ヘラクレスの栄光 ~魂の証明~

【へらくれすのえいこう ~たましいのしょうめい~】

ジャンル RPG
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 1024MbitDSカード
発売元 任天堂
開発元 パオン
スタジオ最前線
発売日 2008年5月22日
定価 4,571円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 3つ
判定 なし
ポイント 戦闘テンポがとにかく悪い
一方通行の冒険
サブイベントも皆無に等しい
↑これらを許容できれば良作
ヘラクレスの栄光シリーズ


概要

ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物』から14年ぶりの完全新作であり、神話の息づく古代ギリシャを舞台としたRPG。
当初は「エターナルクロニクル Glory of Hercules V」と名付けられており、ナンバリングこそ無いが実質的には『ヘラクレスの栄光V』に当たる作品と言える。

  • 2003年にそれまでの発売元のデータイーストが倒産してしまったため、販売元が任天堂に変わっている。
    • 開発元のパオン(現:パオン・ディーピー)は、データイーストの開発部署の1つである「データイースト仙台開発室」のスタッフが独立・継承した会社であり、『ヘラクレスの栄光』シリーズの版権も現在は同社が保有している。

ストーリー

オリンポスの神々が世界を統べていた遠い昔の話。
それは世界に魔法が存在し、英雄たちが活躍した神話の時代。

その少年は、さびれた海岸に漂着した。
記憶を失い、何も思い出せずあてもなくさまよっていた。
しかし仲間たちとの出会いが、
少年に運命を伝えた。
自分が不死であるということを。
仲間たちもまた不死であるということを。

自分は何者なのか?何故不死なのか?

それを確かめるため、彼らは旅に出た。
神々の住む、遥かなるオリンポスを目指して。

※公式サイトより抜粋


特徴

  • 本作の「主人公(達)は不死」「主人公(達)は記憶を失っており、記憶を取り戻す旅に出る」という2つのプロットは、もはや『III』以降の伝統とも言える。
+ パーティーメンバー
  • 主人公
    • 記憶を失い、海岸に倒れていた不死の少年。妖精たちには英雄「ヘラクレス」と呼ばれるが…。
  • ロコス
    • 主人公が最初に出会った少年(?)。不死であり、その理由を知るために旅をしている。
  • シュキオン
    • ある理由で旅をしている不死の青年。物腰柔らかな美男子なので女達が放っておかない。
  • ヘラクレス
    • 英雄ヘラクレスを自称する不死の男。しかし無銭飲食で捕まるなどかなり怪しい。
  • エリス
    • 記憶を失った不死の少女。見た目は幼いが、時折シビアな台詞を発する。
  • 2DRPGだった従来とは異なり、今回は『グランディア』や『ゼノギアス』のようにマップは3D、キャラクターは2Dで描くゲーム画面となっている。
    • キャラクターは3Dモデルを2Dドットに変換したものである。そのため、ぬるぬるとよく動く。
    • ただし、カメラ回転は町でしか出来ず、ダンジョンでの視点は固定である。
  • 不死である事を利用して高所から飛び降りる、戦闘中に掛け声を上げる、各地の神殿で魔法を授かると言った、シリーズお馴染みの要素も健在。
    • なお、今回はゲームオーバーの概念が存在し、全滅時は味方全員のHPが僅かな状態でコンティニューするかタイトル画面に戻るか選択する事になる。

