KAT'S RUN 全日本Kカー選手権
【きゃっつらん ぜんにほんけーかーせんしゅけん】
| ジャンル | レースゲーム |  
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| 対応機種 | スーパーファミコン | 
| 発売元 | アトラス | 
| 開発元 | バリエ | 
| 発売日 | 1995年7月14日 | 
| 定価 | 10,800円 | 
| プレイ人数 | 1~2人 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | ゲーム界唯一の
実在軽自動車をメインにした
レースゲーム 全日本選手権なのに
一発勝負の非合法公道レース
 ボリューム不足と中途半端感は否めない
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概要
数あるレースゲームの中でも唯一となる、実在の軽自動車をメインに扱ったゲーム。
その後に発売されたゲームでは軽自動車が登場するものもいくつか発売されたが、本作は出場車両全てが軽自動車という斬新なコンセプトの元に生まれた珍しいゲームである。
特徴
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ゲームモードは以下の通り。
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ストリートレース
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公道コースを走り、参加台数10台で都市部・海岸・砂漠など様々なシチュエーションのコースを駆け抜けトップでゴールすることが目的となる。
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ゲーム開始前にはすべてのコースを順番に通しで走る「ストレートラン」とチェックポイントごとに分岐する「チョイスラン」から選択する。その後、使用キャラ・車種・ミッション(AT/MT)の選択を行いスタートとなる。
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コース上にはアイテムが設置されており、接触することでアイテムを保持し任意のタイミングで使用できる。アイテムには投擲して相手車両をスピンさせるものや一時的に最高速度を突破して急加速するニトロなどがある。
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レース中には途中でチェックポイントとなるトンネルがあり、通過するたびに次のコースへ移動しシームレスでレースが継続する。そのため、他のレースゲームのような「周回」は無い。このチェックポイント通過時に一定順位を下回っているとその時点でゲームオーバーとなる。
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最終コースとなる夜の都市部を模したコースからは突如圧倒的速さを誇る敵「女猫」(プレイヤーと同一車種で黒色)が乱入しトップを走行する。この「女猫」をかわしてトップでゴールすることで勝利、スタッフロールとなる。
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あまりに遅く隊列から離されすぎると、パトカーのサイレン音が聞こえてくる。最終的にパトカーに追い付かれると強制ゲームオーバー。
 
 
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バーサスレース
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2人対戦のモードで、あらかじめ用意された4コースから1つ選び先に4周終えた方が勝利。CPUが2台並走する。
 
登場キャラクター
キャラクターごとに性能差はないが、ゲーム中のボイスはそれぞれ異なっている。
    
    
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デモ画面のデータに基づいて記載。
 
| 名前 | 性別 | 年齢 | 誕生日 | 身長 | 血液型 | 備考 |  
| 神谷エミ | 女 | 19 | 3/13 | 153cm | A |  |  
| 高城洋子 | 女 | 21 | 7/16 | 164cm | A |  |  
| 東鉄雄 | 男 | 22 | 4/14 | 175cm | AB |  |  
| 園静寺玲華 | 女 | 18 | 5/30 | 151cm | O |  |  
| 石田美佐子 | 女 | 25 | 10/13 | 160cm | O |  |  
| 結城ミカ | 女 | 18 | 6/21 | 154cm | AB |  |  
| 岡信 | 男 | 20 | 11/28 | 171cm | A |  |  
| 神谷亜紀 | 女 | 25 | 8/8 | 162cm | B |  |  
| 佐々木恵子 | 女 | 22 | 2/8 | 157cm | O |  |  
| 雅佑一 | 男 | 19 | 9/30 | 180cm | B |  |  
| 葉月沙夜子 | 女 | 25 | 12/25 | 159cm | O | 隠しキャラ ゲームオーバー時に登場する警察官
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| 早坂美姫 | 女 | 25 | 1/1 | 168cm | B | 隠しキャラ 本作のラスボス、通称「女猫」
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車種
国内5メーカー・10車種の実在軽自動車が登場。
    
