オトメ*ドメイン

【おとめどめいん】

ジャンル 残念お嬢様たちの飼い主生活ADV
対応機種 Windows Vista/7/8/8.1/10
発売・開発元 ぱれっとクオリア
発売日 2016年6月24日
定価 6,800円(税別)
判定 良作
レーティング アダルトゲーム
ポイント ライトな女装主人公もの
ミドルプライスながら丁寧な作り
主人公が美少女ゲーム大賞キャラクター部門受賞


概要

株式会社クリアレーヴの新規ブランド「ぱれっとクオリア」の処女作。パッケージ版とダウンロード版が同時発売された。
ブランド名から分かるように『ましろ色シンフォニー』等で知られる「ぱれっと」の姉妹ブランドである。

ストーリー

祖母の他界に伴い、天涯孤独の身となった主人公。

そんな彼を拾ってくれたのは、
女子校を経営する同い年のお嬢様だった。
他に行くあてもなく、彼は女子の制服に身を包み、
女子寮に住むことになってしまう

けれど、一緒に暮らし始めたお嬢様達は何だか残念な人達ばかりで。

「パンツが見つからないわ。今日はノーパンで過ごすしか…」
「すぐに用意しますから! そのまま出掛けちゃ駄目ですよ!?」

拾われてきた筈だけど、
これじゃどっちが飼い主なのか分からない…!?
(公式サイトより抜粋)

主な登場人物

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  • 飛鳥 湊(あすか みなと)
    • 女顔の主人公。家事や料理が得意でヒロイン達の世話を焼く。
    • 身寄りを亡くして行き場を失ったところを風莉に拾われ、女装してお嬢様学校へ通う。
    • 一向に男だとバレる気配がなく理想の女子扱いされることは本人としては複雑な模様。
  • 西園寺 風莉(さいおんじ かざり)
    • 学園の生徒にして理事長を務めるお嬢様。本作のメインヒロイン。
    • クールで賢く見えるが、実際のところは勉学も運動もポンコツで不器用。
    • 相当な面倒臭がり屋で冒頭からボトラー*1であることが発覚する。
  • 貴船 柚子(きふね ゆず)
    • 同級生のヒロイン。名家のお嬢様だが明るくよく喋る性格。
    • 臭いだけで人を吐かせるほどに料理が下手なのが欠点。他にも汚部屋の住人であったり、家事全般が壊滅的。
  • 大垣 ひなた(おおがき ひなた)
    • 下級生のヒロイン。実家は成金一族らしいが嫌味さはなく(中二病を抜けば)素直な性格。
    • 「東方将軍ツァラトゥストラ」を自称するほどの中二病が最大の特徴。周りはついていけず校内では孤立気味。
    • ある事件をきっかけに湊のことを慕うようになる。

特徴

  • 選択肢で展開が変わるノベルゲーム
    • 攻略対象のヒロインは3人。立ち絵のあるサブキャラは2人いるがエロシーンはなし。
    • 攻略したいヒロインに好かれるような選択肢で個別ルートに突入するため難易度は低い。
  • おまけシナリオ
    • ゲームの進行に応じて解禁される要素。小話やHシーンを閲覧できる。
  • フリーカメラ機能
    • 立ち絵が表示されている場面でマウスをドラッグすることで、カメラを上下左右に動かして隅々まで見渡せる機能。OFFに設定することも可能。
  • 視点変更パッチ「襲われた湊くん」
    • エロゲー雑誌「BugBug2016年12月号」の付録DVDに収録されたアペンドパッチ。後に公式サイトでも無料配信された。
    • エロシーンの一つをヒロイン目線にアレンジしたエロシーンが追加される。

