ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード
【わいるどあーむず ざ ふぃふすばんがーど】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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ソニー・コンピュータエンタテインメント
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開発元
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メディア・ビジョン
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発売日
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2006年12月14日
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定価
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6,980円
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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廉価版
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PlayStation 2 the Best: 2009年3月26日/2,667円
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配信
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ゲームアーカイブス: 2014年10月15日/1,234円
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判定
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良作
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ポイント
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WA10周年記念作品 シリーズ随一のボリュームとやりこみ要素 随所に散りばめられたファンサービス 一部シナリオ面で従来ファンからは賛否両論
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ワイルドアームズシリーズ
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PlayStation Studios作品
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概要
口笛と荒野のRPG第5弾(『F』があるため、作数的には6作目)。
前作新システムの進化やシリーズ恒例システムの復活など、シリーズの集大成といえるゲームになっている。
またシリーズ10周年記念作品でもあり、作中には1~4のキャラに良く似た人物が登場し、多数のサブイベントも用意されている。
本作のシナリオは黒崎薫の原案を元に社内のスタッフがシナリオに落とし込むという形をとっており、金子彰史はプロデューサーとして参加している。
ストーリー
かつてファルガイア上には高度な科学文明が栄え、点在する遺跡からはその高レベルなテクノロジーの片鱗を伺わせる機械が発掘されていた。
ロストテクノロジーの結晶である「ゴーレム」に憧れていたディーンは、ある日、幼なじみのレベッカとともにゴーレムに護られるように空から降ってきた女性を目撃する。
彼女は自らの名前である「アヴリル」と「ジョニー・アップルシード」という言葉以外の記憶は一切失っていた。
アヴリルとの出会いは、世界中を旅しつつゴーレムを発掘したいというディーンの冒険心に火をつけた。そして、レベッカも共に旅立つ決心をする。
こうして3人の「ジョニー・アップルシード」を探す旅が始まった。
―――だが、このときの3人は知る由もない。「ジョニー・アップルシード」の意味が判明する時の衝撃と悲しみを…。
(SCEのサイトから引用)
システム
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移動中のアクションは前作に近いが、2段ジャンプやアクセラレイターは廃止された。
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グッズの復活
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主人公の持っている銃の弾を変えることで、通常弾・炎弾(高速炎弾)・氷ビーム・ディテクター・爆裂弾・アンカーフック・魔物召喚と変化する。
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先頭キャラを交代させることは本作でもできない。
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合成システムの継続
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武器防具の合成は廃止されたが、アクセサリは継続
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シェリフスターを作る難易度が大幅に下がっている。その代わり効力も下がっていて、シェリフスターだけを装備するわけにはいかない。
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ブラックマーケットの継続
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ランクAのアクセサリが一律LV50で買える。一方でとあるランクAのアクセサリを工房で作るのに、別のランクAのアクセサリを必要とするため、これは買った方が得。
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これもシェリフスターの入手難易度を下げるのに一役買っている。
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そもそもキャラが6人いるため利用がしやすい。
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LV20アップルを買うのにLV100消耗。さて、妥当か?不当か?
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ブラックマーケットで手に入れる防具を装備してないと、会うことができないボスもいる。
評価点
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シリーズ恒例システムの復活
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パズル、フィールドマップ、サーチシステム等、WAシリーズ恒例の要素が復活。
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また、サーチシステムは以前の作品で批判される事もあった目的地のサーチは廃止され、アイテムのみのサーチへと改善された。
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HEX戦闘システムの正当進化
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前作では丸い形の共通マップしかなかったが、本作では前作同様のマップの他に細長く伸びたマップなどパターンが増えており、戦略性も増した。
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ゲームバランスも適度にまとまっており、極端な強敵やぬるすぎる戦闘も普通に進めている分には出くわさない。
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移動後の行動が可能となった。これにより前作の待ち有利な状況は改善されたが、前衛が後衛の盾となるのは難しくなった。この辺りは好みが分かれる所か。
