アークザラッド 精霊の黄昏
【あーくざらっど せいれいのたそがれ】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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ソニー・コンピュータエンタテインメント
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開発元
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キャトルコール
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発売日
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2003年3月20日
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定価
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6,090円(税込)
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配信
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ゲームアーカイブス:2014年9月17日/1,234円
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判定
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なし
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ポイント
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『III』から千年後 動きのパターンが少ないフルポリゴン 魔族シナリオは好評 シリーズファン以外には微妙ゲーから良ゲー
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アークザラッドシリーズ
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PlayStation Studios作品
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概要
光と音のRPG、アークザラッドシリーズの通算5作目(『カジノゲーム』を入れると6作目)。
前作『アークザラッドIII』から千年後を舞台とし、登場人物は一新されている(隠しキャラとして登場するものも居る)。
グラフィックはPS2になったことで全編にわたりフルポリゴンとなった。
開発は後に『3』以降の『メタルマックスシリーズ』に携わるキャトルコールが手がける。
魔法を失った人間と、モンスターから進化した魔族とが資源である「精霊石」を巡って争いを繰り返す時代。
人間側の主人公カーグ(Kharg)、魔族側の主人公ダーク(Darc)それぞれのシナリオを交互に進めていくことで、物語の全容が明らかになっていく。
システム
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戦闘システム
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攻撃範囲の進歩。前作まではマスだったが、今作では武器や技により攻撃範囲が円、扇形、長方形とバリエーション豊かになった。
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但し、魔法を撃つときは敵がいる地点でないと着弾点にできない。『III』よりも『II』に近い。
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特に通常攻撃は、武器パーツを取り替えることで色々と攻撃範囲を変化させることが可能である。
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敵を倒しても、その時点でドロップ品は手に入らない。落としたお金やアイテムを拾って初めて「入手」である。
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その分行動数が増えるのが難点。また、敵を全滅させたとき最後に倒した魔物からは手に入らない。
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木箱などが戦闘MAPにあり、『I』と同じく戦闘中にのみ取れる。但し敵と同じようにHPが設定されており、破壊に時間がかかる。
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ドラム缶のようなギミックも。破壊すると爆発して、周囲のキャラにダメージ。自分も巻き添えを食らうので、飛び道具を使うべし。
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特殊能力と精霊石
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人間側は「特技」、魔族側は「魔力」という名称の特殊能力を用いる。その際に精霊石を消費する。
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精霊石は、他のRPGにおけるMPに相当するもので、決まった数だけ各キャラが持ち運べるものである。
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休息で取り戻すことはできず、他のアイテム同様に自分で補充する必要がある。
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武器パーツ・アクセサリー
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今作では武器の交換ができず、武器の強化効果を持つもの、属性を付与する、範囲を広げる効果等を武器に最大3つまで付加することができる。
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設定的には自分に合った愛着のある武器を使い続けるために作り出されたもの。
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アクセサリーも別枠で3つ装備できる。
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闘技場
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人間側はカテナ・ラマダ寺、魔族側はオルコス・ルルムにある。お金を払って、規定の回数連勝すると、賞品がもらえるというもの。
評価点
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魔族側のキャラクターとシナリオ
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人でも魔族でもない醜い姿に生まれ、ずっと迫害されてきたにもかかわらず、優しい心を失くすことができずにいるダーク。
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人間(ポーレットの父)に妻子を惨殺された復讐に燃える狼獣人ヴォルク。
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好意を抱きつつも、兄を殺したダークを赦すことができないでいる鬼娘デルマ。
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人間による生体実験で元の姿を失ったカトレア。
