戦国無双 Chronicle 3

【せんごくむそうくろにくるすりー】

ジャンル タクティカルアクション

対応機種 ニンテンドー3DS
プレイステーション・ヴィータ
メディア 【3DS】3DSカード
【PSV】PlayStation Vitaカード
発売元 コーエーテクモゲームス
開発元 コーエーテクモゲームス(オメガフォース)
発売日 2014年12月4日
定価 【3DS】5,800円
【PSV】6,800(共に税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12才以上対象)
備考 Newニンテンドー3DS対応
判定 なし
ポイント 前作とは大きく変容したゲームシステム
爽快感と引き換えにシナリオ面は改悪
半ば空気と化したオリジナル主人公
無双シリーズ


概要

これまで3DSで展開してきた『戦国無双 Chronicle』の第3作。タイトルのナンバリングは、前作が『2nd』と序数になっていたが今作は「3rd」とならず数字単体になった。
『戦国無双 Chronicle』は、多人数の武将切り替えシステムをはじめとし、本筋では取り入れられていなかった戦いや、戦場だけでは描ききれなかった伝承や史実を元にした多くの個別イベント、 無双武将だけではなく、その他のモブ武将にも多数のイベントにより強い個性がつけられ、それまでのシリーズよりも史実に基づく要素を丁寧に扱う事で歴史ファンにも人気を博した。
これらの特徴は本筋である『戦国無双4』にも取り入れられ、派生作品ながら大きな影響を及ぼした。
本作は『4』をベースに3DSとPSVに展開した『Chronicle』シリーズの新作である。


特徴

  • 登場武将、アクションは『戦国無双4』に準拠するので、そちらを参照。
  • それまで練技ゲージを消費して使用していた「戦技*1」は独立して、時間経過によって使用可能になる。
    • また、戦闘中に使用できる戦技は1つのみになった。その為、前作より考慮する必要がある。
  • IFイベント
    • 本筋のイベントでは歴史通りに滅ぼされてしまう大名でも、武将間との友好を上げる事でIFのシナリオが展開される。
    • 「雷光(今川)-桶狭間-」や「残影(明智)-山崎-」など、シナリオの勢力側でアレンジされたBGMが新規で追加されている。
  • 練武館
    • 戦国無双 猛将伝』に存在した練武館が復活。多数のイベントをこなして稼いだ報酬はお金や経験値、レアアイテムに変換する事が可能。
      • 前作の「猛将演舞」同様、『無双OROCHI』シリーズからのゲスト武将も参戦。

評価点

  • バランスの再調整
    • 『戦国無双4』は神速アクションの追加により爽快感があったが、神速アクションが強すぎる事や、旗持兵だけを狙って倒せば敵の士気がすぐに下がったり、特定の技能が強すぎる為、難易度がかなり低かった。
      • 旗持兵、強すぎる技能は削除、神速アクションもダメージの調整が行われバランスが見直された。
    • 『Chronicle』シリーズでも「無双回復戦技」⇒「無双奥義発動」で永久ループといった抜け道があったが、本作では仕様の変更上、出来なくなった。
    • 抜け道は無くなったが、難しすぎる事もなく適度なバランスに仕上がっている。
    • また前作『2nd』では少なかった敵表示数はCPU性能が向上されたNew3DSでプレイすることで、かなりワラワラ感は向上している。PSV版は言わずもがな。
  • 武器の育成システム
    • 武器を取捨するのではなく、それぞれの属性を持った武器に対応する錬石を加工する事で経験値や技能を加えて育てていく形となり、自分の好みの武器を作りやすくなった。
    • 不要な能力や技能はお金を払う事で消す事もできる。練武館で入手できるアイテムを使えば好きな能力を付加でき、成長回数の制限もないので、手間さえかければ自分の理想の性能の武器を作れる。
    • 通常の武器でも最高まで育てきればレア武器の完全上位互換の性能になる。
  • 主人公のエディットの豊富さ
    • 『4』と同等のエディットが行えるようになり、顔の細かいパーツを始め、体型から声の高さまでを豊富に変更する事が出来る。顔肖像や奥義時の文字もオリジナルのものを使用可能。

賛否両論点

  • 敵将撃破ボイスの仕様変更
    • 本作では本当に敵将を討ち取った時のみ*2、敵将撃破ボイスが流れるようになった。
    • その為、それまでのシリーズに比べ、撃破ボイスを聞く機会が非常に減ってしまい、爽快感が減ってしまった。
      • もっとも、逃げられているのに「敵将!討ち取ったり!」というのは『真・三國無双』の時代から続く矛盾なので一概に悪いとも言えないのだが…。

