トレード&バトル カードヒーロー

【とれーどあんどばとる かーどひーろー】

ジャンル トレーディングカードゲーム
対応機種 ゲームボーイカラー(全GB共通)
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 2000年2月21日
定価 3,800円
配信 バーチャルコンソール
【3DS】2011年8月10日/600円
判定 良作
カードヒーローシリーズ
トレード&バトル / 高速カードバトル / スピードバトルカスタム


概要

  • 当時流行期であったTCG(トレーディングカードゲーム)をオリジナルルールでゲーム化されたソフト。
    • 一度お蔵入りになりかけた所を、ゲーム雑誌「ファミ通」の編集者が注目しバックアップ、発売までこぎつけたという経緯を持つ。

ストーリー

主人公「門マサル」が、カードバトルで悪者と戦うアニメ「カードヒーロー」。ひろしはこのアニメの大ファンだった。
そんな折、ひろしが生まれてすぐ渡米した祖父が、久しぶりに帰国。彼がお土産に買ってきたカードがきっかけで、ひろしはTCGとしてのカードヒーローにも興味を持つようになる。
友達のクミとカードヒーローを始めたひろしは、カードヒーロー同好会「クラマクラブ」に入会。果たして、ひろしはマサルのようにカッコよくカードバトルができるようになるのだろうか?


特徴

  • いわゆる『マジック:ザ・ギャザリング』型のカードゲーム。あらかじめ用意したデッキから手札を引き、「ストーン」( 以後「石」と表記 )というリソースを消費して「モンスター」を召喚して攻撃させたり「マジック」カードを使ったりして、最終的に相手「マスター」に攻撃を与えてそのHPを0にすれば勝利となる。
  • 本作においてゲームで使うフィールドは以下のような構造になっている。他の同型のTCGに比べるとコンパクトな構造と言える。
      「マ」はそれぞれのプレイヤーを模した「マスター」が配置されているマス。前・後は「モンスター」カードを設置できるマス。
    一人のマスターが2x2=4体まで自分のモンスターを設置できる。攻撃しない代わりに移動したり位置を交換したりもできる。
    通常攻撃では隣接している相手にしか攻撃できず、前衛は後衛の壁のようになっている。
    また、後マスにのみモンスターが設置されている場合、それを所有しているマスターのターンの始めに後マスから前マスに移動する。
     
