このページではPS2『探偵 神宮寺三郎 Innocent Black』およびその続編『探偵 神宮寺三郎 KIND OF BLUE』を取り扱う。
探偵 神宮寺三郎 Innocent Black
【たんてい じんぐうじさぶろう いのせんと ぶらっく】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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PlayStation 2
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発売元
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ワークジャム エクスプライズ(GA)
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開発元
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ワークジャム
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発売日
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2002年10月24日
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定価
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5,800円(税別)
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配信
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【PS3】ゲームアーカイブス 2015年12月16日/1,234円(税8%込)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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良作
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ポイント
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メーカーが変わってもいつも通りの神宮寺三郎
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探偵 神宮寺三郎シリーズ
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概要
『神宮寺三郎』シリーズ15周年記念作品。
データイーストからリリースされていた『神宮寺三郎』シリーズは、データイースト倒産後に『クロス探偵物語』を制作していたワークジャムへと版権が譲渡され、それ伴ってデータイーストの同シリーズの制作スタッフも大量移籍して本作が制作された。
このため、本当に隅々まで何一つ損なわれること無く同シリーズのすべてが継承されている。本シリーズでは初のPS2作品となる。
ストーリー
新宿歌舞伎町に事務所を構える探偵神宮寺三郎は、半年前に自身が入院していた二宮病院の医院長より、家出をした医院長の娘を捜索してほしいという依頼を受ける。
折しも新宿近辺で同一手口の連続殺人が発生しており、医院長の娘の身を案じた神宮寺は依頼を受ける。
システム
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コマンド選択式アドベンチャーである。
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前作『灯火が消えぬ間に』で導入された時間経過のシステムおよび、前々作までにあったザッピングシステムは撤廃され、以前の神宮寺三郎だけを操作するコマンド総当たり形式に戻った。
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従来通り「捜索」コマンドで3DCGマップに移行する。それ以外の場所は1枚絵で表現されている。
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フローチャートの削除
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本作は一本道であるためか、フローチャート機能は無い。
評価点
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世界観も何もかもが引き継がれている
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メーカーが変わっているにもかかわらず、至極真っ当なシリーズ後継作であり、15周年記念作として恥じない出来である。
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ストーリーも良好
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連続殺人事件や、病院前の謎の女など、かなり序盤から丁寧な伏線が張られており、先を読み進めたくなる構成となっている。
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シリーズ中もっともハードボイルドな作品となっており、CGやBGMもその世界観を見事に演出している。
問題点
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一部の探索が理不尽
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ある人物が落としたアイテムを新宿中央公園中から探し出さなければならない。
しかもそのアイテムはCG上には表示されない。ただし、マウスオーバーで「?」が表示されるものの、その面積は数ドットである。
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舞台となる場所も相まって、1作目『新宿中央公園殺人事件』の派出所探しを彷彿させる。
概要にて"シリーズのすべてが継承されている"と書いたものの、そんなところまで継承する必要はない。
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一部のUIが中途半端
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前作にて導入された「聞き込む」コマンドはコマンドこそ残ったものの前作のような心理戦がないため「聞く」コマンドとの差別化が曖昧であり、「聞き込む」と「聞く」コマンドの両方ともを「話す」コマンドに統一出来たのではないか。
賛否両論点
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タイトル名、CERO:B(推奨年齢12歳以上)に指定されたことからわかるように、全般的に暗くダークで憂鬱な作風となる。
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特に序盤の「医院長の娘の行方調査」が終了後は、物語が進むたびに誰かが死ぬというくらい次々と今作の登場人物たちが死んでいくというハードな内容である。
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犯人側の人間も、これまでのシリーズの犯人たち以上に冷酷非道である。
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ラストは、神宮寺シリーズ史上屈指の憂鬱エンドである。
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前作までは、「これで事件は解決。残された関係者は事件に向き合いながらも明日からの未来に向かって頑張る」というある程度のカタルシスがプレーヤー側は得られたものの、本作はそれすら微塵も感じさせないエンディングである。
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逆を言えば、前作までは「ハッピーエンドで終了」というありきたりでマンネリ化した流れであったために、それに食傷気味であったハードボイルド好きなプレーヤーにとってみればとても評価の持てるエンディングだったのかもしれない。
総評
システム面では前作で取り入れられたいくつかのシステムが撤廃されたものの、ストーリーの質はこれまで通りで過去作との間に破綻もなく、