評価点

  • 完成度の高いシナリオ。
    • 旧作に引き続き野島一成氏が担当。名作と名高い『III』に比べると王道の部類だが、数々の伏線が絡み合い、それら点と点が線で繋がって謎が次々と明かされる様相はシリーズの名に恥じない見事なものである。
    • 何故主人公達が不死なのか? 何故ヘラクレスと呼ばれる人物が複数存在するのか? そしてサブタイトルの「魂の証明」の意味とは? 提示される数々の謎は後半で一気に収束していく。プレイする場合はネタバレを全く見ないことを薦める。
      • なおWikipediaの記事には『III』と本作のみ、登場人物の正体や結末等が詳細に書かれている。閲覧には注意。
  • 戦闘のテンポは悪いが戦闘システム自体は良い。
    • 装備によって変わるアビリティ、エーテルシステムのやりくり、オーバーキルでMPが回復できる、タッチペン操作で威力強化可能など、シンプルながらも作り込まれており、戦略・戦術に富んだバトルが楽しめる。
  • 良好な操作性。
    • パッケージ裏にある「タッチパネルと十字キー・ボタン両対応」のキャッチ文に恥じない快適さを提供してくれる。本作をプレイしてから他の良作RPGをプレイすると、大半のソフトでこの操作性が気になる事請け合い。
      • タッチ操作を無闇に取り入れて評価を落としているDSソフトが多い中、本作の操作性の良さは貴重である。
  • ゲームバランス
    • 連戦などの強制戦闘は多いが、そこで大分経験値が稼げるようにできており、ザコとはそれなりに戦っていればレベル上げ作業をせずとも無難に進める事ができる。
    • また、パーティ内でレベル差が開いてしまっても、妥当な所で戦っていれば割とすぐに埋まるように調整されている。
    • 装備品によっていろいろなアビリティやスキルがついており、これを組み合わせる戦略性がある。
      • 文字通り消費MPが半分になる「MP半減」、敵の魔法攻撃のダメージが半減する「リ・オーラ」など有用なスキルも多い。
  • BGM
    • 作曲者はシャドウハーツシリーズなどで有名な弘田佳孝氏。地方によって戦闘、フィールド、施設の音楽が変わってくるなど、工夫がなされている。
    • ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙のフィールド曲『失われた時は何処に』も収録されており、懐かしさを感じる人もいるだろう。
  • オープニングのみだがアニメムービーが収録されており、質も十分。
    • アニメのバックに流れるBGMは旧作のタイトル曲。過去のシリーズ作品に慣れ親しんだ人には感慨深い演出である。
      • ちなみにコーラスを担当しているのは『ゼノブレイド』などの作曲にも参加している清田愛未。
  • 場所によって例外はあるが、セーブはどこでも可能。