  • 本作で用いるカードは「モンスター」と「マジック」の2種類。
  • 「モンスター」はそのモンスターを場に召喚して攻撃を行ったりできるカード。モンスターを召喚するには石1個と一緒に場に置き、次のターンまで待つ必要がある。
    • モンスターにはHPと通常攻撃が全カード共通して設定され、カードによっては特殊攻撃・常に効果を発揮する特殊効果もそれぞれ設定されている。特殊攻撃は使用に石を消費するものもある。
      • HPと攻撃は1刻みの数値設定が行われており、モンスターのHPは最大でも6。HP1の差で命運が分けられていると言っても過言ではない。
      • 特殊攻撃は遠隔攻撃が可能なものが多いが、攻撃できる範囲はカードにより異なっている。1つ飛び、2つ飛び、どこでも、貫通、桂馬飛びなどなど。
    • モンスターには前衛向け・後衛向けという分類が行われている。どちらも前マス・後マスにも置けるものの、慣れないうちは分類通りに設置した方が良い。
      • 前衛はHP・通常攻撃の威力が高いが、1マス以上隔てた相手には攻撃できない・できても威力が低いケースが大半を占める。
      • 後衛はHPが低く、通常攻撃の威力は低く0のものすらあるので前衛に出されるとなにもできないが、高性能の遠隔攻撃が使える場合が多い。
  • 「マジック」はその場で効果を発揮するカード。効果発動に必要な石の消費数は各カード毎に異なり、基本的にマジックで消費された石が戻ってくる事は無い。
    • 極一部のマジックのみ、シニア以降のルールにおいてはマスターの特技としてカードの消費無しに使用可能である。詳細は後述。
  • なお、スタックやカウンター、インスタントといった概念が存在せず、「全てのアクションは宣言即解決」「相手プレイヤーのターン中に取れる行動がない」という特徴もあり、この点でも非常に簡潔でまとまったルールとなっている。
  • 各プレイヤーは毎ターン開始時に石3個を貰える。貰った石と手札をリソースとして、モンスター召喚や魔法の発動といった行動を行う。
    • 本作最大の特徴と言えるのがこの石に関する扱いである。モンスターの召喚やレベルアップに使った石は、そのモンスターのHPが0になると手元に戻る。また、マスターのHPは石の数で表され、マスターがダメージを受けた際には受けたダメージ分の石を入手できる。
      つまり、追い詰められるほどリソースが増え、その分できる事も増えていく。相手の残り個数に注意を向けつつ攻撃する必要がある。
  • 手札は最大5枚まで所持可能。6枚以上所持した状態でターンエンドした場合は使うか捨てるか選ぶ。
    • 使った・捨てた手札や倒されたモンスター等は対戦中、再使用する方法は無い。
  • モンスターを強化するシステム「レベルアップ」と「気合い溜め」が存在する。
    • 相手モンスターを倒すとそのモンスターにレベルアップの権利が与えられる。Lvが上がるとモンスターによっては攻撃の威力や効果範囲が拡大することがある(最大Lv3まで)。
      • レベルアップするには1レベルごとに石を1個消費する必要があり、レベルが上がったモンスターはHPを全回復できる。この回復がカードヒーローの勝敗の分け目になると言ってもいい。
      • 一部のモンスターにはスーパーカードという特殊な進化形が用意されている。召喚するには「スーパーカードが手札にあるとき、それに対応したモンスター(《ボムノスケ》なら《ボムゾウ》)がLv3になる権利を得た時に交換して出す」という手順を踏まねばならず、スーパーカードを召喚できるかどうかは引きに大きく左右される。しかしその分、勝敗を一気に決めかねない程の強力な攻撃技や特殊効果を持っている。
      • マスターには攻撃を2ポイント軽減するバリアーが常備されており、大抵のモンスターは初期状態で攻撃力2以下の技しか使えないため、レベルアップなどによる攻撃力の上昇やダメージ系の技の駆使が非常に重要となる。
      • 先述した通り、全てのモンスターは場に出すときに必ず1個消費する。このため各モンスターの性能差は他のTCGに比べかなり平坦な形になっており、TCGでは多くの場合「強いモンスターを出す」のが目的なのに対し、本作では「強いモンスターに育てあげる」のが目的になっていると言える。
      • なお、味方のモンスターを倒してレベルアップすることも可能だが、この場合自分のHPの石を支払うペナルティが与えられる*1
    • モンスターに何も行動させずにターンを終了すると、モンスターは自動で「気合い溜め」を行い、吹きだしに[!]マークがつく。
      • 受けるダメージを1減らし*2、次の通常攻撃のダメージを1増やすという状態。1度でも攻撃を受けるか攻撃をすると解除される。1の差が命運を分けるカードヒーローではその意味はとても大きい。
  • お互いの山札が引けない、マスターのHPを削る手段が無い場合はお互いのマスター残りHPを参照にCPUが裁定が下して勝敗を決する。
  • 基本ルールは以下の3種。
    • ジュニア
      • マスターの最大HPは5、デッキ枚数は20枚*3。最も基本的なルールであり、シナリオクリアまでこのルールでプレイすることになる。
    • シニア
      • マスターのHPとデッキ枚数はジュニアと同じだが、マスター自身が石を消費して三種類の特技を使用可能となっている。守り寄りの《ホワイトマスター》、攻撃特化の《ブラックマスター》、隠し要素として存在するテクニカルな《ワンダーマスター》の3種から選べる。
      • また、マスターによるダイレクトアタックも可能。1ターンに何度でも使えるが、石3個でパワー2という効率の悪さなので、メインの攻撃手段にはならない。
      • さらに、シニア以上では味方モンスターの「追放(フィールドからの除去)」ができるようになる。高レベルのモンスターを追放して石回収、敵にレベルアップの権利を渡さないために瀕死のモンスターを追放するなどの使い道があるが、一度実行するたびにマスターのHPが1減る。
    • プロ
      • HPは10、デッキ枚数は30枚に増加。単純に数が増えただけだが、取れる戦略の幅は大きく広がる。
      • プロ限定の特殊能力として、マスターのHPを2削ることで石1個を生み出す「メイクストーン」が追加されている。基本的には悪あがきの手段だが、思わぬ逆転の一手になることも。
    • その他、デッキを使わない入門向けルールや、一定の条件が課される特殊ルールを用いることもある。