    
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デモ画面のデータに基づいて掲載。
ステータスは加速・最高速・ハンドリング・ダート・ボディ(耐衝撃性)の5つが設定されているが、実車とは無関係であることが注記されている。
 
| メーカー | 車種 | ボディカラー | ミッション | エンジン | 駆動方式 | 備考 |  
| オートザム | AZ-1(PG6SA) | 赤/黒ツートン | 3AT/5MT | 直3 F6A型 DOHC16バルブターボ | MR | 実車ではAT選択不可 本作発売時点で生産終了済
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| ホンダ | トゥデイ(JA4) | 赤 | 3AT/5MT | 直3 E07A型 SOHC12バルブ | FF | 前期型 2ドアモデル
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| ビート(PP1) | 黄 | 3AT/5MT | 直3 E07A型 SOHC12バルブ | MR | 実車ではAT選択不可 |  
| スズキ | カプチーノ(EA11R) | 白 | 3AT/5MT | 直3 F6A型 DOHC12バルブターボ | FR | 前期型 実車ではAT選択不可
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| アルトワークス RS/Z(HA21S) | 赤/灰ツートン | 3AT/5MT | 直3 K6A型 DOHC12バルブターボ | FF |  |  
| ジムニー(JA11V) | 灰 | 3AT/5MT | 直3 F6A型 SOHC6バルブターボ | 4WD |  |  
| ワゴンR(CT21S) | 白 | 3AT/5MT | 直3 F6A型 SOHC12バルブ | FF |  |  
| 三菱 | ミニカ ダンガン4(H36A) | 青 | 3AT/5MT | 直4 4A30型 SOHC20バルブターボ | 4WD | 実車ではAT選択不可 |  
| ミニカトッポ(H32A) | 黄 | 4AT/5MT | 直4 4A30型 SOHC16バルブ | FF |  |  
| ダイハツ | ミラ TR-XX(L500S) | 赤 | 4AT/5MT | 直3 JB-JL型DOHC16バルブターボ | FF | 実車のJB-JLエンジンは直列4気筒 |  
| アトラス | ミニ・パト | 黒 | 4AT/5MT | ? | ? | 隠し車種 実在しない作中オリジナル車種
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評価点
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軽自動車を題材としたこと。
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古今東西探してみても軽自動車を取り扱ったレースゲームは数少なく、メインに取り扱ったのは本作が唯一といって良い。身近な乗り物であり、日常的に利用されている軽自動車でレースをするというのは誰もが思いつきそうで実現していなかった要素である。
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また、発売当時は現代と異なり軽自動車にホットモデルやオープンスポーツカーを各社が用意しており、それらで世界選手権を含むモータースポーツへ出場するチームもいたほどで、軽自動車ながらレースゲームにうってつけの車種が揃っていた。
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車種ごとの性能はゲーム用に設定され現実とは異なるとの断りが入っているが、最高速度は現実の自主規制値に合わせて最も早いアルトワークスでも140km/h未満にされていることから、改造車ではなく市販車が登場していることがうかがえる。
 
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軽快な操作性。
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後述する問題点もあるものの、スピード感やハンドリングは軽快で動かしやすい。
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当時ならではの軽く小さな軽自動車を振り回している感覚を手軽に体感できる。
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他のレースゲームがスポーツカーやレースカーを題材にしその速度は優に200~300km/hの速度域に達するのに対し、本作の車種は最高速度140km/h未満ながらもスピード感は劣っていない。
 
賛否両論点
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メインとなるストリートレースの構成について。
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本作は決められたコースを規定数周回する一般的なレースゲームとは異なり、原則一本道でゴールへ向かって走り続け1レースで決着という構成を取っている。しかしこれが原因で、以下のような問題を生んでいる。
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一度通った場所はそのレース中二度と通過しないためコースを暗記することが難しくなっており、後述するコースマップが表示されないことと合わせて目の前のコーナーをアドリブで突破することを強要されがち。
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全日本選手権にもかかわらず何戦か行って総合ポイントで順位を決めるというものでもなく一発勝負であるため、途中でミスを重ねて突き放されると優勝が絶望的になることや負けても次のレースで取り返すということもできない。
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逆に周回遅れが発生しないため独走状態に持ち込んだ場合、最終エリアで「女猫」が登場するまで一人でずっと巡航するだけの寂しいレースが続く。
 