問題点

  • 戦闘にかかる時間が長すぎてテンポが悪い
    • 戦闘ログがあるため、いちいち一人一人の回復・全体範囲の攻撃・毒ダメージなどの効果を見せられる。これが一度に表示される仕様であったなら快適さが全然違っただろう。
    • 魔法のエフェクトがやたら長い。公式サイトでそれがよく分かる動画が見られる。
      • 動画内で使用されているのは最強クラスの魔法なので、相応の派手さが求められるのは頷けるとしても、それを差し引いてもこれは少々長い。
        他の魔法の演出の長さも、強弱にかかわらず似たり寄ったりである。加えてこれに前述の戦闘ログの表示が加わり、余計に長く感じさせられる。
      • オプションで演出の「ショート」「ロング」の切り替えは可能。ショートにすれば空が映る部分がカットされるので大分短縮されるが、それでも他のゲームに比べれば長い。
      • しかし魔法が有効な攻撃手段なのも事実なので、使わなければテンポ云々以前に戦闘が長引くだけである。
    • 攻撃の度に「ターゲットの目の前にジャンプ→一呼吸置いてから攻撃→戦闘ログの表示が終わってから定位置に戻る」という一連の動作が行われるので、通常攻撃もかなりもっさり。
    • 一度に出現するザコ敵が多すぎる。酷いときには10マスしかないのに8匹出現することも。
      • さらに後半のザコ敵などは全体攻撃魔法を連発してくる。一方こちらは「リ・オーラ」のような魔法攻撃を受けると発動するスキルが、攻撃を受けるたびにいちいち長いエフェクトとともに発動する。
      • ザコ敵側も大量のスキルやアビリティを保持しており、これらが攻撃するたび発動するのでゲームの後半では1ターンが終わるのに数分かかるほど。
    • スキルや魔法を使うたびにミニゲームをするかどうかを選ばされる。
      • ミニゲームをしなければ、威力が弱くなってしまう。一方ミニゲームをするとスキルや魔法によっては最大233%もの威力になる。
      • ミニゲーム自体も面倒なのだが、これで威力を上げると魔法のエフェクトも倍以上に長くなってしまう。ただでさえテンポの悪いゲームなのにこのミニゲームの要素がさらにテンポを悪くしている。
    • モンスターを倒しても死体が残る
      • この死体を攻撃してオーバーキルすることで、MPを回復できるといった利点はあるが、こちらの攻撃が死体に吸われるデメリットのほうがそれ以上に大きい。
      • アンデッドモンスターは死体を処理しない限りターンエンド時に復活するため非常に鬱陶しい。
    • ストーリー中に連戦イベントが多い。船に乗るとお約束のように5~6連戦が挿入されるので、人によってはうんざりするだろう。
    • 一応店売りでエンカウントを0にするアイテムはある。
      • 攻略サイトではこのアイテムを大量に購入することがオススメされていることからも、いかに戦闘のテンポが悪いかがうかがえる。
      • エンカウント率は、DS時代のゲームとしてもやや高い。
  • 序盤のチュートリアルが丁寧すぎる上にスキップもできない。特に2回目以降のプレイとなると苦痛でしかない。
    • クリア後には図鑑等を引き継いで2周目がプレイ可能だが、このチュートリアルはもう一度全部見させられる。
  • 持ち物制限がキツく、評価点である装備によって変わるアビリティの魅力の妨げになっている。
    • 似たような効果のアイテムや食べ物、売るだけしかできない素材アイテムなどの種類が多いのも所持制限と相性が悪い。
  • クリアした地域には戻れない。
    • ストーリーの節目を越えるとそれ以前の地域には二度と戻れなくなる。クリアしたダンジョンや通過した町には戻れない一方通行の冒険となっている。
      • ただし、以前の地域に戻れなくなる地点まで進むとセーブの確認と共にアナウンスが入るので、「え!? もう戻れないの!?」と後から気付くような事態はあまり無い。
      • 町で覚える魔法やスキル等は次の町でも全く同様に覚えられるが、店売りの武器・防具は同じものが買えない場合がほとんど。
    • サブイベントのようなものは皆無に等しい。一応、隠しマップなどはあるので、探索の楽しみが無い訳ではないが。

総評

戦闘のテンポ以外は軒並み高評価。ファンの中でも「テンポが良ければ…」と嘆く人も多い。
良作に成り得るポテンシャルを秘めておきながら、戦闘のテンポだけのせいでその評価も得にくくなったゲームである。
無論、テンポが良いゲームが良作とは限らないし、多少テンポが悪くても高評価のゲームは沢山ある。しかしプレイの快適さは非常に重要な要素である事は確かであり、本作のそれは他の長所を削いでしまうほどであった。

『III』がシナリオの良さだけで(テンポを含む)不満点を全てはね除けた事を考えると、本作でテンポが他の良点の足を引っ張ってしまっている事は何とも皮肉な話である。
本作のシナリオ含む長所はそこまでは至らなかったか、あるいは時代の流れでユーザーの意識が変化したためか、どちらにせよ本作の評価はこのような形で落ち着いている。

ただその戦闘テンポも、魔法エフェクトやロードが長かったPSの『FF7』~『FF9』辺りと比較すれば、それより少し劣る程度である。その当時の作品に慣れている人や「内容さえ良ければテンポなんか気にしない」と言う人なら大きな問題も無く楽しめるだろう。
プレイを検討するなら、まず公式サイトの動画で戦闘のテンポを確認し、大丈夫そうだと思ったら購入する事を薦める。


余談

  • 海外版(タイトルは「Glory of Heracles」)も出ており、そちらでは戦闘のテンポはある程度改善されている。
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最終更新:2023年05月08日 09:55