評価点

  • 非常によくまとめられている完成度の高さ
    • 当時は続編を出す予定も無かったにもかかわらずゲームルールが非常に良くまとめられている。
      • どのカードも一長一短の性能を持っており、HP1の差で命運が分かれるため、性能で負けてもHPの差で優位に立てるケースもある。一見「誰得」なカードにも、意外な使い道があったりする。
      • TCGによくあるような死にカードがほとんど無い。序盤に手に入る少数のカードには完全上位互換のカードが存在するが*4、カードの新シリーズ発売時期の問題、カードのレアリティの問題や、HPが低く倒されやすい点をメリットとする考え*5もあるため一慨に死にカードとは言えない。
    • コンパクトな構成に反して、戦略の幅は広い。プレイヤーには前衛キャラクターと後衛キャラクターを巧みに使い分け、相手の攻撃を避けつつ敵側の陣営を崩す等といった臨機応変な選択眼が要求される。相手の割り込み要素がないことから詰め将棋的とも評されている。
    • 相手マスターのHPをひたすら削るデッキや、行動不能にして事実上の特殊勝利に持ち込めるデッキも構築可能で戦術自由度もそれなりにある。
  • とても丁寧なゲーム説明
    • 最初にプレイする際はクドさを感じるかもしれないが、操作説明は非常に丁寧。ストーリーを進めていくうちに、基本的なルールを完全把握できる。
    • 操作説明をちゃんと聞いていれば、それを応用したバトルイベントを容易に攻略できるので、初回はしっかり聞いておく事をオススメしたい。
  • 子供向けでありながらも王道かつ斬新な、熱いストーリー展開
    • 創作物でよくある「物語の世界で戦う主人公」ではなく「TVの影響でTCGを始めた主人公」なので、プレイヤーにとっても親しみやすい。
    • 近所の友達とよく遊んだ光景を軸に物語が進み、後半では悪の組織的な集団も登場し、終盤の盛り上がりっぷりは絵柄から想像できない程に熱い。
    • 登場人物も個性豊か…というか、カオス。特にエンディング後の「バトルセンター」で登場する対戦者達はお笑いコンビ、ワラ人形を持った女性(その名も「 のろい ますよ 」)、関取、大阪のおばちゃん、 高い知能を持ったチンパンジー とクセモノ揃い。
      • ほんわかしたキャラデザに反して、黒い任天堂要素満載な個性を見せる人物も多い。(一応)メインヒロインのクミはヤの付く自由業の皆様顔負けの恫喝をやってのけるし、サブキャラのお母さんは事ある毎に一々風刺を含んだトゲのある毒舌台詞を披露してくる。
  • 時計機能と連動した、継続プレイを促す仕組み
    • 家にいるお母さんに話しかけると1日につき50円の小遣いが貰える。現在で言うところの「ログインボーナス」を実装している。
      • 誕生日には「カードショップから商品券が送られてきた」という名目で500円に増える。カード購入用の資金を調達する手段に乏しい序盤でこのボーナスを入手できると一気に攻略が楽になるが、誕生日翌日になると貰えなくなってしまうので注意。
    • ある程度攻略すると、カードショップにおいてレアカードを単品で購入可能な「シングルカード」を利用可能になる。このシングルカードのラインナップは日によって変化するので、マメに確認してみるとカード収集が楽になる…かもしれない。
      • 生産終了したという設定で早々に通常パックから出てこなくなるカードが存在しているのだが、ある程度攻略を進めるとこの生産終了カードもシングルカードのラインナップに並ぶようになる。バトル以外の要素において何かと重宝するので、余裕があれば集めておこう。
  • カードショップやカードゲームコミュニティの雰囲気を手軽に体験できる
    • 本作でのカード入手方法はバトル勝利によって獲得したポイントを使い、作中のショップでカード3枚入りのパックを購入して引き当てるというもの。
      • 今でこそTCGを原作とするゲーム作品においてよく見かける方式だが、本作と同時期に発売されていたTCGを原作とするゲーム作品は、対戦の勝利報酬としてポイントではなくカードをそのまま受け取る方式のものも多かった。そんな中でTCGの醍醐味の一つと言えるだろう、パックを剥くドキドキ感を表現しようとした本作は中々に画期的ではある。
      • 他にも上述したシングルカードや、多少高額ではあるものの確実にスーパーカードを入手可能なパックなどもカードショップの雰囲気作りに一役買っている。ショップの商品に付けられた値札とにらめっこしつつ、限られた予算でどのようにデッキを強化するか頭を悩ませるという、TCGプレイヤーあるあるを気軽に味わえる。
      • 目当てのカードやパックを手に入れる資金繰りに、ダブったカード等を売却して工面するといった少ない小遣いをやり繰りして欲しい物を手に入れる、少年時代に経験した苦労を体感出来る。
    • 時折行われる大会で獲得ポイントにボーナスが付いたり、大会の優勝賞品としてカードが貰えたりといった具合に、カードゲームコミュニティの雰囲気も対戦のモチベーション向上を伴う形でそこそこ再現できている。
      • 対戦相手によっては同意を得た上で未所持のカードを譲ってくれたり、デッキに入れていないカードのトレードを持ちかけてくれたりする事もある。正しい意味でのトレーディングカードゲームを実現させている。
      • 悪の組織的な集団に属する相手であっても此方が勝利すれば相手のカードを 強だt… もとい譲ってくれる。 当然だが現実でカードを強奪しようとするのは立派な犯罪なので、絶対真似しないように。
  • デッキメイク画面の秀逸なUI
    • カードを選ぶ際、モンスターやマジックのミニアイコンが15枚ずつ並べられており、視覚的にどんなカードか分かりやすくなっている。
    • 詳細確認もでき、性能だけでなく攻撃・対象範囲を図面で分かりやすく説明して理解しやすい。
    • また、複数のデッキでもカードの使い回しが可能のため、最低3枚所有していれば全てのデッキに流用可能な親切仕様。
  • 対戦画面ではモンスターが活発に動き、行動終了時は白黒で静止したり行動有無の確認も分かりやすくなっている。

