機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles
【きどうせんしがんだむせんき ろすとうぉーくろにくる】
| ジャンル | 3Dアクションゲーム |  
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| 対応機種 | プレイステーション2 | 
| 発売元 | バンダイ | 
| 開発元 | ベック(チームホワイトディンゴ) | 
| 発売日 | 2002年8月1日 | 
| 定価 | 通常版:7,140円 / 限定版:9,800円 | 
| 廉価版 | GUNDAM THE BEST 2005年2月17日/2,990円
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| 判定 | 良作 | 
| ガンダムシリーズ | 
 
概要
プレイヤーは一年戦争時の地球連邦軍(実験部隊)またはジオン公国軍(外人部隊)のモビルスーツ (MS) 小隊長となり、アニメ『機動戦士ガンダム』などでは語られなかった様々なミッションをこなしていく。
ゲームシステムは2000年発売のPS2版『機動戦士ガンダム』とほとんど同一で、細部がより遊びやすく改修されている。
そのためかデータコンバート機能があり、PS2版ガンダムのミッションモードで解禁させた機体を本作の対戦モードで解禁する事が可能。
特徴
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自機と僚機2機の計3機で、敵の殲滅や対象の防衛・破壊といったミッションを遂行する。
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陣形を指示することもでき、僚機2機を自機の前衛・後衛に展開する「Vフォーメーション」「アローフォーメーション」の他、各自で行動させる「散開」がある。
 
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ミリタリー色が強い作品である。
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ロード画面などの一枚絵では人や戦車と共に描かれている。
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ステージにもマゼラトップや61式戦車のほかに人や車、ヘリコプター、偵察機なども見ることが出来る。
 
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ステージはすべて地球上で構成されている。宇宙ステージは無い。
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本作オリジナルキャラクターが多数登場する。
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連邦軍、ジオン軍双方にオペレーター、整備員、上官の秘書として3名ずつ計6名のヒロインキャラクターが登場。ゲームで好成績を残すと主人公が彼女たちと徐々に親密になっていくムービーが見られる恋愛ゲーム的な要素も導入されている。
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もちろん、アムロやシャアといった原作アニメでおなじみのキャラクターも登場する。
 
評価点
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グラフィック・MSのモデリング共に良好。2002年発売にしては非常に良い出来。
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ゾックは上述のPS2版『機動戦士ガンダム』で登場したリファイン版を流用している(所謂「四足ゾック」。サイズも大型化されている)。
 
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登場するMSのチョイス
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ザクIIやジムなどお馴染みの機体はもちろん、イフリート改、ゾック、ガンダム6号機(マドロック)といった珍しい機体も登場する。
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機体選択時には隠しコマンドを入れることでカラーチェンジが可能。一部は細かいネタを拾っており、例えばジム・スナイパーIIはOVA本編で登場した青いカラーが基本だが、隠しコマンドを入れると「ホワイト・ディンゴ隊仕様」の白いカラーリングになる。
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アレックスでこれを行うと、知る人ぞ知る「νガンダムカラーのアレックス」となり、パイロットもクリスからアムロに変化する。今でこそ任意でカラーチェンジや色指定が可能な作品は多いが、当時としては貴重な演出であった。
 
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各MSの基本性能の違い、平行移動の有用性、被弾部分(正面と側面と背後)のダメージ差、盾の耐久性、バーニア・ビーム兵器のオーバーヒートによる制限など、奥深い要素がある。
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予測射撃の修正が弱い為に、平行移動していればマシンガンや誘導兵器を除き、まず射撃は当たらない。歩きが遅い機体はその限りではないが、空中での速度はほとんどの機体が一緒かつ高速なので、ジャンプ平行移動していれば正面からの攻撃は食らわない。すなわち平行移動が強すぎる面があるものの、逆に言えば敵の硬直を丁寧にとっていく楽しみがあると言える。
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ホバーバグを利用すれば旧ザクがGP01を凌ぐ高機動性を発揮したりと、外道な楽しみ方もある。
 