問題点

  • シナリオの質の低下
    • 本作はマルチシナリオとして展開していた『2nd』とは異なり、初代『Chronicle』同様、再び一本道のシナリオに戻った。
      • また、プレイヤーは基本的に織田家に仕える為それ以外の戦いには参戦せず、「川中島の戦い」「厳島の戦い」「河越夜戦」といった有名な戦いは本作では登場しない。
      • 織田家の戦でも有名で過去作でも存在した「金ヶ崎撤退戦」がないなど首を傾げる点がある。
      • 戦があった事が匂わされたり、マップは存在するが、IFシナリオ*3に使用される為、史実の戦が大幅に減ってしまう結果となった。
      • なお、初代『Chronicle』も一本道のシナリオだったが、主人公が自身の修行の為に様々な家を渡り歩く…というストーリーだった為、上記の戦いには全て参戦する事が出来た。
      • そのかわり長良川の戦いや戸次川の戦い、織田視点の姉川の戦いなど『4』で描かれなかった戦が用意されている。
    • 「関ヶ原の戦い」や「大阪の陣」に関しても、東軍限定となり、それまでのシリーズのようにどちらにつくかといった選択肢はなくなった。
      • 西軍のシナリオは「加藤清正、福島正則や真田信之が東軍を裏切ったら?」というIFシナリオ内でしか存在しない為、史実のシナリオを西軍の立場でプレイできない。
    • IFシナリオも、武将との友好度を上げて歴史をひっくり返すと言うのは前作の『Chronicle 2nd』で既にやったことであり、目新しさはない。
      • テキストも作りこまれているわけでもなく*4、「あの時○○していれば」と後悔した武将のイベントを進めIFルートに突入するというワンパターンなものばかり。エンディングも一枚絵が表示されるのみと、目玉となる要素としては微妙な出来。
      • 発売前に雑誌で発表されていた「武田信玄と上杉謙信が早期に同盟を結ぶことで勢力図が変わり、足利義昭の反信長同盟が結成されない」などの史実に基づいたIF展開はこの一例を除きほとんど無い。
      • その他は「義元が家康を使者として各国に派遣し、天下布雅を目指す蹴鞠外交を行う」「元就が見落としていた海路を利用しての毛利・上杉・雑賀衆などによる反信長連合を結成する」「本能寺の変後に生きていた信長が農村に隠遁するが、秀吉の強引な治世に再び立つ」「加藤清正、福島正則や真田信之が大坂夏の陣で東軍を裏切る」など当時の情勢を考えるとまず成立しないような無理のあるオリジナル展開ばかり。
    • 一度失敗したストーリーを観ることでフラグを立て、リベンジという形で成功させる手法が行われるが、これも『無双OROCHI2』そのままの手法なので目新しさがない。
    • 中でも不評だったのは明智光秀のシナリオで、「軍師を交代制にすることにより全員の意見を取り入れる」という制度を採用し、その上最初の軍師をガラシャに行わせた為に武将が次々と敗れていくという内容は批判を買った。
    • メインシナリオとなる「正史の章」も斎藤道三が言及した「泰平の世を創る」という話は竹中半兵衛が没した後に有耶無耶となり、大坂の陣まで史実をなぞるだけとなり完成度が低い。竹中半兵衛が継続して登場する織田の章に進んでもこの話は出てこない。
    • ストーリー面に関して高い評価を受けていた『2nd』から大幅に雰囲気が変わり劣化してしまった。
  • ボリュームの大幅な低下
    • シナリオの質を抜きにしても、前作『2nd』が外伝・猛将演舞含めて100本以上のシナリオ総数だったのに対し、本作ではIFシナリオ・練武館を含めても50本で、半数以下に低下している(双方とも有料DLCの追加シナリオは含まない。)。
  • 『Chronicle』シリーズの特徴として、無双武将以外のモブ武将でもシナリオによっては操作出来たり、多くのセリフやイベントが用意されていたが、イベントは激減し、操作できる事もなくなってしまった。
    • モブ武将は本筋のシリーズと大差ない扱いとなり、『Chronicle』シリーズならではの特色を失ったといえる。
  • ムービーのカット
    • 「本能寺の変」や「関ヶ原の戦い前夜」などのイベントムービーは全て無くなり、それまでの会話イベント同様か一枚絵で表現される。
  • 個別イベントの質の低下
    • 無双武将と友好度を上げる事で発生する個別イベントも、各武将につき10個ほど用意されていた前作までとは異なり4個程度になった。それも1つのイベントを複数の武将で共有する形となり*5、イベントの数は激減した。
    • 伝承や史実を元にしていた個別イベントも減り、大半が荒唐無稽なギャグイベントで占められている。
      • 女子会胸キュンといった、世界観ぶち壊しのセリフの数々は初代の悪ノリが復活した形になった。
      • 夢の中で死んだはずの信長とそれに仕える秀吉に出会い、彼らに抗う事を決意する豊久というどう見ても『ドリフターズ』なイベントや、忍達が集まった場で「揃いの衣装にしないか」と持ちかけそれぞれの色まで分担するねね等版権作品のパロディも多い。
      • 伝承を元にしたエピソードも、まんじゅうを盗み食いした犯人を探すべく女に関するエピソードを持つ武将(信長・謙信・元親)を尋問するといった、首をかしげるようなおかしなイベントになっている。
    • 一応、稲姫に弓の心得を教える今川義元(と立花宗茂)など真面目なイベントがないわけではない…が、どうも「海道一の弓取り」という言葉を字面通り弓の名手と勘違いしているようで、別の意味で違和感の激しいイベントである。
      • 無論、弓取り=武士なのだから、義元も十分以上に弓が扱えることは確かであろうが。また、義元は「射は禅に通ず」と得意の仏教に例えて説明をしており、さらに「宗茂は無の境地に至った弓の名人で、それに比べ自分はまだ雑念がある」と謙遜している。
    • 主人公が個別イベントに参加する事も減り無双武将同士ばかりでイベントが進むので、前作のように無双武将との絆を築き上げる感じは薄くなってしまった。「主人公が空気」と手厳しい評価を下すプレイヤーも少なくない。
      • 友好度のアップはイベントの選択肢の他はゲーム内のお金で行う茶会による所が大きく、茶会の演出も非常にあっさりとしており、この点も影響しているかもしれない。
  • 階級(レベル)の仕様
    • 本作では一度戦場で操作することで無双武将が選択可能になり、その際の階級(レベル)が一律5で統一された。その為、後半のシナリオで初めて登場する無双武将も階級5から始まるので難易度が不安定になった。
      • 主人公は全ての戦に参戦するために、シナリオを進めるほど他の無双武将との階級差は広がる。後半のシナリオで初参戦した無双武将は雑兵とすらまともに戦えず、必然的に初プレイ時の難易度は「やさしい」に固定される上に
        速攻でクリアしなければ無双武将が倒されてしまうので初めてのステージなのに落ち着いてイベントを見る事も出来ない。
      • 選択しない無双武将は訓練所により4人まで自動レベルアップさせる事ができるが、初参戦の武将は一度ステージをクリアするまでは選択できない為、訓練所によるフォローも出来ない。
      • この訓練所自体アップデートで追加された物であり、発売時は存在しなかった。
      • 前作までは主人公の階級に合わせて登場しており、何故今更こういった仕様変更がされたのかは謎。
        前作では、階級を推奨以上まで上げて進めることで無双武将のレベルを同時に上げ、レベル上げの時間を短縮するという裏技があった。
        それを嫌ったのならば、『真・三國無双7』のようにレベル上昇に上限を付ければいいだけの話であり*6、この調整はあまりにも安直すぎる。
  • 練武館の仕様
    • 様々な場所で発生するミッションをこなして点数を稼いでいくモードだが、''ミッション中のセリフがフルボイスで流れる上にセリフが流れ終わらなければ次のイベントが発生しない。
      • ミッションの数は50個以上にわたるので、どんなにてきぱきとこなしても、セリフが長いおかげでミッションが次々とたまってしまう。
      • 発生が数分遅れる事がざらにある為、多くミッションをこなすためには長いセリフをしゃべっている間は移動時間に当てるといった計画が必要になる。
    • 本作ではお金が非常にたまりにくく、武器の育成のためにも必然的に何度も練武館を使用する事になるが、この仕様のおかげで快適とは言えない。
    • ちなみに『戦国無双 猛将伝』では敵将撃破時以外の台詞はボイスが無くテキストが表示されるのみだったが、これでも30秒ごとに発生する定時ミッションが遅れることも多々あった。