賛否両論点

  • 当時の需要と絶妙に噛み合わなかったキャラデザイン
    • 本作のキャラやカードのグラフィックは子供向けを意識したデザインで描かれているが、本作発売当時のTCG市場では『遊☆戯☆王』や『マジック・ザ・ギャザリング』のようなリアルなモンスターデザインが好まれており、デザインだけで本作を敬遠した層も少なからず存在していた。
      • 子供向けを意識したデザインとしても『ポケモンカードゲーム』が国産初のTCGとして既に世に出回っており、後発の本作にはどうしても注目が行き辛い状況が生まれてしまっていた。
      • 本作はあくまでゲーム作品なので、リアルTCG作品とパイを奪い合う事は無いのでは?とお思いの方もいるかもしれないが、少なくとも『ポケモンカードゲーム』と『遊☆戯☆王』については、その人気の高さから本作よりも先にゲームボーイ版が発売されており、競合相手になっていた事は間違いない。
      • 上述した作品群が円熟期を迎えつつある令和時代では、『ポケモンカードゲーム』とも一味違う独自のデザインを評価する声も見られる。世に出る時期を間違えた、とでも評すべきだろうか。
  • 痒い所に手が届かないデッキメイク機能
    • カードヒーローマニアの「タクミ」を頼ると、所持しているカードを元にして自動でデッキ構築を行ってくれる。しかしデッキのバランスに拘るという彼の性格が災いしてか、或いは技術力の限界故か、自動構築で出来上がるデッキはお世辞にも強いとは言い難い内容となっている。
      • このためデッキメイク機能はそれに頼りきりになるのではなく、自力で大まかなデッキ構築が可能になるまでの補助として使用するのが適切。
    • デッキメイク機能を使用して作られたデッキは、強制的に「タクミ(数字)ごう」という名前に上書き変更される。
      • 一応後からプレイヤー自身の手で変更も可能であるものの、地味に面倒臭い。どうしても名前を変更したくないデッキがある場合、先にデッキメモを購入して複数個のデッキ内容を保存可能にしておき、デッキメイク機能は名前が変わっても差し支えないデッキを上書きする形で使用するといいかもしれない。
  • ゲームバランス
    • 基本的に大半のカードはレアリティ相応の強さに抑えられておりゲームバランスは良好なのだが、それでも「一部行き過ぎな性能を持つカードが存在する」というTCG界隈のお約束については、このゲームも例外ではない。
+ 強カード一覧
  • 《ヤミー》
    • カードヒーローでは基本的にピンチに追い込まれる程に手持ちの石が増え、反撃の手段もまた増えていく。しかしヤミーがいる場合、石1個を消費して使える特技によって 相手の石を最大2個「奪う」 *6事ができてしまう。
      • 石の所有数がそのままアドバンテージとなるため、相手の石を奪ったり減らしたりする手段は非常に強力。こういった戦術は大したデメリットも無く反撃のチャンスを潰せてしまう。
    • 性能も前衛モンスターとして平均的なスペックを有しており、レベルアップも可能。速攻デッキなど特殊な構成のデッキでなければ3枚積み安定。
      「出せば勝ち」というような極端な性能ではないが戦術の幅が狭まるため、通信対戦では禁止カードにすべきと主張する向きもある。
    • 最大の問題はこんなに強力なスペックを持つこのカードがレアカードでもなんでもない、精々アンコモン止まりのレアリティだと言う事。入手時期がマジックカードを使う機会の少ない序盤、ジュニアルールの時期なのが理由だと思われるが、それを差し引いても性能に見合って無さ過ぎる。
  • 《モーガン》
    • 終盤に入手できる最強クラスのモンスター。後衛モンスターでありながら前衛モンスターと同スペックに加え、無消費でどこでも攻撃可能な特技まで有している。レベルアップにより火力も継戦能力も優れている。