 
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魅力的なオリジナルキャラクター達
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なかなかクセのある設定を持った面々であり、ヒロインはもちろん、僚機のパイロット達も魅力的。各オペレーターは後のガンダムバトルシリーズなどに登場しており、漫画媒体では彼らの戦後の姿が度々描かれているなど、未だに根強い人気を持つ。
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対戦モードでは原作キャラクター達が各機体のパイロットとして登場する。ガンダムにアムロが搭乗するのはもちろん、前述のジム・スナイパーII(WD仕様)にレイヤー、ブルーディスティニー1号機にユウといった、他ガンダムゲーを再現したマニアックな組み合わせも。
 
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ステージのギミックも凝っており、建造物やビルの倒壊、足元の車両を踏み潰すなどの立体的な演出も見所。
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BGMは総じてミリタリー色が強め。『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』などから流用されているものも多いが、本作オリジナルの楽曲も評価は高い。
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各映像作品からは劇中BGMのアレンジ版が収録されている。「架空の空」や「VII(第08MS小隊)」などは原曲から盛り上がるパートのみを抜き出す形となっており、いずれも好評。
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各BGMは後のガンダムゲーにもしばしば流用されている。また、ガンダムゲーとしてはサントラが一般発売されている数少ない作品でもある。
 
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やりこみ要素の充実
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低ランク機体でのスコアアタックや、グフでのホバーを利用した高機動単騎無双等が出来る点はユーザーから評価が高い。
 
賛否両論点
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連邦ルートでは条件を満たさないとガンダムを使用できない。
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全体的にガンダム型MSの入手条件が厳しく、初代に登場する従来のRX-78-2ガンダムも入手可能なのがミッション10のクリアが条件とかなり遅め。
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慣れていないプレイヤーはかなり終盤までジムなどのMSで戦うということにもなる。
 
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ギャルゲーを彷彿とさせる演出
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会話のパターンも少なく、ミリタリー色が強く硬派な本作には必要なかったという声がある。
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上記のように各キャラクター自体は好評ではある。また、一部機体が解禁される時はただ使用可能になるだけではなく、「原作キャラクターが主人公の活躍を聞きつけ、主人公を讃えつつ自らの搭乗機体を与えてくれる」ムービーが入るなど、キャラゲー的な演出にも繋げている。
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ジオン編において、コアな人気のある「ジオン軍女性兵士(第08MS小隊)」を救出したことになっていたりと、ユニークな改変がなされた箇所もある。
 
 
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当時のガンダムゲーと比較してややスピード感がないとの指摘も。
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ただし前作にあたるPS2版『機動戦士ガンダム』からは大幅に改善されており、モッサリ感はかなり軽減された。
 
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ただ淡々とミッションをこなしていくだけのゲーム性で、ストーリー性が薄いと指摘する人も。
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一方で他のガンダムのアクションゲームも大体同じような作りとなっているため、さほど気にならないという人もいる。
 
問題点
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ミッションの数が連邦・ジオン共に14ずつと少ないため、ボリューム不足を指摘する意見が多い。
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一度クリアするとガンダム本編のキャラが敵で登場するなど多少内容が変化するステージはあるが、無理やり水増ししている感じも否めない。
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ボス戦の数もさほど多くないため、少しやりごたえを感じづらい部分がある。
 
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連邦ルート、ジオンルートでのミッションの変化がやや少ない。
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作戦内容は変わるが、ミッションごとのマップはどちらのルートでも全く同じ。そのため別ルートで一度プレイしていると飽きやすい。
 
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戦闘中の僚機パイロットの通信のパターンが少なく、やや単調。
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敵も味方もAIがあまり賢くない
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基本的に突っ込むばかりで廻り込むような複雑な動作はしない為、慣れると側面や背後を取られる事はほぼない。また超反応でこちらの射撃に対しサイドステップする為、戦闘は敵AIの穴を突くパターン化になりがち。
 