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人に作られた魔物ベベドア。
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こういった個性的な面々を上手くシナリオに組みこみ、ダークがケジメとして魔王となる様は、無責任で身勝手なカーグとは好対照であり、熱血展開・鬱展開の演出も上手く、実に“アークザラッドらしい”ものである。
大抵のRPGではまず描かれることない魔族側の様子が、人間側とほぼ同じ量のシナリオを以て描かれていることもポイントである。
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メインキャラ・モブキャラ含め、魔族側の個性は人間側よりも強く、細やかに作られている。魔族側にも家族や友人が居り、中々の悲喜劇を見せてくれる。故に某イベントによるショックは人間側よりも大きく、加えて人間側シナリオの爽快感の減退にも繋がってしまっている。
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最初は利用関係だったり、復讐相手だったりと、お世辞にも結束したパーティとは言えなかった面々が、次第に絆を深め、「仲間」として一つにまとまり、変わっていくシナリオは評価が高い。
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シナリオ全体の流れとしては人間側が主役のようだが、これまでの勇者に共通する末尾の「C」をダークが受け継いでいる点からも、勇者の系譜は魔族側に流れているように見える。
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戦闘システムの大幅進歩(一部賛否両論あり)
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上述した要素によって今までのシリーズに比べて格段に戦略性が向上している。
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BGM
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作曲陣が一新され、音楽の方向性は変わったが、BGMの質は概ね良好。
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特に魔族側で流れる「ダーク ~ 覇王への道」「淘汰」の評価は高い。
賛否両論点
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シリーズファンへのサービスの少なさ
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千年後が舞台となっているので、前作までの名残は、各地に残る伝承や遺跡、魔族の街並みぐらいからしか感じ取ることが出来ない。
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ニヤリと出来る場面もなくはないが、総じて数は少なく、そのサービスも疑問に思う点も。
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しかし、裏を返せば新規のユーザーでも1つの作品として楽しむ事が出来るということでもある。前作までの設定も「本作の過去話」程度の感覚でも理解できる程度の関係に留まっている。
問題点
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PS2中期の作品にしてはポリゴンが粗い。
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リアル頭身+カメラは固定という『FF10』等に近い表現手法だが、動きのパターンも少なく、どの場面でも似たような動きをしているために見ていて飽きる。
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人間側のキャラクター
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評価点で述べたように、魔族側は個性的且つ従来のアークザラッドを彷彿させるものとして高評価であるのに対し、人間側はあまり人気がない。
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本作は、どこかアンチRPG的な雰囲気があり、人間側は身勝手な侵略者として描かれているので仕方がないかもしれない。しかし、やっていることが千年前からまったく成長しておらず、命を賭して希望を託したアークやククル、不可能と言われた聖棺の完成をやり遂げたアレクらが、あまりにも報われない。
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現実の民主主義の政治家を皮肉ったような表現も見受けられる。
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「合議制なので、証言させてよいものかどうかを議論します。その後、議論が信用に値するかどうかを議論します」平和ボケ以外の何物でもない。
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決定が遅すぎて間に合わない、魔族に攻め込まれたというのに和解すべし、など合議制の短所を膨らませている要素が多い。こんなのに票を入れる市民も同じくらい平和ボケしているということか。
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ダークに対して魔族側が「魔族だろうが人間だろうが関係ない。ダークだから一緒にいるんだ」という結論なのに、カーグに対する人間側は「カーグが人間である」ことに拘泥し、カーグ揃って登場人物らは物語中で全く成長しない(マルは元々あのスタンスだし)し、魔族側を理解しようとせずに屈服・殲滅させることだけを考えている。
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「人間滅びちまえよ」と思うプレイヤーも出てくる始末。
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また、シナリオでのカーグとマル以外のパーティメンバーの扱いが悪く、ステータスも冷遇されている。
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キャラクターの性能のバランスは悪い
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特に同じ斧キャラのヴォルグとガンツだが、ヴォルグは魔法も物理も高スペックで攻撃範囲も広いのに対し、ガンツは攻撃範囲が狭く、壁として役に立つかも怪しいような位置である。
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装備で攻撃範囲が変化しないのはガンツとカトレアだけ。しかしカトレアは元々射程があるうえそもそも打撃系ではないのでさほど気にならない。
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カトレアは魔法専門型と思われるが、その実魔法攻撃はベベドアに劣る。
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各陣営共通のヒロインであるリリアにも批判がある。
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人間も魔族も分け隔てなく接する稀有な人間であり、作中で聖女として扱われる彼女だが、行動と発言に矛盾が多い。また、彼女のせいで少なくない被害(とある人物の死亡等)を出しているため、聖女(笑)となっていることは否めない。
