Half-Life: Blue Shift

【はーふらいふ ぶるーしふと】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
メディア CD-ROM
発売元 SierraStudio(海外版)
Valve Software(Steam版)
開発元 Gearbox Software
発売日 2001年6月12日
定価 $4.99 USD /¥520 JPY(Steam)
配信 Steamにてオンライン販売中
判定 なし
ポイント Half-Life外伝第二作
前作にも使えるHDパックが付属
短すぎるストーリー
追加要素は一切ない
Half-Lifeシリーズ


ストーリー


ニューメキシコ州ブラック・メサ ブラック・メサ研究施設
対象:バーニー・カルフーン
学歴:マーティンソンカレッジ
役職:警備員
所属:エリア3セキュリティ
通関許可:第3級
緊急時最優先任務:ブラックメサ施設及びその設備の保護
優先任務:科学チームメンバーの保護
副次任務:自身の安全の確保


ブラック・メサに配属されて約半月。新米警備員バーニー・カルフーンは、その日も地上のエリア8地上宿舎からモノレールに乗りこんで自分の配属である地下施設エリア3へと向っていた。
しかしその日は何かがおかしかった。エリア3警備員入り口は不具合でなかなか開かず、警備主任は本来の担当であるセクターCではなく、トラブルの発生したセクターGに向かえという異例の指示を出す。
制服と拳銃を携えて中央警備室を出発したバーニーは二人の科学者の乗るエレベーターに便乗するが、下降中にエレベーターは止まってしまう。戸惑う3人はエレベーターから外を見渡すが、そこには突如出現したエイリアンに襲われ大惨事となっセクターGの光景が広がっていた。
エレベーターは落下し、バーニーは着地の衝撃で気絶する。
なんとか起き上がった彼は生存者を探して先に進むが、重症を負った研究者の情報を基に「海兵隊に囚われたローゼンバーグ博士の救助と、彼が知っている封鎖された旧転送装置の再起動」を目指すことに。

海兵隊、所員、エイリアンの三勢力が争う地獄のブラックメサ研究所。
果たして彼は転送装置を復旧させ「優先任務」を達成できるのか。


概要

名作FPS『Half-Life』の外伝として『Opposing Force』に続き発売された外伝第二作目。開発は同じくGearbox software。 本編から3年後の2001年に発売され、前作と異なり最初からスタンドアローンタイトルとして販売された。 優秀な手駒として「雇用」された科学者ゴードン・フリーマン、サバイバル能力は評価されたものの「保留」された海兵隊員シェパードに続き、Gマンに監視されながらも「範囲外」として干渉されなかった第三の男『バーニー・カルフーン』となり、ブラックメサからの脱出・警備員の優先任務内容である『研究者の保護』を試みる。


基本システム

同一エンジンを使用しているため大まかな操作・システムはHalf-Lifeと同様。

  • オーソドックスなライフ+ダメージ軽減のアーマー式。それぞれの上限は100ポイント。ただしバーニーの着用しているものはただのヘルメットと防弾ベストであり、専用装置を用いて燃料を補給するといったHEVスーツの機能は利用できない。
    • ではどうするのかというと、そこら辺に転がっている警備員の死体からヘルメットや防弾ベストを拝借する。罪悪感がわりと高いが、一応そこそこの頻度で補給できるため難易度上昇には繋がっていない。
  • 武器は本編ほぼそのまま。ただしレーザー兵器は軒並み廃止されているため武器数は本編より少ない。もっともレーザー兵器は両方ともゴードンが試作段階のテスト品を使用していたため、ストーリー的には仕方ないのだが。
  • 本編同様に、ストーリーは全てバーニー(プレイヤー)の主観視点を通して進行する。
    • バーニーはゴードン同様に一言も喋らず、プレイヤーの操作によって周囲の人々の反応も変化する。本編同様にバーニーになりきってプレイすることが可能であり、没入感を高めてくれる。
    • イベントムービーも一切なく、全てがリアルタイムデモとして進行する。アドベンチャーゲーム的な感覚が没入感を高める。
  • いつでもどこでも任意にセーブ・ロードが可能。クイックセーブ・ロード機能も実装しているのでトライ&エラーがやりやすい。オートセーブ機能も実装されている。