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作曲家が変更されても好評のBGM
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本作のBGM担当は甲田雅人氏と上松範康氏。「荒野と口笛」のシリーズの雰囲気を壊しておらず、全体的に評価が高い。
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渋いテイストのフィールドBGMや熱い戦闘曲など、いずれの曲もプレイヤーを飽きさせない。
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メインは上記2人だが、一部にはシリーズ恒例のなるけみちこ氏の曲も存在する。
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歴代シリーズキャラの出演
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各町には今までの歴代パーティキャラ全員や一部サブキャラ(のそっくりさん)が登場しており、シリーズファンにはそれだけで嬉しい要素。なお、名前は表示されず特徴によって暗示する形になっている。
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サブイベントも用意されており、原作の悲劇を回避するイベントなども存在する。また、貴重かつ強力なアイテムをくれたりバッジを作ってくれたりするキャラもいる。
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ただし顔がそっくりというだけで、約1名を除いて服装や職が違うため意外と気付かない人もいる。
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優れた3Dモデリング
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2Dグラフィックをそのまま3Dに当てはめたかのような違和感のない出来。動きも実にスムーズでクオリティが高い。
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同様にフィールドマップの出来も良く、散策する楽しみもある。
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豊富な隠し要素
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クリア後のやりこみ要素、隠しダンジョン、隠しボスも多く、全てをこなすにはかなりの時間を要する。シリーズお馴染みの「ラギュ・オ・ラギュラ」ももちろん登場。
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なお、本作のラギュ様だがことスペックにおいてはシリーズ最悪レベルと言っても過言ではない。というのも、全攻撃のダメージがHP上限の限界値を凌駕している。「1兆度」に至ってはそれが全体攻撃である。
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また、1兆度の氷属性版「マイナス1兆度」などという、中二病でも思いつかない色々な意味で直球過ぎる変化球も習得しており、火属性ダメージを半減できるところで身構えていることもできない。この2つは使用する少し前にどちらを使うか把握できるので、撃たれる前に半減エリアに逃げ込むしかない。
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この容赦ない攻撃能力のため、攻略サイトなどでは主に「無敵・行動遅延をエンドレスで繰り返す」という暴力的なはめ殺しが対処法となっている。なお、一応真っ当に正面撃破もできなくはない。
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シリーズ恒例の熱いシナリオ
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冒険を通じて2つの種族を隔てる壁を壊していくというテーマはWAらしく非常に熱い。特に金子氏が手掛けたファリドゥーンとジョニー・アップルシードの戦いなどのシーンは好評。
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ゲーム自体のテンポは良い
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ザコやボスの経験値が高めに設定されており、しかも中ボスが多く配置されている。そのためLVが丁度良いペースで上がっていき、経験値稼ぎや技習得のためにボスの前に魔物狩り…などという必要がない。
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各ダンジョンに、ソル・ニゲルという魔物が配置されているのだが、これを倒すことでそのダンジョンをエンカウント無しに設定できる。しかもすぐ見つかるように配置されているので探す手間もかからない。
賛否両論点
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シナリオの粗について。
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本作は少年漫画的なシナリオは今までのシリーズとはやや趣が違う。
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王道ではあるが一部のキャラクター・設定の扱いに対して好き嫌いが分かれやすく、合わない人には合わない。
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2人いるヒロインのどちらもエンディングで救いのある扱いがなされていない点が特に槍玉に上げられやすい。
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終盤の駆け足っぷりも残念な点に上げられやすい。
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世界に危機が訪れる演出があるが、各地を回って街を救うのではなくさっさとラスボスの居城まで出向いてしまう。合理的ではあるのだが、この演出のせいで後述するような街の探索に関する問題が発生してしまう。
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特にEDの薄さは問題視されやすく、パーティメンバーの半分(メイン3人+サブ3人の内サブ3人)はエピローグでは一切描写がない。
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敵幹部のほとんどが生き残る点も『WA』シリーズとしては異色であるが、最後の戦闘の後彼らがそれぞれの未来を見出していくような描写をされていたのに同じくその後が描かれていない。
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そのED内容自体も好みの分かれやすい物になっている。
本作と同時期に公式サイトで発売された黒崎薫シナリオ原案本はシナリオがかなり異なっており、ヒロイン2人は各々幸せになっている、ラストの大きな設定周りも根幹から違う、短いながらもキャラクターがそれぞれどうなったかという後日談はあるなど、原案は全体的に製品版よりもかなり少年漫画の趣のあるシナリオとなっている。
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EDネタバレ
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メインヒロイン2人の内「アヴリル」は、いわゆる「記憶を無くして同じ時間帯をループするヒロイン」であり、結局この運命から逃げられずに物語は終わってしまう。
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もう1人のヒロインである「レベッカ」は、いくらディーンのために頑張っても、ディーンの心が既にアヴリルに向いているためにどうあがいても想いが報われないという、なんとも救いがない終わり方になっている。
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これまでのシリーズでは、長い戦いが終わって未来が見出される終わり方や、たとえ悲劇的な結末であってもその後がきちんと描かれていたEDが多かったため、本作の終わり方に否定的なシリーズファンからはその点でもって大きく評価を落とす要因になっている。