評価点

  • ストーリー
    • 初めての女装への戸惑い、女子校での男バレを防ぐための立ち回りなど、女装モノの美味しい場面が多数用意されている。
    • 立ち絵のある登場人物が6人と少ない分、個別ルートで誰かの出番が極端に減るようなことはなく、終始賑やかな会話をしてくれる。
    • 女装モノ+ポンコツお嬢様ということで設定こそ非現実的であるが、心情描写が細かく各キャラに共感しやすいようにできている。
    • 共通ルート・個別ルートともに作りはしっかりとしており好評。ヒロインの欠点に関しても、しっかりと個性の一つとして捉えられておりキャラの魅力を生かしつつ内面に向き合った展開をしている。
  • キャラクター
    • 主人公である飛鳥湊が非常に可愛い。
      • 女性声優が湊の声を担当しており、時折可愛い悲鳴を聞かせてくれる。
      • 立ち絵全体が表示される場面は多くないが、喋っている場面ではメッセージウィンドウの上に顔グラフィックが表示されているため見た目が華やか。立ち絵や表情のパターンもヒロインよりは少し少ないものの非常に豊富。
      • 共通ルートの終盤は寂しさを抱える境遇や女子校に通っている罪悪感といった湊の内面にスポットが当たった展開になっておりこのゲームの大きな見せ場になっている。
      • そのしっかりと男の子な性格や世話焼きなツッコミ役としての立ち位置が人気を博し、げっちゅ屋の「美少女ゲーム大賞2016 キャラクター部門投票」においては男の湊が1位となる珍事にまでなった。
    • 湊の人気ばかりが話題にはなるものの、他のヒロインもデザイン・声・内面ともに魅力的に描かれている。
  • 明るい雰囲気
    • ポップなオープニングムービーを始めとして、SD絵を用いたギャグシーンや漫符などコミカルな演出が多い。
    • あからさまに不愉快な行動をしたキャラクターは即座に制裁され、重い悩みは早めに解決手段を模索するなど極力ストレスを感じさせないようにしつつも、各√の中盤や終盤にある程度の山場は用意されていてダレにくい。
  • グラフィック
    • 館川まこ氏による綺麗なキャラクターデザインは非常に好評。攻略対象外のサブキャラ2人も良い。
    • 制服や体操服はお嬢様学校らしくお洒落で可愛いデザインとなっており、私服や軍服も機能性を感じさせつつも見た目も映えるデザインである。
    • SD絵は「ゆずソフト」や「Purple software」で著名な「こもわた遙華」が担当している。こちらも差分や動きを取り入れておりギャグの盛り上げに一役買っている。
  • システム・演出
    • 後ろを向いた立ち絵や目パチの搭載により動きを演出している。目パチはOFFにすることも可能。
    • ショートカット機能を搭載。ただしキーは固定。
    • CG・シーン回想では、CG一枚ごとに題名が付けられており、主人公やヒロインの一言紹介が用意されている。
    • エンディングはヒロインごとに専用のムービーが用意されている。
      エンディング後は、クリアしたヒロイン単独の立ち絵とCGをアレンジしたタイトル画面に設定できるようになる。印象的なCGのアレンジにより余韻を感じさせてくれる。
    • 立ち絵鑑賞モードを搭載。テキストも自由に入力出来る。
      • これらは株式会社クリアレーヴの共通仕様のため、同じ傘下ブランドの『僕と恋するポンコツアクマ。』等と同じ長所と言える。
    • BGMも質が高い。グラフィックと併せてゲーム全体はポンコツヒロインとは思えないようなお嬢様学校という設定に合った優雅さ・上品さを感じられる雰囲気を醸し出している。