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また、いくつものコースを経由する都合上ゴールまでの道のりが非常に長い。実質収録コースの半分を走るチョイスランでもおよそ8分間走り続けなければならない。ストレートランならおよそ20分近くはかかる。
 
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収録車種の偏り。
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容量の都合などから車種を絞り込む必要があるものの、本作の収録車種には頷けない点も多い。
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レースゲームにもかかわらず、おおよそレース向きとは言い難い車種も多い。主にトゥデイ、ワゴンR、ミニカトッポがそうである。ただしこれは、「ファミリーカーでレースに出る」という独自性を持たせたものとして考えれば存在価値が無いわけでもない。
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当時軽自動車を自社製造していたメーカーの内、スバル(富士重工業)のみ収録車種が無い。当時のスバルではヴィヴィオを販売しており、スーパーチャージャー搭載など充実装備でラリーにも使用されたグレードRX-R、オープン仕様のT-TOPもあったため本作のコンセプトにマッチしていた他、乗用車ではないが他の収録車種と被らずECVT+スーパーチャージャー+RR方式と現代に至っても採用の少ないあるいは存在しなくなった機構を詰め込んだサンバーディアスという選択肢もあったはず。
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ダイハツは当時ミラ以外にもリーザOXY-R及び派生車種のリーザスパイダーなどのホットモデルが存在していた他、スズキもアルトワークスに匹敵するホットモデルとしてセルボSR-Fourが存在したが、いずれもレース向き車種でありながら収録されなかった。
 
 
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キャラクターの空気感。
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妙に気合の入ったデザインのキャラクターが詳しいプロフィール付きで登場するにもかかわらず、レースに挑む目的や理由などのバックボーンはゲーム中で語られることは無い。
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さらにキャラクターは軒並み一般人で、およそ選手権にエントリーするようなプロドライバーがいるわけでもない。全員が25歳以下、さらに(普通自動車免許であれば)18歳の免許取りたてもいるという運転経験の浅いドライバーばかりである。
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その上別に性能差も設けられておらず、違いはゲーム中のボイスと終了時・ゲームオーバー時のセリフが異なることだけ。プレイヤーの好みで選択できる点は良いかもしれないが存在感は希薄である。
 
問題点
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コースマップが表示されない。
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一応コーナーに差し掛かるところで指示マークは出るが、大まかにしかわからないため親切とは言い難い。
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例として「右180度コーナー」のマークが「ゆるい右コーナーがいくつも続き最終的に180度ターンする」と「直角の狭いコーナーが2つ連続し180度ターンする」の両方に表示されたりする。
 
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細かなコーナーが連続する所は指示マークが出ない場合があるため、必然的にアドリブで切り抜けることが求められる。
 
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ボリューム不足。
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ゲームモードは前述した2つだけで、自由に車を走らせる「フリーラン」的なモードすら用意されていない。できることはひたすら公道を走りゴールを目指すことだけである。
 
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アイテムの空気感。
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道中においてあるアイテムはとても小さく突然画面上に現れるため、狙って拾うことは困難。その上投擲系のアイテムは前方に直線状に発射するだけで、車体サイズが小さい本作では相手車両に当てることも難しい。
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スーパーマリオカートなどでは周回コースということもあり一度逃しても場所を覚えて次の周回で拾うことが可能だが、本作は逃したらそれまで、どうしても取りたければ逆走するほかない。もっとも、上記の通り無理に拾っても狙って当てるのは現実的ではないため、使用することの必然性に欠ける。
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ただし自分に使用するアイテムの「ニトロ」だけは例外。一時的に190km/h近くまで加速できる上そこそこ効果時間が持続するため、非常に使いやすい。よほど上手い人でもない限りは「女猫」に勝つためにもほぼ必須となるためこれだけは無理してでも拾う価値がある。
 
