ヘラクレスの栄光II タイタンの滅亡

【へらくれすのえいこうつー たいたんのめつぼう】

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売 データーイースト
発売日 1989年12月23日
定価 5,900円
配信 プロジェクトEGG:2020年12月15日/500円(税別)
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 良くも悪くも手堅い出来
ヘラクレスの栄光シリーズリンク


概要

ギリシャ神話をモチーフにしたデータイーストのRPGの第二作目。
前作』は英雄ヘラクレスの一人旅と『ドラゴンクエスト』の影響を強く受けつつも武器の耐久力や状況に応じての持ち替え、両手武器の概念、シームレスなワールドマップなど色々と意欲的な作品だったが、ゲームバランスが悪い上にツッコみ所も多く、クセが強いゲームだった。
本作は一般的なRPGと同様にパーティ制やレベルアップで覚えていく魔法など、前作に存在しなかった様々な要素が追加されてよりパワーアップして帰ってきた。

内容としては、前年に発売された『ドラゴンクエストIII』の影響が強く出ており、パーティ制、昼夜の概念、手数料を払う事で道具を預かってもらう預り所等の共通点がみられる。

前作ではパスワード制だったが、本作ではバッテリーバックアップによるセーブが可能となり、信託所で記録する事が可能。

本作独特の仕様

  • 敵のブレスや魔法は通常攻撃と同様に回避が可能。特に後半になると敵の攻撃魔法やブレスをスイスイ避けられるようになる反面、連続して当たるとあっという間に死ねる。
  • 宿屋に止まる日数を選べる。2日休むと毒が、3日以上休むとマヒが回復する。当然日数分×人数分の宿代がかかるが、総じて安いので利用価値はある。

評価点

  • グラフィックやBGMの水準は高い
    • 前作から敵のアニメーションは無くなったものの、全体的にグラフィックの水準は高くなった。
    • 前作ではリアル志向なデザインだったが、本作では一貫してデフォルメされたデザインとなった為、迫力は損なわれたものの親しみやすくなっている。この点は続編では引き継がれなかったため、本作のみの作風となっている。
    • BGMも水準が高く、通常の戦闘音楽や天界のテーマなどの名曲が多い。作曲は酒井省吾氏を始めとしたゲーマデリックのメンバーが手掛けた。
      • 高濱祐輔氏は本作がゲーム音楽作曲のデビュー作である。
  • ギリシャ神話の世界観
    • ケンタウロスや空を飛ぶアイテムを求めるダイダロスなど、ギリシャ神話をモチーフとしたエピソードや登場人物が多く登場して物語を彩る。元々RPGと相性の良い題材であり、デフォルメグラフィックと相まって低年齢層のプレイヤーでもすんなり入り込める。
  • シナリオ
    • ストーリーは王道と思いきや、息子を助ける為に躍起になるダイダロスの結末や、自分達が助かる為に旅人を生贄に捧げるテミスの人々やそれによって引き起こされる悲劇など、印象的なストーリーも多い。
      • シナリオには続編のシナリオを手掛ける野島一成氏が関わっており、質の高いストーリーの片鱗が見られる。
    • 主人公の目的こそ封印を解いて魔王を倒すというものだが、同行するキャラは勇気が欲しい、心が欲しいといった個々の目的を持っているのも珍しい点ではある。もちろん彼らの目的もストーリーに絡んでくる。
      • 仲間となるキャラはケンタウロスとブロンズの女神像と人間ではない。先述の目的と合わせて「オズの魔法使い」のオマージュととれる。紅一点がブロンズ像というのが新し過ぎるが
  • バランスクラッシャーな物も多いが、隠し要素も多々ある。例えば預り所にアイテムを大量に預け続けると…。
    • 中でも勇者の小手は非常に強力な道具効果を持つが、それ故に到底見つけられないような場所に隠されている。

賛否両論点

  • 手堅過ぎた
    • インパクト抜群の前作とは異なり、UIやシステム等、戦闘シーンを除けば何から何まで『ドラクエIII』の丸写しと言えるほど類似しており、
      前作のような味のあるデコゲー臭さは悉く修正されてしまった。ベースがドラクエである為、万人向けで高い完成度は保たれているが、あまりに個性が無く独自要素に乏しい。
      この辺りは同社の『神宮寺三郎の第一作目』がはっちゃけ過ぎ二作目でオーソドックスな作りに抑えられたのにとても良く似ている。
    • 前作から残された独自要素と言えば、戦闘時のキャラの掛け声とちょっとテンションの高い戦闘中のナレーションぐらいしかない。
+ バランスクラッシャーな要素がある
  • レウシスでは異様なほど高額で武器が売られているが、子どもが適当に店番をしているせいか、10分の1の値段で買える。これをすぐ隣の道具屋に売ると適正価格で売れてしまう為、あっという間に金持ちになれてしまう。
    • これは意図的な調整なようで、ストーリーが進むと子どものせいで武器屋が潰れてしまったとして使えなくなってしまう。子供が好きなように商売をして痛い目を見るという珍しい演出でもある。
    • 表示上は適正価格のままなので、10分の1の値段で買える事は購入するまで気づかない。「どうのよろい」が8800Gもするのでぼったくられていると邪推しがちだが、このゲームではこれが適正価格で4400Gで売れてしまう。
  • アルゴスの槍
    • ゲーム中盤のとある塔の宿屋の階段を調べると何故か入手できる槍。装備しても攻撃力自体は並の武器だが、使用すると敵1グループに95のダメージを与えるという強力な効果を持つ。
      • 何度でも使えて、通用しない相手以外にはミスがないというのも強みの一つ。当然ながら中盤の敵はこれ一つであっさりと全滅してしまう。
    • しかもこの槍が何本でも拾える*1ので、仲間全員に持たせてひたすらアルゴスの槍を使うだけで、以後の難易度が劇的に下がる。しかも10000Gと高値で売りさばけるので金策としても有効。
  • ゼウスの剣、盾
    • 共に序盤で手に入る「さびたつるぎ」「さびたたて」をヘパイトスに磨いてもらうことで最強の剣と盾に生まれ変わるというものだが、さびた装備を装備したままヘパイトスに磨かせると、何故か手元に残ったままになるので増殖が可能。
      • もっとも、いずれも主人公とヘラクレスしか装備出来ないうえに、二人にはより強力な武器である「黒い三日月」があるため、盾を一つ増やすくらいに留まる。