賛否両論点

  • キャラクター性とストーリーコンセプト
    • 優秀な女装主人公がヒロインを支えるのが主な流れだが、メインキャラ(主人公+ヒロイン×3の4人)は高評価は多いものの全員クセが強く、人を選ぶ要素が多い。
    • 「ちょっぴり残念なところも結局好きになってる」とオープニング曲の歌詞が本作のコンセプトを端的に表してはいると言えるだろう。本来マイナス面である部分を個性として前向きに捉える展開が多い。
    • 制作側もその点は理解していたのか、いきなりお嬢様のボトラー発覚シーンから始まる(体験版も同様)という、プレイヤーの耐性を試すような冒頭になっている。
    • もっとも、冒頭に限らず本作の癖の強い点は体験版の範囲で全員紹介されるため購入前の段階で判断でき、あくまで好みの問題である。
+ ストーリー&キャラクターのネタバレ注意
  • 飛鳥湊
    • 口調は丁寧なものの見た目に反して意外と口が悪く、ヒロイン達にずけずけと物を言う場面が多いことは気になるプレイヤーもいる。
      具体例を挙げると「人に掃除をさせておいて不満を述べるのは図々しい」「同じことを何度も言わせるな」といった旨の発言をする。
      • 鼻に付いたプレイヤーからは「ヒロインを見下しているようで不快」という意見が出ている。
      • ただし主張自体は基本的にまっとうである。主張がないと、気弱な主人公が癖の強いヒロインに一方的に嫌なことを押し付けられる構図となるためそれはそれで望ましくないだろう。
    • 性欲は人並みでヒロインにそれなりに欲情する。Hシーンにおいては攻めたり攻められたりである。ちなみにヒロインも主人公も肌白だが、男のシンボルだけはそこそこ黒い。
    • 普段については普通の範疇の性格で何も問題はない、あるいは十分好印象なのだが、少し落ち込むだけ(全くもって深刻な問題は生じていない場面)でヒロインが救いに入るまで延々とウジウジし始めるため鬱陶しく感じたプレイヤーもいる。
      • 前述のように「美少女ゲーム大賞2016 キャラクター部門投票」1位に選ばれているため、好意的に見る人が多いのも事実である。
  • 西園寺風莉
    • 前述したように、開幕ペットボトル放尿を見せてくるメインヒロイン。妙におしっこネタが多く、湊に「理解不能の人」と称されるように作中でも特に奇行が多い。
    • 実はゲーム開始時点で既に湊に惚れており、それが行動源になっているシーンもあるが一部行き過ぎているシーンも。というか、湊に対し完全にストーカー行為をしている。
      • 「湊の使用済み体操服を頭から被る」「湊の盗撮写真を所持している」等。ギャグで流される場面もあるが後者に関しては明らかに職権濫用としか思えないシーンも。
    • 一応メインヒロインだけあってシナリオでの描写は丁寧であり、序盤に宣言した「楽しい学園を作る」という目標を達成するためにひたむきに努力する光景が細かく描写されている。
      • 湊の支えもあり、彼女自身も最終的には多くの生徒から慕われるようになるなど大きく成長した姿を見せるようになる。
      • 他2人のルートでも見せ場があるなどシナリオ面で若干優遇されており、全体的に見れば彼女に対して好印象を抱きやすくはなっている。
    • あとは、プレイヤーがボトラーというあまりに強烈すぎる個性に対しついていけるかだろう。
  • 貴船柚子
    • おそらく作中で最も賛否が分かれるであろうヒロイン。
    • 共通ルートでも軽く触れられるが、第二寮に居るのは元に居た寮で自身の手で異臭騒ぎを起こし、退学の危機になったところを風莉がかばって一緒に暮らすことになったため。
      • そのため柚子は風莉に対し深く感謝しているのだが、共通ルートで1回、柚子ルートで2回料理絡みでの問題を再び起こしており全く反省していないように見える。
      • その後ようやく反省し湊の指導によって料理の腕も向上していくが、反省するのが遅くはないだろうか…。また、厨房の出入り禁止を言い渡されているようだが明らかに無視してる。
    • 彼女のルートでは柚子と風莉の友情、及び湊を加えた三角関係が中心に話が展開され、終盤では風莉にも大きな見せ場が用意されている。ただ、そのため肝心の柚子が風莉に食われていると言う意見もある。
      • 柚子自身が度々後ろ向きになっていってしまい、彼女の魅力が隠れていってしまう展開が多いのも原因か。
    • 最終的には風莉と湊の行動によってしっかりと立ち直り、持ち前の明るさや行動力も戻っていく。
    • 「メシマズ」「許嫁」といったネタに関しても創作物においてありがちなものなため「見飽きた」「メシマズはそもそも不愉快」と非難されがちである。
      • 自身の欠点とも向き合い、結果家事全般も改善するため、成長物語としては悪くない。成長前の行動や題材を受け入れられるかはプレイヤー次第である。
    • また風莉ルートでは風莉の危機に対し真っ先に行動を起こしており、湊も柚子に触発されていくなど彼女の性格のプラス面に関しても作中全体でちゃんと書かれている。
  • 大垣ひなた
    • 中二病の後輩ヒロイン。その変わった趣味から同級生の間では孤立しており、後輩キャラの割にはほとんど湊たちと一緒にいる。
    • 趣味が非常に合う(男であったため)湊にどんどん惚れていき、ひなたは同性愛に悩み、湊もまた性別を明かせないままの恋愛関係に悩んでいく。
    • ルート後半では、中二病を抱える事となったひなたの「ありたい自分と世間評価のずれ」と言う問題に直面する事になる。
    • 作中で問題行動もないわけではないが、湊からも第二寮の良心のような扱いに収まったりと作中では比較的とっつきやすいヒロインになっている。
    • キャラ自体は好意的な面が多いが、ストーリー展開に関しては「一番良い」という意見もあれば「問題が解決してるようで何も解決していない」という意見もある。
    • その最たるものが、共通ルートからひなたルートラストまで一貫して取り扱われる「同級生に仲の良い友達がいない」というもの。
      • 湊によって他人への立ち振る舞い方を示され、彼女の周囲の環境も改善していくことが示唆されるがエピローグやおまけシナリオでは湊と一緒に居る場面しか描かれないため本当に解決したのかは不明になってしまっている。
      • 共通ルートにおいて「趣味は合わないけど友達」である中条琴子ができるのだが終盤でひなたの周囲への振る舞いに関して否定の言葉を投げたところで出番が終了してしまう。せめてこの二人の仲直りの描写は入れるべきだったのではないだろうか。
    • ヒロインの中で唯一、親が実際に登場しないため中盤で語られるひなたの両親との溝もそのままになっている。結果として「ひなたの性格や湊との関係が元に戻った」以外はどうなっていくかは関してはプレイヤーの想像に委ねられている。