メーカーが変わっても、プラットホームを移しても、いつも通りの『探偵 神宮寺三郎』だった。
ストーリーも神宮寺が苦渋の決断を下すなど、いつも以上にハードボイルドな内容となっており、
プラットフォームがPS2に移ったことで質が向上したCGおよびBGMそしてムービーもその世界観を見事に演出している。
余談
本作の説明書において次作『探偵 神宮寺三郎 KIND OF BLUE』に関する記載があり、本作発売より1年半後に同作が発売された。
探偵 神宮寺三郎 KIND OF BLUE
【たんてい じんぐうじさぶろう かいんど おぶ ぶるー】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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PlayStation 2
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発売元
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ワークジャム 【GA】エクスプライズ
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開発元
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ワークジャム
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発売日
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2004年4月22日
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定価
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5,800円(税別)
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配信
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【PS3】ゲームアーカイブス 2015年12月16日:1,234円(税8%込)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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概要(KIND OF BLUE)
前作付属の説明書で予告されていた続編。
キャラクターデザインが寺田克也から杉浦善夫に代わっており、キャラクター以外でも同じ地点でのCGやセーブ画面のデザインですら新たに書き起こされている。
御苑洋子や関東明治組の今泉のデザインは別人レベルに変わってしまっている。
タイトルの「KIND OF BLUE」はジャズ・トランペッター、マイルス・デイヴィスのアルバム名から採られている。
ストーリー
神宮寺事務所から洋子が去って4ヶ月。神宮寺は仕事もなく荒れた生活を過ごしていた。
そのような日々のなか、明治組の今泉から若頭補佐、蒲生の身辺調査を依頼される。
(PlayStation Store より)
システム(KIND OF BLUE)
追加
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所持金
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所持金の範囲内で、物品を買うことが出来るようになった。
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依頼を受けると報酬が受け取れ、所持金が増える。
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基本、情報提供の見返りとして使うぐらいである。
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キャットフードの代金などストーリー進行上必須な支出の一部は別のところから支払われるようで、残高は減らない。
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「バーかすみ」で飲み物を頼んでも減らない(ツケになっているのか?)。
変更点
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携帯
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iモードに対応しており、(ゲーム内の)天気予報が分かる。
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「聞き込み」コマンドが前々作程度の作り込みがなされている。
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前作では「聞く」コマンドと何も変わらない作りであったが、本作では相手の心を開くための駆け引きが必要となった。
評価点(KIND OF BLUE)
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前作には見劣りするものの、しっかり作り込まれた良質なADVである。
賛否両論点(KIND OF BLUE)
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ストーリー
+
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ネタバレにつき、折り畳み
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意外な展開が待ち受けているものの、中盤の曲探しは推理もスリルもない単なるおつかいの連続であり、余程のジャズ好きでなければダレることとなる。
そこを抜ければ予想外の展開が始まるのだが…。
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序盤から登場するいかにも怪しい人物は、結局神宮寺ではなく関東明治組が始末してしまい、プレイヤーは肩透かしを食らうこととなる。
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本作は、ストーリー進行中は常に雨か曇りの天気であり、神宮寺のダウナーな心情下でのプレイを強いられるので、常にどこかどんよりと暗い気持ちでプレイすることになるかもしれない。もっとも、これはこれで味のある世界観ではあるが。
問題点(KIND OF BLUE)
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映像表現に統一感がない
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ムービーを中心に実写が取り入れられている。また、CGのタッチも前作よりも写実的となっている。
しかし、キャラクターデザインはそれでも前作の劇画調タッチから脱しておらず、統一感を欠いている。
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また、例えば病院の受付などでは、実写の背景に人物のCGの立ち絵を重ねており、違和感のあるものとなっている。
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中途半端な所持金システム
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何がしたかったのか分からないのが正直なところ。
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情報提供者に情報料を多めに払っても、次回の聞き込みで有利になるわけでもない。
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ストーリー上必要な支出は別会計となっているため派手に使っても良いのであるが、「バーかすみ」でBGMを変えるぐらいしか使い道がない。その割には有り余る報酬が手に入る。
総評(KIND OF BLUE)
従来通りしっかり作り込まれた良質なADVである。
前作からは神宮寺と御苑洋子との確執だけが引き継がれており、事件は独立しているため前作未プレイでの本作のみのプレイもさほど問題にはならないが、可能であれば前作からのプレイをお薦めしたい。
ただし、上記で書いたとおり、雨と曇りばかりのすっきりしない天気ばかりでゲームを進めることになり、それに加え退廃的な神宮寺を見せつけられるので、それに耐えうるかどうかであるが。
最終更新:2022年03月04日 19:35