総評

アクションゲームとしては『Chronicle 2nd』と『4』の問題点がある程度改善されており、十分良作ではある。
しかし、『Chronicle』シリーズが人気を博す理由となった部分が尽く劣化してしまっている。
全体としてみれば『4』の流浪演舞の方が、本作より『Chronicle』シリーズらしいと感じられる出来となっている。
システムの目新しさが無くなったことで『4』との差別化を果たせず、それまで培ってきた史実の要素を活かす方向性すらも失ってしまった。
好評だった『Chronicle』シリーズの新作としては残念な出来に仕上がっていると言わざるをえないだろう。

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最終更新:2024年02月28日 10:33

*1 攻撃力の増加や体力の回復といった効果が得られる特技。

*2 『3』以降の仕様で史実で戦死した武将を戦死した戦場で倒すと「討ち死に!」というアナウンスと共に武将が討ち死にする。

*3 例えば「川中島決戦」というシナリオは西上作戦に成功した信玄が謙信と戦うものであり、史実の「川中島の戦い」とは異なる。

*4 『Chronicle 2nd』のIFイベントのように史実でもありえるかもしれないという落とし所ではなく、大体が大団円になるので似たような展開になりがち。

*5 例えば真田幸村と前田慶次が登場するイベントは、幸村と慶次それぞれの一覧で「1つ」としてカウントされる。

*6 初代クロニクルは上限が無いが(バグで実質90程度)、クロニクル2ではこの方法だと50が上限ときちんと設定されている。