問題点

  • 不具合関連
    • 初期バージョンにて誤字脱字のほか、音楽鑑賞において曲の抜けなどがあった。後に修正パッチで対応された。
      • 誤字に関しては修正パッチを当ててもごく僅かに残っている。
    • ひなたルートにて、ギャラリーに登録されないSDCGの衣装差分がある。
  • Hシーンの女装モノとしての需要は若干弱い。
    • CG構図が一般的なエロゲーと大して変わらないため、湊の顔が映らなくなってしまうものがほとんど。
    • ボイスはちゃんと付いている上、テキストにも湊のイキ顔に関する記述があるので不自然に感じる部分も。プレイヤーからも「Hシーンでもっと湊が見たかった」と概ね不評である。
    • 後にあるHシーンに視点変更パッチが出て湊のCGが追加され、若干だがフォローされた。

総評

個性の強いヒロインとの掛け合いが楽しい明るい学園モノ。
可愛らしい主人公が反響を呼び、ミドルプライスという買いやすさもあってか、女装ジャンルの入門編として最適で同ジャンルの普及に一役買っている。
他の登場人物やストーリー、演出なども手堅く纏まっておりコンセプトの割には入り込みやすく出来ている。
一方でやはりコンセプトや女装主人公、といジャンル自体に人を選ぶ要素はあるため、気になった人はまず体験版のプレイを推奨する。


関連作品

  • 僕と恋するポンコツアクマ。 すっごいえっち! 体験版
    • 同じ会社の「スミレ」ブランドとのコラボ。UIデザインは違うがゲームエンジンは同じ。
    • 体験版にのみ本作とのコラボシナリオが収録されている。
  • 女装主人公コラボミニADV ~乙女が彩る恋のエッセンス・オトメ*ドメイン~
    • 他会社の「ensemble」ブランドとのコラボ。「ensemble」は2009年から活動している、女装主人公のシリーズが有名なブランドである。
    • 「ensemble」のゲームエンジンを使用している。湊が「ensemble」の学校を訪れる短編シナリオである。
    • 『乙女が彩る恋のエッセンス ~笑顔で織りなす未来~』の購入特典として期間限定でダウンロードできたコンテンツ。
    • 『オトメ*ドメイン』のダウンロード版にも付属しているため現在でもプレイ可能。

余談

  • 公式サイトにて体験版が配信されている。
    • 『体験入学編』『体験版』『げっちゅ屋体験版』の三種類が存在。『げっちゅ屋体験版』は本編シナリオとお試しHシーンをプレイできる『体験版』にお試しHシーンを一つ追加したもので、『体験入学編』は本編未収録のシナリオをプレイできる。
    • 『僕と恋するポンコツアクマ。 すっごいえっち! 体験版』及び本作の体験版に相互の宣伝シナリオが存在する。本編前にプレイするのもいいだろう。
  • FANZA(旧DMM.R18)ダウンロード版が度々半額セールを行っている。
    • 半額後に税5%込みで値段が3,710円(みなと)になるという遊び心を感じさせるもの。……だったが現在は増税により残念ながら3,740円になる。
    • ロングセラーになっており、半額セール時によくセールスランキングに姿を現す。
  • アダルトアプリ「DMM GAMESストア」内でAndroid版が販売されている。
    • また「FANZA(旧DMM.R18)」でクレアリーヴ自身が運営している基本無料ゲーム『ぼくらの放課後戦争!』でコラボイベントが開催されたが、体験版(一部抜粋型)のみはイベント終了後もプレイ可能なままとなっている。
  • 『オトメ*ドメイン THE ANIMATION』として30分アダルトアニメ化している。共通ルートと風莉ルートのHシーンを中心にアダルトアニメ向けにまとめたもの。
  • インターネットラジオ番組『オトメ*ドメイン RADIO*MAIDEN』が2015年12月24日に放送開始。人気を博し、2020年12月24日までの長期にわたって配信が続いていた。
  • 2017年に放送されたアニメ「干物妹!うまるちゃんR」の作中に登場するゲームUI画面が本作のUIと酷似しているという事態があった。
    • 「ぱれっとクオリア」が後から正式に許諾して事態は収束した。参考リンク
  • 2021年4月30日にFANZAGAMES PLAYカードが6,800円で販売された。
  • 2022年12月22日にSteam版が配信された。ただし日本語は非対応である。

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最終更新:2022年12月23日 23:53

*1 ペットボトルで小便を済ませることの俗語。