      • 「前衛モンスターがどこでも攻撃を使える」と言う表現が相応しいか。当然ながら此方も特殊な構成のデッキでない限り3枚積み安定。
      • 最高レアのカードであり入手困難といった欠点はあれど、それらを考慮しても後衛モンスターとして異常なスペックである事には変わりない。
  • 《にゃあお》
    • 此方も最高レアに属する後衛モンスターで、最大の特徴が特技として持つ《ワープ》。同名のマジックカードと同じ性能でありながら、石消費はマジック版より少ない2個となっている。
      • 召喚に1ターン分を要する点や、特技ゆえに1ターンにつき1回までしか使えないという制約こそあるものの、石2個・手札消費無しでモンスターの位置をお構いなしに入れ替え可能というのはきわめて強力。
      • 攻撃済みの前衛モンスターを相手の反撃が届かない位置に避難させるもよし、相手の前衛を後ろに飛ばして置物化するもよし、HPが少ない相手後衛を前に引きずり出して、此方の前衛の餌にするもよし。相手からすれば厄介な事この上ない。
    • レベルアップこそしないものの、HP5に2パワーの通常攻撃と前衛並みのスペックを持っており、前衛でも最低限の戦闘力もあり、一時的に壁役や削り役を担う事もできたりする。
    • 最大の問題点は、同様の特技を持つモンスター《テレポ》を、HPや特技で消費する石の数において完全な下位互換としてしまっている事であろう。
      • テレポがにゃあおより優れているのは「ゲーム序盤・ジュニアルールの時点で使用可能」という点のみ。更にゲーム開始時にランダムで決まるプレイヤーのID番号次第ではテレポがパックから出てこない事があるので、下手すればテレポを一度も入手しないまま、にゃあおを先に入手してしまう可能性まである。
  • 《エルゴマ》
    • 2回行動モンスター《ポリゴマ》のスーパーカード。HP:3の体力の無さと引き換えに、なんと 5パワーで2回行動が可能。
    • このゲームは石4個で使えるマジック《てんしのラッパ》や、《ぎんじ》がやられることで登場する《ハッピー》の特技でもLvを上げられるので、即エルゴマに進化させることでリスクを軽減可能。
      ポリゴマの耐久が気になる場合は全てのスーパーカードに進化可能な《なぞえもん》もいる。これらによりエルゴマのカードさえ引ければ召喚は比較的容易。
    • 更に2回行動という特性故に、モンスターを倒してレベルアップした場合でも即座に行動可能。フィニッシャーとしては極めて優秀である。
    • 未行動状態のエルゴマの攻撃を全てマスターに当てれば、最低でも6個の石を落とせる。マスターのHPが5しかないジュニア・シニアルールであれば、条件さえ揃えば1ターンキルも極めて容易となっている。
    • 超火力スーパーカード自体は他にも存在してはいるが、通常攻撃の自爆ダメージで一発退場してしまう《ボムノスケ》や、Lv4まで上げる必要がある上に癖が強く扱いが難しい《ガブッチョ》がおり、両者ともHP4と低く、エルゴマ程お手軽に召喚できる訳ではない。
      • スーパーカードは「手札に無ければ進化できない」制限があり、狙って活躍させられるとは限らない。ボムノスケやガブッチョ(更には、他のスーパーカードも)召喚の手間をかけるなら、同じ手間でエルゴマを出す方が手っ取り早い*7
  • マジックカード《ジアーゲン》と《かげぬい》のコンボ
    • これらのカードは共に消費石が1個、併用しても計2個と極めて負担が軽い。