総評
多くのプレイヤーはさっさとコンプしてゲームを終わらせてしまったが、一部のマニアによってひっそりと愛されていた作品。
ギャルゲー的な要素に賛否はあれど、当時のガンダムゲーとしてはキャラ性やビジュアルは良好な部類であり、ボリュームが少ないことが惜しまれる。
余談
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通常版のほかに、設定資料集やオリジナルTシャツなどが同梱された「LIMITED BOX」が限定発売された。
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本作のヒロイン役を務めた女性声優陣が結集した「ガンダムガールズ」なる声優ユニットも生まれた。本作のサントラには歌唱ソングも収録されている。
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角川書店より、それぞれ展開が異なる小説版と漫画版が発売されている。
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漫画版と小説版ではゲーム版のプレイヤーに相当するキャラとして連邦側主人公の「マット・ヒーリィ」とジオン側主人公の「ケン・ビーダーシュタット」が登場する。後にこの2人はガンダムバトルシリーズに『Gジェネ』『ギレンの野望』といった他作品にも参戦している。
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本作ではプレイヤーにボイスがなかったこともあってか、マットとケンの担当声優はあまり安定しておらず媒体によって異なる。楠大典氏や小西克幸氏など、マットとケンの両方を担当した経験のある声優もいたりする。
 
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漫画版は『SEED ASTRAY』も連載し後に多くのスピンオフを担当する千葉智宏氏が原作を務め、また後に多数のガンダム系コミカライズを描いた夏元雅人氏が作画を担当している。
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しかし、夏元氏の美麗な作画は好評ではあるものの、ジオン側の描写があっさりしすぎている、ジオン側ヒロインのひとりであったユウキの突然の死などといった一部キャラの扱いが残念と、シナリオ・演出面は批判が多い。
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特に不殺主義として設定されたマットの発言である「撃つなラリー!!」が悪い意味で有名で、結果として「軍人らしからぬ綺麗事を吐いて味方を戦死させてしまった理想主義者」として大きく批判された。
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補足すると、漫画版連載当時は同時期に放映されていた『SEED』シリーズの初代作主人公キラ・ヤマトの不殺主義に対する賛否両論がガンダム界隈内で激しく繰り広げられていた頃であり、マットに対する批判もその影響が大きかった。本漫画版以外でも当時のガンダム系作品では不殺主義(ひいては『SEED』やキラ)に対するアンチテーゼやその是非を問うような展開が行われた作品が存在している。
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また、本漫画版ではその後「ラリーの死をきっかけに復讐鬼に堕ちた同僚のアニッシュが地球から離脱しようとするジオンのシャトルを撃ち落とそうとした暴挙をマットが止める」「アニッシュが戦闘不能になったジオン兵を殺そうとした際にマットの発言を思い出して踏みとどまる」などといったマットの不殺主義に対する肯定的な部分も描かれている。
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なお、本漫画版のスタッフが手がけた『宇宙、閃光の果てに…』や後述のPS3版『戦記』の漫画版には、本作のキャラがゲスト出演している。
 
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小説版は「コロニーの落ちた地で…」や「ジオニックフロント」のノベライズも担当し、ガンダム以外の架空戦記も多数執筆されている林譲治氏が執筆している。
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色濃いミリタリー路線(と、程よいミステリー要素)が展開される事でなかなかの評価を得ている。
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マットも「終わりも見えているのに無暗に死人を出す必要もない」と考えつつも一軍人として戦いに臨む人物として描かれている。
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ちなみに有名な「ズゴックEはすごくいい」の元ネタはこの小説。
 
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『Gジェネレーションスピリッツ』では漫画版のあらすじをなぞったものが『戦記』シナリオとして採用された。上記の「撃つなラリー」も台詞こそ省略されているが、大筋はそのまま再現されている。
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『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』にもシナリオが収録されているが、こちらでは漫画版だけでなく「グール隊」といった小説版の要素も組み込んだ独自のシナリオとなっている。「撃つなラリー」は流れこそ踏襲しているが結果的にラリーが死ぬことはなく、またユウキも戦死しないなど、漫画版で酷評された展開の一部は回避されている。
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その後に発売された『GジェネレーションGENESIS』にも『戦記』シナリオが収録された。ただし、声優は『サイドストーリーズ』準拠だがシナリオは『スピリッツ』の流用となっている。「撃つなラリー」再び
 
 
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後にPS3にて、ほぼ同じタイトルの『機動戦士ガンダム戦記』が発売された。しかし、本作に肩を並べるどころか人によってはクソゲーと呼ばれるほどの出来で、評価は高くない。
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本作が名作と呼ばれるようになったのは、上記作品の低評価に対する反動によるところが大きい。
 
最終更新:2025年01月11日 23:16