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物語の中でこのループが終わり、新たな道を歩めるEDだったならまた違った評価となっていただろう。
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ただし、その繰り返しの運命からもいずれ解放される可能性があることは作中のセリフでも言及されているので悲劇と断ずるのは間違いである。
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謎解き要素の難易度が高い
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やりごたえはあるのだがシリーズでも高めの難度になっており、終盤の謎解きには詰まってしまった人も。
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OPアニメの削除
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3Dモデリングによるムービーは出来自体は悪くないが、やはりシリーズ恒例のアニメを望む声は多い。
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ボスの難易度低下
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隠しボスも含め、ほとんどのボスが最強技を繰り出す前に必ず予告をする。
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そのため、その予告が来たら遠くに逃げたり属性HEXを利用したりできる。さらに使用は困難であるものの、味方全員が無敵になる技を使って凌ぐことまでできてしまう。
問題点
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全体的にロードが長い
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特にフィールドマップに出る際のロード時間はかなりのもので、町の出入りが苦痛になるレベル。
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ロードの頻度がそこまで多くないのは救いと言える。
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パートボイスの割り振り
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イベントはボイスで盛り上げてくれるが、肝心な所でボイスがなかったりと入れるべき場所に疑問を感じる箇所もちらほら。
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特に一番力を入れるべきEDでボイスがない所があったり、最後の最後で盛り上がらない。
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広すぎるフィールドマップ
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前述の通りフィールドマップの出来自体は良いのだが、ゲームに慣れてきた頃には移動に不便を感じてしまう広さ。
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アースガルズの仕様
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シリーズおなじみの巨大人型兵器に載って戦闘! カスタマイズもできる! という点はファンを大いに喜ばせたが、肝心の戦闘は完全自動で動くためプレイヤーは見ているだけという点で肩すかしを食らうことに。
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負けバトルが多い
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負けバトルは全部で7回もあり、人によってはストレスが溜まる。しかも頑張って勝っても何の恩恵もない。
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ただし無意味に多い訳ではなく、4回のタイマン戦とある団体戦は、そのキャラが成長して後にリベンジすることの伏線にはなっている。残りの2回のうち1回は絶望的状況からの救世主登場の演出になっている。
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ラスボスとの1回目の戦闘に入ると、そこから先はラストダンジョンとその異世界以外の探索が不可能になってしまう。
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これは恐らく、ラスボスとの1回目の戦闘後に世界各地がラスボスの策略で窮地に陥ってしまうため、各エリアをそれに対応したイベント背景にさせることができなかったためと思われる。過去に出会った人物らが街で戦う熱い演出もあるが、実際に主人公らと出会って共闘することはできない。
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事前にこの先に進むと後戻り出来なくなることへの警告は出て来るが、そこから先も地味に長いうえに、ラスボスを倒した後にサブイベントを消化することが出来ないのは非常に不便である。せめて最終決戦直前に世界各地に異変を起こすようにしておけば良かったのだが。
総評
前作が打ち切りとも言うべき出来で酷評されたのに対し、今作はシリーズ集大成とも言える出来に加え、やりこみ要素の多さ等からボリュームもかなり多い。
反面、終盤のシナリオ展開、ロードの長さやフィールドマップの広さ、一部のキャラクターの扱いなど、だれやすい点や癖の強い点が足枷になっている。
とはいえグラフィック、音楽、ベースとなるシナリオ、ボリュームなどRPGに重要な部分はシリーズの集大成に恥じない出来であり、総合的な評価は高い。
余談
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連動要素
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本作は、シリーズ続編の『XF』との連動要素も存在し、こちらでは連動による隠しボスの追加などが存在する。
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その連動で戦えるボスははっきり言ってラギュ・オ・ラギュラより強い。但しアースガルズで倒すという選択肢が残されている。もっともきちんとパーツを集めていないとやっぱり苦戦するが…。
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2014年10月にアーカイブス配信された。
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ただし『XF』との連動は不可能になっているため、隠しボスの追加は不可能になっている。
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公式サイト・PV・説明書にはとあるキャラの軽いネタバレが記載されてしまっている。
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その内容
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「教授」と呼ばれるキャラは本名を名乗らず知人からも「教授」と呼ばれ、味方側のキャラのような出会いと交流を深めていくのだが、実は敵側の人間で「エルヴィス」という本名自体は序盤から出ていたというキャラ。
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上記のようにシナリオ上は(察しが良ければ気づくが)それなりに上手く敵であることを隠しての登場となるのだが、公式サイト・PV・説明書のいずれも敵側の人間と並んで紹介されており、上記のような演出は徒労に終わってしまっている。
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前作のガウンはかなりわかりにくいようにしていたのだが。
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最終更新:2024年11月18日 06:05