    • 《ジアーゲン》には「次のターンに対象のモンスターが別の場所に移動しなければ、そのターン終了時に除去される」という効果がある。これに「1ターンの間移動(と追放)ができなくなる」効果の《かげぬい》を組み合わせるコンボによって、石2個という低コストで、ほぼ確実に敵モンスターを除去可能となっているのである。
    • このコンボの強みは対処法が非常に限られており、それ故に成功率が高いという点にある。
      • 対策は、状態異常を全て除去する(マジックカード《ゆうだち》や、後衛モンスター《クレア》の特技)か、モンスターを強制的に移動させる(マジックカード《ワープ》《ローテーション》や、上述の《にゃあお》など)くらいに限られている。
    • カード2枚と石を消費してまで除去したいモンスターがいるかどうかや、相手のターンの間に自滅されたり、ペナルティ覚悟で同士討ちさせてレベル上げに使われたりした場合は此方が損した形になるリスクを考えると、ゲームバランスを崩すほどではない。加えて《ワンダーマスター》が相手だと、特技として常時使用可能な《ローテーション》であっさり対策されてしまう。
      • しかし、それらを差し引いても石1個だけで相手の行動を縛れるジアーゲンの驚異は変わりなく、強力な性能と評していいだろう。
  • 《ワンダーマスター》
    • 冒頭でも述べた通り、条件を満たす事で使用可能となる隠しマスター。ゲームを最後の最後まで進めなければ入手できないが、そのスペックは相応に高い。
    • 自分と相手のモンスターの配置を時計回りor反時計回りに回転させる移動系マジック《ローテーション》を、石さえあれば自ターンにいつでも、何度でも発動させられる。
      • 相手の陣形を崩したり、倒されたくないモンスターを後衛に避難させたりと使い所はかなり多く、《ワープ》と比べて小回りがきかない点を差し引いても凶悪である。
    • 他のマスターとは異なり、入手時に第三の特技を6種類のマジックの中から選択できるのだが、一部の特技候補…具体的には《リフレッシュ》が強すぎる。
      • 手札を捨てて、捨てた枚数分のカードをデッキからドローするという所謂「デッキ圧縮」用のマジックであり、それが石1個の消費だけで無制限に使用可能なのである。
      • TCG経験者であれば「デッキ圧縮が使い放題」という説明だけでも凄惨な光景が思い浮かぶだろうが、その予想は概ね正しい。実際「リフレッシュ持ちワンダーマスターで《エルゴマ》を高速召喚し、最速4ターンで決着」というデッキテンプレが生み出されており、当時の対戦環境で猛威を振るっていたのである。また、エルゴマ以外の強カードとも相性が良いという点も見逃せないだろう。
      • 但し、思考停止でリフレッシュを選ぶのが正解とは限らない。ホワイトマスターと同様の感覚で運用可能な《ウェイクアップ》や、相手の手の内を読む必要こそあるものの、上手く使えば相手のコンボを不発にできる《リターン》も十分な性能を有しており、考えて組まれたデッキであれば負けず劣らずの活躍を披露できる。
    • 一応《ホワイトマスター》や《ブラックマスター》でも、デッキ構築とプレイング次第で十分ワンダーマスターに対抗可能である点は強調しておきたい。
  • 上述したカード群ほどの性能ではないものの、
    • 石2個で特技を使った瞬間に大ダメージを与えつつ退場するため、相手モンスターに倒されレベルアップに利用されるリスクを回避可能な《シゴトにん》
    • スーパーカードに頼らずとも、単体で高い火力を出せる優秀な前衛モンスター《ダイン》《ガスキン》《ビター》
    • 石1個という低コストながら攻撃・防御双方に使えて利便性の高い《きあいだめ》
    • 相手が満を持して投入した切札モンスターの能力をコピーしてしまえる《へんしんミラー》
      …等々、強力なカードは他にも複数存在している。