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ラスボスである「女猫」が極端に速く、勝つのが困難。
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最終エリアで乱入してくる「女猫」は道中のCPU車と比べて異常に速く、最高速をキープしていてもなかなか追い付くことができない。必然的にコーナーをショートカット気味に走るなどしないと交わすことはできないが、それでも些細なワンミスで簡単に逆転されてしまうほど速い。
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そのため、前述の通り「ニトロ」を持ち込んでゴール少し手前から使用して一気に交わす方法を使うことが必須化している。それでも、そこまでにミスを重ねて離されたり最高速の低い車種だったりするとこの方法をもってしても勝つのは難しい。
 
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車両の性能差について。
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CPUに勝利することを第一に考える場合、最後の「女猫」に追い付くために最高速と加速に優れた車種を選ばざるを得ない。そのため必然的にこの2項目が優れるアルトワークスやミラ、AZ-1辺りが選択肢となる。これらは総じてタイヤが滑りやすくコーナーでの操縦はシビアだが、それを差し引いても最高速を重視しないと勝つのは難しい。
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一方トゥデイやミニカトッポ、ジムニーはハンドリングやダート性能に優れるものの上記2項目が低いため、道中のCPUにすら苦戦する。もちろん滑りにくいためにコーナーの操縦はたやすいが、立ち上がりの加速が鈍く最高速も劣るためリターンを得にくいことから不利である。
 
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ミッションの性能差も大きい。
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ミッションはATとMTとで加速力が大きく異なっている。そのため極端なMT有利のバランスとなっている。
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ATはシフトチェンジの際にワンテンポ遅れる感覚があり、加速力が劣る。これについては、当時はまだATが現代ほど普及しておらず技術も未熟で、燃費も動力性能もMTに大きく劣ることが多かったことからある意味実車再現とも言えなくない。
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一方MTはボタン操作に機敏に反応してシフトチェンジするばかりか、加速力の高い車種だと1速から段階的に加速する速さと停車から5速に入れたままで加速する速さがほとんど差が無いため、実質5速固定で自由に走れてしまったりする。
 
 
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「全日本選手権」を謳っているのにやっていることは
非合法の公道レース。
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というのもサーキットのようなクローズドコースは無く、延々とシチュエーションの変わる道路(市街地、農道、砂漠、氷上など)を走り続けるだけであり、ポイント制で順位を争うわけでもなく選手権らしさは感じられない。
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前述の通り、遅すぎてパトカーに追い付かれるとゲームオーバーとなるがそのゲームオーバー画面は
警察官に「免許証を見せなさい。ただじゃすまないよ」と検挙される
というものである。つまりは公道をレース用に仕立てたクローズドコースでもなく
ただ集団で公道上を暴走していただけ
ということになる。
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なお、オープニング自体「女猫」が交差点を猛スピードで通過し警察に追跡されているシーンな上、メニュー画面のストリートレースの絵柄が「ミニパトに追跡される軽自動車」なので、元々公道でスピード違反上等のレースを行うゲームということは読み取れなくもない。
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キャラクターも前述通り一般人の若いドライバーばかりなので、どちらかと言えば首都高バトルシリーズ的な走り屋によるレースを思わせる。
 
総評
「軽自動車でレース」という題材自体は間違いなかったが、全日本選手権と言い難い内容や独特のレースの方式が受け入れられたとは言えず、知名度も低いマイナーな作品に留まっている。それでも軽自動車でレースをするゲームは他に類を見ず、現代の安全性・居住性を重視した軽自動車とは一味違う、当時ならではの個性的なデザインかつ動力性能で争っていたスパルタンな時代の軽自動車を体感できる貴重な作品である。
最終更新:2020年04月18日 16:29