これらの要素はバランスを一変させるものではあるが、ゲーム中でヒントとなるものはない。気付けばゲームが楽になるといった裏技的要素にとどまっている。

問題点

  • ドラクエから劣化している部分
    • 特に持ち物を売る時、装備している道具にEマーク(装備マーク)がつかない為、何を装備しているかを覚えておかなければいちいち聞き直される。
    • 装備部位がドラクエよりも多くなっている為、全ての部位を固めるとそれだけで道具欄の半分が埋まってしまう。それに加えてイベントアイテムや予備の装備、回復アイテムまで所持しないといけないのでかなり道具制限が厳しい。
      • 補欠キャラにいらない道具を持たせておくといった事が出来たドラクエとは違い、仲間は最高でも4人までなので、4人とも持ち切れなくなると何かを捨てるか宝箱を諦めるしかなくなる。
    • 戦闘シーンがかなりもっさり気味。
  • 装備品の特殊効果がわかりにくい
    • 装備品の約半数に隠された効果があり、単純に攻撃力・防御力だけでは質の判断ができない。一応前作から武器の使い分けという要素はあったのだが、今作ではアイテム所持制限が厳しいため大量に持ち歩くのに向いていない。
    • 呪われた装備もある。また呪われてはいないがこっそりパラメータが下がるものも多く、市販品でもそう言った装備が平気で混じっている。
      • 困ったことに名前で判別するのが難しい。ドラクエと同じネーミングの「いばらのむち」や、「きこりのおの」といういかにも普通そうな武器でもパラメータが下がってしまう。
      • 斧は攻撃力が高い分、重さで素早さが下がると解釈できるが、装備ウィンドウ上で表示されるのは攻撃力のみなので、素早さの低下に気付きにくい。後述の通り、敵の攻撃がいやらしいので先手を取られるようになると厳しい。
  • バランス関連
    • 雑魚敵でもほぼ全てが特殊行動持ちである。状態異常や二回攻撃を序盤の敵でも使ってくるので道中でも消耗が激しい。
    • 一部の敵に攻撃されると、装備品を一撃で破壊される事がある。武器、盾、鎧と壊されると痛手となるものばかりで、10000Gを超えるような高級品でもあっさり壊されてしまうのでストレスになる。壊される頻度もかなり高め。
      • 装備を壊す敵は序盤から登場する。「さびたたて」のような非売品も容赦なく破壊してくれる。
      • 装備品によっては壊されない物も存在するようだが、非売品である事が多い。この為、市販品の装備は完全に消耗品となっている。
    • また、敵によっては攻撃で胸をえぐられて即死する事も多々ある。防御力が高くともこれが出ると一撃なので油断が出来ない。
    • 状態異常がやや厳しめ、特に毒は歩行ダメージで容赦なく死んでしまうので序盤の死因の一つになりうる*2上に、かかる頻度が多め。仲間が加わる事で回復魔法が使えるようになるので楽になるものの、MPや道具には限りがある上に石にされると一気に戦力外になる。
    • エンカウント率が妙に高い。戦闘が終わった後に1~2歩でもう一度エンカウントする事も多々ある。ドラクエで言う聖水やトヘロスなど、エンカウントを制御する魔法やアイテムが無いのもエンカウント率の高さに拍車をかける。
    • 序盤の中ボスのバランスが厳しめ、一人しかいないのに高火力の二回攻撃や毒攻撃を繰り出すケルベロスや、仲間全体を石にしてくるメデューサは鏡の盾を使っても一人しか防げないのでかなりの難関。
    • 一方で、道具から発動する魔法や一部の状態異常魔法が強力、カオスマ(眠り)やモルシーバ(魔法封じ)はボスにも効いてしまう事が多々ある。中盤以降のボスはこれらの魔法で無力化出来る事が多く、前述した裏技的要素も合わせて難易度が低くなる。

総評

前作で見られた完成度に難があった部分は改善され、シナリオ、グラフィック、BGMも良く、万人向けで十分に遊べる内容になったと言ってもいい佳作だが
良くも悪くも意欲的なシステムだらけだった前作、システムや難易度に難があるが、それを打ち消すほどの素晴らしいシナリオで傑作となった『III』、
『III』の問題点を悉く解消し、全体的に高い完成度を誇る『IV』と比べるとあまりにドラクエフォロワー過ぎて地味な立ち位置になってしまったのは否めない。
しかし、魔法の種類や、ヘラクレスの立ち位置、随所にみられる完成度の高いシナリオ等、後のシリーズに影響を及ぼした部分も少なくなく、シリーズの基礎となった作品であるといえる。

余談

  • 後に前作と本作の間の矛盾点を解消するという意味合いでGBに『ヘラクレスの栄光 動き出した神々』が発売された。
    • 前述の「勇者の小手」の隠し場所のヒントになるような展開がある。およそ3年越しになる情報提示となった。
最終更新:2023年07月27日 09:57

*1 ゲーム後半では普通に一本だけ拾える。この頃ならバランスクラッシャーとは言えない。

*2 最序盤の大陸で遭遇する敵6種のうち毒持ちが2種類もいる