新・里見八犬伝 光と闇の戦い

【しん さとみはっけんでん ひかりとやみのたたかい】

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 東映動画
開発元 マイクロニクス
発売日 1989年12月8日
定価 6,200円(税別)
判定 クソゲー
ポイント とぼしい説明・不親切なシステム
ゲームバランスは劣悪
8人同時戦闘
げぼ


概要

かの有名な「南総里見八犬伝」を鎌田敏夫氏が翻案した小説『新・里見八犬伝』。
本作は、1983年に東映洋画系にて封切りされた『新・里見八犬伝』の実写版映画『里見八犬伝』をモチーフとした和風RPGである。

魔性の女「玉梓」を筆頭にした「闇一族」と深い因縁を持つ戦士「八犬士」全8名と静姫を集結させ、
8つの球を集め、最終的に闇一族を全員打倒するのが目的。

SNK/アルファ電子の『里見八犬伝』と混同される事がしばしばあるが、関連性は全く無い。

特徴

  • プレイヤーはゲーム開始時に八犬士から任意の1名を選択(名前は最大4文字で、本来の八犬士の名前以外にも変更可能)、他の八犬士達と出会いストーリーを進めて、関東近辺を旅する(伊豆半島を含む)。
    • パーティに加入するのは八犬士と静姫の9人。静姫は戦闘に参加しない。
  • 仲間が増えるとなぜか団子状に固まって歩く。9人で移動すると少し遅くなるが、どこかかわいらしさを感じさせる。

評価点

  • キャラクターのグラフィックがファミコン中期の基準ではなかなかの迫力
    • ザコもボスも戦闘中の敵グラフィックはとても良く描かれており、さらにアニメーションするため当時のファミコンのRPGの中ではかなり高水準。純粋なRPGである為スプライトオーバーによるチラツキが起きない調整も施されており、本作ではマイクロニクス開発作にありがちな視認性の問題は無い。
  • BGMも高水準
    • また、サウンドドライバーはマイクロニクスの過去の開発作と大差ないものの、高音と低音が極端にならないようにはなっておりマイクロニクスの開発作にありがちな耳障りなサウンドも改善されている。
    • 川井憲次の制作した楽曲は曲調も和風RPGの雰囲気にマッチしておりなかなか良好。

問題点

  • 導入が不親切極まりない
    • 主人公に設定できるキャラが8人もいるが、スタート地点がバラバラにも拘らずバランスがまったくとられていない。
    • ゲームスタート時にテキストで主人公にした八犬士の説明画面が入るが、それ以外の説明はほぼ全く無い状態でスタートしてしまうため、完全に置いてきぼりを喰らう。
      • 始まって普通に町人に話しかけたら「本来中盤で互角になるボスと戦闘→当然ながら勝てずゲームオーバー」になるという無茶苦茶なゲームバランスになってしまっているキャラがいる点については、投げっぱなしというレベルを完全に超えている。
    • 町人の中には最初の台詞を話した後「 げぼ 」の一言を最後に死んでしまう者(例:「ここは かのうのむらです ……げぼ」→「すでに いきたえているようだ」)さえおり導入の不親切さに拍車をかけている。
  • 全体的にバランスがおかしい
    • 八犬士によっては序盤で平然と最強装備が手に入ったり、敵の強さと得られる成果が全く比例せずデタラメなど、ハッキリ言って無茶苦茶。
    • 回避率が全体的に高く、魔法すらロクに当たらず、戦闘テンポが悪い。一応オート戦闘はある。
  • ボスの直前でエンカウントすると「ボスが消失する」というゲームを崩壊させるバグが存在する
    • これに関してはエンカウントしないよう祈るしかない。セーブデータからやり直せば復活してくれる。
    • 死者がいる状態で移動魔法を使うと移動先がバグるが、今作ではこの程度ならマシな方。
  • 基本システムやUIが未成熟なせいで不親切な点が多々ある
    • 道具を「渡す」コマンドが存在しない。入手したアイテムは先頭キャラから埋まる。アイテム役を作ることさえ一苦労。
      • マイクロニクス開発RPGとしては前作品にあたる『ゾイド2 ゼネバスの逆襲』のソースの多くを流用しているようで、基本システムや挙動に共通点が多い。『ゾイド2 ゼネバスの逆襲』は一人旅*1のRPGであった為、UIが若干未成熟ではあったがあまり問題になっていなかった。しかし本作ではその「一人旅前提のUI」がほぼ直っていないまま、システムがパーティー制になってしまっている為に発生した問題と思われる。

賛否両論点

  • 意図的にエンカウントを無効にできる状況がある。
    • 「犬川 荘介」(そうすけ)を主人公に選ぶと、一人旅の内はフィールドでのランダムエンカウントが全く発生しない。(荘介が旅立つ前から所持している「まよけのふえ」の音色の力で敵から見つからない、とゲーム中でも説明される)
      • 高レベル帯も無傷で突破できるため、序盤どころかゲーム開始時点で最高クラスの装備を入手できる。
    • 静姫を仲間にした後に全滅してもゲームオーバーにならず、静姫の単独行動となる。
      • この状態ではエンカウントどころか戦闘自体が発生せず、ボス戦*2以外は自由にイベント進行可能。ただし、「八犬士を復活させるアイテムや、そのアイテムを購入する資金を捻出する方法が無い状態で静姫一人になる」と詰み。
    • これらはバグではなく仕様であり、日本製RPG屈指の自由な攻略が可能。ゲームバランスをもっと練りこんでいれば評価されていたかもしれない。

総評

独特なシステムのRPGで、悪い意味で知名度がソコソコあり、同年発売のSNKの『里見八犬伝』、ひいては「南総里見八犬伝そのもの」に風評被害を及ぼしている。
効果の無いアイテムが複数あるなど、もはや未完成かと思わせる部分がある。

余談

  • クレジットすらされない事も多々あった下請け企業「株式会社マイクロニクス」が、初めてオープニング画面にコピーライト表記されたゲームである。
    なお、本作より以前に『ゾイド2 ゼネバスの逆襲』の取扱説明書にて会社名が明記されてはいた。
  • 「げぼ」という台詞は本作のプレイヤーにとってかなり印象的なものだったようで本作を語る際にはしばしば引き合いに出される。
  • ファミ通1997年12月5日号の特集「クソゲー注意報」において漫画家・柴田亜美氏がクソゲーの憎き思い出としてこのタイトルを挙げている。
    同コラムによるとサガシリーズ等で有名な河津秋敏氏もプレイ済みであったとのこと。
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最終更新:2022年11月09日 15:47

*1 詳細は該当ページ参照。概要だけ説明すると、金属生命体を兵器に改造した存在「ゾイド」のパイロットである主人公が、複数のゾイドを連れ歩くシステムだった。しかし、主人公がパイロットである都合上、その時搭乗していないゾイドは戦闘においては補欠メンバー扱いとなる。また、各ゾイドに「装備」の概念はあれど「個別の所持アイテム」の概念は無い。アイテムは主人公が一括管理する。

*2 本作の主要なボスは「八犬士全員が戦闘可能な状態で揃っていないと戦闘を拒否する」仕様となっている