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しかし、周囲が勝手に聖女扱いしている節があり(リリア自身嫌がっている)、彼女が極普通の少女であることを(プレイヤー含めて)忘れていることから起こる批判とも取れる。
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聖女としてしか見ないカーグよりも、あくまで人間の女として扱うダークの方に惹かれているような描写もある。
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シナリオの描写不足
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最終的に人間パーティと魔族パーティは合流し、協力関係になるのだが、その和解の描写が不十分である。
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特に、妻子を殺されたヴォルクと、ヴォルグに父を殺されたポーレットは作中で最も重い物を背負ったキャラクターであり、この世界における人間と魔族の対立を端的に表した縮図である。
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それなのに、彼らの和解は曖昧に、そして短く描かれているために少々肩すかしである。一応、ヴォルクの方は成長と取れなくはないが、ポーレットは……
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ただし、互いに大切な人を殺されているのにそんなに簡単に心から和解できるわけはなく、この程度の描写で十分と考えることもできる。
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他の人間側の面々も身勝手なままであり、人間側を良く見せるためにわざと魔族側を堕としているような演出もある。
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ラスボス関係(ネタバレ有り)
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ネタバレになるが、年月の経過で世界観が大きく変わった本作でも『II』『III』のラスボスであった人物が三度ラスボスを務める。
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確かに今回も黒幕であり、設定上は最大最凶の敵ではあるのだが、ロックマンシリーズのDr.ワイリーの如きしつこさから、一部ファンから「またお前か」と言われた事も。
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尤も、前作、前々作では封印しただけで完全に倒した訳ではなかったのと、本作の設定上、再登場はおかしな話ではない。
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また、今作でようやくこの存在との完全な決着が付き、『1』から続いていた精霊を巡る物語は本当の完結を迎える事になる。
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隠し仲間キャラを自由に戦わせられない。
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隠し仲間キャラとしてカーグ編でヂークベック、魔族編でちょこがいるが、フリーバトルエリアとラストダンジョンでしか戦闘に出せない。
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特にヂークベックは、うまくプレイすればかなり早い段階で仲間にできるが、その恩恵は無いに等しい。
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ラスボス戦で使える分、『1』のちょこよりはマシではあるが、そもそも何故このような仕様にしたのだろうか?
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取り返しのつかない部分がある
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ダッカムがアルドを攻撃したあとは、アルドに行けない。そのため、オルコスやカテナの闘技場が利用できなくなる。
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特にカテナに行けないとなるとヂークベックが仲間にできず致命的である。
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他にも旧シリーズのように戦闘中に取らないと手に入らないアイテムが多い。特にボスが落とすアイテムは「倒した後拾わないと手に入らない、しかし敵を全滅させると強制戦闘終了」のため、取り巻きより先にボスを倒すか、盗まないといけない。
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もともと過去作より装備品が少ないため、取り逃すと今までのシリーズより影響が大きい。
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やり込み要素の問題
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はっきり言ってワンパターン。両方のシナリオに闘技場が2か所ずつ存在する。しかも全て連戦を勝ち抜くタイプと統一されてしまっていて飽きる。
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しかも勝ちぬき数に応じて違う景品がもらえるため、アイテムを集めようと思うとまた一から闘技場を始めなければならない。
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アイテム探しのイベントが、人間側と魔族側にひとつずつ。変化をつけるという発想は無いのだろうか?
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ギルドも魔物図鑑もアイテム合成もミニゲームもない。ボリュームはともかくやりやすさと発想は『II』にも『III』にも劣る。
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フリーバトルエリアの仕様
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乗った途端に強制的に戦闘開始になることがある。そのためフィールド移動のテンポがかなり悪い。
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逃げることは可能だが、そもそも何故こんな仕様にしたのかわからない。
総評
このゲーム自体には大きな欠点がない分、丁寧な作品として仕上がっており、単体でみればそれなりに遊べる。
しかし「PS2のアークザラッド」としては幾分パンチに欠ける出来で、『III』から1000年もの時が経ちすぎているのでアークファンには賛否が分かれている。
特にシステム面で、過去作でやっていたことが出来ていない部分が多く、「戦闘システムは進歩したが、それ以外は『I』まで退化した」と皮肉られることも。
魔族シナリオの良さがある一方、ボリューム不足もあるので、全体的にはシナリオを重視したゲームと言える。
その後の展開
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翌年には本作の5年後を舞台とした『アークザラッド ジェネレーション』が発売された。後日談としては見るところがあるが、ゲーム的にはあらゆる点が足りない内容となってしまった。
最終更新:2024年11月18日 06:08