問題点

  • 操作とCPUの判断が非常に遅い
    • 1つの操作を行うだけでも非常に遅い。選択を間違えてキャンセルするだけでも時間がかかるために、ストレスが溜まりやすい。
    • CPUの判断が非常に長く、ターン初めの「考え中」から1分以上画面が動かないケースもしばしばある。カードヒーローを遊びながら他の作業をやる位でないと、とてもではないがまともに遊べない。
    • モノクロGBモードだとCPUクロック周波数がGBCの半分にもかかわらず、もっさり操作や思考時間が多少軽減される。GBC対応の際に最適化の手順を誤ったのかもしれない。
      • バーチャルコンソール版でもこの点は改善されていない。また前述のモノクロGBモードにする方法もない。
  • 滅多に発生しないものの、フリーズバグが存在している
    • 対戦中に相手の「考え中」が表示されたまま、何分経過しても一切動かなくなってしまうというもの。本作のオートセーブ機能が災いし、リセットしてやり直しても敵のターンから始まってしまい、リセット前と同様に固まってしまうのでどうしようもない。
    • 公式サイトにも記述されているが、一度リセットした上で特定のコマンドを入力すればバトルを強制終了させられる。但し、その試合には負けた事になってしまうので注意。
      • 作中のバトルで降参するには、カードの購入資金にもなる「メダル」を消費しなければならないが、このコマンドを使えば実質的にメダル消費無しでの降参ができてしまう。だからどうしたという話ではあるが。
  • 先攻が後攻より有利となるルール上の仕様
    • 基本的に先攻のほうが後攻より有利。最初の所持石は互いに3、1ターン目も互いにドローできるため、引きの運にも左右されるが優劣はある。
    • しかも先攻側は即座にターンを終了する事で手札と石を多く得た状態で後攻に回る事もできるので、選択肢が多いという点においても先攻が有利となってしまう。
  • パッケージやOPにタイトルで登場している「マサル」とその宿敵の「デロデーロ」の扱い
    • 何も知らずに購入したプレイヤーはマサルが主人公だと思った人もいただろうし、主人公のひろしが何らかの形で関わると思った人も多いだろう。…マサルとデロデーロはテレビ番組「カードヒーロー」に登場する架空の存在であり、ゲーム中にTV番組の中で何度か登場するだけである。
      • 大半のプレイヤーが主人公のひろしを初めて目にするのは、パッケージの裏面や説明書の中身など、お世辞にも目立っているとは言い難い箇所である。本主人公なのに扱いが悪すぎる。
    • 一応「バトルセンター」のコンピューター*8で戦う事が可能だが、あくまでシミュレーターなので自分と同じデッキしか使ってこない。
    • マサルの声優や、なりきりコスプレイヤーといったマサルのデッキを再現した対戦相手も出てこない。
  • 隠しマスターの特技選択
    • 《ワンダーマスター》は入手時に第三の特技を6種類の候補から選択できる。…のだが、一度特技を決めてしまうと二度と変更できない。ワンダーマスターを入手できるのは最後も最後なので、特技の選択を誤った場合や、他の特技を試したくなった場合は、データ初期化の上、最初からやり直す破目になる。
      • 選択できる特技はどれも一長一短な性能を有しており、場合によってはデッキの内容すら左右しうるため非常に悩みやすい。
  • バグ
    • 毎週水曜と金曜にホワイト/ブラックマスターのみが参加可能な大会が行われるが、対戦前にデッキ内容の変更を行い、デッキメイク画面でキャンセルしてデッキ選択画面に戻ると他のマスターのデッキを選べてしまう。
      • これにより真逆のマスターはもちろん、ワンダーマスターでも大会に参加可能。他マスターでは使えない特技を使用可能となるので、プレイヤー側が格段に有利となってしまう。
    • メダルの所有数が10枚以下の場合、受付の右側の男「ギャンブル」に賭けバトルを持ちかけられ、勝てば所有コイン倍増、負ければ全没収されるという対戦イベントがある。
      • このバトルを受ける前に上記の大会で優勝すれば、メダル50枚分も併せて掛け金に充てられる。この賭けバトルに勝てばカードの大人買いも余裕で行える程の資産を得られる。
  • バグではないが、バランスブレイカーとなりうる仕様
+ ゲームの楽しみを崩壊させる恐れがあります。閲覧注意
  • 一定以上までゲームを進める事で、任意の要らないカード3枚と別のカード1枚を交換してくれる「ブレンドくん」を利用可能になるのだが…。
    • 特定の手順でカードを交換し、最終的に手に入った高額で売れるカードを大量売却する事により、2,000円程度の元手さえあれば所持金の無限増殖ができてしまう。条件さえ整えば上述したギャンブルですらお役御免である。
      • 当然ながらブースターパック購入・カード収集の楽しみを大いに削いでしまう可能性があるため、錬金術のご利用は計画的に。
    • 続編以降の作品では「特定のカード3枚と別のカード1枚を交換」という仕様に変更されている。スタッフも無限錬金は流石に問題だと判断したのだろう。

総評

運の要素が薄く、極端なパワーカードもそれほど存在せず、戦略に重点を置いた独特なカードゲーム。
敷居も低いのでかなり遊びやすく、ゲームシステム的には傑作と言える高い完成度を誇っている。

携帯ゲーム機でこのような本格的なカードゲームを遊べる事自体がだいぶ貴重でもあった。
しかし動作の遅さとキャラデザインが足を引っ張り、ポケカや遊戯王といった先駆者によって地位を確立されたことで大規模なファンの獲得には至らず、隠れた名作止まりになってしまった。