評価点

臨場感のある徹底した一人称視点

  • Opposing Force同様に開発はgearbox softwareが担当。前作同様に、全ての物語をリアルタイムで描くという手法は遵守している。
    • 本編の冒頭と同じく地下トラムで職場へ出勤するところから始まる。本編とは異なる入り口から景色を目撃しながら過ごすのだが、地中深く軍事研究的な側面の強かったHalf-Lifeでの光景と異なり、ビデオゲームで遊んだりラウンジでくつろぐ科学者たちなどののどかな光景を垣間見ることが出来る。本編同様のリアルタイムオープニングイベントは初っ端から否が応にもゲーム世界へ引き込み没入させるHalf-Lifeの象徴であり、Valveの後作にも受け継がれている。
    • 全てをリアルタイム・主観視点で描くことで、予期せぬ爆発・崩落する通路・吹き出す水・遠くから聞こえる叫び声や発砲音といった、ともすれば「ごく当たり前」と切り捨てられそうな演出が一気に現実味を帯びてくる。Half-Life本編の大原則は踏襲されており、本編同様の驚きの展開がプレイヤーを飽きさせない。

HDパック

  • 1998年のエンジン・グラフィックを流用しているため、『Return to Castle Wolfenstein』などの2001年標準タイトルで見るとやはり見劣りしてしまう部分は多い。この仕様の改善策として、本作には「HDパック」と名づけられた高解像度データが同封された。
    • ポリゴン数はなんとオリジナルの10倍。NPCの表情もより分かりやすくなり、武器もリアルになった。
  • 本編や前作『Opposing Force』との互換性もあり、Steam版の両タイトルでもオプションでHDパック・オリジナルデータどちらかを選択することが可能となっている(Blue shift未購入でも利用可能)。
    • ただし何故か武器の種類まで変更されており、グロックがM9に、MP5がM4A1に変更されている。そのためハンドガンと同じ弾を利用するブレの激しいM4A1を常に片腕で持ち上げる海兵隊員というよくよく考えるとかなりシュールな状況になる。*1

ストーリーの掘り下げ

  • 前作同様に本編のストーリーと同じタイミングの話となっているが、「科学者たちはどうしていたのか」に焦点が当たっているため、Half-Life 2への補完という側面が強い。
    • バーニーは「HL1のオープニングでゴードンがトラムで移動中に見た、開かないドアを叩いている警備員」。叩く前に振り返ればトラムに乗って移動するゴードンが見えるほか、警備室の監視カメラを覗けばセクターCを移動するゴードンの姿も見える。「同じタイミングで同じ場所にいる」というスピオンオフタイトル感は前作より感じられる。
  • 道中には「ブリーン所長の無茶な命令に悪態をつく科学者」が登場。ゴードンの参加した実験の高すぎる数値設定を命令した(=ブラックメサ事故の原因をもたらした)人物が2に登場するブリーンであることが本作で明かされている。
  • 前作ではただ立っているだけのNPCに過ぎなかった警備員の普段の生活にもスポットが当てられており、ドーナツを食いながら射撃練習に勤しむ小太りの先輩警備員、ロッカールームで制服に着替える同僚、暢気に雑誌を読みふける武器管理担当など、ブラックメサ警備員たちのリアルな日常を垣間見ることが出来る。トイレやシャワールーム、ラウンジなど一通りの施設が備わっており、実際にそこに勤務しているかのようなリアリティを生み出している。
    • ただ気楽な日常生活を描くだけでなく、オープニングでは彼ら警備員の雇用契約の内容も明かされる。設備・人員の保護が最優先任務、自身の生死は二の次という内容からもブラックメサ研究所がただの真っ当な研究所ではなく、何かしらの重要機密を隠した極秘施設であるということが間接的に示されている。

ハザードコース

  • 本編同様にブラックメサの研修施設「ハザードコース」がチュートリアルステージとして登場。内容は警備員用の独自のものとなっており、解説役も警備主任であるなど単なる本編の使いまわしになっていない。

綺麗に終わるエンディング

  • 本編では序盤のパニック映画的演出が後半で対エイリアンFPSに変化し、謎が謎のままエンディングに突入してしまったため「Xenは蛇足」とまで言われていたが、本作はGmanの介入もなく最初から最後までパニック映画的な作風が崩れずにエンディングを迎える。道中は壮絶だが救いのある内容のためクリアしたという達成感を感じられる。

