』寄りであり、制作の自由度も強化されている。
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優勝すれば何でも願いを叶えてくれるラクガキ大会、ラクガキの描けるクロッカーの存在などストーリーは今作の設定を引き継いでいる。
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本作で人気の高かったバトル曲である「王立闘技場」のアレンジバージョンがバトル曲として選択できる。
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同年9月にサービス終了が告知され、2021年11月2日をもって終了している。
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2021年4月より児童向け遊戯施設『らくがキッズ』が展開されている。(公式サイト)
最終更新:2024年05月27日 15:00