余談

  • ゲーム自体の問題ではないが、現在中古市場に流通しているソフトの大半は、そのままの状態ではセーブできないと考えた方がいい。
    • これはカートリッジ内に時間をカウントするための特殊チップと、そのデータを保持するための電池が内蔵されており、この電池が切れている場合はセーブが保存できなくなる。カウント動作維持により常時電力を消費するため電池が一年程度しか持たない、という仕様が原因である。
    • 一応電池交換の方法がないでもないが、リスクを伴うため自己責任で。電池交換方法についてはこちらを参照されたし。
      • バーチャルコンソール版を買えば電池の心配は不要。代わりに通信ケーブル機能が未対応となっており肝心の対人戦ができないのが泣き所。
    • なお少し前に発売された同社の有名タイトルでも同様の問題は起こっていた。リアルタイムクロック仕様の宿命ではあった。
  • ストーリー上のラスボスに負けると、既存のカードゲームにありそうでなかった衝撃の展開が待っている。
+ ネタバレ注意
  • バトルに負けると、戦いの前に宣言された通りに使用しているデッキ内のカードすべてを燃やされる
    • しかし、直後に仲間達が駆け付けてきて「自分が使用していたものと全く同じ内容のデッキ」「ラスボスと同じ内容のデッキ」「ラスボス対策を施したデッキ」の3つを持ってきてくれるという熱い展開が待っている。
    • 燃やされたカードはラスボスに勝つと全て弁償してもらえるので、カードを失う心配はいらない。諦めずに挑み続けよう。
  • 発売約2ヵ月後にはワゴン入りしてしまい、激しい値崩れを起こしてしまった。
    • 決して本作が不出来だったという訳ではなく、ゲーム自体を出荷し過ぎた…つまり需要の見誤りが原因の模様。
  • ゲームの発売後、実際にカードゲーム化されて販売された。スタートセットやゲームにも出た4種類のブースターパックの他、ホワイト/ブラックマスターそれぞれの戦術に合わせてカードを収録した「マスターセレクション」というブースターパックも発売されていた。
    • 「先攻プレイヤーは1ターン目のドロー無し」といったルール調整がなされており、また《シトラス》《ズガンター》《かげ呪い》といったTCG版からの新規カードによってゲーム版ともまた違った戦術を楽しめる。
    • しかし賛否両論点でも触れた通り当時のTCG市場は既に強大過ぎる相手が席巻しており、シェアを獲得するまでには至らなかった。
  • アドバイザーとして、ファイアーエムブレムシリーズ生みの親である加賀昭三氏が参加している。
    • 当時のファミ通のインタビューにおいて、ディレクターの坂本賀勇氏が「ストーリー本編を全てチュートリアルにしたのは加賀氏から提案されたのがきっかけであった」と語っている。
  • このゲームに登場する主人公「ひろし」は、当時任天堂社長であった「山内溥」氏から名前を取られている。
  • オープニングのクオリティが地味に高いが、このBGMに歌詞があることは意外と知られていない。
  • 後に任天堂が発売したTCG『ファイアーエムブレム0(サイファ)』において、カードヒーローとの類似点が見られる。
    • 開発は本作と同じインテリジェントシステムズであり、ノウハウを流用しているのはほぼ間違いない。
    • 一部の本作プレイヤーはFEサイファをカードヒーローの精神的続編と見做して、同TCGを楽しんでいた…らしい。
    • 残念なことにこちらも2020年10月1日、第22弾をもって商品展開が終了し、現時点で新規プレイ手段は無い。
最終更新:2024年09月24日 19:30

*1 味方のモンスターを倒すことで1点、これによるレベルアップ1レベルごとに1点の石を失う

*2 ややこしいが、これはダメージタイプではない攻撃(つまりパワーを持つ攻撃)から受けるダメージにのみ有効であり、ヴァルテルの”ねらいうち”などダメージタイプの攻撃からのダメージは減らせない。

*3 当初は15枚だが、シナリオの途中で”ルールの改訂”が行われる

*4 例として、最初に手に入る後衛モンスターカード《ビヨンド》の完全上位互換として《ヤンバル》が存在しており、しかもかなり早い時期に入手できてしまう。更にゲームを進めれば、その《ヤンバル》すら下位互換としてしまうモンスターまで…

*5 味方殺しによる相手のレベルアップ封じや、モンスターを倒された際の石返還といった具合

*6 奪った石は自分のものにできるため、特技使用時の石消費と差し引きで最大石3個分の差が出る。

*7 例外は専用デッキを組めば、特技で「ずっと俺のターン!」を狙えない事も無い《カッパラー》位のものである

*8 デッキのマスターで戦う相手が変化する。ノーマルでコンピューター、ホワイトでマサル、ブラックでデロデーロと対戦する。隠しマスターのワンダーだと…?