難点

短い

  • 最大の難点。前作は外伝ながらしっかりとしたボリュームがあったため、それと比較され内容の短さが難点としてよく上がる。
    • もっとも、そもそもバーニーの優先任務は「生存している科学者の保護・脱出の手助け」だけであるためゴードンのように長期間ブラックメサを探索する理由はない。海兵隊の撤退後には政府直属部隊が生存者狩りを行い、その後核弾頭によって研究所自体が消失していることが前作で判明しているため、海兵隊の撤退直前というタイミングは時系列的には妥当な長さとも言える。
  • 実は、元々本作はドリームキャスト版Half-Lifeの追加コンテンツとして開発されていたという経緯がある。結局ドリームキャスト版Half-Lifeは発売中止となり*2、「前作と同じ外伝シリーズ」としてPCで発売されたが前作レベルの重厚な作品を望んだファンからは酷評されることに。「ドリームキャストの容量を考えると妥当だが、PCタイトルとしてはショボイ」というなんとも微妙なレビューを受けたこともある。
    • 家庭用ハードでの販売という目論見は継続しており、同2001年に発売されたもう一つの外伝作である『Half-Life:Decay』はPS2のみで発売された(日本未発売)。こちらも開発はGearbox Softwareが手掛けている。

追加要素がない

  • 前作は強力な武器・手ごわいエイリアンが追加されていたが、本作は新要素が登場するどころか武器バリエーションが減少している。
    • 唯一の追加要素は『Opposing Force』に登場したドーナツ狂のデブ警備員。それ以外は本編に登場したものしかほぼ登場しない。

頻繁に挟まるロード

  • シームレスデザインの弊害として、道を進んでいくと突然「ロード中」の表示が出てフリーズし、数秒後に操作再開、という形式がとられている。うまく区切りとなる部分で発生するように配慮されているのだが、やはり気になるところではある。
    • これは初登場時の本編にも存在した要素でもある。幸い、現在の一般的なスペックのパソコンでは一瞬でロードが終わるためさほど気にはならない。

後半の謎解きが分かりにくすぎる

  • 基本的に「見て察せ」を大前提としたストーリーテーリング・パズルで構成されているため、勘の鋭いプレイヤーでなければ初見で困惑してしまうパズルも多かったが、本作終盤のパズルにはそれに拍車がかかってしまっている。
    • 物理的に筋の通った謎解きではあるため、理不尽というわけではない。

*ローゼンバーグ博士の随伴

  • 北米現地では問題ではない、未ローカライズに起因する部分。「ローゼンバーグと共に来た道を引き返し、埋められた旧研究所への通路を見つける」というシーンが終盤に存在するのだが、その説明はローゼンバーグ自身が話すだけ。会話を聞き取れなければ誰も居ない来た道をわけもわからずおっさんを連れまわして右往左往する羽目になる。
    • 攻略プレイ動画を見ればすぐに分かる場所なので、今となってはさほど難点でもないが。

バーニーが無口

  • どちらかというと2のほうが悪いとも言えるのだが、気さくな二枚目として随所に登場する2のバーニーを知った上で本作をプレイすると無口すぎるバーニーに違和感が生じる。
    • まだバーニーの続投が決まる前の発売であったため仕方ないが。

総評

2001年に発売された、傑作FPS『Half-Life』の持つ良さは十分生かせている作品。やや難しすぎる謎解きや内容の薄さが不満点として挙げられがちだが、HDパックの登場や2004年の『Half-Life 2』へ繋がるストーリーなど功績もある。値段もさほど高くないため、前作や本編をクリアしたHalf-Lifeファンであれば挑戦してみるのも悪くないだろう。


余談

  • ゲーム自体の問題点ではないが、このソフトに日本語版は存在しない。本編とは異なり日本語化MODもなく、本レビューも英語版でのプレイを前提としている。
    • 上述のローゼンバーグ博士の同伴パートのように英語の理解力が乏しいとプレイに支障が出る場所が存在する。
    • 『Opposing Force』同様、良くも悪くも洋ゲーである。Half-Life本編をクリアできるレベルで、且つある程度海外FPSに慣れた人向けであるのは事実。
  • コンソールコマンドで三人称視点に切り替えることで普段見えないプレイヤーモデルも見ることが出来るのだが、当然本来のゲームプレイでは見えない部分なのでバーニーの体はオリジナル同様にフリーマンの体が流用されている。
最終更新:2020年09月28日 09:53

*1 余談ではあるが、M4A1に似た形でハンドガンと同じ弾を使用するサブマシンガンは実在する。

*2 ドリームキャスト版の発売が予定されていた2001年にセガが家庭用ゲーム機事業からの撤退を発表した影響がある